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緋色の記憶



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【この小説が収録されている参考書籍】
緋色の記憶 (文春文庫)

緋色の記憶の評価: 3.77/5点 レビュー 30件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.77pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全30件 21~30 2/2ページ
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No.10:
(4pt)

亡き父への思いを綴る文学的ミステリー

MWA長編賞受賞作ということでミステリーを期待して読んだが、かなり趣きの異なった作品だった。英文学の古典を読む思いだった。こういうタッチが好き嫌いに別れると思うが、私は嫌いではなかったが、すらすらとは読めず時間がかかった。恐らくアメリカ人なら興味深く読める所が、理解できずに冗漫に感じたり、人物の心理描写が不自然に思えたりしたせいだろうと思う。全然違う話だが、松本清張の「天城越え」を思い出した。老人が子供の頃遭遇した事件の思い出を叙情的に辿っていくという方法が類似していたせいだろうが、日本人の私には清張の方がピンとくるものがあった。父の象徴としてチャタム校は描かれており、父を乗り越え自由になりたいと願う息子が必死にもがく内に起きてしまった過去の事件を軸に、全編を通し、主人公の今は亡き父への悔悟の念と眼差しの優しさが心に残る作品となっている。
緋色の記憶 (文春文庫)Amazon書評・レビュー:緋色の記憶 (文春文庫)より
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No.9:
(4pt)

読者の好みによってははまります

趣を異にする推理小説というよりは、文学作品として読むにふさわしい。全編を通してせまってくるトーンの陰鬱さは、過酷なまでの自然を描いて有名な、あの『嵐が丘』を彷彿とさせる作品です。本編の中にも、女性教師とその同僚との恋を、ヒースクリフとキャサリンに例えた場面がでてきます。ニューイングランドの田舎、チャタム。保守的な色合いが濃いこの小さな村に、緋色の服をまとった女性教師が降り立つ場面から物語が始まる。やがて彼女は、妻子ある同僚との“邪悪な恋”へと導かれ、舞台となるチャタム校や大勢の人々を巻き込み、“黒池の事件”の唯一の罪人へと転落していく。突如、黒池の淵で起こる惨劇。十五歳の少年が池の底で目にしたものは?そしてその後の彼女の運命は?数十年を経て、今では老人と成り果てた少年の語り口により、忌まわしい過去、そして事件の真相が徐々に明らかにされていく。度々登場する“黒池”の不気味な描写が少年の心情とあいまって、物語に不吉さをそえている。スリルを味わう推理小説やサスペンスを求める読者には、残念ながらお勧めできません。ちなみに私は、クックの作品を読むのはこれが初めてですが、すっかりはまってしまいました。
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No.8:
(5pt)

読書の楽しみ

ステレオタイプの話なのだが、ぐいぐい引き込まれる。読後しばし余韻にひたる馥郁たる香りがあった。鴻巣友季子さんの仕事は賞賛に値する。名訳だ。原文の詩情に直接ふれる事はできないが、クックの文章を少しは理解した気がした。 過去の出来事を振り返るというのは、その出来事が衝撃的であればあるほど封印を解くという忌まわしい作業が伴うので、真相に近づくにつれ鼓動がはやくなってくる。だが、クックは抑えた筆勢で静かにそして丹念に物語を綴ってゆく。ラストでも、よくあるように同時進行のカットバックを使ったりせず、真正面から事の真相に近づいてゆく。ああ、こういう書き方もあるんだな、と思った。小説の醍醐味を味わった。文庫で、こんなに素晴らしい作品を読めるとは幸せなことで!ある。
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No.7:
(3pt)

少年時代のやるせない思い出

初老の主人公ヘンリーによる少年時代の回想の形で物語は始まる。小さな岬の村にある父親が校長を務める私立学校。そこに赴任してきた美貌の美術教師。ヘンリーはこの美人教師に絵を教わり、当然のように惹かれる。だが彼女は同僚の妻子ある英語教師と親しくなり、のちに“チャタム校事件”と呼ばれる悲劇に連なっていく。ヘンリーの回想は過去、現在、事件後の裁判の様子などいきつもどりつ、断片的に描かれる。少年時代の美しい思い出もその後の悲劇を通して描かれるため陰鬱な影を伴う。だが事件そのものはなかなか判然としない。「何があったのか?」 「誰が誰に何をしたのか?」読んでいる間中、ずっとやきもきさせる。やがて明らかになる悲劇と、ヘンリーだけが知っている真実・・・。!自分がこうしていれば事件は避けられたのか・・・悲劇への陥穽と今に繋がる悔恨の思い。事件は人々の運命を変え、ヘンリー自身の人生にも大きく影響したことが徐徐に明らかになる。決して派手ではなく、じんわりと後に残る読後感。やるせない思いに浸される。
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No.6:
(4pt)

不思議な空気があります。

 この人の作品は、遅ればせながら初めて読みました。地面に近い部分で淀んだ空気が漂っている感じです。嫌いではありません。作者の他の作品も読んでみたいです。 ただ、全編通して、「この〇〇は、後に××となって来るのである。」といったような書き方が、とても鼻につきました。この言い回しがあまりにしつこく、逆にしらけてしまうのです。前半は「それで?!それで?!」と先を知りたい気分にさせられましたが・・・。 独特の空気は、特筆ものかもしれません。
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No.5:
(3pt)

究極的には・・・

緻密な文体、的確な心理描写、読者をひきつける構成など筆者の技巧のすばらしさは認められると思うが、私個人として新しい何かをみつけることはできなかった。しがらみを捨てて自由に憧れるというのは、あまりにありがちだ。このテーマをかくなら、アメリカ的自由観をのりこえた自由の見方を示してほしかった。
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No.4:
(2pt)

読後スカッとはしない

人に薦められて初めてこの著者の作品を読みました。先が気になるのであっという間に読むことは出来ましたが、他の方のレビューにもあるように結末が何となく想像できてしまいます。ずっと主人公の記憶の中の過去と現在を行ったり来たりするので話がなかなか進まず、何度も前の方を読み返さないと出来事と出来事の前後関係がわかりにくくなったりもしました。(通勤電車で朝と夜に時間を置いて読んでたせいかもしれませんが)それに最後が陰鬱な気分になる話だったので個人的にはあまり好きではありません。昔大学で読まされた英文学作品のようなタイプの本だと思いました。
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No.3:
(3pt)

よく出来ているが先が予測できる・・・

トマス・クックの小説が「推理・サスペンス」のジャンルだと思って読んだ私には少々期待はずれでした。これは、文学作品と思って読むべきなのではないかと思います。少年時代を振り返る形で物語りは進みます。少年の女性教師に対するあこがれ、そして同情する気持ちが思わぬ方向に事件を導いてしまった時、少年はその苦い気持ちをただ背負って年月を重ねるしかなくなる。切なく重い空気がうまく描かれているとは思いますが、結末が予測しやすいのは残念です。短編として書かれたら良かったのかも・・・
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No.2:
(4pt)

過失のシステム

トマス・H・クックの作品は過失に満ちている。本書も例外ではなく、「チャタム校事件」にかかわった人々は道徳心に満ち、良心に苛まれ、古き良きアメリカの道徳を背負って生きていこうとする。しかし、起こってしまった犯罪は誰かが背負わなければならない。著者は緻密な構成とノンフィクションを手がけて養った裁判の心理戦を追うことで、一人の人間がそれをかぶる経緯を淡白な文章で負いつづける。そこで私たちは、犯罪というものはけして一人の加害者が、一人の被害者に向けて作られるものでないことを知る。クックの作品は全て共通している。腕は新作ごとにあがっているが、あとはお好みで、というような感じで内容は似たり寄ったりのものであることが多い。これも、彼があるひとつのものを追いつづけており、読者もこの一つのものが欲しいために彼の著書を読みつづけるのではないだろうか。
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No.1:
(3pt)

教師の不倫事件が変えた少年の運命

一人の老人が、少年時代の事件を回想するスタイルの小説。アメリカ東部の片田舎に赴任して来た美しい独身の女教師と一人の男性教師との不倫事件を軸に、彼らと主人公の少年との関わりが描かれている。終始重苦しい雰囲気で話が進み、暗い結末を予感させる。推理小説というよりも、少年時代の一つの行為の重さを一生背負い続けたの男の、苦悩に満ちた告白小説といった趣が強い。夏目漱石の「こころ」を連想させられる面もある。私は一般に暗いタッチの小説は好きな方だが、本書の場合途中から話の展開が大体予想でき、少々退屈させられる。英語は分詞構文が多用される凝った文体で、結構読みにくい。
緋色の記憶 (文春文庫)Amazon書評・レビュー:緋色の記憶 (文春文庫)より
4167218402

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