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死者の雨
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死者の雨の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.20pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全5件 1~5 1/1ページ
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よく言えば自己の欲望に忠実、悪く言えば自己コントロールができない、タフでポンコツな主人公セルヴァズがとても気に入ってます・・魅力的なふたりの女性をめぐる欲望と再生のミステリー・・次々と増殖する謎、スリリングな展開、情景描写の見事さ・・本編ではグスタフ・マーラーの音楽がキーワードになっていますが・・最終節を読んでいた時、突然Spotifyからモーリス・ラヴェルの付随音楽アンタールNo.7が流れてきてセルヴァズの癒しと拭い切れない不安をメタファーしたのは驚きでした。 | ||||
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刑事セルヴァス第2弾 セルヴァスがエリート校に通った青春時代を過ごしたマルサックで、彼の母校勤務のまだ若い女性教師が自宅浴室で惨殺体となって発見される。容疑者として拘束されたのは、敷地内で酩酊状態で見つかった学生ユーゴ。彼はセルヴァスの学生時代の恋人マリアンヌの息子だった。マリアンヌの懇願により、セルヴァスは急遽マルサックに駆けつけ、捜査にあたることになる。 死体発見現場のステレオから、マーラーのCDが見つかったことで、セルヴァスと因縁のある大量殺人鬼ハルトマンの存在を感じたセルヴァスは動揺するのだった。 ということで、「前作「氷結」を読んでいなくても」、などと書いてあっても、前作「氷結」を読んでいないと、わからないことばかりなので、是非「氷結」を読んでから、お読みください、と言っても、今作品はなかなかお勧めしがたい。 セルヴァスという主人公は、前作から、とにかく自分勝手で頼りない甘ちゃん。そのくせ、どんどん1人だけで捜査を進めていくので、証拠も捜査方針もなにもあったもんじゃない。1人で突っ走るので、大きなミスをおかしたり、大けがしたりの連続で、読んでいて腹が立った。本作品に「警察組織」という存在はない。今回は、特にまだ未練が残っている昔の恋人絡みということで、セルヴァスの暴走も読者の限界を超えているのではないか。そしてどうして彼が真犯人にたどりついたのか、誰か教えて下さい。 ハルトマンという前作で逃亡した大量殺人鬼は、どう考えても作者がハンニバル・レクターに触発されて登場させたのだろうが、知的レベルが違いすぎる。ハルトマンはただの品性下劣なサイコパスとしか思えなくて、とても悪趣味だ。 面白い本は、読み終えるのがもったいない気分になったりするものだが、今回はさっさと読み終えてしまいたくても、余計な部分が多すぎてイライラさせられ続けた。 ただし、気に入らないが、いろいろな意味での工夫は認める。 そして、全体に隠しようもない「警察官より文学者の方が上」的な作者の思い込みが読んでいて鼻持ちならず、非常に不愉快だった。 | ||||
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前作はピレネー山脈との国境の街を風雪の季節を背景に描いたものだが、本書ではトゥールーズの近くの架空の町マルサックを背景にし、全編よく降る雨の季節と、前作とは雰囲気を変えている。タイトルとは全く無関係な邦題が選ばれたのも、本書中で絶え間ないほどに降り続く雨と、その奥で起こった犯罪の姿を想起させるべく、訳者と版元とで決められたものに違いない。 原題はフランス語で「ル・セルクル」、英語に直せば『ザ・サークル』で、作中、いつこのタイトルが姿を現わすのかとやきもきさせられるが、読み進むにつれ、そのタイトルの意味は明らかになる。全作同様に過去に何が起きたのか? が現在何が起こっているのか? という疑問への回答となる、全作の写し絵のような細工の施された大作である。 前作に比べると劇的とまではゆかない進行度合いだが、途中から例によって加速するのと、ミスリードを幾重にも招いてゆく騙し絵のような迷路構造は、この作家のどうやら本懐とするところらしいから、疾走感を思わせる面白さには十分期待して頂いて構わないだろう。 前作に増して、弱点いっぱいだがどうにも憎めない主人公マルタン・セルヴァス警部は、その個性をしっかりと出し続ける。主役に負けず劣らずの周囲の個性ある捜査スタッフたちに助けられ、パンクな娘マルゴとの距離感もつかず離れずの微妙な親子関係で味わいを持たせたまま。 前作に比べ、さらに猫の目のように移り替わる視点により、後半はより読書が加速すること請け合い。最近感心させられたJ・D・バーカーの猿三部作シリーズなどと共通のジェット・コースター性はほぼ全作において保つ作家である。そのストーリーテリングに、文学性趣味も加わって、不器用で痛い思いばかりしてしまう主人公ともども、ますますシリーズ加速化が期待される。 前作でその生死の謎が期待されるハンニバル・レクターなみの例の人物が本書ではどのように関わってくるのか、も無論かなりの読みどころになっており、ラストのどんでん返しの連続はやはりプロットの妙、そしてなぜこの作家が現代フレンチ・ミステリーの代表格にのし上がっているのかが、理解できると思う。 現在、四作目の邦訳が待たれる作家としてぼくは相当注目しています。 | ||||
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前作はピレネー山脈との国境の街を風雪の季節を背景に描いたものだが、本書ではトゥールーズの近くの架空の町マルサックを背景にし、全編よく降る雨の季節と、前作とは雰囲気を変えている。タイトルとは全く無関係な邦題が選ばれたのも、本書中で絶え間ないほどに降り続く雨と、その奥で起こった犯罪の姿を想起させるべく、訳者と版元とで決められたものに違いない。 原題はフランス語で「ル・セルクル」、英語に直せば『ザ・サークル』で、作中、いつこのタイトルが姿を現わすのかとやきもきさせられるが、読み進むにつれ、そのタイトルの意味は明らかになる。全作同様に過去に何が起きたのか? が現在何が起こっているのか? という疑問への回答となる、全作の写し絵のような細工の施された大作である。 前作に比べると劇的とまではゆかない進行度合いだが、途中から例によって加速するのと、ミスリードを幾重にも招いてゆく騙し絵のような迷路構造は、この作家のどうやら本懐とするところらしいから、疾走感を思わせる面白さには十分期待して頂いて構わないだろう。 前作に増して、弱点いっぱいだがどうにも憎めない主人公マルタン・セルヴァス警部は、その個性をしっかりと出し続ける。主役に負けず劣らずの周囲の個性ある捜査スタッフたちに助けられ、パンクな娘マルゴとの距離感もつかず離れずの微妙な親子関係で味わいを持たせたまま。 前作に比べ、さらに猫の目のように移り替わる視点により、後半はより読書が加速すること請け合い。最近感心させられたJ・D・バーカーの猿三部作シリーズなどと共通のジェット・コースター性はほぼ全作において保つ作家である。そのストーリーテリングに、文学性趣味も加わって、不器用で痛い思いばかりしてしまう主人公ともども、ますますシリーズ加速化が期待される。 前作でその生死の謎が期待されるハンニバル・レクターなみの例の人物が本書ではどのように関わってくるのか、も無論かなりの読みどころになっており、ラストのどんでん返しの連続はやはりプロットの妙、そしてなぜこの作家が現代フレンチ・ミステリーの代表格にのし上がっているのかが、理解できると思う。 現在、四作目の邦訳が待たれる作家としてぼくは相当注目しています。 | ||||
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前作『氷結』で活躍したセルヴァズ警部シリーズの続編。文庫本で上下巻およそ1000ページにも及ぶ前作以上の長さだが、筆致はあいかわらず速く、とんとん拍子で展開していくため、すらすら読み進められる。でも残念ながら、ぐいぐい引き込まれることは、前作同様に、なかった。 探偵役の主人公が容疑者と個人的ないきさつでつながっており、トラウマと葛藤を抱えながら事件の謎を追うというスタイルは、ピエール・ルメートルのカミーユ警部シリーズにもあてはまる。前作のあの男との不可解な(一方的な)愛憎あふれる関係は『羊たちの沈黙』を思わせる(猟奇的な設定も)。 しかしいくらシリーズものに必要だったとはいえ、事件の舞台が自分の母校で、娘がそこに通っていたり、挙句の果てに容疑者の母親が元カノだったりといったご都合主義的設定を許せるほど、主人公に魅力があるとはいえない。 英米の推理物のような切れ味鋭い論理ゲームではないし、北欧のミステリのような重厚な物語でもない。いちおう謎はあるが、それよりも、人間臭い欠陥だらけの登場人物たちのドラマに、猟奇的な事件や冒険(スキューバダイビング!)などのスパイスをまぶしてあると評する方が適切か。 フランスの刑事は、そこまで個人的に傷つき、危険を冒しながら事件を追わないといけないのでしょうか。配置換えしてはどうですか、といったら身も蓋もないが。 | ||||
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