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コンビニ人間



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【この小説が収録されている参考書籍】
コンビニ人間

コンビニ人間の評価: 3.99/5点 レビュー 1009件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.99pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全749件 561~580 29/38ページ
No.189:
(5pt)

オーディブルで購入

以前から読みたいと思っていたがなかなか時間が作れず、オーディブル化しているのを見つけて早速1コインで購入。

オアシズの大久保佳代子さんが朗読しており、最初は少したどたどしい感じが気になって集中できなかった。
オーディブルで初めて聞いたのがピース又吉の「火花」で、堤真一の朗読があまりにも上手だったのでそれと比べてしまったのもあるかもしれない。
ただ数分もすればすぐに慣れてきて、最後は大久保さんの声が適役だったなぁと思えるまでになった。
普通の文章は少し滑舌が悪いようなスッキリしない感じはあったが、芸人さんだけあって会話を読むのはとても上手だったと思う。

主人公は独特の考え方だが、共感できるところも多かった。
同棲の話はええから早よ唐揚げ棒を作れよ、と僕も思ったし、多少デフォルメはされているにしろ、他人の私生活にズケズケと踏み入る姿勢は僕は嫌いだ。

白羽さんはクズだけど、主人公の妹を口八丁で救った場面は素直に感心した。
白羽さんもあそこまで卑屈な考え方になってしまうまでに色々あったんだろうなと思う。

「コンビニ人間」側と「普通の人間」側のどちらが読んでも楽しめると思うし、これを読むことで双方が1歩だけでも歩み寄れたら、縄文時代から1歩進んだ世の中になるのかなぁと思った。

オーディブル、お勧めです。大久保さんありがとう。
コンビニ人間Amazon書評・レビュー:コンビニ人間より
4163906185
No.188:
(5pt)

我々は無意識に「普通」を振りかざしていやしないか

愛情深い両親と妹の元で育ちながらも、幼い頃から空気が読めず問題を起こしてきた主人公の古倉恵子。大学一年の時に新しくオープンするコンビニのバイト店員として働き始めた瞬間、世界の正常な細胞のひとつとして自分が初めて生まれたのを感じた。それから18年、新入りのバイト・白羽が入ってきたことで、恵子の世界が狂い始める。

いまの日本の世の中は「多様性」を叫んでいるが、実態は「普通」を求める力をより強く秘めていないだろうか。あなたも私も「あなたのためを思って」という残酷な斧を、無意識のうちに他人に振りかざしていないだろうか。主人公に共感するか否か、ラストに何を思うか、そんな判断場面からも文学を超越し社会を描き問うている。
コンビニ人間Amazon書評・レビュー:コンビニ人間より
4163906185
No.187:
(4pt)

80点。価値観とは?

ふらっと手に取った、何にも動機がなく、軽く、軽やかに手に取って、
読み始めてしまいました。

 コンビニって、普通じゃない?
 コンビニで働く人って普通じゃない?
 主人公は、小さいころから、少し変わった趣向、主義を生まれ持ち、
それがどうおかしいのか分からない。
 大学時代に始めたアルバイト。コンビニの仕事。
 彼女にとって、それが唯一ムラとの共通点、窓を見つけられるところ。
 18年アルバイト。大学卒業。独身。それが彼女のレッテルで、それが
彼女の存在で、しかし、コンビニの仕事の方向性を身につけて生きている。 
 唯一の窓を失うことが、どれだけ大変なことか。
 白羽さんと言う、社会的なゴミにゴミと言われても、屑と言われても、
そうかと思ってしまう合理的な頭を持って、その存在から、これまで過ごして
きた18年間の意味を理解する。そして彼女は?
 という感じ。

 80点かな。
 とりあえず読みやすい。しかもこれはかなりのコンビニ事情。
 社会が凝縮されているその場所で、描かれる歴史と、描かれる感情を
表現するとこんな感じになるのかな。
 描きたいものを、あえて描かないで表現してしまう、作品に仕上げて
しまう。矛盾。
 個人的には白羽さんに激怒している妹さんに賛成してしまう私ですが、
こんなのもありなんだと、飲み込んでしまいました。
 お読み下さい。
コンビニ人間Amazon書評・レビュー:コンビニ人間より
4163906185
No.186:
(5pt)

読み応えあり!

久しぶりに、読んで充実感を得る本に出会いました。(といっても私の読書量がただ単に少ないという事もありますが。)
普通とか、みんなやってるとか、当たり前とか、常識とか、そういった自分の価値観を改めて考えさせられます。読んだ後、心が元気になりました。コンビニで働いている人を見る目が変わりました。私には到底つとまりそうにありません。
コンビニ人間Amazon書評・レビュー:コンビニ人間より
4163906185
No.185:
(4pt)

異端者に対して、愛がない

読み終えた後、主人公に対しての共感と周囲に対しての違和感を感じた。
自分も「普通」というものに対してのコンプレックスが強くあり、なんとか普通になりたいともがいているからこそ、同じ少数派として共感できた。(あんなに無機質に物事を考えていないが)
主人公は、少なくともアルバイトとしてしっかり働けるくらいの社会性を有しているし、他者を攻撃するような人間性は持っていない。家族や同僚・友人には嫌われているわけではなく、愛されていると思う。
だからこそ、白羽という他者に嫌われる人間との交流が発覚した時、コンビニの同僚がただ手放しに喜ぶリアクションは全く理解できなかった。
人や社会から見て、「異物」として映る人と接する時、社会的ステータスや表面上の振る舞いだけでなく、その人の本質的考え方、生き方まで、しっかりと理解することが必要だと感じた。
普通に対しての圧力が強まっているのは、表面上の付き合いが増えてるからかもしれない。
きっと主人公みたいな人は、今後もっと生きづらく、行き場のない八方塞がりになる気がして、この本から受けた教訓としては、そういった方を理解して、本質的に向き合える思考を持ちたいと思った。
コンビニ人間Amazon書評・レビュー:コンビニ人間より
4163906185
No.184:
(4pt)

これが普通なのか?(ネタバレ含みます)

主人公はバツなしの独身36歳女性です。
大卒で、コンビニでのバイトひとすじ18年です。

私はバツなしの独身50歳男性です。
大卒で、転職ではありますが現在は普通に正社員のサラリーマンやってます。
ちなみに大学を留年した一年は仕送りなしでコンビニのバイトで生計を立てていました。

こんな私から見ると、主人公のどこがマトモじゃないのかわからない。
自分で働いてお金を稼いで、誰にも迷惑をかけずに
(コンビニ店員としては逆に模範生です)ちゃんと自活している。
主人公の周りの人たちのほうがおかしいんじゃないの、と思えてしまいます。

私はバツなし独身であることで差別されている気はしません。
陰ではいろいろといわれているのかもしれませんが、
少なくともセクハラやパワハラが問題になっている現今、
会社の同僚にも友人にもあんな失礼なことをいわれた記憶はありません。
それに必死で合わせようとする主人公が健気に思えてきます。

まあ、白羽って男はアタマおかしいです。
勃たないんじゃなくて勃てないんだろ。
こういうこじらせた童貞が主人公に偉そうにするのが癪に障ります。

そういうわけで、私的にはこれはハッピィエンドですね。
読後は爽やかなのですが、どうしてもその間の主人公の周りの人間と
白羽が気持ち悪いので評価は4にさせていただきました。
コンビニ人間Amazon書評・レビュー:コンビニ人間より
4163906185
No.183:
(4pt)

かっこいい主人公でした

読みやすかったです。今の自分の欲しいものや、したいことは本当に意味があるのか考えさせられました。自分は見栄を張っている、プライドが高い、とは思っていませんでしたが、もしかすると私は見栄やプライドで今固められているのかもしれないとも感じました。痛いところをつかれた気分になりました。本当の居場所などわからず、そんなこと考えることもない生活を送っている私にとって主人公は大変羨ましい存在となりました。生きる意味、働く意味、自分の人生を考えさせてくださった作品でした。
コンビニ人間Amazon書評・レビュー:コンビニ人間より
4163906185
No.182:
(4pt)

リテールを含め力の抜き方がちょうどいい

さすがコンビニで働いているだけあって、細かいディテールまで、人間観察も含め正確にできていることに感心しました。意外な結末も、力が入っていない主人公の生き方にぴったりで、救われた人が多いと思います。
コンビニ人間Amazon書評・レビュー:コンビニ人間より
4163906185
No.181:
(5pt)

自分の生きたいように生きること

しあわせの価値基準は人それぞれ、人と違った生き方でもなんら恥じることはないとおしえてくれる本です。
コンビニ人間Amazon書評・レビュー:コンビニ人間より
4163906185
No.180:
(4pt)

自己実現の達成

普段フィクションは読みませんが、面白くて一気に読み終わってしまいました。
主人公は天職を見つけたのだと思います。コンビニで働くことで自己実現を達成している。自分はこのままでいいのか?とよく悩む私からしたら、ラストの主人公の迷いのなさを羨ましいと感じました。
コンビニ人間Amazon書評・レビュー:コンビニ人間より
4163906185
No.179:
(5pt)

日本文学史に残る傑作

本書は2年前に書かれて以降、18ヵ国語に翻訳されるそうだ。その理由は、今の日本社会の最大の矛盾を正面から描いているからだろう。本書は、日本が経済成長のただ中にあった1960年代ではなく、今でしか書かれえない本だ。今の日本社会の矛盾とは、「現代は機能不全世界なのだ。・・・結局、縄文時代から何も変わっていない。少子化が進んで、どんどん縄文に回帰している」(p107)、「結婚して子供を産むか、狩りに行って金を稼いでくるか、どちらかの形でムラに貢献しない人間は異端者なんだ」(106)ということである。主人公の恵子は、36歳で独身、大学入学以来この18年間コンビニのバイトで生きている。どこか発達障害のアスペルガー症候群を思わせるところがあり、家族からは「普通じゃない」と言われているが、コンビニではてきぱきと働き、機械的作業は得意。ただ「面接を落ちた」とあるから、正社員にはなれない何かがあるのだろう。恋愛経験も性経験もないが、別にそれを不満に思ってはいない。もう一人の35歳の白羽は35歳の男で、大学中退のダラダラ人間で、コンビニのバイトでさえ、勤務不良でクビになる。行き所のなくなった白羽を、恵子が自分の6畳アパートで生活させるという話。二人はたしかに極端ではあるが、状況と主題には普遍性がある。「僕は誰にも迷惑をかけていないのに、皆が平然と僕の人生に干渉してくる。僕はただ静かに息をしていたいだけなんだ」(白羽)という思いを恵子も共有しているが、二人の家族や友人は激しく彼らに干渉し、「正社員で働け!」「結婚しろ!」と強い圧力をかける。正社員にもならず結婚もしない二人は、「ムラの異物」であり、厳しく排除される。経済も行き詰り少子化が進行する日本は、この圧力が日々強まっているが、しかし他の先進国にもこれからありうる状況だ。だから18ヵ国語にも翻訳される。働いて家庭を持ち、子供を生み育てることは、誰もがそうしなければいけない人間の義務なのだろうか? 本書は、「人生の目的を持たない無頼漢」を描いたディドロの『ラモーの甥』にも通じる、重い主題に挑戦している。最後、恵子が正社員を諦め、またコンビニで働こうとするシーンは本当に素晴らしい。コンビニで機械的な仕事ができることは、立派に働くことであり、それで十分ではないか。胸を張って、生涯、コンビニバイトを続けてほしいと思う。
コンビニ人間Amazon書評・レビュー:コンビニ人間より
4163906185
No.178:
(5pt)

とっても読み易い純文学

人間がどう生きていくのか、社会とどのように関係を保っていけばいいのかという難しい問題を提起している。
それをコミカルに表現し、飽きさせない。久し振りに一気読みができた純文学。
コンビニ人間Amazon書評・レビュー:コンビニ人間より
4163906185
No.177:
(5pt)

コンビニ人間はどこにでもいる

他人の顔色を伺ったことはありませんか?
周りの空気に合わせて笑っていませんか?
みんなが買っているからと買ったものはありませんか?

私たちは自分のうちからはなにも生み出さない、そういうふうに作られた機械です。
まずはこの本を読みましょう。
読んで、そこから生まれたものに従って生きましょう。
理解も不理解も、こういう本を読まなければ生まれないと私は思っています。
だから読みましょう。読んで考えましょう。
この本はそのためにあると思うんです。
コンビニ人間Amazon書評・レビュー:コンビニ人間より
4163906185
No.176:
(5pt)

普通を演じている自分に気づいた

芥川賞ってこんな作品も取るんですね。肩肘張ったようなところや難しい表現はなく、小説というよりは誰かのブログ(というよりはてな匿名ダイアリー)を見ているような感覚で一気に読み終えました。主人公にはすべてではないですがコアの部分はわりと共感できました。この本が芥川賞に選出され、売れて、レビューにも共感できるという意見がわりとあるので、きっとこの主人公に共感できる人は自分以外にもそれなりにたくさんいるのだろうと思うと少し安心です。
主人公の思考が、普通はそこまで言語化しないよなというところまで細やかに、かつ軽やかに書かれており、いろいろと自分の日常を顧みて考えさせられる点が多かったです。
たとえば口調が人からうつるという描写が繰り返し出てくるのが印象的でしたね。コンビニの音の描写といい、主人公は(著者も?)かなり聴覚優位なのだということがうかがえます。周囲の人が変わると話し方も変わるというのは当たり前といえば当たり前なのですが、あまりちゃんと考えたことがありませんでした。語尾を伸ばすとか具体的な描写が伴っているのがとてもリアルで、自分や友達に当てはめていろいろ考えてしまいました。
他の人の反応を見て学習して、自分も同じように振る舞うというところは、一見いかにもアスペルガー的で普通ではない思考パターンかのようにもみえますが、似たようなことは自分もやっているなと思いました。
主人公が同棲してると知った周囲の反応がリアルすぎておもしろかったですが、もし私が主人公の同僚だったらどう反応していたか想像すると、やっぱり「ずっと恋人のいない人に恋人ができた時の他人の反応」を自分の中にコピーしてそれを演じると思うのですよね。そんなに心から良かったねと思っていなくても、こういう時は良かったねと言うものだから言っているという部分がどこかある気がします。あとは単にホットな話題として楽しんでいるだけだったりとか。主人公の同僚や友人たちもそのどっちかまたは両方なんじゃないかなと思いました。妹は違うでしょうけど。
また、コンビニの店員からは客がどう見えていて、何を考えているのか、こんなに詳しく知る機会が今までなかったのでそこはとても興味深かったです。明日からコンビニに行った時に見る視点が変わりそうです。
主人公には、普通になろうという意思はあっても、向上心とか将来の夢、目標みたいなものは一切ないみたいですし、それがないことに特に他人からも言及もされないんですよね。白羽についてはネガティブな文脈でネット起業という言葉は出てきてはいますが。主人公に、他にやりたいこととかないの?と聞いてくる人がいてもおかしくないような気がします。夢(それこそ小説家になるとか)のためにバイトしながらがんばっているなんてありがちですしね。私が主人公より多少若いせいかもしれませんが、普通でなければならないという圧力と同じくらい、夢や目標を持たなければならないという圧力もまた、私が結構息苦しいと感じる点なので、個人的にはそのあたりも描いてほしかったです。ただ、現実の作者は実際にはコンビニバイトであるだけでなく小説家でもあるわけで、そのあたりは満たされている以上、描く必要がなかったのかもしれませんね。
各国語に翻訳されているということですが、海外の人が読んだらどう思うのかも気になる作品ですね。
ついいろいろ考えて長くなってしまいましたが、これだけ自分の日常に当てはめて考えさせられる小説はかなり稀有でした。読んでよかったです。
コンビニ人間Amazon書評・レビュー:コンビニ人間より
4163906185
No.175:
(5pt)

ハッピーエンドか、バッドエンドか

(以下、作品からの引用も含め、ネタバレにご注意ください)
・文学の真の価値というものが、ストーリーテリングの巧拙や魅力ある登場人物の創造にあるのではなく、これまでだれも書かなかったことが文学表現として提示されたことにあるとすれば、『コンビニ人間』は、内容的に実に興味深い作品だと思う。本作品には、主人公の女性が物音へ過敏に反応したり、彼女の「普通」でない言動によって周囲のパニックを招いたエピソードが何度も描かれ、背景に発達障害が存在することが示唆されている(ただし、発達障害だと明言するシーンはない)。そういう主人公にとって「普通の人間」として振る舞える場所こそがコンビニだった。なぜなら、「私はバックルームで見せられた見本のビデオや、トレーナーの見せてくれるお手本の真似をするのが得意だった。今まで、誰も私に、「これが普通の表情で、声の出し方だよ」と教えてくれたことはなかった。」(p20)からだ。本作品は、人の感情がうまく理解できない主人公の「生きづらさ」が1人称の視点で描かれており、小説の「現在」はコンビニ勤務の18年後として設定されている。本作品の主眼は、36歳になった主人公がコンビニを辞めて、就活を開始するまでの周囲との様々な軋轢を描くことにあった。

・かつて、大学1年生の主人公は、コンビニ勤務の初日、自分の業務を無難にこなし、こんな感慨を持った。「そのとき、私は、初めて、世界の部品になることができたのだった。私は、今、自分が生まれたと思った。世界の正常な部品としての私が、この日、確かに誕生したのだった。」(p25)、と。世界の部品となる、とは、社会が求める役割を引き受けること、「つまり、皆の中にある『普通の人間』という架空の生き物を演じるんです。あのコンビニエンスストアで、全員が『店員』という架空の生き物を演じているのと同じですよ」(p95)と解釈されていた。その後の彼女には、「朝になれば、また私は店員になり、世界の歯車になれる。そのことだけが、私を正常な人間にしているのだった。」(p27)という精神的な安息が訪れる。

・主人公はまた、こんなことも考えていた。「店長も、店員も、割り箸も、スプーンも、制服も、小銭も、バーコードを通した牛乳も卵も、それを入れるビニール袋も、オープンした当初のものはもうほとんど店にない。ずっとあるけれど、少しずつ入れ替わっている。」(p57)。つまり、コンビニには同じ名称の商品が「ずっとあるけれど」、新陳代謝のように個々の商品は少しずつ入れ替わるし、働く人間もまた「店長」「店員」として「ずっとあるけれど」、人事異動により少しずつ入れ替わっていく。会社制度では、「法人」である会社がその社員である「自然人」=生身の人間を入れ替えながら存続することで、継続的な取引の安定性が保証されるが、コンビニの原理も同じというわけだ。さらに、主人公は、「18年間、「店長」は姿を変えながらずっと店にいた。一人一人違うのに、全員合わせて一匹の生き物であるような気持ちになることがある。」(p46)と考えるが、この発想は、歌舞伎役者が同じ芸名を何代目何々として襲名し、その芸名からイメージされる芸風を守っていく慣習に似ている。昔は、商家などでも代々の名跡を継承する慣習が珍しくなかった。

・主人公は、コンビニで働くようになって、同窓会で旧友から「変わったね」「雰囲気違ってみえる」といわれて、内心でつぶやく。「だって、私の摂取する「世界」は入れ替わっているのだから。前に友達と会ったとき身体の中にあった水が、今はもうほとんどなくなっていて、違う水に入れ替わっているように、私を形成するものが変化している。」(p38)。生身の人間の身体も、コンビニの新陳代謝に似て、「ずっとあるけれど、少しずつ入れ替わっている」と捉えられる。

・コンビニの店舗は、煌々と輝く照明器具によって「光の箱」と化す。主人公は、コンビニとその「歯車」である自分に絶大な信頼を寄せる。「ドアをあければ、光の箱が私を待っている。いつも回転し続ける、ゆるぎない正常な世界。私は、この光に満ちた箱の中の世界を信じている。」(p36)という。こうなると、コンビニのありふれた店舗が神秘的な宗教性さえ帯びてくる。主人公は、「普通の人間という皮をかぶって、そのマニュアル通りに振る舞えばムラを追い出されることも、邪魔者扱いされることもない」(p95)と考えている。しかし、「自然人」である限り、コンビニからの退場を避けることはできず、主人公の「老い」のきざしが、結婚して家庭を持つという社会性や、病気・老後への備えの欠如の問題を顕在化させることになる。小説中で、彼女の家族や無職の中年男などから、アルバイト身分を批判されるシーンが続き、さすがの主人公も、コンビニを辞めて、就活に挑むことにしぶしぶ同意する。実は、彼女自身が、「電話を切ったあと、ふと、鏡の中の自分を眺めた。コンビニ店員として生まれたときに比べると、私は老いていた。」(p79)と気づいていた。

・クライマックスで、主人公は、就活の面接に行く途上、たまたま立ち寄ったビジネス街のコンビニで、商品の陳列がマニュアルどおりでない棚を見て、勝手に並べ直していくうちに、突然、神の啓示のような「コンビニの「声」」を聞く。「そのとき、私にコンビニの「声」が流れ込んできた。」「コンビニの中の音の全てが、意味を持って震えていた。その振動が、私の細胞へ直接語りかけ、音楽のように響いているのだった。」(p154)。主人公は就活を中止し、揺るぎない信念のもと、コンビニ人間として再出発することが暗示されて、小説は終わりを告げる。作家の中村文則氏は、巻末の「解説」で、「この小説をある意味ハッピーエンドと捉える人もいるかもしれないし、バッドエンドと捉える人もいるかもしれない」と述べている。この言い回しは微妙だが、中村氏には本作品の結末が少し意外で、素直にハッピーエンドとは受け取れなかったようだ。主人公が、「コンビニ店員として生まれたときに比べると、私は老いていた」と自覚し、細胞レベルで「私を形成するものが変化している」と感じているにも関わらず、コンビニ人間として再出発するというラストは、顕在化した問題の解決を放棄するに等しいからだ。「コンビニの「声」」というのも、単に、自分自身のルーティンの無意識を第三者の声のように錯覚したにすぎないだろう。

・以下は、主人公が発達障害だと仮定しての話になるが、『コンビニ人間』の主人公がどう生きるべきは、親族のだれにもわからなかったし、本人自身の態度も、やむをえなかったとはいえ、発達障害をクローズ(非公表)すべきものとして終始している。彼女の人生の最初の躓きは、小学校高学年時のカウンセリングで、「「とにかく、愛情を注いで、ゆっくり見守りましょう」と毒にも薬にもならないことを言われ」(p17)たことだった。このような事実は、彼女がライフステージに応じた専門職の支援と結びつく機会を失う原因となっていて、現在でも発達障害の専門医が少ない情況下にあるものの、やはり主人公は、生育過程で適切な診断を受ける必要があったと思う。ラストの就活シーンでは、本来、ハローワークに相談に行って、就労支援担当者にありのままの実情を話し、発達障害を就職先にオープンにするかクローズにするかも含めて、彼女の適性や意思に応じた職業紹介が行われ、就労後のフォローアップも視野に入れた継続的な支援が行われるべきだった。そういう非文学的(実務的)な視点で眺めると、あのラストはバッドエンドだったと思うが、コンビニという小さな空間を通じて、世界の「歯車」になるという発達障害の当事者の生々しい世界観が語られた小説として、『コンビニ人間』は記憶されるべきものではないかと思う。レビュアーは、本作品を読みながら、自閉症の当事者が書いた驚嘆すべき著書『自閉症の僕が跳びはねる理由』(東田直樹著)を連想していた。
コンビニ人間Amazon書評・レビュー:コンビニ人間より
4163906185
No.174:
(5pt)

どんな人にでも居場所はある

主人公はアスペルガー症候群の女性。
何をやらせても失敗ばかりだが、
偶然出会ったコンビニのアルバイトという職業に適応し、
完璧にコンビニの業務をこなせるようになった。

現在は「普通じゃない人」は「普通」になるように強制され、差別される時代。
100年後はきっと「そんな時代もあったんだ」と笑い話になっている。

この本を読んだ人が「普通じゃない人」をそのまま受け入れられるようになれば、
社会は少しずつ良くなると思う。
コンビニ人間Amazon書評・レビュー:コンビニ人間より
4163906185
No.173:
(4pt)

コンビニ愛

主人公がヤバいクレーマーとかを処理していくお話かと思ったら、一番ヤバかったのは主人公だった
コンビニ愛に感服
コンビニ人間Amazon書評・レビュー:コンビニ人間より
4163906185
No.172:
(5pt)

★★★★★

同じ窓から揃いも揃って見る景色
窓の向こうからこちらを見ている人がいる
こちら側は満員電車みたいな箱の中
あちら側はどこまでも続く土の上
正しさは幻みたいな凶器
自分で磨いたものですか?
箱の中は酸素が薄く頭が回らない
思考停止
横一列にスタートなんか切らなくていい
速度と強度の競争に飽きている
風船に針をさす
コンビニ人間Amazon書評・レビュー:コンビニ人間より
4163906185
No.171:
(5pt)
【ネタバレあり!?】 (1件の連絡あり)[]  ネタバレを表示する

普遍的なテーマでありながら、エキセントリックな内容の傑作小説

面白かった。ここまでぶっ飛んだ内容の本が芥川賞という権威ある文学賞を受賞できたことに、日本文学の懐の深さを感じた。「クレイジー沙耶香」という著者の異名の通り、非常にエキセントリックな作品だ。

【以下、多少のネタバレあり】
本作はとても品が良いと感じた。とかく伏線らしきものを張るとそれを回収しなければ気が済まない作家も数多いるし、なるたけ悲劇的に、主人公が苦境に陥らなければ人間を描いていると認めない批評家もたくさんいる中、そうした期待や呪いをするりとかわして、話の筋を著者の問題意識に集中させていた。

具体的には、主人公が他人の外形的特徴を盗用している描写が序盤から幾度もあり、盗用について看破されてしまう展開が予想された。しかし、なかった。確かに他の場面で要素が足りていた。また、主人公が男を自宅に招いたときに無理矢理抱かれてしまう展開も予想された。しかし、それもなかった。抱かれようと抱かれまいと本筋には関係ないし、男のクズさのベクトルが作品のテーマからズレてしまう可能性があった。

あくまで、いわゆる「普通」とどう向き合うか、という視点にだけ真摯に向き合っていた。(著者のインタビューに「読者の期待を裏切るのが好き」という趣旨の発言があったから、敢えて罠を張っていたとも考えられるが。)

また、発達障害といった流行りの用語を使用せず、物語に普遍性を持たせている点も優れていると感じた。漫画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』の「あとがき」で、著者の押見修造氏がこのように語っているのを思い出した。

──この漫画では、本編の中では「吃音」とか「どもり」という言葉を使いませんでした。それは、ただの「吃音漫画」にしたくなかったからです。
とても個人的でありながら、誰にでも当てはまる物語になればいいな、と思って描きました。

レビューの中には、主人公を「診断」したり、「治療」の方針を示すようなものもあるが、読み方が幼稚に過ぎる。本作は「◯◯すればいいのに」と一括にはできない射程、示唆に富んだ作品だ。

たくさんの人に読まれて欲しいと思う。
コンビニ人間Amazon書評・レビュー:コンビニ人間より
4163906185
No.170:
(5pt)
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普遍的なテーマでありながら、エキセントリックな内容の傑作小説

面白かった。ここまでぶっ飛んだ内容の本が芥川賞という権威ある文学賞を受賞できたことに、日本文学の懐の深さを感じた。「クレイジー沙耶香」という著者の異名の通り、非常にエキセントリックな作品だ。

【以下、多少のネタバレあり】
本作はとても品が良いと感じた。とかく伏線らしきものを張るとそれを回収しなければ気が済まない作家も数多いるし、なるたけ悲劇的に、主人公が苦境に陥らなければ人間を描いていると認めない批評家もたくさんいる中、そうした期待や呪いをするりとかわして、話の筋を著者の問題意識に集中させていた。

具体的には、主人公が他人の外形的特徴を盗用している描写が序盤から幾度もあり、盗用について看破されてしまう展開が予想された。しかし、なかった。確かに他の場面で要素が足りていた。また、主人公が男を自宅に招いたときに無理矢理抱かれてしまう展開も予想された。しかし、それもなかった。抱かれようと抱かれまいと本筋には関係ないし、男のクズさのベクトルが作品のテーマからズレてしまう可能性があった。

あくまで、いわゆる「普通」とどう向き合うか、という視点にだけ真摯に向き合っていた。(著者のインタビューに「読者の期待を裏切るのが好き」という趣旨の発言があったから、敢えて罠を張っていたとも考えられるが。)

また、発達障害といった流行りの用語を使用せず、物語に普遍性を持たせている点も優れていると感じた。漫画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』の「あとがき」で、著者の押見修造氏がこのように語っているのを思い出した。

──この漫画では、本編の中では「吃音」とか「どもり」という言葉を使いませんでした。それは、ただの「吃音漫画」にしたくなかったからです。
とても個人的でありながら、誰にでも当てはまる物語になればいいな、と思って描きました。

レビューの中には、主人公を「診断」したり、「治療」の方針を示すようなものもあるが、読み方が幼稚に過ぎる。本作は「◯◯すればいいのに」と一括にはできない射程、示唆に富んだ作品だ。

たくさんの人に読まれて欲しいと思う。
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4163906185

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