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愚か者死すべし



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【この小説が収録されている参考書籍】
愚か者死すべし
愚か者死すべし (ハヤカワ文庫 JA ハ 4-7)

愚か者死すべしの評価: 4.28/5点 レビュー 75件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.28pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全61件 1~20 1/4ページ
No.61:
(5pt)

はじめから古びた小説だが、だからこそいつも新しい顔をしているのではないだろうか?いっそ爽快だ。

表4の便概に、“新・沢崎シリーズ第一弾”とある。これはしかし著者による[後記]にも同じ断り書きがあるので“はったり”ではなさそうだ。そして、このことは読後に強く感じとることができた。間違いなく、新シリーズの誕生である。これも[後記]にあるように、何よりも「面白い作品」をこそめざした成果を存分に堪能することができる。
尤も、すべてが“刷新”されたわけではない。基調は何も変わらない。変わってもらっては困る、とも言える。三度[後記]に依るが、「警察関係の記述が大きな部分を占めて」おり、いつもの陰惨さは今回もたっぷり味わえるのでご心配なく。
「まじめさ、いかめしさ、融通のきかなさ、閃きのなさを混ぜ合わせて、粘土で捏ねあげたような」。これはある警官の容貌の描写である。「食べた経験のない食物をむりやり口の中に押し込まれたような表情」。これも警官のものである。「この世の中のたいがいの困難には遭遇したが、あまり騒ぎ立ててもいい結果が得られるわけではないと悟っている人間の顔」。これはある主婦の容貌であるが、彼女は自分ではいかんともしがたい事どもに打ちのめされるうちに、こういった心象を身につけざるを得なかった―沢崎は、彼女の引きこもりの息子と得難い出会いを経験しもする。しかし、表題でいうところの<愚か者>の顔とは次のようなものだ。「人間としての自由を奪った者に、人間の命を絶つことを平気で強制できる、邪悪な執念のようなものが」表れた顔。これこそが今回の首謀者の顔である。「暴力団というより、まるで“謀略団”だ」という言葉は、今回は警察にこそ衝きつけられている。
もちろん、こういったキツイ皮肉は今回も冴えていて、「ご忠告すると、あなたがいま電話をかけているところは、客に誰がいるかなどということを、電話の向こうの正体不明の男にぺらぺらとしゃべったりしない」とか、「中古で5年目のブルーバードが、いつもは車の成人病の巣窟であるかのように不調を訴えるのに、その朝はどういう風の吹きまわしか機嫌よく走った」。おっと、これは愛車に対する愛情表現だ。「億万長者にはけっして味わえないような昼飯」とか、「正直な探偵の見本」なんていうのは自虐か。まあいい。「楽しい時間は長くつづかないということを知るのが人生の第一歩だが、苦しい時間も同じだということは人生の終わりが近づいても知るのがむずかしかった。」なんて警句もむろんバンバン飛び出す。「探偵の心得三か条」という興味深いものも出てくるが、弁護士が分類する人間の三種類もおもしろい。いわく、興奮した人間と冷静な人間、そして平静な人間。前2者は何とか対処できるが、「平静な人間というのは何を考えているかわからない」と言い、もちろん沢崎はそこに分類されるという。
新機軸に移る。今回はなんと「依頼者があって何かの真相をつきとめなければならないような事件ではなかった」のだ。これこそ謎解きをやめ、ハードボイルドに徹したという著者の新しい試みであり、犯人の動機などは知ったこっちゃないということの真意だ。もちろん、それだけで“新機軸”なんて唱えても読者(それ以前に著者)は納得しない。そこで、とった方法(と思われる)が、前回亡くなった渡辺は当然としても、常連の錦織や橋爪の不在ということではないだろうか。この三者と沢崎は決して馴れあうことはないが(錦織のパリからの伝言は「“図に乗るなよ、探偵”」)、見えない紐帯のようなものが感じられた。それを今回は断ち切った。それと入れ替えに実に魅力的な人物たちを配したのだ。
平身低頭の名手で、俳優・坂本武に似ているという安積(あさか)組組長の安積武男、
裏世界の情報通にして、900からの失われたフィルムを所蔵したライブラリーをもつ92歳の資産家、設楽盈彦(しだらみつひこ)―彼はまるで「イングロリアス・バスターズ」のような最期を遂げる―、その養女にして、透明度の高い湖のようでありながら決してその底を覗くことのできない設楽佑実子、そして極めつけは、最初は、税所(さいしょ)義郎と名のった人物だ。極論を承知で言えば、彼の造型、登場こそが本作を新シリーズの端緒足らしめた調本人といっても過言ではない。最初は<警視庁の公安>として現れる。しかし、二度目は、<台湾の外交官>李國基、そして三度めに<虎ノ門のトラブル・コンサルタント>岡田浩二―しかも、親が鶴田浩二のファンだとぬかす!それに対して沢崎も<“片目の運転手”になるのはいつだ?>と応戦するが、設楽佑実子によると、“今は”<ゴーストライター>渡会(わたらい)健一郎と名のっているといい、それも偽名らしいのだ。この徹底した悪巫山戯こそ今回の新機軸にして真骨頂ではないだろうか?「愚か者」を追いつめ糾弾するだけが探偵小説ではない。いわば、そうすることで悪役だけを魅力的にすることはない。もっと、得体の知れない、もっとぶっとんだファンタスティックな人物が登場したっていいじゃないか!とでもいった作者の高らかな声が聴こえてきそうな気がするのだ。
最期に、同性愛について。前作『さらば長き眠り』にも同性愛者が事件のキーマンとして登場した。これは、もちろん今はやりの言葉が登場する以前の呼称だが、ここで今回のキーマンは、このことを世間に知ってもらいたい人もいれば、そうでない人もいる、と言っている。おそらく著者が今の時代に生きていても同じことを登場人物にいわせていたのではないだろうか、とふと思った。
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4150309124
No.60:
(5pt)

すべてはハードボイルドの彼方に

その中で、あの警察官犯罪が何であったのかを、作者は書かなかった。
世の中には、はっきりとさせられないことがある、ということなのか。
そうであるならば、余りにもそういうことが多い、と私は答える。
しかし、それも余りにも月並みな反応か。
すべてはハードボイルドの彼方に・・・・
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No.59:
(4pt)

イッキ読み

やはりこのスピード感がハードボイルドの醍醐味ですね。
依頼を受けた私立探偵、沢崎が行動するのを、ただ時系列順に読むので、読んでいてあまり頭を使わなくて済みます。
章が変わるたびに視点人物が変わったり、時間が遡ったりする小説が、私はあまり好きじゃありません。
その点、主人公の一人称が貫徹されるハードボイルドが好きです。
今どき、私立探偵の一人称で書かれたハードボイルドも少ないですけどね。
原先生には頑張って欲しいです。
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No.58:
(5pt)

歌舞伎と同じで

チャンドラーと似ている云々と言われるますが、歌舞伎のように古典の台本を主人公たちが演じていると思って読むといいのでは。お約束の展開、お約束の台詞であっても、「待ってました」と楽しめます。後半、筋がもたつきますが、それもご愛嬌、よくぞ書く気になってくれた、と思えば気になりません。いつか分かりませんが、また気が向いたら、書いて貰いたいものです。
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No.57:
(5pt)

アニー・ウィルクスに引き合わせたい

寡作、との言葉はこの作者のためにある。

次の作品を待ち疲れて、もはや物故者になったに違いないと忘れかけてたら、新しい作品が出る。
もっと早く書けとクレームを言いたいが、言ったらへそを曲げて書かなくなりそうなタイプである。

「ミザリー」に登場するアニー・ウィルクスの気持ちがわかりすぎる。
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No.56:
(5pt)

胡散臭いやつらが最高!

主人公の探偵も依頼者も警官も犯罪者もヤクザも胡散臭いやつもみんなお喋りだ。本当によく喋る。何だあこれはと思っているうちに、そのお喋りがだんだんと快感になってくる。この長ったらしい会話が原尞の真骨頂なのだと合点した。ストーリーもよく練られているし、最後の二転三転もいつもどおりで楽しめる。文庫本の付けたしでのパリから帰った錦織警部補と沢崎との会話も最高だ。
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No.55:
(5pt)

もっと書いて!

縦糸のストーリーに複雑に絡み合う横糸の人間関係。この世界観がたまらない。
読み出したら止まらない。
ハードカバーで14年前に読み、文庫で再読。
14年前に作者あとがきの短時間で作品を書けるように努力するという言葉に、大いに期待したことを思い出し、そして見事に裏切られたことを再確認した。
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No.54:
(5pt)

いつものハードボイルド探偵シリーズ。相変わらず渋い。

いつものハードボイルド探偵シリーズ。

相変わらず渋い。本シリーズも5巻目なのでさすがにマンネリ感はあるが、内容はいつもの通り、期待を裏切らない。

いくつかの事件や事情が並行して絡み合い、最後の最後でやっと謎が解ける。読んでいて難しいと感じる事もあるが、雰囲気を楽しんで読書できるので、特に不満はない。

前作までの登場人物も一応登場するが、本作だけ読んでも置いて行かれることも無い。

なかなかおすすめ。
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No.53:
(4pt)

伝説のジャズ・ピアニスト原尞のハードボイルド

新作『それまでの明日』がやっと最近(2018年3月)刊行された。作家としての原尞は、とにかく寡作。一作ごとのクオリティは高く、主人公のハードボイルドでストイックな「こだわる」生き方描写や、徐々に明らかになっていく漸進的なストーリー展開など独特の世界を築いている。

本作も、その特徴が良く表れている。十分楽しめた。が、ややストーリー展開(オチ)が乱暴な気がした。犯行の目的が”それ”なら別のやり方があったろうに、と思った。
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No.52:
(5pt)

面白かった

新作の発表に合わせて、過去に読んだ筈の本作も購入した。読んでなかったか、忘れていたか、面白く読むことができた。
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No.51:
(5pt)

最高傑作とはいえないけど、相当出来のいいハードボイルド派の推理小説

主人公を庇おうとした刑事に銃弾が当たり・・・というお話。

原さんの場合、チャンドラーが昔アメリカでやっていた事を日本で再現できるか、というコンセプトで書いている様に見受けられますが、チャンドラーの時代は連絡を取り合うのに電話と電報を使っていて、今の日本ではメールやスマホでやっているので、随分難しいだろうと思われます。

チャンドラーの場合推理小説的にイマイチの感のある所のありましたが、原さんは推理小説のハードルも高くしてらっしゃる様で、満足のいく完璧な作品ができるまで相当時間がかかるのも判ります。

本書も最高傑作とは言えないですが、推理小説としてもハードボイルドとしても相当出来のいい作品で多少前の作品よりも時間がかかったり、短くなっておりますが、まずは満足のいく作品だと思いました。

今年(2018年)久々の新作が出ますが、果たしてどういう作品になるか今から気になります。出来のいい作品である事を祈って已みません。

まずはよく出来たハードボイルド派の推理小説。是非ご一読を。
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No.50:
(4pt)

探偵としての矜持が、固い芯のようにあることで、物語が成り立つ。

沢崎という探偵の 推理力、観察力が なんとも言えないほどの
推進力があり 本質に 迫っていく。
不思議な 事件が つぎつぎに起こっていく。
ヤクザの組長と 足を洗った料理人と その兄弟関係。
フィクサーのような老人とそれに連れ添う美女。
フィクサーの寝言で、政治家が 恐れ戦く。
それに眼を付けて、金を奪おうとする スズキイチロー、ノモヒデオ。
警察のウラを知りぬいて、駆け上っていく刑事。
それが 複雑に絡み合って 事件の真相が 明らかになっていく。
人間が沢山でて来るので、最初に 登場人物の紹介があって、わかりにくいものが
すこし、わかりやすくなっているのは、助かる。
でも、どうして といういくつかの疑問が 残ったままに、
事件を 解決させてしまう 沢崎。
探偵という矜持とほこりと その職分をよく知っているが故に、
カリスマ的な オーラがあって いい感じだ。
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No.49:
(4pt)

時代遅れの探偵

正統派と言うべきか、チャンドラーの作品に登場するハードボイルド探偵と瓜二つの主人公。
関係者の台詞や独白がそれぞれ芝居かかっていて、しかしそれがこの小説に独特の味わいを持たせています。
前作に比べると話がやや頓狂に過ぎるように私には感じましたが、大変です。
作者の次の作品を待っていますが10年経った2017年現在未だのようで、残念です。
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No.48:
(5pt)

和製チャンドラーの原寮の探偵沢崎シリーズ

和製チャンドラーの原寮の探偵沢崎シリーズ。 語り口と言い テンポと言い 描写と言い すばらしいです。 これぞハードボイルド。
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No.47:
(5pt)

なつかしい

なつかしい本に会えました。
なかなか読みであります。
楽しみです。
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No.46:
(4pt)

ちょっと強引

後半の設定がちょっと強引かなと思いましたが…
全体的には面白かったです。
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No.45:
(4pt)

沢崎シリーズの新作はいつでるの?

沢崎シリーズはどの作品も面白い。この作品も問題なく面白い。
ただ一つ不満なことが、沢崎シリーズの新作をそろそろ書いてください。お願いします。
まだお読みで無い方は、どうぞお読みになってください、僕の気持ちがきっと、わかるようになります。
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No.44:
(5pt)

素晴らしい作品です

出版当時に初版で読みました。随分と時間がたちましたが2014年の最後にキンドルで読み直しました。シリーズが続いて欲しいと、願っています。
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No.43:
(4pt)

10年ぶりの再読。沢崎の世界に浸る幸せ。

2004年秋に「新 沢崎シリーズ」として刊行された本作品を文庫本で10年ぶりに再読した。
沢崎の世界に浸る幸せを感じた。
新作はまだなのかな。首はこれ以上長くなりませんよ。
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No.42:
(4pt)

今読むとかなり「ハードボイルド」かも

安定のチャンドラー文体の探偵シリーズ。最新作だが、それでも10年前の作品なのか。客観描写のハードボイルド文体に加えて、ある種のユーモアが混ざっているのが特徴で、皮肉屋の主人公が警察や暴力団と関わり、依頼人と話し、証拠集めや真相解明のために様々な人物と会っていく。以下ネタバレで

*******************

 今作については、二つの事件が交差するという点に新しさがある。「三日男爵」がらみの事件と、警察官殺しの事件、ということだ。前段階としては、犯人も明確な銀行での発砲事件があるが、そこから絡み合って、謎の男が登場して、という展開になっていく。

 「ハードボイルド」と思うのは、チャンドラーというよりハメットの意味で、人死にと拳銃の登場回数の多さがそうだな、というところ。ただ、2000年ごろでも暴力団がこんな元気だったかなというのは思う。

 真相を明かさない、というラストについては、個人的にはあまり面白いと思わなかった。また、このシリーズの魅力であるサイドストーリーについても、画家志望の男とのカップルや、ひきこもりの青年など、ちょっと印象が薄いかな。とはいえ、既読感のある作品ではあるが、同シリーズの読者であれば十分に楽しめる作品となっていると思う。
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