ひまわりの祝祭



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    初公開日(参考)1997年05月
    分類

    長編小説

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    ひまわりの祝祭 (講談社文庫)

    2000年06月15日 ひまわりの祝祭 (講談社文庫)

    自殺した妻は妊娠を隠していた。何年か経ち彼女にそっくりな女と出会った秋山だが、突然まわりが騒々しくなる。ヤクザ、闇の大物、昔の会社のスポンサー筋などの影がちらつく中、キーワードはゴッホの「ひまわり」だと気づくが…。名作『テロリストのパラソル』をしのぐ、ハードボイルド・ミステリーの傑作長編。 (「BOOK」データベースより)




    書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.50pt

    ひまわりの祝祭の総合評価:7.05/10点レビュー 44件。Bランク


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    (7pt)

    登場人物たちの人生遍歴が常人の倍以上では?

    江戸川乱歩賞受賞作がそのままその年の直木賞受賞作となる、実にセンセーショナルなデビューを飾った藤原伊織氏。そんな彼のまさに世間が待ちわびていた2作目が本書である。ファン・ゴッホの未公開のひまわりの絵画を巡る美術ミステリだ。

    1997年刊行の本書。28年前の、しかも前世紀の作品。その時既に社会人だった私にとってはさほど前の話のように思えなかったが、やはりところどころに時代を感じさせる。

    例えば本書ではオリックスではイチローがまだ活躍しており、デザイン会社での記憶媒体ではMOが主流となっている。いやはや懐かしい。
    USBメモリーやSDカードが主流になっている現在、MOなんてもう時代の遺物だ。私も当時使用していたが、今の若い子たちはMOなんて知っているだろうか。

    更に驚いたのは携帯電話の最初の3桁が030であり、そして番号が10桁であることだ。PHSが050だったっけなどと思い出した。

    またタクシーに自動車電話がついてるなどという描写もあり、私もずいぶん昔から生きている者だなぁと思い知らされた。

    さてそんな時代性を感じさせる物語の主人公秋山秋二はかつてデザイン会社で新進気鋭のデザイナーとして働いていた男だ。若くして才能を評価され、自身の作った広告が日本アートディレクター協会のJADA賞―なおこれは日本グラフィックデザイナー協会JAGDAがモデルだろう―のグランプリを当時最年少で受賞したほどの才能を持つ。勤め先を若くして独立するまでになる。

    そんな彼が全ての名声と才能を放棄し、世捨て人のような生活を送っているのは彼の妻英子が他界したからだ。しかも自殺し、さらにはその時身籠っていたことが判っている。
    しかも夫の秋山は大学生の頃に罹ったおたふく風邪の後遺症で無精子症となっている。つまり彼の妻英子は死ぬ前に夫ではない誰かの子供を身籠っていたのだ。

    その後彼は渡米し、そこで射撃に夢中になり、腕を磨く。留学ビザも取り、長くいるつもりだったが1年後に父の死をきっかけに日本に戻って現在に至る。

    そんな彼を今回の事件に巻き込むきっかけを作ったのはかつて彼が勤めていたデザイン会社の元専務、村林だ。今の社長井上と共にデザイン会社京美企画を立ち上げ、その後将来性のあるインダストリアルデザイナーの道に進むことを選んで京美企画から独立し、今はその方面で一流デザイナーとして名が通るまでになった人物だ。

    彼は京美企画在籍時代に秋山が異常な博打の才能を持っていたことを思い出し、彼が手に入れた500万円を摩る為に彼をカジノに誘う。

    そして村林に連れられて行ったカジノで遭遇した若い女性加納麻里が本書のヒロインと云えよう。秋山は彼女に亡き妻英子の面影を見出す。

    しかし私は今回この加納麻里という人物像に藤原氏らしくない、作り物感を抱いてしまった。

    父親と二人暮らしで育ち、しかもその父親は腎不全で臥せっており生活保護を受けながら極貧生活を送っていた。たまたま買った宝くじが当たり、100万円が入ると生活保護を打ち切られるような社会のシステムに嫌気が差し、ヘルスのバイトで自分で金を稼いで生活を支え、そしてその一部を大学の入学金に当て、奨学金をもらって大学に入った苦労人だ。

    しかしその大学も中退し、ヘルスを本業にしていたところ、週刊誌に美人ヘルス嬢としてグラビア紹介されたのが仁科老人の目に留まり、スカウトされ秘書になった。そして仁科に連れられたカジノで秋山と出遭ったのだ。

    しかしこのたった21歳の彼女に作者はかなりの要素を盛り込んでいる。

    全米ライフル協会の帽子を知っていて被っていたことやPC、ポリティカリー・コレクトネス、政治的正当性といった耳慣れない言葉と意味を知っている。さらにはフランス語も理解して書物も読める。

    ヘルスのバイトをして学費を稼ぎながら、アメリカ社会における全米ライフル協会の微妙な立ち位置を理解し、さらにフランス語を読める元女子大生。しかも21歳と云えば大学3年、いや4年生かもしれないが、こんな知識を持つ女子大生は東大生や有名私立大といった上位の学生しかいないだろう。
    さらにヘルス嬢時代に実の父親が客として訪れた暗い過去をも持っている。
    美人過ぎるインテリヘルス嬢でそんな痛々しい過去を持つなんて人物に陰影をつけるとはいえ、理想を押し付けすぎやしていないだろうか。

    また途中で秋山に近づき、彼の味方となるカジノのマネージャー原田邦彦もまたミステリアスな男だ。一流ホテルの支配人と見まがうかのような優雅な身のこなしと礼儀を知り、なおかつ記憶力がよく、さらに全体像を見通す視野の広さを持っている。
    さらにやくざにも太刀打ちできる戦闘能力もあり、修羅場に置かれても一切動じず、相手が無礼なことをしても、さらには重傷を負っても顔に笑みさえ浮かべる男。
    おまけにゲイであり、一流電機会社の役員と大物実業家仁科とで取り合いをさせるほどの魅力を備えている。

    この原田と加納麻里を従えるのが仁科忠彦という実業家だ。若かりし頃は画家の道を選んだが、自分の才能に限界を見出し、実業家の道を進み、金融関係の仕事やカジノの経営、画商やさらに民間の美術館まで手広く事業を展開している老人でしかもバイセクシャルでもある。

    このように複雑な絵を描きながら展開するこの物語はゴッホの知られざる8枚目のひまわりの絵を巡る美術ミステリであり、冒険小説でもあるが、読み終わった今、実に類型的な作品であるなとの印象が拭えなかった。

    まずゴッホの知られざるひまわりの絵の存在を巡るまでの道のりは本格ミステリ的興趣もあり、実に面白い。
    主人公秋山秋二のモラトリアムな生活に突如介入してきた、かつての上司村林のカジノへの誘いをきっかけに彼の周りで彼を見張る者たちが現れたり、また自殺した妻に似た女性が絡んできたりと主人公の身に何が起きているのか不明な点が学芸員をしていた亡き妻英子の遺品に遺されていたメモからゴッホの知られざる8枚目のひまわりの存在に至る、この見事な展開はそれまで何が謎なのかが解らなかっただけに、目の前の靄が一気に晴れる思いがした。

    さらにゴッホが8枚目のひまわりを書いていた可能性についてもゴッホ生前の創作姿勢から可能性の高い“あり得る話”だと思わされるし、何よりも主人公の亡き妻英子とゴッホ8枚目のひまわりの存在をアメリカ人美術コレクター、ナタリー・リシュレとの交流から繋げていく流れは実に読み応えがあり、まさに歴史秘話的な興趣に満ちている。
    恐らく藤原氏は美術が好きで造詣が深いのだろう。でないとこんな話は浮かばない。

    ただここからがいけない。登場人物たちやプロットが非常に類型的になっているのだ。

    モラトリアムな主人公が事件に巻き込まれ、望むと望まざるとに関わらず、銀座の中心に住みながら家とコンビニの往復でしか毎日を過ごさなかった日々から一転して赤坂のカジノや京都の亡き妻の弟の家まで行く羽目になり、そこから晴海の倉庫で銃撃戦へと展開していく。

    原田という謎めいたカジノのマネージャーが味方に付き、記憶力と洞察力が高い上に身なりは優雅、さらに格闘能力も高く、おまけにゲイであるというなんとも作られたような便利な登場人物に、亡き妻の英子に似たヒロイン加納麻里は上述のように21歳の若さにしては世間だけでなく、アメリカ社会のことまで知っており、フランス語まで解する。

    敵も不動産投機に失敗し、大量の借金を抱えた融会社の社長田代誠介がやくざと組み、知られざるひまわりの絵を奪おうと執拗に追ってくる。
    その社長は秋山が以前勤めていたデザイン会社と取引の厚い一流電機メーカー、アイバ電機工業の社長の息子で元広報宣伝部長で都落ちの身。彼を取り巻くのは元アイバ電機社員の鷺村修で依願退職後、暴力団の八雲会に所属しており、その八雲会で幅を利かせているのが曽根で会の武闘派である。風貌は平凡な男だが、平気で人を撃ち、刃物で人を刺すことのできる男だ。

    しかしこの曽根は元々中古車ディーラーをやっており、村林が広告会社時代に私語をしくじった顧客だった。その時、お詫びに上がったのが村林と社長の井上で彼は激昂する曽根に殴られるままに殴られ、瀕死の重傷を負った上に多額の賠償金を支払った過去がある。

    一介の元サラリーマンが暴力団と手を組み、さらに一介の零細中古ディーラー元社長が一流の拳銃使いとなっている。

    とにかくそれぞれの登場人物に設定を盛り込みすぎなのだ。
    年齢と持っている能力の高さ、成熟度が釣り合わない気がした。いわばプロットを成立させるために登場人物たちに設定を押し込めている感じだ。
    また人間関係も狭すぎる。このバランスの悪さが読書中、常に頭に付きまとってしまった。

    惜しかったのは秋山の妻の英子の肖像だ。
    まず主人公秋山と英子の出逢いの場面が何とも瑞々しい。高校2年の秋山に新入生の英子が話しかけるシーンは久々に青春物の恋愛小説を読んだ清々しさを感じた。秋山の才能に惚れ、そして結婚するにまで至った2人の関係はまさに運命が引き合わせた2人だ。
    物語のもう1つの謎はそんな彼女の自殺の原因だ。秋山を慕い、才能に惚れ、ついてきた彼女がなぜ自殺したのか。それも他人の子を孕んで。

    でもやっぱりどう考えても英子の自殺のエピソードはいらなかったように思う。これは単に枯れた中年男の恋愛願望ではないか。

    また導入部で秋山秋二の特殊な博打の才能に関してその後見せ場が出てこなかったのはなんとももったいない。
    特に渡米時代に肖像画を描いたお礼としてもらったライフルを帰国の際に預け荷物に入れてそのまま日本に持ち込めることができた件には、いくら分解して詰め込んだといえど、その現実感のなさに驚いた。

    このように中の餡子は非常に美味しいのに昔子供の頃に食べた質の悪い外側の皮がパサパサな饅頭のような作品になったのは誠に残念だ。まさに昭和の味わいといった古めかしさを感じた。

    既に鬼籍に入っており、今はもう数限りある残された作品を愉しむしか術はないが、江戸川乱歩賞受賞後、直木賞受賞後の1作としてはこのプロットはなんとも類型的すぎる。
    刊行年の年末ランキングにランクインしなかったのも頷ける。
    彼の作品は全て持っているのでそれらが藤原伊織という名を刻むだけの価値あることを強く望みたい。


    ▼以下、ネタバレ感想

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    Tetchy
    WHOKS60S
    No.3:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
    (5pt)

    ひまわりの祝祭の感想

    ソフトハードボイルドとでも言うのでしょうか、くたびれた中年が活躍する藤原作品得意のパターンですね。

    正直、『テロリスト』『シリウス』『てのひら』と読んでくると、キャラクター設定のマンネリ具合に辟易します。島村も辰村も堀江も秋山もみんな同じ。周りも、特に女性キャラも似たり寄ったりだし、脇役達の役割もパターン化していますね。

    『テロリスト』が面白かったので、立て続けに藤原作品を読んでしまったのですが、それが裏目に出て、この作品は飽きました。

    つまらない作品ではないと思いますし、最初に読めばまた感想は違ったと思うので、もったいない読み方をしたな〜とは思います。

    カミーテル
    MCFS6K6O
    No.2:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
    (8pt)

    ひまわりの祝祭の感想

    個人的に乱歩賞・直木賞受賞作の「テロリストのパラソル」は今一つだったのですが本作は面白かった
    絵画を題材にしたハードボイルドという点でもユニークですし、主人公を中心とした軽快な会話もユーモアに溢れていて良かったです
    最後まで息をつかせぬ展開で一気に読める良作だと思います

    これだけ面白い作品を書ける方が若くして亡くなられてしまったことが残念でなりません

    最終列車
    KU3TJU3C
    No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
    (10pt)

    ひまわりの祝祭の感想

    妻が自殺した後ひっそりと何もせず暮らしていた男。突然昔の知り合いが訪ねて来た事から事件が始まると言う、典型的な巻き込まれ型のハードボイルドです。主人公はストイックでセンチメンタル、他の人物達も非常に魅力的で、大変面白い作品でした。話の流れはほぼ予想出来た結末へ進み、あまり意外性は有りませんでしたが、これで良いんです。こう言う文体、世界観、物語が自分は好きなのだな、と再確認させられた文句なしの名作。ホントに格好良い話ですよ、オススメします。

    なおひろ
    R1UV05YV
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    No.40:
    (4pt)

    ここに辿り着きし者たちへ

    2作目を超えてここに辿り着いた方々は期待通りの作品です!w ちょwこれwできなくもないかな~???って感じの作品があってもいいでしょ!w トリックは大雑把に想像できて、私は好きです。
    ひまわりの祝祭 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:ひまわりの祝祭 (角川文庫)より
    4043847025
    No.39:
    (2pt)

    詰め込み過ぎと理解できないトリック

    普通のミステリーと思わないで読まなくてはいけません。たーくさん天才推理小説家と良くわからない天才探偵が何人か出てきます。登場人物はとても多いけれど、名前はとても憶えやすい。これはミステリーというよりファンタジー?次々と殺人が起きて、図入りでトリックの解明が行われるけれど、私にはまったく理解できず。なんとか理解できたトリックも、そんなこと実際にやったとしても、絶対に成功しないよね・・・と、途中で読むのが辛くなりました。もう読むのをやめようかなと思ったけれど、でもせっかくだから犯人は知りたい。なんとか最後までこぎつけました。
    ひまわりの祝祭 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:ひまわりの祝祭 (角川文庫)より
    4043847025
    No.38:
    (5pt)

    映画化、アニメ化して欲しいユーモアミステリー

    密室殺人も大量に登場するが現実離れしたキャラも大量に登場する
    これには映像化を狙ったあざとさがヒシヒシと感じられるが是非実現して貰いたい
    設定とキャラ立とギャグがシリーズが進むにつれていい意味でエスカレートしている
    トリックは真面目に考えても解けるものじゃないので悩まずサクサクと読み進めるのが良いでしょう
    次巻は王城帝夏主演の『八甲田山五連続密室殺人事件』でお願いします
    ひまわりの祝祭 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:ひまわりの祝祭 (角川文庫)より
    4043847025
    No.37:
    (2pt)

    むぅ、だったっ!

    ○○は「むぅ」と唸り
    ○○だったっ!
    など、読んでいて違和感を感じる
    独特な表現が目立つ
    ひまわりの祝祭 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:ひまわりの祝祭 (角川文庫)より
    4043847025
    No.36:
    (4pt)

    トリックのスケールはシリーズ1番

    【密室づくめの八箱村、トリックのスケールはは文句なしで1番】

     八箱村ということで金田一耕助シリーズの八つ墓村を連想しましたが、おどろおどろしさはなく、前巻までと雰囲気は同じです。

     私は主役の二人の関係性が好きなので、二人の描写の濃厚さというか青春度では前巻に軍配が上がります。今回二人が合流するまで少し時間がかかったことも影響しているかもしれません。

     密室トリックはさすがに豊富で、とりわけ第九のトリックのスケールは今まで読んだミステリでも最高レベルのものでした。流石にどうなの?と思わなくもないのですが、そのアイデアとスケール感が本シリーズらしく私としてはアリです。むしろこのトリックがなかったら、物足りなくなっていたと思います。

     私としては2巻の「密室狂乱時代の殺人」がトリック、主役二人の青春度ともにシリーズで群を抜いて良かったので、それを超える4巻を期待しています。

    次巻が出たら、必ず買います。
    ひまわりの祝祭 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:ひまわりの祝祭 (角川文庫)より
    4043847025



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