名残り火
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「てのひらの闇Ⅱ」とある本作が著者最後の長編となった。<正義感とか潔癖さとか思いやりとか、こういう齢になって口にするのさえ気恥ずかしいような言葉があいつほど似あう人間はいなかった>という主人公・堀江雅之の無二の親友・柿島隆志が集団暴行を受け、殺害されたところから物語は始まる。今回は、その柿島がなぜ殺されなければならなかったかを、2000年代初頭の流通業界を背景に、その闇の真相に迫るべく堀江とその優秀な協力者たちが挑んでいく結構になっている。それも、柿島とその細君の過去をめぐって話はニューヨークにまで広がっていく。しかし、そんなこととはまったく関係なく、ここでも諧謔とユーモアが正編以上に炸裂しているのが何よりうれしい。<私は無茶をしながら無様に生きている>だとか<関根の返事には、白いゴキブリが存在するとでも聞いたときのような響きがなくもなかった>(またしてもゴキブリ!)だとか<水族館でめずらしい恰好の魚をのぞくときの子どもの目つき>だとか<大入道が、重々しい声をあげた。コントラバスの太い弦を、すぐ目のまえで響かせたような声音だった>だとか、書きだせば切りがないが、中でも、今回初登場の<エーリッヒ・フォン・シュトロハイム>似のサンショーフーズの代表三上照和と<肩書のある人間を嫌悪する>ナミちゃんの、彼女の経営する「ブルーノ」での初対面時における丁々発止の顛末が最高だ。 「ふむ。いい店だ」「なんでいい店なのよ」「…いい酒と、いい音楽と、いいオーナーがいる。それだけでじゅうぶんいい店ではないのかな」「あんた、そこにまだ十分しか坐ってないじゃない。なのになんでいいオーナーだと思うわけ?」「シンプルで力強い」。から始まって、 その後、<チャーシューメン>を食いたいという三上をナミちゃんがドゥカッティの後ろに乗せて青山の美味しい店に送ることになる。<夜目にふたつの真っ赤なヘルメットが輝いた。プロレスラーがきゃしゃな人形を抱えているような>その姿が、<視界からすっかり消えるまで三十秒とかからなかった>。そして、物語の最期には、とんでもなく意外な展開へと二人を導いていくことになるのだ。 このように、メインのストーリーだけを追っていくだけでは説明し切れない魅力がこの藤原伊織作品にはある。それは、「テロリストのパラソル」を選考した井上ひさしの<活発な精神の往復運動が独特の、得難いヒューモアを生み出している。話は深刻なのに、作品のどこを切り取っても質のいい諧謔で満たされているのだ>という評言に尽くされていると思う。 前の会社の部下、大原真理をくノ一のように使っている堀江もまた不思議な運命に導かれて行く。彼は<もし彼女に美点があるとするなら、まずいちばんに即断即決と行動能力をあげるべきかもしれないな>なんてことを言っているうちは、まだこの運命を読めていなかったのだ。あれだけの難事件のからまった糸を信じられない執念と直観でほぐしていった男が、である。ナミちゃんの弟マイクから、<その後、真理ちゃんとはどの程度、進展した?このまえ彼女は離婚が秒読み段階にはいったといってたけど、あんたとのほうはかたつむり以下だって。ひょっとしたら、後退してんのかもしれないくらいわかんないって>などと言われても、後回しにしていた男だからねえ、仕方ないか。 <静かな春の雨のような印象をともな>う柿島の細君・奈穂子の繊細さと大胆さも忘れ難い。いずれにせよ、この<活発な精神の往復運動>を遺作に確認できるだけでも得難いことだ。個人的に、2022年度いちばんの読書となった。 | ||||
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著者絶筆となったハードボイルドプラスサスペンス、そして企業小説の要素も少しある、大人の読む作品。 | ||||
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古本ではあるが、新品とほとんど変わらない。普通に読むだけなら、全く問題ありません。 | ||||
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続編があるのを知り、購入。 古本なのに、とても良品で良かったです。 | ||||
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繊細ながらも豪胆。軽快ながらも重厚。イオリンが展開するのは、緻密でありながらも 極めて自然という、何とも魅力的な世界。それぞれが余韻溢れる優れた作品でした。 しかしもうイオリンワールドに浸ることはできない。この作家を失ってしまったことが 残念でなりません。 | ||||
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