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(短編集)
遠い接近
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【この小説が収録されている参考書籍】
遠い接近の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.52pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全25件 21~25 2/2ページ
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兵隊にとられて悲惨な運命を辿った男が、自分に召集令状を書いた役場の小役人を探し出して仕返しするというストーリー。 おもしろい。そういう発想は個人的には大好き。思いついた時点で百点。いかにも清張が書きそうな小説。 だが、これは明らかに筋違いである。逆恨みといってもよい。それが証拠にそんなことをした奴は現実には誰もいない。もし、こんな報復劇が実際に行われたなら、役場の戸籍係は全滅だ。 この場合、主人公に召集令状を書いた区役所の職員に他意はない。軍事教練の出席率が低かった者(主人公はしきりに仕事があって出たくても出られなかったとエクスキューズしているが……)から優先的に徴兵にとるというのは、消去法というか、まともな発想であり、職員の行った行為は少なくとも死に値するようなシロモノではない。 言うまでもなく、本当に悪いのは戦争をやらかした連中であり、戦争で旨い汁を吸っている輩であり、国家であり……などとはじめると、これはこれで『人間の條件』になってしまう。 というわけでルサンチマンの帝王、松本清張のねちっこくクールな報復譚ができあがった。著者もこんな仕返しが正当でないことは百も承知。最後はお約束の殺人事件と謎解きとお縄頂戴で締めくくられる。 まあ、ここに出てくる小役人や古兵はみんな大嫌いなんですがね。 でも、『坂の上の雲』とかが好きな人たちは、こういうのが苦手なんだろうな。たぶん。 | ||||
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清張の本を読むなら、もっと清張について知らなければ、真の清張文学の醍醐味は味わえない。今までこの単純な事実がわかっている清張ファンにお目にかかったためしがない。全く嘆かわしい。例えば、この作品「遠い接近」は、東洋、西洋絵画の美術史家としても定評のある、清張個人の研究テーマ ”遠近法” の隠喩にみちたものなのだ。遠近法は絵画の技法で、その構造が解明され、数学的に理論化されたのは、ルネッサンス期のヨーロッパとされる。この物語を一言で要約すると、「細密画」ということになる。もっと清張文学を上級コースの達人として理解したいなら、少し難解かもしれないが、「宇宙に開かれた光の劇場」上野和男・著を読むことをお薦めする。あなたの清張の読み方は、幼稚園児以下だよと非難されないために。 | ||||
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清張の本を読むなら、もっと清張について知らなければ、真の清張文学の醍醐味は味わえない。例えば、この作品「遠い接近」は、東洋、西洋絵画の美術史家としても定評のある、清張個人の研究テーマ ”遠近法” の隠喩にみちたものなのだ。遠近法は絵画の技法で、その構造が解明され、数学的に理論化されたのは、ルネッサンス期のヨーロッパとされる。この物語を一言で要約すると、「細密画」ということになる。以上の説明がわかりにくければ、清張の他の作品、短編で「絵はがきの少女」というのがあるが、これと比較して読むと私の言っている意味がわかるはずだ。この短編は新潮文庫の「憎悪の依頼」の中に収めてある。もっと清張文学を上級コースの達人として理解したいなら、少し難解かもしれないが、「宇宙に開かれた光の劇場」上野和男・著を読むことをお薦めする。あなたの清張の読み方は、幼稚園児以下だよと非難されないために。 | ||||
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■ 【当初は週刊朝日の連載ミステリー 】 この長編ミステリー小説は、当初、週刊朝日に半年以上 に渡り連載され、凡そ五年後の1977年7月に文庫本初 版が出ております。週刊朝日に連載を始めたのは、著 者(清張)60歳の時です。 ■ 【20年前の『召集令状』へのわだかまり 】 連載開始時は、既に、戦後二十年経ち、清張自身も、芥 川賞(’53年)、日本ジャーナリスト会議賞(’63年)、菊 池寛賞(’70年)などを受賞しており、既に、ミステリー作 家としての地位を固めた時期になっております。この時 期に、著者は二十年前の自分、即ち、34歳の中年版下 職人への『召集令状』という国家権力の拉致行為への わだかまりを本著書によって、赤裸々に著わしている。 ■ 【赤紙(召集令状)発行の実態を知る 】 小説そのものは、一兵士の個人的復讐ストーリーです。 しかし、著者本人の召集令状に基づいた体験により描 かれた内容ということで、俄然、単なるミステリーの領域 を超えております。天皇の名で出される赤紙、即ち、『召 集令状』をキーワードに、一市民家族を地獄の苦しみに 追い込む赤紙と言う国家権力、召集令状の不正な闇の 国家権力のカラクリの実態、大日本帝国の私的制裁の 横行する軍隊生活、兵士達の望郷の念と運命などを描 き出しております。ミステリー作家として「社会派」と言わ しめる代表的な作品となっております。 | ||||
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■ 【当初は週刊朝日の連載ミステリー 】 この長編ミステリー小説は、当初、週刊朝日に半年以上 に渡り連載され、凡そ五年後の1977年7月に文庫本初 版が出ております。週刊朝日に連載を始めたのは、著 者(清張)60歳の時です。 ■ 【20年前の『召集令状』へのわだかまり 】 連載開始時は、既に、戦後二十年経ち、清張自身も、芥 川賞(’53年)、日本ジャーナリスト会議賞(’63年)、菊 池寛賞(’70年)などを受賞しており、既に、ミステリー作 家としての地位を固めた時期になっております。この時 期に、著者は二十年前の自分、即ち、34歳の中年版下 職人への『召集令状』という国家権力の拉致行為への わだかまりを本著書によって、赤裸々に著わしている。 ■ 【赤紙(召集令状)発行の実態を知る 】 小説そのものは、一兵士の個人的復讐ストーリーです。 しかし、著者本人の召集令状に基づいた体験により描 かれた内容ということで、俄然、単なるミステリーの領域 を超えております。天皇の名で出される赤紙、即ち、『召 集令状』をキーワードに、一市民家族を地獄の苦しみに 追い込む赤紙と言う国家権力、召集令状の不正な闇の 国家権力のカラクリの実態、大日本帝国の私的制裁の 横行する軍隊生活、兵士達の望郷の念と運命などを描 き出しております。ミステリー作家として「社会派」と言わ しめる代表的な作品となっております。 | ||||
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