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光
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光の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.40pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全72件 61~72 4/4ページ
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この作品において、「光」は希望を表すものではない。 でも、タイトルが「闇」では成り立たない作品だと思う。 この世界の中で光とは目を覆いたくなるほどのものを容赦なく暴くものとして描かれていた。 最初は死体と破片だらけの島を、容赦なく生き残ったものたちの目に映した。主人公は、「朝が来るのが怖い」と語っている。 光=希望と、正のイメージを完膚なきまでに粉々にしてくれた作品。 これを読む前に「シュミじゃないんだ」を読んでいたため、毎度のことながら三浦しをんのギャップには驚かされる。 でも輔が余りに報われなさすぎたので、★四つで。 | ||||
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実は初めて読む三浦しをんさんの本。 他の方のレビューを読むと、この著者の本領はもっと別ジャンルにある、とのことだが、私はこの人、ホント小説が「上手い」人だと思った。 丁寧に選び取られた言葉で紡がれた文章はテンポも流れも小気味よく、だからどんどん引き込まれ、最後まで一気に読んでしまう。けれども。 「これって、あらすじ?」という読後感はどういうわけだろう。 確かに物語の骨子は、閉塞的な環境が生み出す暴力、そこで結ばれた幼いもの同士の絆、そして再会から始まる死と裏切り…といったもので、もはやありふれた感のあるサスペンス風悲劇。けれども、前書したようにとてもよく練られた筆致で見せ場も多く、最初から最後まできっちり読ませてくれるよく出来た小説なのだ。なのにこの物足りなさは。 そうか。「上手い」からこそ、それ以上のものが描かれていない、と感じてしまうんだ。登場人物の孤独、憤怒、悲しみ、じわじわ伝わってくる描写力はさすがだけれど、そこに酔わされ、のみ込まれたあとで目覚めると、なんだかきつねにつままれたような思い。理不尽な暴力が、ただ理不尽なまま投げ出されるというのは現実ではよくあることだけれど、物語がそれでは登場人物も、読者もあまりに救いがないのである。どうしようもない業を背負わされた三人の、その「影」を成形したものの正体はつかみどころのないムードの霧にかき消され、うっすらと陰鬱な気分を残すのみだ。 面白い小説なのに、読んだ後ではさほどでもない気がするのは、損だと思う。 | ||||
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とにかく三浦しをんさんが好きで、 この作品も期待しまくって読みました。 三浦氏の持ち味として、 作風の幅の広さが挙げられるかと思いますが、 これはその幅を更に広げた意欲作だと思いました。 想像を絶するほどの災厄に人が出会ったとき、 自然に対して人はなすすべをもちませんが、 それが人からの攻撃だった場合、 それとどう折り合いを付けるべきなのか、 というかなり深いテーマに挑んだ作品です。 ですが、この本を読む進むうちに なぜだかある別の作家の小説が何度も思い返され、 その作品テーマの相似性にビックリしていまいました。 それは東野圭吾氏の『白夜行』と『幻夜』です。 切り口も筆致ももちろん三浦氏の今作とは異なりますが、 ファムファタールに身を捧げた男の悲哀 (というにはあまりにも軽いのです)が 前述の作品を思い返させてしまいました。 読後感もけっして良い作品とは言えませんが、 生き続けるというのはどういうことか という、そのシビアさを感じさせる作品でした。 そして、『風が強く吹いている』で 「さわやか系」と捉えられがちな三浦氏の イメージを鮮やかに裏切る作品であると思います。 そしてこれは作品ではなく作者への感想ですが これからも、何色にも染まらず、ずっと書き続けてほしいと願っています。 生きている限り、こっちもずっと読み続けたいと願っていますので。 | ||||
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美浜島より美しい場所はないと信之は確信している。その美しい場所が真夜中,突然の津波という暴力によってかき消された。信之と幼なじみの美花,年下の輔を含む数人を残して,島はほぼ壊滅状態になった・・・ 津波によって取り残された人々とそこから派生する暴力が数年後,成長した主人公たちのもとへ帰ってくる物語。いままでの同作家の読んだ本と異なり,あまりにも救いがなさ過ぎる内容と結末に私には受け入れがたい物語であったと感じる。しかし,その「暴力はやってくるのではない。帰ってくるのだ。」の言葉のもとに,圧倒的な冷たさが前編に満ちておりその冷たさから恐ろしくも感じる話であった。それが作者の技と言うのであれば,うまいと言わざるおえない話ではある。 | ||||
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おそるべし,三浦しをん。「風が強く吹いている」で見たBL風味の明るい作品というイメージをくつがえすダークさが強烈。章ごとに視点を変え,同じシーンを別の語り手から表現する試みも面白い。 川崎が舞台にされていますが,小杉のマンション地帯,多摩川沿いの住宅密集地,そして川崎区の工業地帯。町並みとそこに生きる人々をやや誇張して描くことで,この物語が描きたい光と影のコントラストが出ているように思えます。 「暴力は,やってくるのではなく,帰ってくるもの」。物語の終わり方はやや平凡だけど,このフレーズを中心に据えることで,ハッピーエンドではない結末がこの家族の前途に待っているようで,コワイです。 | ||||
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圧倒的な「力」が物語のなかで吹き荒れている。 タイトルの『光』の一文字に一縷の望みを抱いて、読んでも読んでも それは見えなかった。 一瞬にしてあらゆるものを剥ぎ取っていった自然の脅威。 身一つになった三人の子供たちが、その時抱えた秘密が、 その後の人生を縛る。 秘密を持つ。その整合性を保つために、縛られる。 綻びかけて初めて、秘密は「秘密」という名を持ち、三人の人生に覆いかぶさってくる。 全てを奪われた者が生きる術とは、それを取り戻すために努めるのではなく、 なにも始めからなかったようにして生きることだった。 「なかったこと」を作るためにまた罪を重ねて……。 酷薄。無惨。惨酷。理不尽。諦め。蹂躙。 抱えた疵が疼き始めた三者の結末は、酷薄で容赦ないものだった。 それでも生きてゆく人間とは、いったいなんだろう。 人為によらず再生を遂げていた「島」だけが眩しかった。 20年という時間がまざまざとそこに在った。 嗚呼。畏るべし。三浦しをん。 | ||||
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キレイめなシンプルの表紙とは真逆の、 なんともドロリとしたお話。 文自体は淡々としていて一気に読めるが、 ぞっとする場面が何度もある。 愛憎とかそんな言葉では表わしきれない、 人間の汚さ・脆さ・怖さが包み隠されずストレートに描かれている。 それでも読みたいと思わせるのが 『三浦しをん』という作家のすごいところ。 ハッピーエンドではない。 読んだ後の何か持ってかれたような虚無感を 是非味わってほしい。 | ||||
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冒頭の自然の圧倒的な暴力で、一つの島が住人ごと終わりを告げる。小説世界をまんべんなく彩る虚無感は、この冒頭から生まれる。そこから新たな何かを始めようなどという気も起こらないほどの、徹底的な破壊。 小説自体も、何かに蹂躙されたかのように、虚無の中を進む。家庭内暴力と津波が響きあって、常に不穏な空気に包まれている。暴力は連鎖する。繰り返し。 読んでいて、不穏な小説世界の空気に、そわそわと落ち着かない気分だった。 | ||||
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と言っていいのではないかと思う。それくらいすごかった。「光」を閉じた後はしばらく身動きできなかった。 あらすじは帯や他の方のレビューに書いてある通り。信之と輔と美花は、ある日突然、本当に何の前触れもなしに、それまで当り前にあった日常のすべてを奪い取られてしまう。でもこれは理不尽によって深い傷を負わされた者たちが、その傷を乗り越えて幸せになる安易な物語ではない。彼らの痛みが消えることはないし、誰も救われたりはしないし、傷つけ偽り、それでもなお生きていく。たぶんこの世に生きる人間のほとんどがそうであるように。 伴侶とセックスすることと強姦されることは何が違うのか。愛してると簡単に言うけれど、それは本当に愛なのか。私はこの人を理解していると思うことの、その理解とは何なのか。私たちが普段、どこかのドラマから借りてきた口当たりのいい答えで済ませてしまっている事柄を、三浦しをんはあまりに容赦なく「本当にそうか?」と暴いていく。けれどイタイのではない。痛いほど胸に迫るのだ。温かくて幸せで希望に満ち溢れた物語を読んだ時、「ああ良かった」と本を閉じながら、「でも人生ってこんなに輝いてばかりのものだったっけ」と何かにフタをしてしまっているような不安を覚えたことってないだろうか。この「光」は、その薄々感づいていながら言葉にできずにいたもどかしい痛みを、ちゃんと描き出してくれた作品だと思う。だからこそ最後の一行を読み終わったとき、こんなにもカタルシスを感じる。 決して幸せいっぱいの物語ではない。信之も輔も美花も、ずるくて残酷でかなしい人間だ。私たちと同じように。けれどだからこそ、物語の最後に彼らに射すかすかな「光」は、私たちにも手が届くかもしれないものだと思う。本当に、いい作品でした。 | ||||
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ダークサイドの「三浦しをん」である。 途中で読むのをやめるのではと危惧して買ったのだが杞憂であった。 一気にというよりスラスラと読めてしまった。 島を襲った天災からたまたま生き延びた人たちの話である。 しかも生き残ったのは、もともと少し壊れた人間ばかりと来ている。 天災による大量の、それも小さな島でほとんどが顔見知りの死という状況を目撃し、「死」はもちろん「生」の意味も分からなくなった人間の話である。 これが一気に読めたのは主人公「信之」が感情を表さないからで、それと同調して、スラスラページをめくることができたのではないかと思う。 ミステリーに分類される作品になるであろうが、 特に巧妙なトリックやどんでん返しがあるわけではない。 しかし、人間の弱さと同時に 間違ってはいるがある意味での強さ(執念・怨念) を描いた作品であると思う。 タイトルがなぜ「光」なのか 最後の一文に「光」という単語は出てくるのであるが 私にはまだ分かっていない。 一度だけではまだ本質が見えていないような もどかしさを感じている。 機会があればもう一度読んでみようと思う。 | ||||
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静かに閉ざされた島。 信之は、島で一番美しい美花とからだを重ねることに夢中な14歳。 そんなふたりについてまわる、父親に殴られている可愛そうな輔。 ある夜、3人が家を抜け出して高台にいたとき、津波が島を飲み込み、 家族も家もすべてが消えた。 生き残りとなった3人は、ある重苦しい秘密を抱えたまま島を離れる。 それから20年後、それぞれ別の場所で生きていたはずの 彼らの運命の歯車が軋み、そして再び近づいて… 三浦しをんの最新刊は、暴力とか性欲とか、今までの作品の中で あまり描かれてこなかったむき出しのエネルギーみたいなものが ギラギラした登場人物たちが出てくる。「私が語り始めた彼は」に 出てきた性愛の世界が水墨画なら、今回は分厚い油絵。 そんな人たちが生々しく暮らす様子を描いた島の描写と、 島が消えたあとの大人になった彼らの、都会で息を潜めて 自分を殺すように生きている様子の落差に戸惑いつつも、 その20年の間に彼らはどうやって生きてきたのか、と 思いを馳せつつどんどん読み進んでしまう。 別に、過激に実験的に作品を発表している意識はおそらく著者には 無いと思うんだけど、毎回、違う雰囲気、違う文体、違う温度… 初めて読む作家の作品を読むような違和感と驚きと、そして喜び。 やっぱり凄い作家だな、と思う。作品を新たに発表するたびに 新境地を開いているというか。 たしかな文章力と表現力を持って、次々と新しい世界への 扉を開ける稀有な作家。 | ||||
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エッセイの面白さは、本作ではなりをひそめ、 非常にまっすぐな小説です。 主人公たちが住むのは離れ小島。 生活のすべては閉ざされた世界にある。 だんだんと鬱屈してくる生活。問題のある家族関係。 そこに訪れる非常な暴力。 人生を全て変えてしまう瞬間。 そして、その後の人生を描く。 小説だからこそ楽しめる作品だ。 | ||||
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