乱鴉の島

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乱鴉の島の評価:

3.30/5点 レビュー 64件。 B ランク

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平均点3.30pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全61件 21〜40 2/4ページ
No.41
(4pt)

純粋な本格ミステリ

火村シリーズの長編作品でオーソドックスな孤島モノ。
 火村と有栖川は羽を伸ばしに知人の宿がある島に出かけるが、間違った島に上陸してしまい数日間をその島で過ごすことになる。そこには著名な文化人である老人と彼の熱烈なファンたちがいた。そこに、肚に一物を抱えた若き起業家が乱入してくる。老人とファンたちには何か隠し事があるようで、火村たちに対する態度に違和感があった。そんななかで第一の殺人が起きる。――といったあらすじ。
 島にあつまった人々の目的は何か、殺人を犯したのは誰か、と探っていくことで話が進行する。随所に散りばめられた衒学的要素、電話線を切った斬新な動機、アリバイから犯人を特定する際のひねりのある論理が魅力的だ。
 本格ミステリ読者にはたまらない本だが、一冊のエンターテイメント小説と考えると、展開がゆっくりしていて派手さにも欠けるなどといった点から、読者を選ぶだろう。
乱鴉の島 (講談社ノベルス) Amazon書評・レビュー: 乱鴉の島 (講談社ノベルス)より
4061826158
No.40
(4pt)

正統な孤島もののバリエーション

スマートな作風、厭味のないペダントリー、ほどよいユーモア、というような言葉で有栖川有栖を語ったのは綾辻行人だった(確か『46番目の密室』の解説で)。その中で、何よりも本格ミステリに向ける眼差しが素敵だ、と綾辻は書いている(手元に本がないので、正確ではないかもしれないが)。それを読んだとき、さすがうまいこと言うなあ、と思った。僕自身も、その眼差しに魅せられている一人なのだ、と激しく同意したものだ。

極論すれば、有栖川有栖の作品は、「面白い」「面白くない」の二元論では語れない、というような思いがある。誤解のないように書いておかなければならないのは、もちろん面白い有栖川作品はたくさんある。しかし、面白いだけなら、ほかのミステリ作家の作品にもいっぱいある。僕たちミステリファンにとって有栖川有栖という作家が稀有なのは、その作品にこめられた真摯な眼差しが、かつてクイーンやカーやクリスティーに夢中になった初心を思い出させてくれるからだ。ピッと背筋を正されるような感じがするのである。

と、言わずもがなのことを長々と書いてしまったが、本書『乱鴉の島』。なんと、今のこの時代にコテコテのクローズド・サークルものである。『そして誰もいなくなった』の時代に比べて、孤島を舞台にすることのなんと難しいことか、と嘆息せずにはいられないが、有栖川有栖はそれを逆手にとって新たな孤島ものの地平を切り拓いてみせた。

【※※から※※まで、少し作品の内容に触れます】

※※ 孤島ものの定石は、犯人が犠牲者たちを逃がさないように孤島状況をつくる、というものだが、本書の場合はちょっと違う。その他の理由からつくられた必然の孤島状況で、たまたま殺人事件が起きてしまった、というものだからだ。なので、殺人事件の謎そのものよりも、なぜ孤島状況が生じたか、のミステリ的興味こそが、サスペンスの原動力になっている。 ※※

本書は、『そして誰もいなくなった』とは似て非なるものでありながら、それでいて愚直なまでに正統な孤島ものの系譜に属する優れたバリエーションだと思う。そう、愚直なまでに、というのは有栖川有栖の有栖川有栖たる所以だ。音楽でいえば、有栖川有栖はブラームスなのだ(なんて書くと、かえって分かりにくいか…)。偉大なる先人たちに最大限のリスペクトを捧げながら、常に新しいものをクリエイトしようとする営みからは、苦悩、喜び、情熱といったものがあふれ出て、それが作品に結実しているのがよく分かる。そんな本格ミステリのマエストロに、僕は深い愛情を抱かずにはいられないのだ。
乱鴉の島 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 乱鴉の島 (新潮文庫)より
4101204365
No.39
(4pt)

正統な孤島もののバリエーション

スマートな作風、厭味のないペダントリー、ほどよいユーモア、というような言葉で有栖川有栖を語ったのは綾辻行人だった(確か『46番目の密室』の解説で)。その中で、何よりも本格ミステリに向ける眼差しが素敵だ、と綾辻は書いている(手元に本がないので、正確ではないかもしれないが)。それを読んだとき、さすがうまいこと言うなあ、と思った。僕自身も、その眼差しに魅せられている一人なのだ、と激しく同意したものだ。

極論すれば、有栖川有栖の作品は、「面白い」「面白くない」の二元論では語れない、というような思いがある。誤解のないように書いておかなければならないのは、もちろん面白い有栖川作品はたくさんある。しかし、面白いだけなら、ほかのミステリ作家の作品にもいっぱいある。僕たちミステリファンにとって有栖川有栖という作家が稀有なのは、その作品にこめられた真摯な眼差しが、かつてクイーンやカーやクリスティーに夢中になった初心を思い出させてくれるからだ。ピッと背筋を正されるような感じがするのである。

と、言わずもがなのことを長々と書いてしまったが、本書『乱鴉の島』。なんと、今のこの時代にコテコテのクローズド・サークルものである。『そして誰もいなくなった』の時代に比べて、孤島を舞台にすることのなんと難しいことか、と嘆息せずにはいられないが、有栖川有栖はそれを逆手にとって新たな孤島ものの地平を切り拓いてみせた。

【※※から※※まで、少し作品の内容に触れます】

※※ 孤島ものの定石は、犯人が犠牲者たちを逃がさないように孤島状況をつくる、というものだが、本書の場合はちょっと違う。その他の理由からつくられた必然の孤島状況で、たまたま殺人事件が起きてしまった、というものだからだ。なので、殺人事件の謎そのものよりも、なぜ孤島状況が生じたか、のミステリ的興味こそが、サスペンスの原動力になっている。 ※※

本書は、『そして誰もいなくなった』とは似て非なるものでありながら、それでいて愚直なまでに正統な孤島ものの系譜に属する優れたバリエーションだと思う。そう、愚直なまでに、というのは有栖川有栖の有栖川有栖たる所以だ。音楽でいえば、有栖川有栖はブラームスなのだ(なんて書くと、かえって分かりにくいか…)。偉大なる先人たちに最大限のリスペクトを捧げながら、常に新しいものをクリエイトしようとする営みからは、苦悩、喜び、情熱といったものがあふれ出て、それが作品に結実しているのがよく分かる。そんな本格ミステリのマエストロに、僕は深い愛情を抱かずにはいられないのだ。
乱鴉の島 (講談社ノベルス) Amazon書評・レビュー: 乱鴉の島 (講談社ノベルス)より
4061826158
No.38
(4pt)

正統な孤島もののバリエーション

スマートな作風、厭味のないペダントリー、ほどよいユーモア、というような言葉で有栖川有栖を語ったのは綾辻行人だった(確か『46番目の密室』の解説で)。その中で、何よりも本格ミステリに向ける眼差しが素敵だ、と綾辻は書いている(手元に本がないので、正確ではないかもしれないが)。それを読んだとき、さすがうまいこと言うなあ、と思った。僕自身も、その眼差しに魅せられている一人なのだ、と激しく同意したものだ。

極論すれば、有栖川有栖の作品は、「面白い」「面白くない」の二元論では語れない、というような思いがある。誤解のないように書いておかなければならないのは、もちろん面白い有栖川作品はたくさんある。しかし、面白いだけなら、ほかのミステリ作家の作品にもいっぱいある。僕たちミステリファンにとって有栖川有栖という作家が稀有なのは、その作品にこめられた真摯な眼差しが、かつてクイーンやカーやクリスティーに夢中になった初心を思い出させてくれるからだ。ピッと背筋を正されるような感じがするのである。

と、言わずもがなのことを長々と書いてしまったが、本書『乱鴉の島』。なんと、今のこの時代にコテコテのクローズド・サークルものである。『そして誰もいなくなった』の時代に比べて、孤島を舞台にすることのなんと難しいことか、と嘆息せずにはいられないが、有栖川有栖はそれを逆手にとって新たな孤島ものの地平を切り拓いてみせた。

【※※から※※まで、少し作品の内容に触れます】

※※ 孤島ものの定石は、犯人が犠牲者たちを逃がさないように孤島状況をつくる、というものだが、本書の場合はちょっと違う。その他の理由からつくられた必然の孤島状況で、たまたま殺人事件が起きてしまった、というものだからだ。なので、殺人事件の謎そのものよりも、なぜ孤島状況が生じたか、のミステリ的興味こそが、サスペンスの原動力になっている。 ※※

本書は、『そして誰もいなくなった』とは似て非なるものでありながら、それでいて愚直なまでに正統な孤島ものの系譜に属する優れたバリエーションだと思う。そう、愚直なまでに、というのは有栖川有栖の有栖川有栖たる所以だ。音楽でいえば、有栖川有栖はブラームスなのだ(なんて書くと、かえって分かりにくいか…)。偉大なる先人たちに最大限のリスペクトを捧げながら、常に新しいものをクリエイトしようとする営みからは、苦悩、喜び、情熱といったものがあふれ出て、それが作品に結実しているのがよく分かる。そんな本格ミステリのマエストロに、僕は深い愛情を抱かずにはいられないのだ。
乱鴉の島 Amazon書評・レビュー: 乱鴉の島より
4104308021
No.37
(4pt)

正統な孤島もののバリエーション

スマートな作風、厭味のないペダントリー、ほどよいユーモア、というような言葉で有栖川有栖を語ったのは綾辻行人だった(確か『46番目の密室』の解説で)。その中で、何よりも本格ミステリに向ける眼差しが素敵だ、と綾辻は書いている(手元に本がないので、正確ではないかもしれないが)。それを読んだとき、さすがうまいこと言うなあ、と思った。僕自身も、その眼差しに魅せられている一人なのだ、と激しく同意したものだ。

極論すれば、有栖川有栖の作品は、「面白い」「面白くない」の二元論では語れない、というような思いがある。誤解のないように書いておかなければならないのは、もちろん面白い有栖川作品はたくさんある。しかし、面白いだけなら、ほかのミステリ作家の作品にもいっぱいある。僕たちミステリファンにとって有栖川有栖という作家が稀有なのは、その作品にこめられた真摯な眼差しが、かつてクイーンやカーやクリスティーに夢中になった初心を思い出させてくれるからだ。ピッと背筋を正されるような感じがするのである。

と、言わずもがなのことを長々と書いてしまったが、本書『乱鴉の島』。なんと、今のこの時代にコテコテのクローズド・サークルものである。『そして誰もいなくなった』の時代に比べて、孤島を舞台にすることのなんと難しいことか、と嘆息せずにはいられないが、有栖川有栖はそれを逆手にとって新たな孤島ものの地平を切り拓いてみせた。

【※※から※※まで、少し作品の内容に触れます】

※※ 孤島ものの定石は、犯人が犠牲者たちを逃がさないように孤島状況をつくる、というものだが、本書の場合はちょっと違う。その他の理由からつくられた必然の孤島状況で、たまたま殺人事件が起きてしまった、というものだからだ。なので、殺人事件の謎そのものよりも、なぜ孤島状況が生じたか、のミステリ的興味こそが、サスペンスの原動力になっている。 ※※

本書は、『そして誰もいなくなった』とは似て非なるものでありながら、それでいて愚直なまでに正統な孤島ものの系譜に属する優れたバリエーションだと思う。そう、愚直なまでに、というのは有栖川有栖の有栖川有栖たる所以だ。音楽でいえば、有栖川有栖はブラームスなのだ(なんて書くと、かえって分かりにくいか)。偉大なる先人たちに最大限のリスペクトを捧げながら、常に新しいものをクリエイトしようとする営みからは、苦悩、喜び、情熱といったものがあふれ出て、それが作品に結実しているのがよく分かる。そんな本格ミステリのマエストロに、僕は深い愛情を抱かずにはいられないのだ。
乱鴉の島 (講談社ノベルス) Amazon書評・レビュー: 乱鴉の島 (講談社ノベルス)より
4061826158
No.36
(4pt)

正統な孤島もののバリエーション

スマートな作風、厭味のないペダントリー、ほどよいユーモア、というような言葉で有栖川有栖を語ったのは綾辻行人だった(確か『46番目の密室』の解説で)。その中で、何よりも本格ミステリに向ける眼差しが素敵だ、と綾辻は書いている(手元に本がないので、正確ではないかもしれないが)。それを読んだとき、さすがうまいこと言うなあ、と思った。僕自身も、その眼差しに魅せられている一人なのだ、と激しく同意したものだ。

極論すれば、有栖川有栖の作品は、「面白い」「面白くない」の二元論では語れない、というような思いがある。誤解のないように書いておかなければならないのは、もちろん面白い有栖川作品はたくさんある。しかし、面白いだけなら、ほかのミステリ作家の作品にもいっぱいある。僕たちミステリファンにとって有栖川有栖という作家が稀有なのは、その作品にこめられた真摯な眼差しが、かつてクイーンやカーやクリスティーに夢中になった初心を思い出させてくれるからだ。ピッと背筋を正されるような感じがするのである。

と、言わずもがなのことを長々と書いてしまったが、本書『乱鴉の島』。なんと、今のこの時代にコテコテのクローズド・サークルものである。『そして誰もいなくなった』の時代に比べて、孤島を舞台にすることのなんと難しいことか、と嘆息せずにはいられないが、有栖川有栖はそれを逆手にとって新たな孤島ものの地平を切り拓いてみせた。

【※※から※※まで、少し作品の内容に触れます】

※※ 孤島ものの定石は、犯人が犠牲者たちを逃がさないように孤島状況をつくる、というものだが、本書の場合はちょっと違う。その他の理由からつくられた必然の孤島状況で、たまたま殺人事件が起きてしまった、というものだからだ。なので、殺人事件の謎そのものよりも、なぜ孤島状況が生じたか、のミステリ的興味こそが、サスペンスの原動力になっている。 ※※

本書は、『そして誰もいなくなった』とは似て非なるものでありながら、それでいて愚直なまでに正統な孤島ものの系譜に属する優れたバリエーションだと思う。そう、愚直なまでに、というのは有栖川有栖の有栖川有栖たる所以だ。音楽でいえば、有栖川有栖はブラームスなのだ(なんて書くと、かえって分かりにくいか)。偉大なる先人たちに最大限のリスペクトを捧げながら、常に新しいものをクリエイトしようとする営みからは、苦悩、喜び、情熱といったものがあふれ出て、それが作品に結実しているのがよく分かる。そんな本格ミステリのマエストロに、僕は深い愛情を抱かずにはいられないのだ。
乱鴉の島 Amazon書評・レビュー: 乱鴉の島より
4104308021
No.35
(4pt)

長編も⚪️

有栖川さんの作品は、短編ばかり読んできましたが、長編も素晴らしいです。
少ししかない情報を一つ一つ積み上げて犯人を見つける展開には脱帽します。
乱鴉の島 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 乱鴉の島 (新潮文庫)より
4101204365
No.34
(4pt)

長編も⚪️

有栖川さんの作品は、短編ばかり読んできましたが、長編も素晴らしいです。
少ししかない情報を一つ一つ積み上げて犯人を見つける展開には脱帽します。
乱鴉の島 (講談社ノベルス) Amazon書評・レビュー: 乱鴉の島 (講談社ノベルス)より
4061826158
No.33
(4pt)

長編も⚪️

有栖川さんの作品は、短編ばかり読んできましたが、長編も素晴らしいです。
少ししかない情報を一つ一つ積み上げて犯人を見つける展開には脱帽します。
乱鴉の島 Amazon書評・レビュー: 乱鴉の島より
4104308021
No.32
(4pt)

長編も

有栖川さんの作品は、短編ばかり読んできましたが、長編も素晴らしいです。
少ししかない情報を一つ一つ積み上げて犯人を見つける展開には脱帽します。
乱鴉の島 (講談社ノベルス) Amazon書評・レビュー: 乱鴉の島 (講談社ノベルス)より
4061826158
No.31
(4pt)

長編も

有栖川さんの作品は、短編ばかり読んできましたが、長編も素晴らしいです。
少ししかない情報を一つ一つ積み上げて犯人を見つける展開には脱帽します。
乱鴉の島 Amazon書評・レビュー: 乱鴉の島より
4104308021
No.30
(4pt)

ポーをモチーフにした作品

本書は推理作品としては凡作だが、個人的に好きな作品。
作者シリーズものには火村英夫ものと江神二郎ものがあり、私は常に読者への挑戦状を挿み込むなど本格推理に徹しながら青春ものの青臭さを感じさせる江神ものがすきなのだが、本書には江神もののような青臭さのようなものが感じられる。

本書はいわゆる孤島もので、火村作品では初めてだが、江神ものならそのものズバリの「孤島パズル」と、もう一つ「双頭の悪魔」があり、推理作品としては断然これらの方が良い。

本書のシチュエーションは解説にも若干触れているが、同じ江神ものでもむしろ「女王国の城」に近い。
主人公たちが紛れ込んだ場所(本書は黒根島、「女王国の城」では人類協会の総本部)で、主人公たちをとり囲む集団が集団としての秘密を抱え、その秘密保持のため主人公たちと対峙する。

ただ、本書の場合、その中心にいる孤高の詩人・海老原瞬と、その海老原を取り囲む人々との関係性がイマイチ不明で、皆が海老原の熱烈なファン・同志だというが、では彼のどの作品のどういうところに彼らが惹かれたのかとかの説明は一つもないし、あるいは別の事情(海老原との、あるいは彼の亡き妻・八千代との個人的なつながりがある等)があったとしても、それらは一切描かれていないため、彼らが抱えている秘密を解き明かされてもイマイチ実感を伴わない。

にも関わらず、私が本書を気に入っているのは、ポーの代表的な2つの詩、「大鴉」と「アナベル・リー」が作品全編にその雰囲気を(「大鴉」は不気味さを、「アナベル・リー」は透明な哀しさを)漂わせているからである。
殊に「大鴉」で何度も繰り返される“Nevermore”、これを海老原が訳したとされる「ケシテモウナイ」が、作品全体にかすかな通奏低音の響きを奏でており、作品全体の寂寥感をいやが上にも高めているのである。
乱鴉の島 Amazon書評・レビュー: 乱鴉の島より
4104308021
No.29
(4pt)

ポーをモチーフにした作品

本書は推理作品としては凡作だが、個人的に好きな作品。
作者シリーズものには火村英夫ものと江神二郎ものがあり、私は常に読者への挑戦状を挿み込むなど本格推理に徹しながら青春ものの青臭さを感じさせる江神ものがすきなのだが、本書には江神もののような青臭さのようなものが感じられる。

本書はいわゆる孤島もので、火村作品では初めてだが、江神ものならそのものズバリの「孤島パズル」と、もう一つ「双頭の悪魔」があり、推理作品としては断然これらの方が良い。

本書のシチュエーションは解説にも若干触れているが、同じ江神ものでもむしろ「女王国の城」に近い。
主人公たちが紛れ込んだ場所(本書は黒根島、「女王国の城」では人類協会の総本部)で、主人公たちをとり囲む集団が集団としての秘密を抱え、その秘密保持のため主人公たちと対峙する。

ただ、本書の場合、その中心にいる孤高の詩人・海老原瞬と、その海老原を取り囲む人々との関係性がイマイチ不明で、皆が海老原の熱烈なファン・同志だというが、では彼のどの作品のどういうところに彼らが惹かれたのかとかの説明は一つもないし、あるいは別の事情(海老原との、あるいは彼の亡き妻・八千代との個人的なつながりがある等)があったとしても、それらは一切描かれていないため、彼らが抱えている秘密を解き明かされてもイマイチ実感を伴わない。

にも関わらず、私が本書を気に入っているのは、ポーの代表的な2つの詩、「大鴉」と「アナベル・リー」が作品全編にその雰囲気を(「大鴉」は不気味さを、「アナベル・リー」は透明な哀しさを)漂わせているからである。
殊に「大鴉」で何度も繰り返される“Nevermore”、これを海老原が訳したとされる「ケシテモウナイ」が、作品全体にかすかな通奏低音の響きを奏でており、作品全体の寂寥感をいやが上にも高めているのである。
乱鴉の島 (講談社ノベルス) Amazon書評・レビュー: 乱鴉の島 (講談社ノベルス)より
4061826158
No.28
(4pt)

ポーをモチーフにした作品

本書は推理作品としては凡作だが、個人的に好きな作品。
作者シリーズものには火村英夫ものと江神二郎ものがあり、私は常に読者への挑戦状を挿み込むなど本格推理に徹しながら青春ものの青臭さを感じさせる江神ものがすきなのだが、本書には江神もののような青臭さのようなものが感じられる。

本書はいわゆる孤島もので、火村作品では初めてだが、江神ものならそのものズバリの「孤島パズル」と、もう一つ「双頭の悪魔」があり、推理作品としては断然これらの方が良い。

本書のシチュエーションは解説にも若干触れているが、同じ江神ものでもむしろ「女王国の城」に近い。
主人公たちが紛れ込んだ場所(本書は黒根島、「女王国の城」では人類協会の総本部)で、主人公たちをとり囲む集団が集団としての秘密を抱え、その秘密保持のため主人公たちと対峙する。

ただ、本書の場合、その中心にいる孤高の詩人・海老原瞬と、その海老原を取り囲む人々との関係性がイマイチ不明で、皆が海老原の熱烈なファン・同志だというが、では彼のどの作品のどういうところに彼らが惹かれたのかとかの説明は一つもないし、あるいは別の事情(海老原との、あるいは彼の亡き妻・八千代との個人的なつながりがある等)があったとしても、それらは一切描かれていないため、彼らが抱えている秘密を解き明かされてもイマイチ実感を伴わない。

にも関わらず、私が本書を気に入っているのは、ポーの代表的な2つの詩、「大鴉」と「アナベル・リー」が作品全編にその雰囲気を(「大鴉」は不気味さを、「アナベル・リー」は透明な哀しさを)漂わせているからである。
殊に「大鴉」で何度も繰り返される“Nevermore”、これを海老原が訳したとされる「ケシテモウナイ」が、作品全体にかすかな通奏低音の響きを奏でており、作品全体の寂寥感をいやが上にも高めているのである。
乱鴉の島 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 乱鴉の島 (新潮文庫)より
4101204365
No.27
(4pt)

無難な出来だが

無人島に近い孤島に火村&アリスコンビが行く・・・それだけで、嫌が応にも期待が高まってしまうではないか・・・孤高の文学者、海老原瞬の元には”海老原ファン”の人々が集まっていた。その別荘に、行き先を間違えた(正確には二人を乗せた船が行き先を間違えた)二人が”招かれざる客”として滞在することになる。鴉が集まる絶海の孤島。滞在客は、ただファンが集まっただけだと言うが、何やら別の目的が見え隠れする。そこにヘリコプターで現れたカリスマ経営者。彼の目的は。次の船が来るまであと3日。何もない島で何も起こるはずはなかったのだが・・・

 と、期待しすぎたのかもしれない。久しぶりの長編だっただけに、次々と人が殺されるか、難攻不落なトリックか、と大掛かりなものを期待してしまった。

 しかし、島に集まった客が本当のことを言っているのかどうかもわからない、という限られた情報しかない中で、きちんと論理的に犯罪を立証していく過程は、さすが本格ミステリ。安定感がある。ただ、今回はアリスがちょっと出しゃばりすぎな気がして、それが鼻についた。もう少し、火村先生の出番が多い方がファンとしては嬉しいかな。せっかくの長編だから、もう少しドロドロした人間関係、なんていうのも面白かったのでは、と思う。何を目的にこの人たちがこの島に集まったのかが最後まで明かされないが、殺人の動機としても少し弱い気がするし、読後は若干消化不良気味の感が残った。
乱鴉の島 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 乱鴉の島 (新潮文庫)より
4101204365
No.26
(4pt)

無難な出来だが

無人島に近い孤島に火村&アリスコンビが行く・・・それだけで、嫌が応にも期待が高まってしまうではないか・・・孤高の文学者、海老原瞬の元には”海老原ファン”の人々が集まっていた。その別荘に、行き先を間違えた(正確には二人を乗せた船が行き先を間違えた)二人が”招かれざる客”として滞在することになる。鴉が集まる絶海の孤島。滞在客は、ただファンが集まっただけだと言うが、何やら別の目的が見え隠れする。そこにヘリコプターで現れたカリスマ経営者。彼の目的は。次の船が来るまであと3日。何もない島で何も起こるはずはなかったのだが・・・

 と、期待しすぎたのかもしれない。久しぶりの長編だっただけに、次々と人が殺されるか、難攻不落なトリックか、と大掛かりなものを期待してしまった。

 しかし、島に集まった客が本当のことを言っているのかどうかもわからない、という限られた情報しかない中で、きちんと論理的に犯罪を立証していく過程は、さすが本格ミステリ。安定感がある。ただ、今回はアリスがちょっと出しゃばりすぎな気がして、それが鼻についた。もう少し、火村先生の出番が多い方がファンとしては嬉しいかな。せっかくの長編だから、もう少しドロドロした人間関係、なんていうのも面白かったのでは、と思う。何を目的にこの人たちがこの島に集まったのかが最後まで明かされないが、殺人の動機としても少し弱い気がするし、読後は若干消化不良気味の感が残った。
乱鴉の島 Amazon書評・レビュー: 乱鴉の島より
4104308021
No.25
(4pt)

無難な出来だが

無人島に近い孤島に火村&アリスコンビが行く・・・それだけで、嫌が応にも期待が高まってしまうではないか・・・孤高の文学者、海老原瞬の元には”海老原ファン”の人々が集まっていた。その別荘に、行き先を間違えた(正確には二人を乗せた船が行き先を間違えた)二人が”招かれざる客”として滞在することになる。鴉が集まる絶海の孤島。滞在客は、ただファンが集まっただけだと言うが、何やら別の目的が見え隠れする。そこにヘリコプターで現れたカリスマ経営者。彼の目的は。次の船が来るまであと3日。何もない島で何も起こるはずはなかったのだが・・・

 と、期待しすぎたのかもしれない。久しぶりの長編だっただけに、次々と人が殺されるか、難攻不落なトリックか、と大掛かりなものを期待してしまった。

 しかし、島に集まった客が本当のことを言っているのかどうかもわからない、という限られた情報しかない中で、きちんと論理的に犯罪を立証していく過程は、さすが本格ミステリ。安定感がある。ただ、今回はアリスがちょっと出しゃばりすぎな気がして、それが鼻についた。もう少し、火村先生の出番が多い方がファンとしては嬉しいかな。せっかくの長編だから、もう少しドロドロした人間関係、なんていうのも面白かったのでは、と思う。何を目的にこの人たちがこの島に集まったのかが最後まで明かされないが、殺人の動機としても少し弱い気がするし、読後は若干消化不良気味の感が残った。
乱鴉の島 (講談社ノベルス) Amazon書評・レビュー: 乱鴉の島 (講談社ノベルス)より
4061826158
No.24
(5pt)

これこそ有栖川有栖

このところの有栖川有栖作品は「らしくない」ものが多かったように思う。
テロリストが登場したり、パズルが単なるパズルで終わってしまっていたり
うまくいえないけれど、盛り込んでいるわりには物足りないと感じることがあった。
今回の作品ではクローン技術に手を出すと知って
読む前に及び腰になってしまったのだけれど、杞憂だった。
まちに待った、読みたかったミステリーだった。
孤島というガジェットにひかれて、本を手に取った人は拍子抜けかもしれない。
奇怪な登場人物も、謎の子守歌も、酸鼻を極める連続殺人も無いのだから。
でも、これが有栖川アリスなのだ。端正な論理に身をゆだねればいい。
こけおどしなんて必要ないのだ。
ねちっこい人物描写も邪魔だ。
謎ときの果てに人物像と人生が浮かび上がってこその探偵小説なのだから。
今回も読後の余韻が素晴らしい。
島に残った火村と海老原はどんな会話を交えたのだろう。
有栖川有栖はロジックで詩をつぐむのだ。こうでなければいけないのだ。
乱鴉の島 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 乱鴉の島 (新潮文庫)より
4101204365
No.23
(5pt)

これこそ有栖川有栖

このところの有栖川有栖作品は「らしくない」ものが多かったように思う。
テロリストが登場したり、パズルが単なるパズルで終わってしまっていたり
うまくいえないけれど、盛り込んでいるわりには物足りないと感じることがあった。
今回の作品ではクローン技術に手を出すと知って
読む前に及び腰になってしまったのだけれど、杞憂だった。
まちに待った、読みたかったミステリーだった。
孤島というガジェットにひかれて、本を手に取った人は拍子抜けかもしれない。
奇怪な登場人物も、謎の子守歌も、酸鼻を極める連続殺人も無いのだから。
でも、これが有栖川アリスなのだ。端正な論理に身をゆだねればいい。
こけおどしなんて必要ないのだ。
ねちっこい人物描写も邪魔だ。
謎ときの果てに人物像と人生が浮かび上がってこその探偵小説なのだから。
今回も読後の余韻が素晴らしい。
島に残った火村と海老原はどんな会話を交えたのだろう。
有栖川有栖はロジックで詩をつぐむのだ。こうでなければいけないのだ。
乱鴉の島 (講談社ノベルス) Amazon書評・レビュー: 乱鴉の島 (講談社ノベルス)より
4061826158
No.22
(5pt)

これこそ有栖川有栖

このところの有栖川有栖作品は「らしくない」ものが多かったように思う。
テロリストが登場したり、パズルが単なるパズルで終わってしまっていたり
うまくいえないけれど、盛り込んでいるわりには物足りないと感じることがあった。
今回の作品ではクローン技術に手を出すと知って
読む前に及び腰になってしまったのだけれど、杞憂だった。
まちに待った、読みたかったミステリーだった。
孤島というガジェットにひかれて、本を手に取った人は拍子抜けかもしれない。
奇怪な登場人物も、謎の子守歌も、酸鼻を極める連続殺人も無いのだから。
でも、これが有栖川アリスなのだ。端正な論理に身をゆだねればいい。
こけおどしなんて必要ないのだ。
ねちっこい人物描写も邪魔だ。
謎ときの果てに人物像と人生が浮かび上がってこその探偵小説なのだから。
今回も読後の余韻が素晴らしい。
島に残った火村と海老原はどんな会話を交えたのだろう。
有栖川有栖はロジックで詩をつぐむのだ。こうでなければいけないのだ。
乱鴉の島 Amazon書評・レビュー: 乱鴉の島より
4104308021