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さよなら渓谷
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さよなら渓谷の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.58pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全51件 21~40 2/3ページ
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面白い、最初から最後まで一気に行ける。 でも推理ものにあるような、ページを進むほど真実に近づいているといった感覚ではない。 どこか、悲痛な感じで物語を見ていた。 ラストシーン、状況から考えると、主人公は彼女から許された。と言えると想像するが、 それにしても、もう少し二人にとって平穏な結末は描けなかったのかと、思う。 | ||||
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映画みて消化不良で、原作に手を伸ばした。 「男って、ほんとに嫉妬深いっていうか、狷介っていうか」作中の小林の、この言葉に集約されていると思う。 本作は、男・吉田修一による、男の小ささの内部告発である。 極端に装飾的・叙情的描写を抑え、 暑さに何もかも裸にされたような味気ない情景の中で、とにかく渡辺、俊介から汗が流れ、 生きているだけでからがらの、虜囚の情けなさ息苦しさが 重苦しい通奏低音のように描かれ続ける。 (その中を吹き抜ける涼しい渓谷は、 一歩踏み出せば楽になれる別の世界(死)の象徴なのだろうか。) 映画で描かれたら良かったのに、と思ったピースは、渡辺の原風景だ。 母が屈強な男達に侮辱され、あわや、という風景を見て渡辺少年は、 男達に飛びかかるでもなく、助けを呼びに行くでもない。 そしてその場に居尽くした彼が感じ、噛み締めた感情は、 大切な者を踏みにじられた憤りでもなく、哀れな母への同情でもなく、 「弱者の側になりたくない」という切迫し硬直した浅ましいプライドだ。 それが罪悪感も批難もなく、彼の青春の原動力となったのだ。 また渡辺は「男の犯人だと、なんとなく何を考えているかわかる。 女だと分からず、必要以上にマイクを突っ込んでしまう、もっと謝ってほしいと思っていしまう」 とも小林女史に告白している。 俗に言う、男は男に甘い、という部分が客観化や、 女というだけで未知の恐怖を抱き、そく攻撃性に変化してしまう小ささも告発している。 ほか、マウンティングの手段のようにレイプが発生したこと。 マッチョイズムの虜囚となって、そのなかでもがいた先にあるのは、 コネでしか生きられない、男の狷介な世界、という体育会系の暗部の告発も見逃し難い。 かなこが俊介と暮らすことを選ぶ、というのがありえるかどうか、が議論になっているようだが、 それほどまでに無情に性犯罪被害者を締め出している社会を描き出すための総体的な演出というか… そこの現実性つつき回すよりは、今も実社会で生きている性犯罪被害者に そんな選択肢を選ばせるような姿勢を自分は社会構成員として取っていないか、 省みる材料として心に留めておいては、と感じた。 | ||||
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ものすごい小説。 生きることの苦しみを突きつけられる。 だけど、それで苦しくなるわけじゃない。 むしろ、何か突き動かされるものがある。 こういう小説でこれだけ心を動かされるのは きちんと苦しんできたからだと思った。 辛いことを経験すればするほど、 新しい出会いが味わい深くなるのだと実感した。 数少ないけれど、 恋愛をしてきてよかったと思った。 辛いこともあったけれど、 それがなければ、 この小説は記憶にも残らなかったかもしれない。 | ||||
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このレビューを見てみると否定的な見解が多いのだが、 元来小説とはフィクションで、作者は共感してほしいとかではなく、 架空の話を創作し、世に出しているだけだというドライな感覚を前提に、 今作を読んでほしいと思う。 読者がいろいろ物議をかもしあっていることだけで価値がある。 確かに、性犯罪被害者の苦しみを軽んじているようにも見えるであろう。 ここまで贖罪意識が強い加害者が果たしてこのような犯罪を犯したであろうか という疑問を持つであろう。 しかも、この二人が・・・していることが一番ありえないと思えるだろう・・・。 しかしだ。 拙私は、幸いなことに犯罪加害者・被害者になったことのないいい年したおっさんなので、 あくまで仮定の話ではあるが、主人公の気持ちを察するにわからないでもない部分があった。 自分にとって、壮絶な過去を隠す必要のない唯一の対象は誰か? しかも、その対象が人生をかけて贖罪をしたいとそばにいたなら・・・。 必死に前向きに生きようと努力してきたが、過去の悲劇がそれをすべて ぶち壊してきた・・・。 人生を生きるにあたり、どうにもならないことの中で一番もどかしいことは何か? それは、「記憶を葬ること」ではないか。 いい思い出は消え去ってほしくないのだが、消え去ってほしい記憶こそ 忘れられない。 彼女が身体を重ねるのも、その瞬間だけは忌まわしい過去を記憶の中から消すため ではなかったか? 「幸せになりそうだったから・・・。」 切ない。やりきれない。幸せになっていいんだよ、夏美。 結末の解釈は、消し去れない記憶と共に、「強く生きていくこと」を選択 したんだろうと思いたい。 悩んだ末、他の人にこの役をやらせたくないと言って、演じきった真木よう子。 確かにアカデミー最優秀主演女優賞モノの凄味のある演技だった・・・。 | ||||
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映画「さよなら渓谷」を鑑賞したことで本書を読むきっかけとなった。 映画はかなり気に入った作品となった。題名にある「渓谷」も美しく描かれており、主人公のカナコが 渓谷を「去った」ことへのリアリティーが生まれていた。一方、原作は「暑さ」が際立っている。常に主人公は汗だくになっている印象を強く受けた。 「汗臭い」作品はいくつかある。例えば中上健次 のいくつかの作品は行間から正に汗の臭いが立ち上っていた。 においを漢字変換すると「臭い」と「匂い」が出てくるが、まさに「臭い」に当てはまる作品群であった。けもの 臭とすら言って良い。 それに比べると本作は汗まみれながらも、「匂い」という言葉が相応しい気がする。これは主人公と カナコにある妙な透明感によるものだろう。 主人公とカナコの透明感が何から齎されているのか。 本書が設定しているシチュエーションは透明感から程遠い。但し、そのシチュエーションに対峙している 二人の「対峙の有り様」が不思議と透明なのである。ある意味では「他人事」のように状況を眺めている かのような描き方だ。その意味で、現実感がそこにはない。いや、少なくともカナコが現実感を持つことを 恐れていた点は描かれている。 その意味ではカナコが最後に家を出て行ったところから現実感が動き出したのかもしれない。 本書はそこで終わっているので、その後の二人がどうなるのかは各自想像するしかないわけだが。 | ||||
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映画を観てから小説を読んだのですが,やはり小説の方が内容が濃く,自分の想像で映像をイメージ出来るので,大変面白かったです。 | ||||
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現実にはありえないと思うが、被害者と加害者がお互いそばにいることで、 世間からの差別を避けることができるならばその関係は成立するかもしれない。 最後のシーンに、事件の重い記憶からは決別できないが、 それでも未来はよりよくできるはずという希望を感じました。 | ||||
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映画を観てから 読んだので つい「真木洋子さん」が浮かんでしまいます・・ 大森さんの記者も良かったですね・・・ 原作よりも映画のほうが 良かったように思えてしまいます・・ ただ、渓谷のところは「原作」の方が 味わい深い感じがしました。。 やはり 映画です^^^ | ||||
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「人の心に潜む“業”を描ききる」と帯に書いてある。 「悪人」「パレード」と並んで評価されているが、犯罪を一般化しようという作者の意識が強かったのか、いくらなんでも突飛な結末だからなのか、ちょっと説教臭くて、2作品のより観念的だと感じる。 でも、私はひさしぶりに読んで、これは事実に基づいた話なのではなかろうかと思ってしまった。 犯罪は大きく2つおこり、幼児殺害と、集団レイプだ。 集団レイプに見られる“業”とは、男性の暴力、という意味だけでなく、女性の弱さ、ひいては、弱い者と強い者、という人の無意識・意識から、人がどうあろうとするか、であると感じられた。いろんな角度からスポットライトを当てて検証している。被害に合われた方は本著を読んでとても嫌な思いをしたかもしれないが、被害者という点で、レイプを捉えて描きたい意志に依って描かれてない。女は男にかしずかれて(?)、組み敷かれて生きるしかないのか、男は女を支配することが、強さなのか、と、問うてるのだと感じた。 幼児殺害は、いらないのではないか、とレビューされてるかたもいたが、母親による幼児殺害、に作者は、女性の“性”に閉じ込められた役割の窮屈さというか、そんな問題提起をしているのだとも読める。母親にならなければならない“性”(せい)と、強者にならなければならない“性”、それを各自自分の中で位置づけないと生きていけない“性”への深層的な強迫観念。 性同一性障害への理解は、障害として、差別問題として理解が図られる方向にあるけど、あまりにも野生や本能とかけ離れた人間が、“性別”に縛られてることへの、違和感の投げかけなんかなあとかあらためて思った。 | ||||
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ただ、レイプ犯の完全な主犯のヤツがいくら反省したとは言えああなるかなあ。 先輩に命令されて仕方なくやったとかにした方がしっくりきたかも。 | ||||
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映画が、もうすぐ公開される(私の地元で)タイミングで読了した。主演が真木よう子ということは、映画の方は当然おっぱい指数の高さが目当てになるのだが、、。そんな中、読んだ小説版は、期せずして傑作だった。ヒロインを真木よう子イメージで読んだのが良かったのかもしれない。アマゾンのレビューは、けっこうな酷評で、すっきりしない、現実性がないなどの感想が多いが、私にとってはとても面白く、今年読んだなかでもベストといえるかもしれないほどである。 解説でも指摘されているように映画に強い影響を受けた本作は、登場人物の内面を風景や行動や演出で表現していて、はっきりとした言葉では描いていない。読みながら、推測することが必要だ。しかし、それはまさしく現実の人間関係そのものだ。相手の行動やしぐさや、言葉の端々から相手の気持ちを考える。なんであんな事をするのだろう、なんで言うのだろう、と悩みながら読む(生きる)のだ。 すっきりしないなどの感想はもっともだが、現実にすっきりと本心を語る人間などいない。それこそ現実性がない。本作はたしかに、極端な設定ではあるが、人間関係の本当の現実を追体験できる傑作だ。 また、そもそも本作は、まったくのフィクションではない。実際にあった二つの事件を基に描かれている(と言われている)。こちらは、検索すれば、何件かの記事を読むことができる。現実性がないと感じた場合、現実の事件も調べてみると良いだろう。 本作はとにかく面白いと感じた。だれがなんと言おうと面白いと思えるほどだった。他のひとは、違うのかな?? | ||||
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読み進むごとに引き込まれていった。 でも力がいるなぁ。自分に元気がないと読むうちに辛くてしんどい。 少し気分がいい時にゆっくり読むのが良さそうです。 | ||||
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パレード、悪人と読んで本作で吉田作品3作目です。 集団レイプや母親による実子殺害など現実によく耳にする犯罪を切り口に、被害者と加害者双方の苦しみを描いておりますが、どうにもラストが物悲しいこのこの上ないです。 現実的にも、かなこと俊介にハッピーエンドはない気がします。 本作の登場人物のセリフで、もしも実の息子が集団強姦の被疑者になったとしったら、父親としてどう思うか、という問いに「がっかりする。(そんなことで将来を棒に振ってという意味で)」というのが、ズシンと響きましたね。 犯罪は割に合わないのは、被害者だけではなく加害者にも消えない傷を残す事だ、と改めて思い、かつこの言葉を作中に出す作者の感性がやはり好きですね。 きれい事に逃げてないだけ、私は本作は評価できると思います。 というわけで星5つ。 | ||||
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冒頭は秋田の自娘殺人事件を連想させる書き出しであったが、流石はあっさり、吉田修一に遣られます。 主人公の名前すらない、『パークライフ』の筆者だとこう云う小説も書くのだな、と感服。 僕も最初から、尾崎とかなこの関係には気付きました。 ただ、かなこの行動、最後の行動が理解できない。女性なら別の感想あるのかな? | ||||
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相変わらず読ませるが、最後が少々「?」ではあった。しかし全体的にはきれいにまとまってる感じ。個人的にはこの人の書きぶりはとても好きなので、内容はさておき、読んでいる最中は思いっきり入りこめた。性犯罪者と被害者が一緒に住むのはアリかもしれないが、それにしても主人公を美化しすぎな気も...全体的には面白く一気に読んだし読後感もそれほど悪くはなかった。 | ||||
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「悪人」がよかったので、本書を手にしたが、期待にたがわず面白かった。物語の背景は、母親の子供殺しあり、集団レイプありで重苦しいが、読後感は、意外にサッパリしている。それは、本書のテーマが救いにあるからであろう。 不思議な俊介とかなこの関係は、後半明らかになるが、最後は新たな出発の場で終わる。吉田は、「悪人」から一歩突き進めた男女の関係を「さよなら渓谷」で描いてみせた。 小編だが、一気に読破した。ただ、タイトルの「さよなら渓谷」は、あまりピンときません。 | ||||
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辛口な感想が多いようですが、私は「悪人」よりも この作品のほうが好きです。 ラストの「かなこ」が「尾崎」の元を離れていった くだりからは涙が出ました。 この作家さんは、男女の中の業の感情を表現するのが 本当に上手いと思います。 「悪人」同様切ないです。 | ||||
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確かに賛否両論があるテーマの本ではあるけれど、 中途半端な恋愛小説を書くよりも、この本のほうが吉田修一らしい。 元職員と構造的には似ているけれど、 (犯罪を犯した人間の、ストーリーと回想が交互に混ざる) この本のほうが、読み応えがある。 吉田修一の中では、 パレード (幻冬舎文庫) 悪人 に次いで、3番目に入るだろうか。 | ||||
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このレビューには賛否両論あるようですが、私は個人的にはすごく好きです。 『悪人』のときもそうでしたが、主人公達の「心の叫び」が文章から滲みでていて、自分の心の奥をふるふると揺さぶられます。 主人公ふたりが一緒に暮らしているという状況に、普通は違和感を感じてしまうのでしょうが、思わず「そんなこともあるかもしれない」と読者に思わせてしまう文章力は、さすがの一言に尽きると思います。 この二人の関係を、果たして「愛」と呼べるのかということについては議論が分かれるだろうと思います。私は単純な恋愛関係や、罪悪意識、利害関係を超えたところにある、ふたりの強い「絆」を感じました。それを「愛」の一言で表現してしまっていいのか、今でもまだ答えは出ていません。 また俊介の献身的な姿、かなこの揺れる心があまりに切なく、悲しく、涙がとまりませんでした。 いずれにしても、この本を読んだ人とこの本についてたくさん議論したくなる、そんな作品だと思います。 | ||||
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物語は現実社会でも珍しいことではなくなった母親による子殺し事件に端を発する ワイドショー的陳腐な話かと思いきや、あっさりと裏切られる 日常生活から切り離されてしまったようなさびれた地区で事件は起こるが、 その影響は近所に住む住人にも飛び火していき思いもよらない方向へ発展していく 登場するのはみな過去に傷を持つ人間ばかり 一見普通に暮らしているように見える人たちに秘められた過去の出来事に たまたま取材にあたっていた記者が興味をひかれ引き寄せられていく… 彼自身、妻とうまくいっておらず私生活に行き詰っているのだが、 その原因も複合的に物語に絡まっていて、物語に奥行を与えている 「悪人」を思わせるような吉田修一さんの洞察力の深さと 人間への優しくも温かいまなざし 罪は贖えるかという深く難しいテーマをさらっと読ませる技術に脱帽です 読後もじっくりと考えさせられる内容でした | ||||
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