(短編集)
キャンセルされた街の案内
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キャンセルされた街の案内の総合評価:
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1998年から2000年代に雑誌掲載された10本を集めた短編集。 | ||||
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〇 10篇を納めた短篇集。作者は一作ごとに明確なテーマを設定して仕上げているようだ。 たとえばこんな具合: ・「零下五度」のテーマはすれ違いの偶然。ソウルですれ違った他人同士の男女のそれぞれが、ネクタイを買う男が主人公の映画の題名を思いだそうとしている、という偶然。 ・「深夜二時の男」は、時間の作用。若い女性が深夜忍び込んできた隣室の男に身体をなぜられた怖い経験も、十五年を経て思い出してみれば何ほどのこともなくなっている。 ・「奴ら」は陰画がテーマだ。男が電車のなかで痴漢にあうという、常識の白黒が逆転した話。 ・「大阪ほのか」は言葉あわせ。見合いをするために大阪に来た友達の見合相手が「宮下ほのか」。空港で買ったみやげが「大阪ほのか」。それだけのこと。 ・「24 pieces」は、24枚のチョコレートの包み紙。その裏に書き留めた短文を並べてみたら恋愛小説ができました、という趣向。 ・「灯台」のテーマも、時間の作用か。37歳の自分が17歳の頃の自分と並んで話をしながら散歩するという趣向。複眼的にものを描く深みのようなものが感じらはする。 ・「キャンセルされた街の案内」は、うまく読み解けないのだが、バランスがテーマなのかもしれない。東京のワンルームマンションでの兄との毎日、田舎の軍艦島での思い出、書きかけの恋愛小説(これも進行中の事実に基づいている)の3つを塩梅よく混ぜあわせて違和感のないようにバランスよく話を進めている。この作品で雑然と展開される物語はちょっと面白くて、読み応えがある。 〇 こうして作者が選んだテーマに特別な思いが込められているわけではなく、作者はただ短篇制作の技巧の切れ味を試しているようなのだ。だから、読む方も深い思想などは期待せずに、こんどはどんなトリックなのだろうと推理小説のように読み進めばよいのだろう。 〇 作者の小説づくりの技術は認めるのだが、もう少し内容がほしかったなあ、というのが正直な感想。すぐれた技術をどう使うかが大事なのではないのかな。特に書きたいことがなくても小説が書けてしまうというのは、作者にとっても読者にとっても不幸なことではないか、と思う。 | ||||
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吉田修一さんの作品は、家族や恋人、友人との微妙な距離感を描いたものが多い。 タイトル作「キャンセルされた街の案内」の、主人公と不肖の兄、思いを寄せる女性、そしてその母親との関係において、吉田作品”らしさ”をみることができる。少年の頃、軍艦島でインチキ観光案内をしていた主人公は、だらしない兄の行状を見ては当時の二人に思いを馳せる。一方、好きになった女性は不倫の真っ最中で、主人公は眼中になく、彼女の母親に窘められる始末。淡々と流れる日々に、小説書きを趣味とする主人公の、じれったいけれどどうにもならない感じがじわじわと浮かび上がってくる。結論めいたことは何もない。それはそれで、現実なんだよねと言われているようにも思えてしまう。 「日々の春」は気になる新人社員がいる先輩女子に、「乳歯」は、子連れの女性と同棲している青年に、「大阪ほのか」は久々に会った高校の同級生の男性二人に、”らしさ”を感じる。 他、群像劇風の「零下5度」、「台風一過」、女性の戦慄した一瞬「深夜二時の男」、過去と未来の自分との対話「灯台」、男に痴漢される男「奴ら」、親友の恋人への思い「24Pieces」が収さめられている。 | ||||
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十編の短編集。どれもが話が面白くなりそうでいて、結局ならない。アンチクライマックスというか、尻つぼみというか、突き放されたように終わる。そういうコンセプトの短編集なのだろう。 表題の「キャンセルされた街の案内」は短編集の一編であるが、これがタイトルになるということはすべてがそういう「街」の物語と言うことでもあるのだろう。 その「キャンセルされた街の案内」は、よく判りにくいというか、「ごくつぶし?の兄が東京にいる弟の部屋に転がり込んでくる」話と「その弟が長崎?の軍艦島で案内人のアルバイトをする」話と「弟が書きかけである小説の話、つまり小説内小説」が交互にでてくる。「キャンセルされた街」は直接には軍艦島の廃墟のことを言っているのだろうと思われる。またその案内をしている「ぼく」はふるさとに住んでいた頃の弟の体験の描写なのであるのだろうか?そのあたりが判然としないまま物語は終わる。 読み終えて、とりとめのない思いをさせてもらったなと、不思議な読後感。でも悪い感じではない。かといって嬉しくもない。ふつーの夢から醒めたようでもある。十編の中でひとつといったら、最初の一編「日々の春」の三十歳前後と思われるOL、今井さんが可愛かった。 | ||||
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まず文章がうまいその一言につきます。 SF小説のように派手な展開があるわけでもなく、推理小説のように何か事件が起きるわけでもない。 それなのに退屈せずに読めるのは筆者の文才の賜物なのでしょう。 自分はある模試の小説問題で初めてこの小説を読みましたが、ただ問題を解く以上に面白かったので 自分で購入してしまいました。 無職の兄と弟の物語で小説の中に小説があるという面白い話です。 弟が書く小説は彼自身の心情を表していて現実と理想のギャップがとてもリアルに伝わってきます。 表題作以外も非常に面白いのでぜひ読んでみることをおすすめします。 どれも完結がない消化不良気味で終わってしまうのですが、それがまたこの本の良さ。 | ||||
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少し暗すぎるとも感じるところもあったが、面白く読めた。それが作者の腕なのだろう。 | ||||
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