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カーテン
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【この小説が収録されている参考書籍】
カーテンの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.29pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全7件 1~7 1/1ページ
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あまりにも有名な、ポアロ最期の事件。 とは言え、単独の推理小説としての評価は微妙で、これまで読んだことがなかった。 老人となった二人の寂しさ、特にヘイスティングスと末娘のジュディスとのやりとりに見えるように、彼のオツムの劣化はさらに進行していて、前半は(クリスティー作品としては)リーダビリティが低くてつまらなかった。 しかし読了して思うのは、やはり見事ということ。 『竜臥亭幻想』のように、アホアホのヘイスティングスに最後の活躍を譲っても良かったと思わないでもないが、人の心を見据えるポアロは、『スタイルズ荘の怪事件』と同じように冴えわたっている。 二十数年前、26歳の著者に創造された初登場のポアロは、すでにベルギー警察を引退していたのだから、著者53歳で書かれた本作品でのポアロは80代を迎えていた筈だ。 しかし老衰著しいポアロへの労りはあるものの、著者の病床の女性への目線は辛辣だ。 病弱のフランクリン夫人に対して、ヘイスティングスの娘ジュディスは「大騒ぎしてみせるのが好きなだけ」と薄情だし、ミス・コールは「病気を楽しんでいるんですわ」と冷ややか、アタマの一文だって、クレイブン看護婦の夫人を評する台詞である。 ジュディスに至っては、役に立たない人はこの世から取り除くべきだなんていうラディカルな思想を口にする。 すべて同性に対する評価というのがポイントで、十二分に自立できたクリスティにとっては、他人に依存しながら操ろうとする態度が我慢ならないのかもしれない。しかし後遺症に生活レベルがグンと落ちたわたしにとっては、病気を“楽しんでいる”と思われるのはかなりイタい。 しかし何と言っても、1943年に書かれた作品を、著者が86歳になった1976年まで世に出さずに温存していたのだから、なんともはやすさまじい……。 1943年というと、前作『スタイルズ荘の怪事件』が第一次世界大戦の真っただ中の1916年に書かれたのと同様、本作の作中時期も1943年近辺と思われるが、見た目上の舞台は、いつものように田舎ののんびりした暮らしで戦争の影は見えない。【注1】 いまだノルマンディー上陸作戦前ではあるが、バトル・オブ・ブリテンの空中戦やザ・ブリッツと称されるロンドン大空襲は、は1940年~41年だったから、英国的には一息つけるようになっていたということか。【注2】 なにもしないで傍観しているのかという例えに、チェンバレンではなく、第一次大戦当時のアスキス首相を挙げているのが、進行形の戦争関連は未だ総括されていなかったということで、興味深い。 【注1】戦時国債がどーのという記載があった。 【注2】ノルマンディー上陸作戦は1944年6月6日。スターリングラード攻防戦で、独軍が降伏してソ連が勝利宣言したのは、その一年前、1943年2月2日。 | ||||
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あまりにも有名な、ポアロ最期の事件。 とは言え、単独の推理小説としての評価は微妙で、これまで読んだことがなかった。 老人となった二人の寂しさ、特にヘイスティングスと末娘のジュディスとのやりとりに見えるように、彼のオツムの劣化はさらに進行していて、前半は(クリスティー作品としては)リーダビリティが低くてつまらなかった。 しかし読了して思うのは、やはり見事ということ。 『竜臥亭幻想』のように、アホアホのヘイスティングスに最後の活躍を譲っても良かったと思わないでもないが、人の心を見据えるポアロは、『スタイルズ荘の怪事件』と同じように冴えわたっている。 二十数年前、26歳の著者に創造された初登場のポアロは、すでにベルギー警察を引退していたのだから、著者53歳で書かれた本作品でのポアロは80代を迎えていた筈だ。 しかし老衰著しいポアロへの労りはあるものの、著者の病床の女性への目線は辛辣。 病弱のフランクリン夫人に対して、ヘイスティングスの娘ジュディスは「大騒ぎしてみせるのが好きなだけ」と薄情だし、ミス・コールは「病気を楽しんでいるんですわ」と冷ややか、このレビューのタイトルだって、クレイブン看護婦の夫人を評する台詞である。 ジュディスに至っては、役に立たない人はこの世から取り除くべきだなんていうラディカルな思想を口にする。 すべて同性に対する評価というのがポイントで、十二分に自立できたクリスティにとっては、他人に依存しながら操ろうとする態度が我慢ならないのかもしれない。しかし後遺症に生活レベルがグンと落ちたわたしにとっては、“楽しんでいる”と思われるのはかなりイタい。 しかし何と言っても、1943年に書かれた作品を、著者が86歳になった1976年まで世に出さずに温存していたのだから、なんともはやすさまじい…… 1943年というと、前作『スタイルズ荘の怪事件』が第一次世界大戦の真っただ中の1916年に書かれたのと同様、本作の作中時期も43年近辺と思われるが、見た目上の舞台は、いつものように田舎ののんびりした暮らしで戦争の影は見えない。 いまだノルマンディー上陸作戦前ではあるが、バトル・オブ・ブリテンの空中戦やザ・ブリッツと称されるロンドン大空襲は、は1940年~41年だったから、英国的には一息つけるようになっていたということか? なにもしないで傍観しているのかという例えに、チェンバレンではなく、第一次大戦当時のアスキス首相を挙げているのが、進行形の戦争関連は未だ総括されていなかったということで、興味深い。 | ||||
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重い作品です。『スリーピング・マーダー』をアコースティックな演奏のフォーク調の音楽になぞらえるなら、『カーテン』はピンクフロイドの「ザ・ウォール」のような重たいロックという感じです。 何が重いって、ポアロにしてからが『邪悪の家』で「私のことを人に紹介するなら、比類なき世界一の名探偵と言いなさい」とヘイスティングズに要求したような陽性な気分は、全く漂わせていません。鍵穴からのぞくなんて紳士のやるべきことではないと言うヘイスティングズに「私は鍵穴からのぞいたのだよ」と告げる、苦笑を誘うそのユーモアがわずかな救いとなっています。 「私は法律だ」というせりふこそ吐きますが、それは大言壮語ではなく、むしろ痛みの表白です。神の懲罰が下ることこそが慈悲を受けることだとまで思い込むほどの痛み。 描写自体はいつものクリスティらしく平明ですが、想像しながら読み進めると重く暗い。 主要な登場人物aとbは、現実世界と接続するようなところがあって重いです。 aは、成長の過程で人間関係に恵まれなかったため、いびつな人格を形成してしまった。生き延びるために彼はいかに物狂おしいまでの努力を払ったことか。しかも、それが悲劇を生む。 bは、過去の行為についてやるべきだったかどうかで迷う。今さら取り返しがつかないから肯定してしまえと自分に言い聞かせて楽になろうとするのではなく、肯定と否定をめぐる永久運動にとらわれます。 いずれも現代的なテーマに直結します。 犯人の手口をポアロは、シェークスピアの『オセロ』を引いて説明します。『邪悪の家』でもちらっと同様の説明をしているところを見ると、クリスティにヒントを与えたのは『オセロ』なのかもしれません。 でも、江戸川乱歩が大正時代(「人間椅子」と同じ1925年)に発表した作品を想起させます。クリスティは乱歩を読んでいたのかどうか。戦前の乱歩は海外に紹介されていたのかどうか。 大正時代の日本は、大正デモクラシーという社会現象が見られる一方、変態心理がブームになってもいました(変態といっても、心霊現象や犯罪実録など様々なものを含んでいたようです)。大正デモクラシーと変態心理ブームが、エログロナンセンスとテロとファシズムの昭和へとなだれ込んでいこうという時代の曲がり角。 乱歩作品をその時代の雰囲気の中で読めば猟奇的な娯楽だったでしょうが、現在では一層恐ろしい感じを与えます。 もし人間心理の裏も表も正確に読み取ることのできる人物がいたとして、その敏感な共感スキルを利用して相手の欲望を引き出し、それを肯定して背中を押すような行為をするとしたら? そして、もし彼がそれを政治的意図を持って一定の方向で行なうとしたら? そんな巧妙なプロバガンダをやられた日には、抵抗するのは難しいような気がします。その危機感が乱歩やクリスティにあったのでしょうか? | ||||
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読み進めていきますが、最期までカーテンは閉じたまま。 わたしは真実はカーテン越しにしか見ることができませんでした。 | ||||
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本の状態は確かに「良い」でしたが、とても古い本で、紙が色やけしていました。 そして何より、字が小さい。 小さい字が苦手になっている年代には、読むのが億劫になりそう。 でも、値段を考えると、経年劣化以外は状態は非常に良いので、そのあたりは人それぞれでしょう。 購入の際は、値段のみで決めず、出版年を確かめた方が良いのだと知った。 | ||||
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クリスティの著書は好きで相当読みましたが この『カーテン』は別段クオリティの高い作品ではないような気も・・・ 最後の決着のつけ方が少々無理があるような気がしました。 何故完全犯罪を何件もやってきた周到な犯人が軽々な行動をしたのかと。 | ||||
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ポアロの逝去が新聞の記事になった本 ある意味衝撃的なトリックを最後に持ってきましたが それを支える骨格ができていなくて クリスティはお蔵入りにしていたらしいのだが・・・ | ||||
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