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死の猟犬
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【この小説が収録されている参考書籍】
死の猟犬の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.10pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全7件 1~7 1/1ページ
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「検察側の証人」、「ラジオ」、「青い壺の謎」以外は、超常現象を扱った話。 超常現象を扱った話は、ストーリー自体に面白みがなく、すぐに忘れてしまいそうな作品ばかり(実際、既にほとんどの作品が思い出せない)。 唯一、「翼の呼ぶ声」は、お金持ちが持つ悲哀をうまく描けていると感じた。 「死の猟犬」は、意味不明な作品。"第六のみしるしの秘密"とは何だろうか。"円を閉ざさないように気をつけて"とは、どういう意味なのだろうか。なぜ、こんな意味不明の作品が表題作なのだろうか。 「ジプシー」と「S.O.S」は、ややこしい話で、一読では理解できずに読み返したが、たいした話ではなかった。 「検察側の証人」は、結末で読者をあっと言わせる短編小説の傑作。以前に戯曲版を読んだことがあるが、戯曲版では続きがあって、さらに驚くべき内容になっている。 「ラジオ」は、皮肉な結末が面白い。 「青い壺の謎」は、意外な真相ではあるが、こんな、確率が低くて、面倒くさいことをわざわざするとは思えない。 | ||||
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この短編集は、クリスティ作品としては少し変わった内容になっています。 ポアロやマープルといった特定の探偵役が登場しない話のみが集められていること。ほとんどが超常現象にまつわる物語である一方、その要素がまったくなく、しかもクリスティの中でも著名作であるミステリ「検察側の証人」が収められていること。半分近くが雑誌での掲載がない作品であること。いずれもクリスティにしては珍しいといえます。あなたがまだクリスティ作品をそれほど読んでいないなら、いったん後回しにしてもいいかもしれません。 ただし超常現象――この時代では心霊主義といったほうがいいかもしれませんが――それ自体は当時の大衆娯楽小説の世界ではありふれた題材でした。しかも、本書に収められた作品のうち、雑誌での掲載があった短編は1924年から1926年に発表されており、これはまさに英国で心霊ブームが巻き起こっていた時代に該当します。加えて、この当時のクリスティはまだデビューから数年程度でキャリアの最初期にあり、後年彼女の代名詞となった“ミステリの女王”にはまだなっていないのです。つまり、変わっている、と思えるのは現在の視点で見るからであって、執筆当時としてはそれほど異質なことではなかった、といえます。ですから、あなたがある程度クリスティ作品に触れてきたら、今度は是非手に取ってみてください。ミステリ作家としてのクリスティではなく、作家としてのクリスティの技量や作家性を知る、いい手がかりとなることでしょう。 なお、本書がこのような構成になったのには理由があります。興味のある方は、本稿末尾に【刊行の経緯と米国での扱いについて】としてまとめておきましたので、ご一読ください。 以下、各作品のレビューを付します。まず本書収録以前に雑誌での掲載があった7作を初出順に、続いて本書が初掲載となった5作を目次順に挙げていきます。 赤信号 クリスティの短編作家としての活動は、1923年、週刊誌であるThe Sketch magazineにポアロ物を連載することから始まります。そして1年の間になんと25本もの作品を発表するのですが、このペースはポアロ・シリーズの連載が終わっても衰えませんでした。引き続きThe Sketch magazineで、今度はトミーとタペンス物の連載(後に『おしどり探偵』としてまとめられる作品群です)を始め、さらに執筆の場をThe Novel Magazine、The Grand Magazineという2つの月刊誌にも広げます。前者での活動は長続きせずに終わってしまいますが、後者では合計17作と、クリスティが書いた全短編の1割強の作品が発表されることになります。「赤信号」はその第4作目として、1924年6月号に掲載されました。この3か月前に同誌に掲載されたのがクィン物の第1作「クィン氏登場」で、クリスティがポアロ物以外のミステリを創り出そうとしていたことを伺わせます。本作でも予知能力についての言及こそあるものの、ストーリーを彩る飾り程度に止まっており、内容的にはサスペンス色の強いミステリとなっています。ラストにはクリスティらしい意外性も待っています。 青い壺の謎 「赤信号」の翌月、The Grand Magazineの1924年7月号にて発表。ここでも地縛霊、あるいは場所の記憶といった超常現象が出てきますが、それよりも主眼は謎解きにあり、真相に至るまでの巧みなストーリーテリングを楽しめます。 検察側の証人 雑誌と年が変わって、Flynn's Weeklyの1925年1月31日号に掲載されました。これは超常現象がまったく絡まない、純粋なミステリです。クリスティの150を超える短編の中でも、とりわけ著名な作品ですので、未読の方は前知識なしでとにかく読まれることをお勧めします。なお、映画やTVドラマの原作になっているのは、本作をもとにしたクリスティ自身が脚色した戯曲『検察側の証人』。タイトルこそ同じですが、中身はかなり異なりますので、関心のある方はそちらにも目を通してみてください。 第四の男 The Grand Magazineの1925年12月号に掲載。この雑誌で発表された13番目の短編で、「青い壺の謎」との間には、クィン・シリーズ4作をはじめ、「ナイチンゲール荘」「リスタデール卿の謎」などが書かれています。ここでクリスティは明確に超常現象をテーマに据えます。夜汽車のコンパートメントという舞台は、馬車宿の一室を鉄道に置き換えた設定で、いかにも怪奇物らしい雰囲気。登場人物が聖職者、弁護士、精神科医というのは、超常現象に対する当時の考え方を表した人選といえるでしょう。 S・O・S The Grand Magazineにおける第14作目。再びクリスティはミステリに立ち返り、超常現象はバックグラウンドに下がります。本書中、もっとも本格派に近い内容になっています。 ラジオ 初出は1926年12月に発行された新聞The Sunday Chronicleの年鑑。霊界との通信というポピュラーな心霊現象を扱っていますが、さて本当の怪奇物なのか、それともそれに材を採ったミステリなのか……ネタバレになってしまうといけませんので、これ以上は控えます。 最後の降霊会 英国での初出はThe Sovereign Magazineの1927年3月号で、そのときのタイトルが“The Stolen Ghost”。ただし、実際には初掲載は米国のほうが早く、“Ghost Stories”の1926年11月号。こちらでのタイトルは“The Woman Who Stole a Ghost”でした。タイトルや雑誌から一目瞭然でしょうが、完全なホラーです。オチはわかってしまうでしょうが、肝心なのはそこではなく、高まっていく狂気と恐怖を描くクリスティの文章そのものにあります。舞台がパリで、登場人物がフランス人というのも珍しい趣向です。 *ここからは雑誌での発表がなかった5作になります。 死の猟犬 超常現象を正面から取り上げ、さらにそれをミステリともリンクさせた作品。バックグラウンドには失われた超文明の遺産というネタもあり、一歩間違えば設定マニアの戯言で終わってしまいそうな話を骨太にまとめています。表題作に相応しい読みごたえのある一編です。 ジプシー 予知やサイコメトリーといった、超視覚の話題が出てきます。もし未来を予測できるのであれば、危険を回避できそうですが……後半に出てくるムーアの風景に、英国の怪奇譚らしさが漂います。 ランプ ストレートな幽霊屋敷物です。これもオチ云々ではなく、文章を楽しむ話といえるでしょう。 アーサー・カーマイクル卿の奇妙な事件 東洋の秘術が生み出す怪現象に、西洋の心理学者が挑むという構造の物語。一見、憑依現象を扱っているように見えますが、そこからひと捻りあります。 翼の呼ぶ声 1910年代の初めに原型が書かれた作品で、デビュー以前のクリスティの嗜好が伺えます。『マン島の黄金』収録の「夢の家」と合わせて読まれると、より興味深い発見があるのでは、と思います。 ―コアなクリスティ・ファン向けの書誌情報― 【刊行の経緯と米国での扱いについて】 本書はクリスティの短編集の中でも、他に例がない形で刊行されました。実はある雑誌の販促用に作られ、当初は書店では購入できない本だったのです。 1933年、英国の出版社Odhams Pressは発行していた週刊誌The Passing Showのためにキャンペーンを打ちました。同誌10月7日、14日、21日発売の各号に応募券を付け、それらを集め、さらに7シリングを負担すれば、6冊の本の中から好きな1冊をもらえる、という内容です。『死の猟犬』はこのうちの1冊だったのです(残り5冊にはターザン・シリーズなどで知られるエドガー・ライス・バローズの作品などが入っていました)。 心霊現象に材を採った作品が多い一方、純粋なミステリである「検察側の証人」が入っているなど、コンセプトが不徹底な構成になっているのは、もともと出版社に明確な意図がなかったためでしょう。初出誌もばらばらで、ともかく短編集未収録だった話をかき集め、それに未発表作や書き下ろしを加えて体裁を整えた、という編集だったと思われます。乱暴に感じるかもしれませんが、そもそもがキャンペーンのための特別本だったことを考えると首肯できます。 その後、1936年2月になって出版社を変え、改めて普通の単行本として書店に並びましたが、こうした経緯のためか、米国ではクリスティの短編集としては初めて未発売となり、収録された12作は別に編纂された3冊の短編集に分かれて収録されました。その内訳は以下の通りです。 “The Witness for the Prosecution and Other Stories“(1948)……6編 赤信号、青い壺の謎、検察側の証人、第四の男、S・O・S、ラジオ 雑誌に掲載されていた作品のうち、英誌での発表が早かった作品を集めています。 “Double Sin and Other Stories”(1961)……1編 最後の降霊会 雑誌に掲載されていた作品のうち、米誌での発表が早かった作品です。 “The Golden Ball and Other Stories”(1971)……5編 死の猟犬、ジプシー、ランプ、アーサー・カーマイクル卿の奇妙な事件、翼の呼ぶ声 単行本が初出となった作品が集められています。 | ||||
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1979年発行のを買ったらあまりに訳が読むづらくて、最新版を買い直したらこれも同じ翻訳家でショックでした。 早く手直しをするか、新たな翻訳家で出版してほしいです。 たとえば「ランプ」の冒頭も読みにくいですが、「由緒めかしい」など正しくない日本語もでてきます。 「アーサ・カーマイクル卿〜」の冒頭では、「わたしは…その話をここに残るくまなく書きしるしたが、…」など、直訳過ぎてまともな文章になってないものも散見されます。 いっそのこと、英語で読むべきか悩んでます。 | ||||
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神秘的要素、ホラー要素のある どこか不思議な雰囲気漂う短編集です。 確かに独特の浮遊感は心地よさすら感じます。 しかしながら、 若干結末が生煮えになる作品が目立つので 完全なる解決を期待する人には フラストレーションばかりがたまる作品と なることでしょう。 でも何作品かは、 解決するのもありますし、 謎を残しながらも面白いものがあります。 好き嫌いは分かれそうですね。 | ||||
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神秘的要素、ホラー要素のある どこか不思議な雰囲気漂う短編集です。 確かに独特の浮遊感は心地よさすら感じます。 しかしながら、 若干結末が生煮えになる作品が目立つので 完全なる解決を期待する人には フラストレーションばかりがたまる作品と なることでしょう。 でも何作品かは、 解決するのもありますし、 謎を残しながらも面白いものがあります。 好き嫌いは分かれそうですね。 | ||||
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純粋なミステリと言えるのは「検察側の証人」一編のみ。他の作品は、心霊術や憑依現象、予知能力などをテーマに、不気味な雰囲気を醸し出している。本書は、そうした怪奇幻想色の濃い短編集である(1933年)。純然たる怪奇小説でもない、かと言ってミステリでもない、中途半端な印象も受けたけれど、そこはクリスティー、なかなか面白いじゃないのという作品がいくつもあった。なかでも、O・ヘンリ風の話の妙味を感じた「翼の呼ぶ声」が一押し。金の威力に縛られた億万長者が、現世からの脱出を希求する話が面白かった。「検察側の証人」は、後年(1954年)、クリスティーが戯曲化したものを、ビリー・ワイルダー監督が映画化した作品として有名(映画の邦題は「情婦」)。話がどう転がっていくか予測がついていたとは言え、かっちりと引き締まったプロットと、巧みな人物造型に、これは見事な作品だなあと唸らされた。まあ、クリスティーの異色短編集ではあるけれど、緊迫したムードが高まっていく話のスリリング感などには、ぞくぞくさせられる雰囲気があって楽しめた。風間賢二氏の巻末解説は、「ミステリと怪奇幻想」「精神分析学と心霊主義」の面から、本作品集の味わいを見ていったもの。読みごたえがあった。 | ||||
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純粋なミステリと言えるのは「検察側の証人」一編のみ。他の作品は、心霊術や憑依現象、予知能力などをテーマに、不気味な雰囲気を醸し出している。本書は、そうした怪奇幻想色の濃い短編集である(1933年)。 純然たる怪奇小説でもない、かと言ってミステリでもない、中途半端な印象も受けたけれど、そこはクリスティー、なかなか面白いじゃないのという作品がいくつもあった。なかでも、O・ヘンリ風の話の妙味を感じた「翼の呼ぶ声」が一押し。金の威力に縛られた億万長者が、現世からの脱出を希求する話が面白かった。 「検察側の証人」は、後年(1954年)、クリスティーが戯曲化したものを、ビリー・ワイルダー監督が映画化した作品として有名(映画の邦題は「情婦」)。話がどう転がっていくか予測がついていたとは言え、かっちりと引き締まったプロットと、巧みな人物造型に、これは見事な作品だなあと唸らされた。 まあ、クリスティーの異色短編集ではあるけれど、緊迫したムードが高まっていく話のスリリング感などには、ぞくぞくさせられる雰囲気があって楽しめた。 風間賢二氏の巻末解説は、「ミステリと怪奇幻想」「精神分析学と心霊主義」の面から、本作品集の味わいを見ていったもの。読みごたえがあった。 | ||||
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