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魂萌え!



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【この小説が収録されている参考書籍】
魂萌え !
魂萌え!〔上〕 (新潮文庫)
魂萌え!〔下〕 (新潮文庫)

魂萌え!の評価: 4.06/5点 レビュー 111件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.06pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全111件 41~60 3/6ページ
No.71:
(4pt)

自分の気持ち

自分の気持ちに、素直になる。
それは、ときとしてとても勇気の要ること。

I'm sure. I can do it.
そんな風に感じました。。。
魂萌え !Amazon書評・レビュー:魂萌え !より
4620106909
No.70:
(4pt)

おふくろさん

現代は高齢化社会への過渡期なのだと思いました。晩年、母が「子供にお金を残すなんて馬鹿らしく思うようになってきた」と言っていたのを思い出します。親にたかるばかりの子供であったし、今にして思う「おふくろ」の「こころ」への悔悟がわいてきます。
魂萌え !Amazon書評・レビュー:魂萌え !より
4620106909
No.69:
(4pt)

前向きになれる

読みやすい、おもしろい話だと思う。失うものがあれば必ず得るものもある。失うものが大きければ大きいほど、もっと貪欲に得ようとしなければならないのだろうか。これからは、今でしたことのない経験を沢山しょう。(←文中より)今の年齢でも思うの…もっと若い時にいろんな経験を積んでおけばよかったかなって。何かをはじめるのに遅いもなにもないんだなぁって感じた。例え失ったとしても得られるものがあるこれからも恥をかいていろんな経験をつみたい。怖いなんて考えてる時間がもったいないそう思える小説です。
魂萌え!〔上〕 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:魂萌え!〔上〕 (新潮文庫)より
4101306338
No.68:
(4pt)

家族とは何なのでしょう・・・

一気に読んでしまいます。結局結婚した主婦にとって家族はストッパーの役目を持っていることを認識させられます。結局、敏子も主が死んで子供が遠くに離れて初めて開放されたんでは?もし主が死なずにずっと裏切られ続けていたら・・もし自分に置き換えて考えると
毎日家族のために調整?している自分の無報酬の労働(育児、家事など)がバカらしく思えてきますね。敏子は10年裏切られていたわけですがこれから誰も自分を止めることもなく
この世の春、第二の青春を謳歌するのかな?そんな感じで幕が閉じるので、是非続篇も期待してしまいます。ただ人の良い敏子なので変な人々に騙されそうで怖いですが・・・
それに第二の青春を楽しむには体の健康、お金の余裕にも関係してきますよね。
色々まだ先のことですが考えさせられました。これも日本人が世界1の長寿国のせいなの
かもしれませんね。
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4101306346
No.67:
(5pt)

敏子さんが危なっかしい・・・

上巻だけ読んだ時点ですが主人公の敏子さんが夫に急に先立たれ、これからどうしようか?と
ゆっくり考える暇がないくらいに色々なことに直面していくわけですが、お人好しなために
面倒なことに巻き込まれていくのが読んでいてハラハラでした。でも実際に夫に裏切られていたことが分かったら・・なんか殻を破って普段の自分じゃないことをしてしまおう!って気持ちは共感できました。本当に文章が読みやすくグングン引き込まれるように読みました。
映画化になるのも分かる!私は敏子さんより15歳下ですけど将来のこととか老いていく親や
自分のこと、女友達ってなんだろう?とか考えさせられました。
上巻では栄子のエピソードで笑えるところもあり・・・ゴールデンシャワーという言葉は
面白かったです。これから下巻でどうなっていくのか楽しみです。
魂萌え!〔上〕 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:魂萌え!〔上〕 (新潮文庫)より
4101306338
No.66:
(4pt)

ここからが出発

夫の死後に裏切りを知った敏子。還暦を目前に、孤独の恐怖と出会う。しかし、人は生きていかなければいけないし、生きていける。頑張れ敏子! 敏子と同年代のものとして、心の中でついそう叫んでいた。やはり中年で夫の裏切りに出会い、絶望を経て再生へと向かう女性を描いた、イギリスの小説『最良の復讐』を思い出した。敏子さん、一緒により豊かな人生へとスタートしましょう!
魂萌え !Amazon書評・レビュー:魂萌え !より
4620106909
No.65:
(2pt)

ハッピーエンド。

著者の今までの作品の流れから想像すると、下巻では主人公が破滅への道をひた走るのかと思いきや、肩透しとも言えるほどの、ハッピーエンド的結末に物足りなさを感じた。
その理由は巻末を見て、判明。本作品は、毎日新聞の夕刊に連載されていたものらしい。
対象読者は、大勢の一般市民であり、登場人物達も実在するとすれば、その中のひとりであろう。すなわち読者の隣人、マジョリティーの話であり、みんながそこそこの幸せを感じるような明るい終わり方で、希望を持たせている。
著者が得意とする、どす黒い感情が渦巻くマイノリティーの話とは違う印象を受ける。
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4101306346
No.64:
(5pt)

このリアルさは

中年女性の心の葛藤を描いてここまでリアルだった作品は
最近なかなかお目にかかれなかったような気がします。
相当数の取材を糧にして描ききった力作ですね。
成長した子どもと老いた母親の心のすれ違いや距離の書き方には
舌を巻きました。
親ってこんな風に子どもをとらえてしまうようになるのか、と
その残酷なリアルさに新しい桐野夏生を感じました。
老いた女性が感情をむき出しにして語るさまは
介護の場面などでもよく目撃するのですが、まさにこの本の様子にぴたりと重なります。
本当にたいした力作です。

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4101306338
No.63:
(3pt)

迫力。

主人公の身に起こる出来事、主人公を取り巻く人間関係、主人公を含めた登場人物達のそれまでの人生、生活、感情、全てにリアリティーがあり、実際身の回りに起こっていること、どこかで耳にしたことのある出来事が投影されているかのようである。
ひとことで言えば「日常生活」の物語が、平凡で終わらないのは、文章に迫力があり、現実感がヒシヒシと恐ろしさを伴い、読者に迫る力強さがあるためである。
下巻への展開が楽しみである。
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4101306338
No.62:
(4pt)

様々な「第二の人生」模様

ストーリーがテンポよく進むのでとても読みやすかった。
多くの人が10代〜20代のころに自分探し、生き方探し、というターニングポイントを迎えるが、この本を読んでいると、50代、60代に再びターニングポイントを迎えるのだなあと思った。専業主婦であれ、会社員であれ、若いころに一度決め、歩んできた自分の道、というのを退職なり配偶者の死などによっていったんおろされてしまうからだ。「第二の人生」などという言葉はよく聞いていたが、この本を読んで様々な第二の人生というものを伺い知れた。主人公と同世代の方々が読まれてももちろん楽しめるだろうが、私のように主人公の子供くらいの年齢のものが読んでもいろいろ考えさせられ面白かった。
魂萌え !Amazon書評・レビュー:魂萌え !より
4620106909
No.61:
(5pt)

ほんとうはなかった世代間の壁

夫に先立たれた 59歳の女性と共通するものをあまり多くもっていないと思っていた私ですが、著者の女性の心理描写、演出の細部がとてもリアルで、世代が離れた人の話と思えませんでした。 今、自分や自分の周りの人間に真剣に耳を傾けていないと、魂萌えの主人公のように 60歳近くになって、自分で考えたことがなかった、とか、膜で覆われたように世間を見ていた、とか言ってしまうんだろうか、とあせりが産まれました。

   浮気相手の女性が敵のように当然描かれていますが、主人公にとって夫よりも誰よりも一番彼女の人生に影響を与え、勇気を与えたのは浮気相手のこの女性だったんだなあと、すべてを読み終えて感じました。 だって、あの人相手に出した感情はすべて本物だし、あれ以上本気でぶつかっていった相手は主人公にいませんでしたもんね。 ある意味、出会いたくない相手ですが、もし、自分の人生にああいう人が登場するとしたら、自分も心の奥の奥の本当の自分をその相手になら、すべて出してしまうかもしれないなあ、とある種、そういう人に出会えた主人公は幸せなのかも、とちょっと感じました。
   映画化された浮気相手役のキャストも大物女優の三田佳子さん。 やっぱり彼女にはものすごくすごみがあるし、風吹じゅんさんが人生のハンドルを取り戻すきっかけになる浮気相手の女性として、三田佳子以上の人はやっぱりいないのではと思いました。



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4101306338
No.60:
(5pt)

スワロフスキー、ゴルフ会員権

多くのことを考えさせられる本でした。
読み手が男性か女性かで、感想が大きく違ってくることと思います。
この本は、夫を突然亡くした主婦の立場から書かれていますので、女性の心理が本当によく表現されています。
敏子を取り巻く人間の感情がストレートに描写されていて、最後まで興味深く読み進めていくことができます。
とくに敏子と愛人の昭子との対決は、双方の立場や言い分、感情・・・それぞれにものすごい説得力と迫力があります。                     敏子の夫は、突然に逝ってしまったけれど、ある意味とても幸せなヒトだったかもしれませんね。
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4101306338
No.59:
(5pt)

老いをテーマにした青春小説!

自分とは年齢が離れたお年寄りたちが主人公の話ということで、
あまり期待せずに読んだが、予想以上に面白かった。

夫に先立たれて初めて「老後」や「家族」、「世間」といった現実を
直視せざるを得なくなった主人公。
最初はひ弱でナイーブだったが、たくましく成長していく。

特に下巻のラストを読み終わった時の、さわやかな読後感は素晴らしい。
まるで青春小説のようなみずみずしさだ。

最近のダークな桐野作品とは一味違った味わいがあるので、彼女の作風を敬遠していた方にもお勧めです。
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No.58:
(1pt)

読者の年齢、性別により、感想が全く異なる作品

まず、この作品は、読者の年齢、性別により、感想が全く異なる作品だと思う。
私にとっては年齢が主人公と離れており、「老い」が現実的なものとして実感できないせいかもしれないが、読み終わっても何も残らなかった。50歳以降の方が読むと、全く異なる感想を持たれるのかもしれないが、若い読者にとっては要注意である。
夫を突然の心臓麻痺で失った50代の平凡で周囲に頼って生きてきた主婦が、夫が亡くなった後に知った愛人の存在、長男夫婦との同居問題等を通しながら、強くなっていく姿を描いた作品である。
まず、「OUT」や「柔らかな頬」を期待して購入を考えている方には、全く毛色が異なる作品であるということをご注意頂きたい。この作品は、少なくともミステリーではないし、また、作者独特の「どろどろした毒」が無い。しいてあげれば、主人公の友人の栄子、カプセルホテルで会う「婆さん」の人物造型は魅力的あるが、そのほかには作者らしさがあまり感じられなかった。作者の作品はすべて読んでいるが、この作品は珍しく!!期待はずれだった。

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4101306338
No.57:
(1pt)

読者の年齢、性別により、感想が全く異なる作品

まず、この作品は、読者の年齢、性別により、感想が全く異なる作品だと思う。
私にとっては年齢が主人公と離れており、「老い」が現実的なものとして実感できないせいかもしれないが、読み終わっても何も残らなかった。50歳以降の方が読むと、全く異なる感想を持たれるのかもしれないが、若い読者にとっては要注意である。
夫を突然の心臓麻痺で失った50代の平凡で周囲に頼って生きてきた主婦が、夫が亡くなった後に知った愛人の存在、長男夫婦との同居問題等を通しながら、強くなっていく姿を描いた作品である。
まず、「OUT」や「柔らかな頬」を期待して購入を考えている方には、全く毛色が異なる作品であるということをご注意頂きたい。この作品は、少なくともミステリーではないし、また、作者独特の「どろどろした毒」が無い。しいてあげれば、主人公の友人の栄子、カプセルホテルで会う「婆さん」の人物造型は魅力的あるが、そのほかには作者らしさがあまり感じられなかった。作者の作品はすべて読んでいるが、この作品は珍しく!!期待はずれだった。

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4101306346
No.56:
(5pt)

考えさせられる一冊

多くのことを色々と考えさせられる本でした。
読み手が、男性か女性かで感想が大きく違ってくると思います。この本は、夫を突然亡くした主婦の立場から書かれていますので、女性の心理が本当によく表現されていると感心するばかりでした。敏子を取り巻く人間の感情が、ストレートに描写されています。とくに、敏子と愛人の昭子との対決は、妻の立場と愛人の立場 双方の言い分や感情、それぞれにものすごい説得力と迫力がありました。
第8章の中で、「独りでいるということは・・・人に期待せず、従って煩わされず、自分の気持ちだけに向き合って過ぎていく日常。そういう日々を暮らすのは、思いの外、快適かもしれない。」という一文があります。
また、第10章では、「隆之に恋をしたことは一度もない。適当な相手だと思って結婚し、ときめきも失望もなく、結婚生活とはこんなものだと思って暮らしていた。」とあります。
これらは、私が日ごろ感じていることが、見事に集約されていてあっぱれ!というカンジがしました。

魂萌え !Amazon書評・レビュー:魂萌え !より
4620106909
No.55:
(5pt)

定年後の夫婦生活

主人公は関口敏子59歳。
夫の突然死から物語は始まります。
彼女はサラリーマンの夫隆之の妻として、「恙無く」暮らしてきました。その定年退職した夫の突然の死が彼女の「恙無い」人生を大きく揺さぶります。音信不通だった長男が帰国し同居を求め、遺産相続の問題にぶち当たります。おまけに、夫の愛人の登場となります。この突然の出来事に、彼女はパニックを起こしてしまいます。本作は、ここからの一年弱の間の、彼女が精神的安定を得るまでの出来事を描いています。

夫婦生活を20年、30年と過ごしてくると、表面的には問題がない(ないように努力している)夫婦でも、どこか齟齬を感じることも少なくありません。彼女の場合は、こうしたもやもやが夫の死によって、一挙に表面化してきます。今まで夫に守られて生きてきて、世の中のことをよく知らなかった彼女が、右往左往しながらも、「自分の人生を生きる」という将来への確実な一歩を踏み出してゆきます。

この小説は女性が主人公の小説ですが、その周りに登場する男たちの生き方、考え方が同性として良く解ります。定年退職後、男はそのアイデンティティを失ってしまいます。それをどう立て直すのか、それは大きな問題です。いろいろの男性が登場し、いろんな考え方を示してくれますが、いつか私もなんらかの結論を出さなくてはいけない時がきます。男性の側からも考えさせられる作品でした。
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4101306338
No.54:
(4pt)

新しい人生の下地

突然の夫の死後、愛人の存在の発覚や、遺産相続、息子の家庭のゴタゴタ、いかにも調子よさ気な男との不倫・・・など、想像もしなかった日々を送る59歳の敏子。自他ともに認めるおとなしい平凡な主婦だった彼女が、しばしば感情の激しいほとばしりを経験するようになり、自分でも驚く。愛人との直接対決までやってのけ、後になって深く傷つくほど、激情を爆発させてしまったりする。

外的環境の変化が敏子を変えたのか、もともと内側にあったものが表に出るようになったのかわからないが、戸惑いつつも彼女はそれらを認め始める。新しい知己を得、旧友のこれまでとは違う面を知ったことも、敏子の器を広げることに貢献したであろう。「今まで思ってもみなかった感情や思いを育ててみよう。違う生活が待っているのだから、違う自分になる方がいい」 気負わずにそう考えるようになる。

終盤、友人たちとの会食の場で、敏子は夫婦関係について、自分自身について、考えていることを明快な言葉で語る。それまでの総括と言っていいような内容である。上巻では「道を道とも気付かず、ぼんやり生きてきた」と振り返っていた敏子が、自分自身や夫、その関係を対象化したことの意味は大きいと思う。ぼんやりとではなく、認識し、分析する人間になったことを伺わせるからだ。愛人対決のような派手さはないが、この点が、変化といえば一番の変化なのではなかろうか。新しい人生を歩む下地が整ったのだ、そんなふうに思えた。

帯には「剥き出しの女が荒ぶる」とある。この刺激的な一文より、もっと静かで確かな成長の軌跡の物語だとわたしは読んだ。

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4101306346
No.53:
(4pt)

やはりこれは桐野作品!

伴侶の死や老いの不安をこんなふうに書く小説があったのか、と思った。

夫を突然亡くした主婦、敏子59歳の物語。悲しみにくれる暇もないまま、亡夫の10年来の愛人の出現、息子・娘との遺産相続に関する揉め事、友人関係の変化、将来の不安など、次々とやりきれない現実に直面させられる。自分自身でも仲間からも「自己主張のない人」と目されてきた敏子。そんな彼女が途方に暮れながらも、荒波の中を小舟ひとつで何とか渡って行こうとする様が描かれる上巻である。

桐野氏の小説はいつも、生きることはサバイバルであると思い出させてくれる。本作は桐野作品全体から見たら地味な部類に属するだろう。敏子にとっては大事件でも、桐野作品の中では事件ともいえないような出来事だ。でも老いの不安を生きることがサバイバルでなくて何であろう。やはりこれは桐野氏の小説だ、そう思いながら読んだ。

ディテールに惹かれる。敏子は自分にとって特に共感できる人物でもないが、細部のうまさに磁力のように引き付けられ、「最後まで見届けなくては」という気にさせられた。文章や語彙も、敏子に合わせて選ばれているように思う。敏子の小舟は揺れに揺れる。感情がくるくる変わり、決めたことがすぐ揺らぐ。頼りない。あぶなっかしい。しかし、もともとの気質に加え、突然夫を喪うという経験をすればそれも当然かもしれない。その心の動きを丁寧に追っていて、飽きさせない。

終盤、「道を道とも気付かず、ぼんやり生きてきた自分を捨て去りたい。道があったのなら、大きく踏み外してみたい」と思うまでになる敏子。下巻ではどんな変貌を見せるのか期待したい。

魂萌え!〔上〕 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:魂萌え!〔上〕 (新潮文庫)より
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No.52:
(4pt)

独り生きていくためにこそ貴重な友の存在

この小説の影の主役は心臓麻痺でポックリと亡くなった夫、隆之である。この男が死んだことによって、アメリカに行ったきりだった長男は帰ってくるし、愛人の存在は明らかになるし、その復讐心から妻は生涯初の浮気をする。
 死んだら、その人の存在が無くなるわけではなく、死ぬことによってはじめて存在感が生まれることもあるのだ。人は他者の中にこそ生きている存在なのである。
 もちろん、本来の主役は、いきなり定年過ぎの夫に死なれ、ひとり残された妻、敏子である。最初は敏子に同情的に読み進むが、徐々に敏子の世間知らずぶり、お人好し加減、主体性のなさに、苛立ちを覚える。敏子は「日本」という国にも似ている。「アメリカ」という夫の支えを無くした時の「日本」をまるで擬人化したような思考回路、行動を敏子は取る。この小説にある種の救いが持てるのは、60歳目前に初めて世間に放り出された敏子が、キレたり、凹んだり、試行錯誤を繰り返ししながらも、独りだからこそ得ることの出来る自由を、自らの手でしっかり掴み取っていく点だ。相続問題、愛人問題など次々に押し寄せてくる困難の数々、その合間の貴重なインターミッションとなっているのが、気の置けない友達との会話である。さまざまな環境、思考を持つ友と話すことで、客観的に物事を捉えなおしたり、勇気付けられたりする。独り生きていくためにこそ、友達、仲間の存在が貴重であることを、この小説は教えてくれる。
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4101306338

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