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虐殺器官
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虐殺器官の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.03pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全43件 21~40 2/3ページ
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凄惨な光景が多く見受けられる本作だが、主人公の視点が常にどこか冷めているので、割とすんなり読めてしまう。そういう意味では奇妙な爽快感のようなものがある。特に戦闘シーンは淡々とした中に確実に敵を仕留める殺意のようなものを感じ、素直にかっこいいと思った。 しかしながら、この作品はSF、ミリタリーなど、どのジャンルでとらえても中途半端な感じが否めない。 近未来という設定だが、あまり現代と変わっていないようにも見える。 また、「言語」が人々を先導するキーワードになっているが、例えばジョージ・オーウェルの「1984」のような言語の改変によって大衆を統制するといったような、具体性を伴った社会学、政治学的な解説がないので最後まで現実感のない設定に見えてしまった。その辺のディテールがもっとあれば、さらに重厚な作品になったかもしれない。 総じて面白かったのだが期待していたほどではなかった、と言うのが正直な感想です。 | ||||
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今までSFを読んだことがなかったため、新鮮な気持ちでページをめくることが出来ました。読み終えた感想としては、散りばめられた知識や、深いテーマなどから、凄い小説であることは分かりましたが、エンターテイメントとしては凡作だということです。主人公は殺し屋ですので、世界各地で敵と戦うわけですが、どうも緊迫感に欠ける気がします。文章が特徴的なのが原因なのか、それとも僕の理解力の問題なのか分かりませんが、展開が淡々としていて、読んでいて面白いと思うことは少なかったです。もちろん、虐殺器官というタイトルの意味もよく考えられていると思いますし、圧倒的な知識量で読者を小説の中に連れて行ってはくれますが、物語としては何かが足りない気がします。凄い作品ではあるので、賞を取ったことには納得出来ますが、普段SFを読まない人間にとっては苦痛かもしれません。小説を読むことすらないという人ならば、最後まで読み終えることにも一苦労でしょう。長々と書いてきて話が四方に逸れましたが、結局のところ、凄い小説ですが面白いと思えるかは人によるところが大きいということです。 | ||||
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20万部超売れている作品で、評論家ウケも良いということで読んでみた。ナイーブでペダンティックな一人称語りで、近未来を舞台にしたSFというか、ミステリー的な作品。殺戮シーンなどはグロテスクではあるが、意図しているのか映像的で少し距離感がある。思想小説というか、作者の主張や「世界はこうだ」という語りを楽しむタイプの小説だと思う。そういうのが好きな人であればおすすめ。 筋立て自体は、「地獄の黙示録」に似てると指摘している人がいるが、アメリカ軍の暗殺部隊の主人公が交通事故にあった母親の延命装置を外したことに悩みつつ、民族虐殺などの首謀者とされる男を追っていく、その謎を探っていく、といったシンプルな構成になっている。 まあ、アメリカは世界の警察をやめようとしているし、ロシアのクリミア編入や中国の台頭など、大国が国際政治の主要なプレーヤーに戻りつつあるような感じもしつつ、中東の不安定な状態は変わらないわけだが、ブッシュ政権下のアメリカの先には、こういう未来もあったのかなという感じはある。 言語学なり、文学(カフカとか)なり、脳科学なりのトリビアを含んだ会話の先に、「虐殺の文法」という本書の核となるアイディア(トリック)があるのだが、イマイチ自分はピンとこなかったのが残念。「万人の闘争」ホッブスを援用してみるなら、強大な力を持った国家が上にいるから人は暴力を控えるわけだが、逆に強力な国家がいない場合だと民兵なりテロなりが頻発する、そこまではいい。だが、それは何らかの利益のためだ。 まあ、世界観にイチイチ突っ込むのも無粋か。あと、ジャンルは違うが中村文則になんとなく似ていると思った。ダイアローグの形式を借りた自問自答というか、主要キャラの主人公とポールとその情婦で会話がスムーズに成り立ちすぎているというか、人物としては同じような感じだ。そのあたりが、他者がいない感じがあり、かつ、「生死」なり「罪」や「罰」なりに対する問答など、案外、読者がかぶるんじゃないかとも感じた。 | ||||
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・母親の件でウジウジしすぎており、任務中極短期間にターゲットにゾッコン惚れ込んで ほとんど依存症になり、同レベルの戦闘集団を前にすると怖気づく主人公には親しみやすさよりも まず先に鍛錬された特殊部隊員という前提に疑問が沸く ・ジョンと終盤の主人公は相当過激なことをやるけどイマイチそうなる動機が頭デッカチで希薄 ・緊迫した状況やそう必要とも思えないのに衒学的な薀蓄が語られドライブ感が途切れる ・先進国とそれに搾取される途上国の二極化が世界観のバックボーンとしてあってそのあたりは楽しめた | ||||
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最近大森望さんの「21世紀SF1000」という書評集で高評価だったもので読みたくなり、手に取りました。 読みながら連想したのは「地獄の黙次録」、PKディック、ドーキンス(作中にも出てきますが)、「結晶世界」、「ブラッドミュージック」でした。 と過去の名作と言われる作品や問題作を書いた著者を上げたのですが、正直傑作になりそこねた話、という印象が否めません。 しょっぱな一人称の「ぼく」でつまずき(アメリカ人でこの職業の設定に合わないと思う)、内省的なパートが中途半端に長いので冗長、SF的なガジェットと世界観がうまくなじんでいない上、ガジェット自体古臭く感じる(カタカナのルビが余計)、世界そのものの作り方が中途半端、何より、核になるアイディアの説得力が弱く、それを固めるだけの描写が足りないので、ラストがどうも感動しきれませんでした。 若い頃はSFを読んでいましたが、最近のSFを読み付けてないので、うまく話に乗れなかったのかもしれません。 「機関」ではなくなぜ「器官」なのか、題名そのものに二重の意味があるかもしれない(あまり書くとネタバレになりそうですが)といったことを考えさせられたあたり、あとラスト近くの生物学的な観点からの考察は惹かれるものがありました。 もしこれを震災前に読んだらもう少し高い評価だったのかもしれませんが、今の日本はある種近未来SFのような状況だと思っているので、なまじのSFでは驚けないし、感動できない。SFの宿命かもしれませんが、それが一番この本の評価に影響したのかなとも思います。 | ||||
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世界の崩壊と個人の在り処(作者の死生観といっても良い)の二重奏で読ませる一冊。 21世紀の文学は、ラノベじゃない世界(本作は近未来ものだが、ガジェット満載というものじゃないのでSF度は低い) でも、個>世界なのだということを実感。 壊れゆく世界を描きながらも、最後は個人の在り処と愛の行く末に収斂している。それを「個人の集合体が世界なので是」 とするか「矮小な世界に行ってしまったと否」とするかで、この作品に対する評価は変わるだろう。 最後に。タイトルになっている「虐殺器官」という設定は魅力的。こちらに傾けば「世界の崩壊」をメインにした ハードSFになったと感じます。 | ||||
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話としては面白いし、この手の本を読み慣れている人には表現方法も納得できるが、万人に進められる訳ではないと思う。 特に女性や青少年には積極的に進められないな。 | ||||
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50%過ぎてからようやく本題です。 すばらしいアイデアは散りばめられているものの、物語として整理しきれていない印象。 個人的には情報処理観点の脳と実存、のような観点が興味を引かれましたが、これも深堀りはされずチョイと出た程度。 とは言うものの、原発事故とかシリア情勢のニュースを見る度にこの本を思い出しますね。 | ||||
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小松左京さんが指摘したように、SF小説としては根幹のアイデアの論理展開とプロットが弱いのが弱点だけど、筆力と細部の設定・描写で読ませる近未来軍事諜報SF。 グローバル化した世界資本主義における先進国・後進国間の命の価値の不均衡とか、自分達の生命や安全を守るために他者の命を蔑ろにすることの倫理的な罪の問題をテーマにした思索的な娯楽小説。 | ||||
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絶望に打ちひしがれた挙句とはいえ、たった一人の人間が世界各地で ジェノサイドを引き起こせた手段としては『虐殺の文法、言語』の説明 がフワッとし過ぎて、しっくりとは来なかった。況してや『それ』を 主人公に比較的簡単に引き継がせて新たなジョンポールとして今度は アメリカを災厄の渦に叩き落とす…という皮肉めいた衝撃的なラスト迄 描いてしまっているのだから、やはりより具体的な理由づけは必要だった と思う。細かい点について言えば1.登場人物たちの死生観などに関わる 会話シーンで説明的口調が過ぎていること2.極秘の軍事作戦においては 精緻さが要求される筈なのに、○○も標的だということを作戦部隊の核 である主人公が知らないということ等が気になった。ただ全体としては スピード感とスリルのある内容で、ほぼ一気に読み終えることが出来たし、 映像化しても面白いと思う。他の著作も読みたいと思わせてくれる作品 だったので、作者の早逝は何とも残念でならない。 | ||||
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テクノロジーの進化やポスト9.11の世界観など、〈舞台装置〉は秀逸。 しかし主人公がどう見ても日本生まれの日本育ちにしか見えず、キリスト教社会で生まれ育ったアメリカ特殊工作員というリアリティに説得力が皆無。 ジョン・ポールを追っていたのが、いつしかその愛人に偏執し、結果、同僚は最悪の末路を辿る羽目に。 それで命の尊さや母の死の悲しみ云々を説かれても……。 病んだ世界、病んだアメリカを描くことに特化したのなら、傑作かもしれない。 | ||||
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ミステリーは普段さほど読まないんですが、 amazonにて、”おすすめ”本としてマッチングされたのが目に留まり、読んでみました。 作者のバックグラウンドはひとまず抜きにして、率直に面白かったです。 徹底的に一人称な物語で、主人公視点で物語が描かれてます。 とても冷静な印象を受ける心理描写は、陰鬱とも言えるし、少し病的とも言えるかも。 戦闘シーンが多数ある本作において、これが独特のスピード感を生み出してます。 ガンアクションシーン中に、クラシック音楽が聞こえてくるようなクールさがありますね。 近未来SFミステリーとして、ポイントは押さえられています。 暗殺という特殊任務にあたるのが、アメリカ人主人公。 生体組織が人工培養されるようになり、あらゆる工業製品の部材として使用される世界。 彼が使う武器、乗り込む乗り物、網膜に纏うセンシングフィルム等に、 これら最新テクノロジーが使われています。 単純に最先端技術というだけでなく、生命体を利用・培養してるところが、グロテスク。 しかし、タイトルとなっている虐殺器官というのは、上記ような気味の悪い最新プロダクツではありません。 この虐殺器官を主人公が探るというのが大筋です。 近未来の管理社会や、異常に発達してしまうバイオテクノロジーに対する問題提起やら、 SF小説らしいツボも押さえられていきます。 とはいえこの本の一番の特徴は、主人公の文学的素養が半端ないことかもしれません。 登場人物とのやり取りの半分以上が分かんないネタでした。。 そこに付いていけない読者としては、かなりテンポが崩された印象があります。 いろんな意味でテクニカルな本なのかもしれませんね。 | ||||
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知人の薦めで読んでみました。 超現代文学的SFといった感じでしょうか。 楽しめましたが、小説内には揺さぶられるまでのものはなかったので、 ☆は3つ止まりです。 物凄い情報量と文学的な表現が詰まってはいるのですが、 SFとしても文学小説としても個人的にはパンチがないなーと。 言葉(単語)の選び方が舞城と近い感じがしました。 ちょっと優等生に仕上げすぎている感じがします。 惜しい著者であり、1冊でした。 | ||||
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ジョン・ポールの、虐殺を世界に広めた理由というのがなかなか面白かったと思います。 イラク戦争がエンターテインメントだったり、WTC崩壊が一種のスペクタクル映像だったりという、いわば「別世界の出来事」という私たちの感覚を上手く捉えているのかもしれません。 主人公が感情をテクノロジーでコントロールされ、良心や罪の意識のないままに少年兵を殺したことに対して、逆に罪や罰を求めるという心理も、分からなくはありません。 しかし、この話において、その他の様々な軍事技術や情報技術がどこまで物語上必要だったのかというと、首を傾げるところではあります。 話のアイデアと、著者が書きたいSF要素に、微妙なズレを感じるのです。 主人公の冗長な独白はともかくとして、全体的に読みやすい文章とスピーディな展開があり、敷居が高く見られがちなSFというジャンルにおいては、入門編としても需要があることでしょう。 ただしかし、作品としてこれが物凄い支持や評価を得ているのを見ると、SFの没落というのを感じざるを得ません。 | ||||
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SF的な設定の「推理小説」や「文芸作品」はともかくとして、SFを作者、出版社ともに前面に押し出した小説を久しぶりに読みました。 2006年、小松左京賞最終候補にして、著者のデビュー作。 2007年刊行、2010年文庫化。 2001年9月11日の同時多発テロ以降、世界各地で内戦や民族虐殺が勃発。 アメリカ情報軍・特殊検索群i分遣隊のクラヴィス・シェパード大尉は、虐殺の背後に見え隠れするジョン・ポールと言う謎の人物を追っていくが…。 期待が大きかった分、不満な点もあり、と言ったところでしょうか。 【物語性の脆弱さ】 アメリカと言う巨大国家を敵に回していることから、ジョン・ポールは相当に緻密に活動をしているはずで、「どうやって追い詰めるのか」は、ストーリー展開を面白くするかどうかの鍵になるはず。 ところが、主人公も情報軍も後追いばかりで、追い詰めていくスリル感が薄いように思います。 「読み始めたら止まらない」と言う感覚にはなれませんでした。 【テーマについて説明不足】 題名から、「虐殺」と言う行為がテーマになっていることが推察されます。 また、その鍵を握る人物がジョン・ポールであることは明らか。 ならば、「虐殺」をどのようにジョン・ポールが操っていたのか、と言う点に読者の興味は向かうでしょうが、その説明が抽象的なのです。 中心的なテーマなのですから、具体的な描写で、説得力を持たせる必要があったのではないでしょうか。 −−以上は、普段「ミステリ」が中心の読者の感想です。 SFは久しぶりなため、SFを普段読んでいる方とは、違う感じ方をしていると思います。 ひとつ、これがSFなのかな、と興味を惹いた点があります。 それは「虐殺」に対する独特の世界観・思想観と言ったもの。 これは、ほかのジャンルでは描くことが出来ないものではないか、と感じました。 もしかすると、そこにこの小説の存在意義があるのかも…。 | ||||
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ネタバレを含みます。 ○世界観 良かったです。 進んだ技術による監視社会、オルタナ、人工筋肉など、普段SFを読まない私には 「いかにもSFって感じだな」と楽しむことができました。 また核が戦争に使われているなど、MGSとの共通点を感じました。 ○ストーリー ジョン・ポールはいかにして虐殺を起こしてきたのか、 職務である暗殺と母親を安楽死させたことの違いは何なのか、 などなど面白い題材はいくつもありました。 ただそれが回収しきれていなかったような気がします。 特にタイトルにもなっている「虐殺器官=虐殺の文法=言葉」について。 最初は何かサブリミナル効果を持つメディアでも使って洗脳しているのかな、 などと想像していましたが、まさか「特定の話し方でで話すだけ」とは。 正直これだけでアメリカを滅亡に追い込めるといわれてもぴんと来ません。 また、主人公がルツィアに恋愛感情以上の何かを抱いていたとしても 彼女が殺されたとたんにあそこまで豹変するとは。 「主人公は未熟」という前提で書かれたようですが、それにしても……と。 個人的にバッドエンドが苦手だからかもしれませんが、もう少し希望のある エンディングがよかったな、と思います。 | ||||
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要人暗殺任務を担当する部隊の1人を主人公とするSF小説。 かなり評判が良い作品のようだが、個人的にはそこまでの魅力は感じなかった。 SFとしての近未来の装備や武器の設定は面白いが それらの説明や描写に行数を取られてテンポが悪いように思う。 序盤の作戦行動はミリタリー系に詳しくない人にもわかるよう、 かなり親切に説明されているが、その分、少し幼稚に感じてしまったし、 中盤以降は近未来の社会を表現する情景描写がくどく思えてしまった。 設定的に軍事関係の要素が入っているのはもちろんとして さらに政治や社会情勢までトッピングされていて 内容が非常に濃く、そういうのにどっぷりとハマる人はいいのだが、 サクサクと展開していくスピード感を重視したい私は 話の本筋をたどろうとするだけで読み疲れてしまった。 終盤はなかなかに盛り上がるし、 タイトルにも挙がる「虐殺器官」というアイデアはすごく刺激的。 映像化に向いている素材だと思う。 | ||||
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新聞広告で宮部みゆきが絶賛していたのと、タイトルへの興味もあって手に取った。 「虐殺器官」というアイディアは際立って新しいが、リアリティの与え方がいまひとつ。進化論、心理学、言語学などをその存在の根拠に求めているが、生理学的知見というより思想的であり、かつこの分野にそこそこの知見を有するものにとっては議論の底が浅く、満足のいくリアリティは構築できていない。 物語にはバイオマシン、インプラントセンサ、ナノマシンなど近未来的なデバイスが溢れていて、そこはSF的世界ではあるが、それら小道具もテーマである「虐殺器官」に科学的リアリティを与えることには寄与しておらず、SFとは言い難い。 SFは昔、半村良や小松左京、星新一などが好きでほとんど読んだが、最近はこういうバイオハザードのようなグロテスクでスプラッタなゲーム感覚の作品の評価が高いのだろうか。作者の非凡な才能は理解できるが、筆者には馴染めなかった。似たようなテーマで半村良の不可触領域 (角川文庫 緑 375-27)を思いだした。30何年ぶりに再読してみたくなった。 | ||||
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これでも一週間かけてじっくり読んだんです。 ながいこと罪だの罰だの書いてある。それは、主人公がそもそもなぜ軍に入ったのかという説明があってこその思索だと思う。こういうナイーブな主人公がそもそもなぜ軍に入ったのか?が母親との関係と密接につながっていて、しっかりとした説明がなされるのだとずっと思っていて、結局最後まで書かれていなかったことに自分は驚いた。病院で母親の延命治療終わらせるか否かの描写はしつこいくらいあるから、絶対なにかの伏線だと思っていた。 解説に兵士を調整するテクノロジーが、主人公を成熟した大人にさせない。と、書いてあるけれど、それだと、繊細な主人公が人を殺すために軍に入る意味がわからない。まあ、ベタに父親が軍人だったとか考えられるけど、そういう説明は一切ない。 精神を理屈に置き換えて禅問答するというのは、SF小説の作法なんだろうか?(自分はたくさんSFを読むわけではないのでよくわからないけど)そこはあまりにも熱心でまあ、著者が言いたいことなんだろうなあとは思うが、具体的にどうして内戦を起こすのか書いて欲しい。というか、SF小説なのに、虐殺を起こす方法という魔法が言葉でしゃべるだけっていうのがなんともアナログすぎて拍子抜けしてしまった。 ジョンポールはテクノロジーを駆使していると思っていたから。そうでないと時間的にも説明つかない気がしたし。うーん、これもある種の著者のジョーク(欧米的な?)なんだろうな。日本人の自分にはぜんぜん笑えないけど。 | ||||
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しかもどういう状況下で作者がこれを書いたか、あとがき等読むと本当に圧倒されてしまうのですが、評判の割にはずいぶん衝撃の少ない作品だなと感じました。しかしそれは、私の持つ「現在の常識」のせいかもしれない。「わかりやすいもの」で読後感が満たされることを、日頃喜びすぎていて、そうでない小説(ドンデン返しや強烈な「泣かせ」サービスはなくても、文章力が極めて高かったり、発想が面白かったり)への評価は、文芸・エンターテイメント問わず、日本では未だに低いままのような。こちら側のそうした「常識」眼鏡を外してみれば、この作品はほんとうに素晴らしい、と思いました。特に世界観がすばらしい。 にも関わらずどことなく物足りない(特に後半)ように感じられるのは、同じ順で3度ほど繰り返されるシーン(そこで起きる事件は無論、異なるのですが、死を想い、ジョン・ポールを追い、降下し、戦い、帰還し、また死を想う・・・という点で)が少し退屈、さらにSFという分野にどこまでの人間ドラマ・文芸的感性を求めるのかという趣味の問題、それに年齢層もあるかもしれない。作者と同年代かそれ以上の読者にしてみれば(私もそうですが)まったく同じ流行・文化を経てきているわけですから新たに得る刺激が少ない。同年代で同業者である作家さんたち(しかも売れっ子の方々)がこぞってこの作者を褒めるのは、「書き手」と「読み手」の感性のちがいのように思います。その点、小松左京氏は「読み手」に近い感性を未だに持っていらっしゃるのかも・・・なんてことを考えてしまいました。 何より残念だったのが、私は作中でも触れられているJ・G・バラードの大ファンなので、これは日本人が初めてその域にまで到達するものすごい作品かと、最初読み始めたときは鳥肌が立つほど期待しました。SFなのに人の精神の内へ内へと向かうあたり、また「言葉」の扱い方などはきちんと日本的「言霊」風ストーリー展開が興味深く、さらに作者は知識量が半端じゃない上、文章力もあり、、、と、そこまではいいのですが、肝心の主人公、そうした思索の結果、なぜかごくごくあたりまえのところに落ち着いてしまう。初めてバラードを読んだ時の脳を横殴りにされたような衝撃がない。「残虐行為展覧会」あとがきにあるバラードと松岡正剛の対談を読むたび、この分野は日本人に向いている!!と感じている私にとっては、日本人作家による初めての期待の一作、だっただけに、もっと狂ったような独自性を出してほしかった。あるいは牧野修「MOUSE(マウス) (ハヤカワ文庫JA)」のような魅力あるアニメ風世界にしてほしかった。そうしたらものすごく堪能できただろうに・・・とそれで☆を減らしました。 あと、これは蛇足ですが個人的にすぎる感想として、分かる人にだけ向けて・・・やはり作中で語られる『プライベート・ライアン』、この映画の冒頭への一部ホラーファンの感想と、この本の冒頭を読んだ一部読書好きの感想って、すごく似ているのではと少々皮肉に感じられ・・・なので個人的には、この映画のくだりは、ない方が良かったです。 | ||||
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