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グランド・ミステリー
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【この小説が収録されている参考書籍】
グランド・ミステリーの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.38pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全1件 1~1 1/1ページ
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『モーダルな現象』でぎゃっと言い、『神器』で打ちのめされて久しぶりに奥泉節を読みたいと、わくわくしながらページをめくったのに、いまいち感が残ってしまった。漱石仕込みの落語的な少し砕けた文体は相変わらず健在だし、読みづらかった冒頭部分も読み進むと引き込む力もそれなりにあった、主人公の妹さんの暮らす昭和初年のアッパー・ミドルの世界の描写も何となく『細雪』調で良い(ついでに「海外商事交渉に強くて」「大阪控訴院の左陪席まで務めた」弁護士というくだりで、クスクス笑ってしまった。そうなんですこの弁護士さんがどんなリベラルな言動で、右翼青年の顰蹙をかっても、どっか右翼界の上層部から圧力がかかるから、彼は大丈夫なんですよ−これは「日本近代文学史」の基礎知識だけど)。 一人一人の登場人物も個性的で良いんだが、ストーリーが何となくちまちましてしまっている。『神器』ではもっと得体の知れない「死の世界」タカマガハラ=アトランティスにつながっているはずの、「国際問題研究所」がせいぜい麻薬取引やウラン密輸=原爆開発程度の仕事に従事する安っぽい悪の組織になっているものつまらない。紅頭中将の一派や昆布谷君の方の未来予知=「二重の生」のストーリーとのつながりが悪い気がする。顔振曹長だって本来キー・パーソンの一人になりそうなのに、生かし切れていない。 一番いただけないのはヒロイン志津子の変貌の必然性が全くわからないところだ(ここが二つの世界をつないでいるポイントなのに)。もちろん「必然性の無さ」そのものが必然である場合もあるが、これは奥泉作品の「必然性の無さ」の必然性が全く感じられない。文体、ストーリ、登場人物、描写、全てが奥泉作品としてまあ平均点をいっているのに、この不完全燃焼感は続編『神器』を前提にしているが故のことなのか。 ラスト・シーンは皮肉な批評を丸め込んでしまうさわやかさがあり(これがひとえに主人公の妹さんの「お人柄」なところはまいった。こんな人が居たなら、ぜひお嫁さんにしたい)これで全てよしといいたくなるが、最後のこのシーンに著者の意地の悪い謎かけが埋め込まれているような気もする。、 | ||||
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