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エンプティー・チェア



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エンプティー・チェアの評価: 8.00/10点 レビュー 5件。 Sランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全3件 1~3 1/1ページ
No.3:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

題名がそぐわない

リンカーン・ライム3作目はライムのテリトリーであるニューヨークを離れたノースカロライナ州のパケノーク郡なる異郷の田舎町での捜査。
ニューヨークのどこにどんな土があり、どんな建物が建っているか、手に取るように熟知していたライムだが、やはり異郷の地ではそれが通用せず、また現地捜査官の捜査レベルの低さに失望を禁じえない。
作中で例えられているように世界一の犯罪学者と称された彼もそこでは“陸に上がった魚”で、いつものような調子が出ない。

さらにライムとアメリアに捜査協力を頼んだ保安官ジム・ベル―なんと『コフィン・ダンサー』で活躍したローランド・ベルのいとこ!―が殊更に彼ら2人を優遇するものだから、地元の保安官連中は面白くない。そんな軋轢との戦いも今回は要素に加わっている。

さらに今回は今まで師弟関係と愛情を分かち合う強い絆で結ばれていたライムとアメリアの関係に変化が訪れる。なんとアメリアがライムの意見を疑問視し、犯人と思われる少年を留置場から逃がして独自の判断で捜査に臨むのだ。
証拠が全てだという現代に甦ったシャーロック・ホームズとも云えるライムの考えと容疑者に直に対峙したアメリアの直感が錯綜する。云わば理と情の錯綜だ。
そして読んでいるこちらはどちらが正しいのかハラハラしながら読むようになる。

そして今回も追うべき犯人の素性は判っている。ただ前作はライムたちにとって未詳であったが、読者たちにとっては犯人の身元は判っていた。今回はライムたちも判っているところに違いがある。
これがまた曲者で、はてさてどんなサプライズがあるのかと身構えてしまう。

その追われる犯人とはギャレット・ハンロンという16歳の少年。養子として迎えいられたものの馴染めず、浮浪少年のように気に食わない人間がいれば暴力に訴え、拉致したりするという癌ともいうべき存在である。
彼はまた昆虫を愛でる“昆虫少年”と呼ばれており、その知能は年齢にそぐわない専門書を読解するくらい高い。彼はその仇名のとおり、昆虫に関する知識を基に行動し、大人達を手玉に取る。特にハチを味方につけて、生物トラップとして活用し、彼を追う者達へ容赦ない痛手を負わせる。

やはり今回もどんでん返しがあった。それは一概にこれだ!と云えるものではなく、あらゆる要素に亘って読者の予想の上をいく展開を見せていると思う。

特に今回は事件の本質自体が変わっている。前2作が連続殺人鬼対名探偵というシンプルな構成にその正体にサプライズを仕込んでいた。そして今回はライムが協力を依頼されたのは誘拐事件で犯人の居所およびその獲保と監禁されている被誘拐者の救出だったのが、捜査が進むにつれ、本当の巨悪が見えてくるという構図になっている。

しかしなによりも今回のどんでん返しは警官殺しの罪に問われたサックスの処分だろう。これは私も凄いと思った。
どうにもならない事実をひっくり返すのにこれほど得心のいく新事実もない。いやあ、やはりディーヴァーはディーヴァーなのだなぁと感嘆した次第。

またシリーズ3作目になっても更なる鑑識に関する知識を提供しながら、今回は“昆虫少年”ギャレットが作中で色んな昆虫に纏わる習性や特殊な能力について薀蓄を傾ける。

しかし上に述べた様々な手法や技法を駆使してはいるものの、物語としてはいささか盛り上がりにかけるように思えた。
シリーズ物でありながらも作品ごとに趣向を変えるディーヴァー。今回はリアルタイムで殺人が起きるというものでなく、追う者と追われる者の頭脳合戦という構図を描きながら、それを包含する大きな構図を徐々に展開するという趣向だったが、個人的にはライムの唯我独尊ぶりが低減され、逆にこの話ではライムよりも他の人物の方がよかったのではないかと思わされた。
今回は証拠が語る事実を重視する捜査方法よりも捜査経験豊富なベテラン刑事が直感に頼って捜査を進める手法の方が適していたように思う。

さて今回の題名ともなっているエンプティ・チェアーとは「エンプティ・チェアー療法」に由来する。これは空っぽの椅子を患者の前に置き、患者にそこに座っている者を想像させ、色んな質問を投げかけ、それを椅子に向かって応えさせることで、患者の深層心理で抱えている感情を引き出し、更生させるという方法だ。

しかし果たして今回それが題名になるほど物語に大きな役割を果たしていたかというと甚だ疑問だ。私が読んだのは文庫本だが、文庫本の表紙にあるように今回の影の主役は蜂だし、またメインとなるのはギャレット・ハンロンという“昆虫少年”がメインだから、それに倣った題名の方が的を射ていると思う(原文が不明だから憶測でしかないが、やはり『インセクト・ボーイ』か『バグ・ボーイ』なのだろうか?)。

また『悪魔の涙』に引き続いてファンサービスというべき一文があった。ライムがギャレットの隠れ家に来たときに心中でもらす人物、元FBI交渉人アーサー・ポターは『静寂の叫び』の主人公。ここにもまたディーヴァーの作品世界の膨らみを感じさせてくれる演出があった。今回は一行で、しかもライムの心情吐露の部分での名のみでの登場なので気付かない人もいたのではないだろうか。

ということで前作『コフィン・ダンサー』が1作目を超えるエンタテインメント性とどんでん返しの意外性を備えた稀有の傑作だっただけに今回の作品はどちらかといえば“静”のディーヴァーだったように感じた。
しかしこの先の彼の作品がさらに盛り上がりを見せることを知っているがゆえに彼の作品の期待感は高まるばかりだ。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S
No.2:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

エンプティー・チェアの感想

ディーヴァーの作品はボリュームがあって、手に取るのを躊躇してしまうのですが、やはり読むと面白いですね。
事件のテンポはスピーディーだし、緊張感あるわ、最後は驚きの真相の安定感。
シリーズとしてはこの後の作品の評判がさらに良くなる為、ひとまず順番に3作目を読書でした。話が繋がっているので順番は大事です。

本作で思う所としては、探偵役のリンカーン・ライムの凄さがない。
前作までの四肢麻痺なのに圧倒的な知力で他を圧倒する力強さの良さが今回感じられず、苦悩や挫折、弱々しさを感じました。

ストーリー進行も最後はどんでん返しがあるだろうと身構えて読んでしまった為、現在の進行に対するライムの推理が間違っている気にもなり、ライムどうしちゃったんだよ……と思う心境でした。まぁ、今作はライムより、サックスが主人公で輝いてました。

相変わらずオチが読めない真相で凄いですね。
ただ、今作はやられた!と言う一撃ではなくて、複雑で言葉がでない気持ちでした。蜂多すぎです。

▼以下、ネタバレ感想

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egut
T4OQ1KM0
No.1:3人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)
【ネタバレかも!?】 (1件の連絡あり)[]  ネタバレを表示する

読めばやっぱり面白い

シリ-ズ3作目。1年ぶりくらいにこのシリ-ズを読むがコフィンダンサ-は最高だったが、今作も期待は外さず。

それにしても、趣向がまたがらっと変わって今度は田舎町が舞台。なれない場所と科学分析機材も無いなかサックスの暴走。容疑者を逃す為に一緒に逃げ、追ってきた警察官も殺してしまう。

追い詰められたリンカ-ンがどう乗り越え真犯人に詰め寄り、そしてサックス助けるのか。

主役の一人のサックスがどうなるのかが今作の目玉。期待通りの大どんでん返しはあるのか?・・・いや、無かったら大変な事になるので楽しみに読みましょう。

タカタソン
HU0OGV5Q

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