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ウォッチメイカー



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ウォッチメイカーの評価: 8.60/10点 レビュー 5件。 Sランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.60pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全2件 1~2 1/1ページ
No.2:8人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)
【ネタバレかも!?】 (1件の連絡あり)[]  ネタバレを表示する

リンカーン・ライム最大のライバル登場!

リンカーン・ライムシリーズ7作目にしてもう1人のシリーズキャラクター、キャサリン・ダンス初登場作。
2008年版『このミス』で堂々1位に輝いた。ネットでの評判もすごく、傑作との文字がそこここに見られる。期待に胸躍らせながら書を開いた。

いやはやウォッチメイカー事件とはこういう事件だったのか、というのが正直な感想。つまり殺し屋ウォッチメイカーとはその名の通り、時計を動かす複雑な構造を備えた犯罪計画を立てる―作中では複雑機構(コンプリケーション)と述べられている―殺し屋という意味なのだ。
特徴的なのは今回3つの事件が並行して語られること。ウォッチメイカー事件に警察の汚職が絡んだ会計士の自殺偽装事件。そして同じバーの常連だったメインテナンス会社の経営者の強盗殺人事件。従って捜査メモも3種類書かれる。

そしてこの複雑な事件を見破るには何よりもキャサリン・ダンスが登場したというのが大きいだろう。カリフォルニア捜査局の捜査官でボディ・ランゲージや言葉遣いを観察して分析し、尋問する相手の心理と読み取るキネクシスのエキスパート。とにかく相手を観察し、何を考え何を隠しているのかを読み取ることが何よりも好きな“人間中毒者”だ。
今回は彼女の尋問で目撃者が何をどこで見たかが絞り込まれ、サックスの現場検証の精度が増す効果が得られている。

また中盤ウォッチメイカーの相棒ヴィンセントが捕まるのも彼女のキネクシスによる尋問からだし、そこからウォッチメイカーの正体さえも割り出していく。

つまりキャサリンには嘘が通じないのだ。どんな嘘をついても悟られてしまう。そんな尋問のエキスパートに嘘をつくことが自覚的でないウォッチメイカーをいきなりぶつけるところにディーヴァーのネタを出し惜しみしない潔さを感じる。
常に新作におよそ考えうる難問を導入する旺盛なサービス精神には毎度これを超える作品が次書けるのかと妙な心配すらしてしまうほどだ。

特に今回注目したいのはライムシリーズ1作目の『ボーン・コレクター』が内容に大いに関わっていることだ。詳しくは未読の方の興を削ぐので書かないが、こういう趣向はシリーズ物を愉しむ読者にとっては縦軸だけでなく横軸への広がりを見せ、大きな絵を描くように世界観が楽しめる。
逆に読者は記憶力をさらに試されることになるわけで、今まで他作品の主人公のカメオ出演だけでなく、事細かに設定されたリンカーン・ライムワールドを熟読しておくべきだろう。そうすればますますこのシリーズが楽しめるに違いない。

本書の題名は殺し屋ウォッチメイカーだが、原題は“The Cold Moon”。「冷たい月」を表すこの言葉はウォッチメイカーが現場に残した手紙に書かれた詩の一節であると同時に、太陰暦を意味する言葉。これはウォッチメイカーが現場に残した置時計が太陰暦も表示されることも関係している。
ただ今回はあまり原題は物語に有機的に関わっていないようだ。邦訳のウォッチメイカーの方が殺し屋の名前という単純な意味だけでなくてしっくり来る。

また前作ではセリットーが恐怖心に見舞われるというアクシデントが起きたが、今回はサックスにある事実がもたらされる。
それは尊敬して止まない元警官の亡き父が不正を働いていたという事実。街を仕切るギャングと懇意になり、商店主や土建業者から金を強請り取っていたのだった。サックスの元恋人の警官も不正で捕まった過去があるだけに警官の汚職にひどい嫌悪感を抱いていたサックスだったが、自分が警察官となるアイコンでもあった父親がそれに加担していたというアイデンティティが侵される事態に陥る。サックスは警察を辞する決意までする。

そんなサックスを上手くサポートするのが前作から登場した“ルーキー”ロナルド・プラスキーだ。彼もサックスの部下として時に警官、時に鑑識課員の卵として共に現場検証に当たるようになる。新人ゆえの熱心さと柔軟な物の考え方でライムたちの思いもつかなかったような助言もするようになり、前作に比べて格段に成長しており、キャラクターにも厚みが出てきた。
また一人ライムチームに魅力的なキャラが加わった。

他にもウォッチメイカーの相棒だったヴィンセント・レノルズの忌まわしい過去などはディーヴァーの騙りの上手さに少なからず驚いたのに、そんなことがもう忘れてしまうほどサプライズに満ちている。
本当にディーヴァーという作家は読者の心を上手く誘導するのが上手い。彼こそ本当の“魔術師”ではないだろうか。

全くこれからもますます目が離せない。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S
No.1:5人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

ウォッチメイカーの感想

リンカーン・ライムとは、四肢麻痺の鑑識の天才。こういったキャラクターだと「鬼警部アイアンサイド」を
思い出すが、ちょっと古過ぎるか・・・。本を手にとって最初のページの登場人物紹介のところに、
ジェラルド・ダンカン・・・ウォッチメイカーとある。何故犯人の名前が?と不思議に感じたが、読み進めてその訳が解かった。始めからきめ細かい描写の文章で状況を読者に示す書き方をしている。海外作家は得てしてこういった文章を書くのは承知していたが、この本に限って云えば計算なのか?自然に作家の意図する方に
眼を向けた読み方をしていく。二重、三重の意外性があり最後まで読者を引っ張っていく力は並みの作家ではない証拠だ。ホンの小さな証言、些細な出来事などを神のごとく閃きと名推理で言い当てる、といったアホらしい設定ではなく、周りにいる仲間や協力者たちの感想とか思いつきなどをヒントに思考を進める捜査官という人物設定が良い。そして事件には真っ向から挑むため微細証拠の収集や周辺の聞き込みなど基本的な作業をきめ細かく指揮し、その役割を充分認識した仲間たちの活躍で謎の犯行を重ねる犯人に肉薄していく。
色々な伏線を回収していく終盤の動きとストーリーの多様さでリンカーン・ライムのファンも初めて読んだ人も楽しめるミステリーと云える。

ニコラス刑事
25MT9OHA

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