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もう過去はいらない



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【この小説が収録されている参考書籍】
もう過去はいらない (創元推理文庫)

もう過去はいらないの評価: 6.00/10点 レビュー 4件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点6.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(8pt)

食えないジジイ、バック・シャッツ

「おれはお前が好きじゃない」が口癖の元刑事バック・シャッツ。前作で撃たれて今は介護付き施設に入っており、妻のローズは住み慣れた家を売らなくてはいけなくなって真剣に怒っている。
厳しいリハビリを重ねてやっと歩行器を使って歩けるまでになったバック。前作ではミステリとしてアウシュヴィッツの亡霊と金塊を追い、殺人犯を探すというストーリーだった。
そのストーリーに無理なく入れるように主人公をユダヤ人という設定なのかと思っていたがどうやら違うようだ。根本にあるのは、作中に書かれているようにどんな時代でも
ユダヤ人たちはアメリカ社会では不安定な立場だということにメッセージがあるようだ。この辺は島国の中でノー天気に暮らす黄色い猿には理解が足りない部分なんだろう。
医者や弁護士といった上流社会にあっても、認めるが信用はしないといったことがあるのかも知れない。現にKKKなんてのも実際あるわけだし。
1965年と2009年が交互に描かれる。1965年のバックはまるでダーティ・ハリーだ。贅沢に金のかかった家具調度品とフカフカのジュータンが敷かれた部屋でも平気で
煙草の灰を落とし、わざとコーヒーをこぼす。セリフでは前作ほどクスクス笑いは出ない。それほど今回はシリアスというかハードボイルド感が強い。強烈な敵役のイライジャのせいだろう。
因縁の相手イライジャ。ここにユダヤ人としての宗教感みたいな物も入って来る。息子のブライアンの死に関することは少しは触れられているが、亡くなった様子などはまだ語られない。
一行、二行の書き方でそれに触れるということは考えていないようだ。そういったエピソードを絡めて一つのストーリーが予定されているのかも知れない。最後の解説のところに第三作、
第四作が2016年、2017年に刊行が決定しているとある。出るんでしょうね東京創元社さん (笑)
警報が鳴るとロックがかかり三時間は誰も開けることが出来ない銀行の大金庫。しかし、中にあった17万ドルが消えた。イライジャはどうやったのか。一人で捜査していたバックは
孤立無援だ。1965年の事件と2009年の今接触して来たイライジャの思惑とは?
口だけは達者な88歳の元刑事バックと78歳の元銀行強盗イライジャ。二人の因縁が疾走するハードなストーリー。
けっこう深い芯の部分があって、ありきたりのミステリ本とは違うといった印象だ。それは著者自身が語るように祖父がバック・シャッツのモデルだということだからだろう。




ニコラス刑事
25MT9OHA
No.1:
(8pt)

介護施設に住む、ハードボイルド・ヒーロー

ミステリー史上最高齢のヒーローとして衝撃のデビューを果たした「バック・シャッツ」が帰ってきた。シリーズ第2作は、88歳のバックが78歳の伝説の銀行強盗と対決するという傑作ハードボイルド・ミステリーである。
前作での負傷が原因で自宅住まいが難しくなり、妻ローズとともに介護付き住宅に移り住んだバックのもとを、かつての仇敵である銀行強盗のイライジャが訪れ「何者かに命を狙われているので助けてくれ」と言う。44年前に「今度会う時は殺してやる」と言って別れた奴が助けを求めるとは、一体どうしたことか。何かを企んでいるに違いないと思うし、歩行器無しでは歩けない状態なのだが、好奇心に勝てないバックはイライジャの依頼を引き受けることにした。とりあえず、イライジャを警官に引き会わせて保護しようとするのだが、途中で武装グループに襲撃されバックは負傷し、イライジャは誘拐されてしまった・・・。
2009年時点での襲撃・誘拐事件と44年前の銀行強盗という2つのストーリーが交互に展開され、最後に因縁の二人の対決が訪れるという構成でハードボイルド・ミステリーとしてのレベルが高い。さらに、二人の主役がユダヤ人で、ストーリーの背景に根深い人種差別が潜んでいる点も物語に深みを与えている。
87歳で初期認知症のタフガイという奇抜な設定で驚かせた作品の続編だけに、2作目以降に面白い展開が出来るのだろうかと心配したのだが、期待以上の面白さだった。ぜひ、1作目から読むことをオススメしたい。

iisan
927253Y1

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