もう耳は貸さない
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メンフィス市警の退職刑事「バック・シャッツ」シリーズの第3弾。かつて逮捕した死刑囚から「自白はバックの暴力で強要されたものだ」と訴えられたバックが、孫の力も借りて汚名を晴らす法廷劇的なハードボイルド・ミステリーである。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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タイトルに“もう耳はかさない”とあるがもとから人の意見を聴くような男ではない。一般的に拳を振り回すしか社会に対処する能のない男と云う生き物に連れ添う女性は憐れだろうか?いや本書の彼には信念があり、彼女にしても自ら選んだ道に他人の意見は無用である。本作で彼は見守る決断を迫られ逃避的な健忘症に導かれる。最後に彼の語る正義に対してここでのラジオのパーソナリティーの死刑囚の人権を擁護する発言は公正なものとは言い難く罪を語らず権利を主張するのは体制批判が目的で本質は別にある。現実はさておいての正義の主張に過ぎない。 | ||||
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「もう年は取れない」(2014/9月)、「もう過去はいらない」(2015/8月)に続くバック・シャッツ・シリーズの新しい翻訳。「もう耳は貸さない "Running Out Of Road"」(ダニエル・フリードマン 創元推理文庫)を読み終えました。 「老いた男」、「老いた殺し屋の祈り」ときて、今回もまたジジイが主役かと思うと、溜息と共に少し取り掛かるのが遅くなりました(笑)。そして、今回は時が経過し、前2作とは異なる趣がストーリーに与えられています。89歳を迎えたバック・シャッツ。認知症が忍び寄り、耳も遠く、歩行器がなければ移動もままならないバック。ダーティ・ハリーのように357マグナムをぶっぱなしていたバックの姿はどこにもありません。そして、彼は愛妻のローズもガンに冒されていながら、そのことすら覚えていられないほど耄碌しています。 生きる縁は、<いらなかったはずの過去>の自分への誇りだけ。今回は、その過去の事件が引き合いに出され、ラジオ番組のプロデューサー・ワトキンズから電話が入ります。バックによる数十年前のシリアル・キラー、チェスター逮捕に纏わる事件は、バックから暴力によって強要されたものであり、その死刑執行が迫る中、ワトキンズはその真相を探るべくバックにインタビューを求めてきます。バックを助けるは、孫のテキーラ。彼は司法試験を控えた学生ですが、献身的にバックとローズの守護神としての役割を担うことになります。 過去に起きたバック対サイコパス・チェスターの事件が紐解かれ、そして今回のテーマは「アメリカの死刑制度」へと向けられています。電気椅子。致死薬注射。(州によって異なることは言うに及ばず)死刑制度に内在する、倫理的な問題については、ワトキンズのラジオ番組の中、ワトキンズと法学部教授・ヘファナンとの対話によって、スリリングに、時に敵・味方という立場を超えて、じっくりとその経過と論旨が語られていて、或る意味スリラーの枠を超えた面白さを醸し出しています。 私は制度についてはどちらの側に与するものでもなく、ここにある事実をただ感じ取ることに努め、思えば、毒舌と憎まれ口と破天荒な振る舞いに終始するバック・シャッツには時に辟易とすることがあると正直に認めた上で、しかしながら「偉大なアメリカのマッスルカーの時代は終わった」としても、戦うべき時に戦うことを決してやめようとしないその心意気という名のエッセンスは世界のどこかに残っていて欲しいと思ったりもしました。 「謝辞」の中、著者によるジェイムズ・エルロイ愛が語られています。二人に共通して言えることがあるとすれば、「うしろめたさよりも怒りを」と言うことになるのでしょう。バックは果たして何処へ向かうのか?思いは尽きない。 | ||||
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