老いた殺し屋の祈り
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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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イタリア人ベテラン脚本家の小説デビュー作。還暦をとうに過ぎた殺し屋が40年間秘めて来た願いを叶えるために組織に逆らい、生き別れた妻と娘を捜す旅に出る、情感あふれたノワール・エンターテイメントである。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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映画を見てるようだなと思ったら、著者が映画関係の人と聞いて納得。エピソードの緩急がちょうどいい感じで、正しい娯楽小説でしたね。あのラストの後、最低クズ野郎のガブリエルがどうなるかは見せないほうがいいと言ことでしょう。おそらく、最も凄惨な暴力が振るわれるはず。 うやむやになったままの設定が残されているけど、続編はどっちもいいかな。主人公の「残さざるを得なかった者たちへの贖罪」はあの母子で完結したわけだし。 | ||||
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疲れたやくざの心が揺れれば取り巻く善悪の境界も同期。だが非情さ仁義はブレず、安易な続編を嫌う映像派作者にも好感。 | ||||
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引退間近/引退した殺し屋の話ってのはよくあるわけで、そこにどれだけオリジナリティを出すかが作家の腕の見せ所なんだが、脚本家上がりの小説家だと、どうしても映画やドラマをイメージするんだろう、イタリアの各地の風景を見せるために、あちこち行くのか、ロマンスの香りを振りかけて、それをいかにも複線的に使い、少年のメンターのような行動を取りとページ数は膨らむ。だけど、結論は殺し屋は殺し屋で家庭を持てるはずがないってことか? その上、友人が殺されることを予期して残したメッセージのことが、果たして真実か否かの結論は残したままだし。そもそも、自分が概ね同世代だからわかるけど、いくら背が高い筋肉質で若い頃はハンサムだっただろうという「じじい」でも、40才前後と思しき女性の恋愛対象にはなりえないってww そんな幻想よりも、常に女に不自由しないジェームズ・ボンドがもたらす幻想の方がはるかに楽しいよ。同じ「殺し屋」でもね^^; とりあえず、最後までは読んだから☆一つおまけ。 | ||||
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どこかかつて観た記憶のある映画のシーンが、深い水の底から浮き上がってくるような感覚。それが本作のいくつかのページで感じられたものである。語り口や物語の進め方が上手いのは、この作家が初の小説デビューにも関わらず、映画の脚本家としてならした経歴の持ち主だからだろう。 作家が自分の物語として作り上げた「老いた殺し屋」オルソのキャラクター作りだけで既に小説を成功に導いているように思えるが、やはり彼の旅程を彩る派手なバイオレンス、また、彼が救い出す母子との交情の陰と陽のようなものが、この作品に、とても奥行きを与えているように思える。とりわけ少年と孤独な老人の間の不思議な絆ができあがってゆく風景は、この作品中、最も心に響いてくる。 かつての妻と息子との生活を切り裂かれ、ギャングの殺し屋としての人生を終えようとしているオルソは、引退後に妻と息子との再会を果たすべく家族探しの旅に出る。しかしあっという間に彼の行動は派手な襲撃によって阻止される。派手な列車内の襲撃と残酷なまでの闘いのシーンは、映画的記憶では『ロシアより愛をこめて』のクライマックスを思い出させるものである。 そしてその後の展開。行きずりの女性とその息子との煌めくような数日。これはもう『シェーン』や、ロバート・B・パーカーの、名作『初秋』を彷彿とさせる。暴力や闘いの世界に身を置く男が少年を父親のように優しく鍛え上げる。体をではなく心を。 そんな懐かしいノスタルジックなシーンがちりばめられた小説、というだけでも十分素敵なのだが、イタリアン・ノワールならではのフランスやイタリアの各地で展開する過激なダイナミズムも、まるで映画そのもののように迫力を感じさせる。 姿の見えぬ敵たちの冷酷さも際立っており、オルソは困難な敵たちと真向闘ってゆくことを余儀なくされる。老いた体ながら、暴力のプロとして、さぞかし凄まじい人生を送ってきただろうこの主人公の暗い歴史を想像させる。 脚本家の経験を備えた実力派イタリアン・ノワールのこの作家。小説書きは副業とは思うが、今後の創作にも是非、期待したいと思う。 | ||||
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「老いた殺し屋の祈り」(マルコ・マルターニ ハーパーBOOKS)を読み終えました。 イタリア人作家の処女作だそうですが、2020/9月に読んだ「老いた男」同様、ジジイが主役です(笑)。60歳を超えた<組織>の殺し屋オルソは、マルセイユを根城にする犯罪組織のボス・ロッソの右腕ですが、心臓発作を起こし、バイパス手術で命はとりとめたものの、病床で己が「過去」を、かつて愛した女性・アマルと一人娘・グレタのことに思いを馳せます。<組織>を捨て、二人と共に別の人生を作ったはずが、<組織>を捨てての道行は長続きすることがなく、二人の命と引き換えに<組織>に戻らざるを得ない状況の中、彼は親友でもあるロッソの説得によって二人を捨てるという大きな痛みを伴う選択をしてしまいました。そして、その後は、感情を捨てた「野獣」としての人生を全うしようとしてきました。しかしながら、心臓発作をひとつのきっかけとして、オルソはふたたびロッソを裏切り、アマルとグレタの行方を追ってジェノヴァ、イタリアへと旅立つことになります。疾走するジャガー。咆哮するワルサー。満身創痍の老いた肉体。<組織>からの追跡を逃れ、繰り返し闘い、もうひとつの面倒事に立ち向かい、果たしてジジイ・オルソは己がアイデンティティを取り戻すことができるのだろうか? いくつかの暴力描写は鮮烈でイマジネイティブですが、中盤、ある家族が介在してからの緩い描写は、<いつかどこかで見たことがある景色>が続いて、平板な印象がありました。クリムトの絵画を思わせるロッソの娘・"アデーレ"は、その野性的な美しさを垣間見せながら、(終盤登場しますが)ストーリーから消えてしまいます。しかしながら、「野獣」の「野獣」としての生き方を全うしようとするオルソは、いくつかの心の迷いを振り切りながらも<漢>にとって最も必要なアイデンティティを取り戻すことで「無頼」の心に立ち返ることになりますね。「霊性」など他の誰かにまかせていればいい。 我国の「檻」を筆頭とする北方謙三の初期作品には遠く及ばないものの、老いても尚立ち上がるロッソの姿に共感をこめて、次作を期待したいと思います。 | ||||
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