つけ狙う者
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ヨーナ・リンナシリーズは勿体無くてすぐには読まず、夏休み用に取っておいたので先日漸く手に取ることが出来ました。やはり超絶面白かったです。 流石にシリーズ五作目なのでこの作品から読み始めるのはお勧めしません。前作を読んでないと主人公の置かれた境遇が分からず、十分に楽しむことができないでしょう。ちゃんと「催眠」から読むのが良いと思います。ただ、個人的には「催眠」はそんな面白くないので飛ばして、二作目の「契約」が素晴らしく面白いので、初めての方は「契約」から手に取るでも良いかなと思います。ちなみに本作の重要な登場人物は一作目の「催眠」で出てくる精神科医なので読んでおくと繋がりがわかるはずです。読まなくともなんとなく察することができるので、まあどちらでも良いかなと思います。 本シリーズの良い点は、主人公のヨーナがめちゃくちゃカッコいいところにあります。ヨーナがでてくるシーンは毎回面白く、犯人に辿り着く手掛かりが皆無で途方に暮れていても、ヨーナが出てくると必ず何かしらのヒントを見出して、捜査が動き出すので毎回痺れます。森博嗣のミステリに出てくる犀川先生ばりに痺れます。 毎回ですが本作も事件の描写や登場人物の心理描写が卓越しており、被害者が襲われるシーンなどは映画を見ているような感覚であり直ぐに引き込まれます。しかし、痛みを感じて滅入ってしまう程ではなく、重だるい展開がだらだら続くこともないので、読んだあとは素直に「面白かった!」と思わせてくれる作品です。 このシリーズは物語としての深みはそこまでありませんが、北欧小説らしく落ち着いた雰囲気の上質なミステリであり、重すぎず軽すぎずのバランスが良く、まだ読んだことない人には非常にお勧めの作品です。北欧ミステリにはQシリーズやミレニアム、セバスチャンシリーズなど沢山の良作がありますが、個人的には1番好きなシリーズです。 | ||||
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サイコ・サスペンスとアクションとミステリー、いやスプラッタやホラーもかな? 普通小説の作家二人が別名義で書いているこのシリーズは、毎回、そうとはとても思えぬほど、娯楽味に溢れている。キワモノすれすれの残酷さ。展開の奇抜さ。登場人物たちの個性の強さ。何もかもが通常のミステリー以上に過激なのは、彼らが普通小説作家だからなのかもしれない。ブレーキのないスポーツカーのようにこのシリーズは、よく走る。 現在スウェーデンで最も売れているクライム作家なんだそうである。これだけページターナー作品が連続するところ見れば、それも当然という気がする。このヨーナ・リンナ刑事のシリーズは8作完結らしいが、『催眠』『契約』『交霊』の最初の三作はハヤカワミステリー文庫にて出版後、現在絶版状態となっている。 シリーズものの翻訳版権は、3作セットで買うことが通例だそうである。4作目からの版権は、売れ行き判断で窺ってゆくらしい。早川書房はこのシリーズは3作だけで売れ行きがきっと芳しくなかったのだろう、NG判断をしたわけである。 次の3作の版権を取った扶桑社が久々に4作目の『砂男』を出したところ、そこそこの手ごたえがあったのだろう。過去のハヤカワ文庫作品も、一気に中古価格が値上がりした次第。翻訳ミステリーには賞味期限があり、またそのタイミングと時代の読みが必要なのだろう。過去3作は日本ニーズが高まり切っていない時期に出され、十分な評価を得られなかったのだろう。ぼくは1作目の『催眠』と4作目の『砂男』と読んでいる。途中の過去作2作を未読のまま、敢えてこのシリーズを進めているが、何だかとても少し悲しい状況である。 さて気を取り直して本書では、シリーズ主人公のヨーナ・リンナは、ますます世捨て人となり、警察を辞めてなお、無資格の一匹狼捜査を続けざるを得ない運命に引きずり込まれてゆく。犯罪者もクレイジーだが、それに輪をかけてクレイジーな男が主役を取る、というところが嬉しい本シリーズである。 本書では、『催眠』の事実上の主人公でもあるエリック・マリア・バルクが、ヨーナとダブル主人公をこなしてゆく。催眠により、ある重要キャラクターの壊れた過去記憶から情報を引き出すという役割、と見えたが、実は彼の本書のストーリーへの関わりは、本人さえ気づけないほど、ずっと深い。その辺りが本書最大の醍醐味なのである。 プロットは凄まじく、サイコ・サスペンスとアクションとミステリー、いやスプラッタやホラーもかな? ともかく多面的なエンターテインメントに徹しており、終盤のどんでん返しや、カタストロフに近いクライマックスは、前作を凌ぐかに見える。 エリックの盲目のピアノ教師ジャッキーとその華憐な娘アデレーンが、本書のヒューマンで心に響く部分を請け負うが、彼女らを守る立場に追いつめられるエリックの行動も、ヨーナともどもダイナミックこの上ない。北欧ミステリーならではの面白さをしっかり継承している本シリーズ、やはり過去作の再販が望まれる。さあ、どうでしょう、ハヤカワさん! | ||||
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普通小説の作家二人が別名義で書いているこのシリーズは、毎回、そうとはとても思えぬほど、娯楽味に溢れている。キワモノすれすれの残酷さ。展開の奇抜さ。登場人物たちの個性の強さ。何もかもが通常のミステリー以上に過激なのは、彼らが普通小説作家だからなのかもしれない。ブレーキのないスポーツカーのようにこのシリーズは、よく走る。 現在スウェーデンで最も売れているクライム作家なんだそうである。これだけページターナー作品が連続するところ見れば、それも当然という気がする。このヨーナ・リンナ刑事のシリーズは8作完結らしいが、『催眠』『契約』『交霊』の最初の三作はハヤカワミステリー文庫にて出版後、現在絶版状態となっている。 シリーズものの翻訳版権は、3作セットで買うことが通例だそうである。4作目からの版権は、売れ行き判断で窺ってゆくらしい。早川書房はこのシリーズは3作だけで売れ行きがきっと芳しくなかったのだろう、NG判断をしたわけである。 次の3作の版権を取った扶桑社が久々に4作目の『砂男』を出したところ、そこそこの手ごたえがあったのだろう。過去のハヤカワ文庫作品も、一気に中古価格が値上がりした次第。翻訳ミステリーには賞味期限があり、またそのタイミングと時代の読みが必要なのだろう。過去3作は日本ニーズが高まり切っていない時期に出され、十分な評価を得られなかったのだろう。ぼくは1作目の『催眠』と4作目の『砂男』と読んでいる。途中の過去作2作を未読のまま、敢えてこのシリーズを進めているが、何だかとても少し悲しい状況である。 さて気を取り直して本書では、シリーズ主人公のヨーナ・リンナは、ますます世捨て人となり、警察を辞めてなお、無資格の一匹狼捜査を続けざるを得ない運命に引きずり込まれてゆく。犯罪者もクレイジーだが、それに輪をかけてクレイジーな男が主役を取る、というところが嬉しい本シリーズである。 本書では、『催眠』の事実上の主人公でもあるエリック・マリア・バルクが、ヨーナとダブル主人公をこなしてゆく。催眠により、ある重要キャラクターの壊れた過去記憶から情報を引き出すという役割、と見えたが、実は彼の本書のストーリーへの関わりは、本人さえ気づけないほど、ずっと深い。その辺りが本書最大の醍醐味なのである。 プロットは凄まじく、サイコ・サスペンスとアクションとミステリー、いやスプラッタやホラーもかな? ともかく多面的なエンターテインメントに徹しており、終盤のどんでん返しや、カタストロフに近いクライマックスは、前作を凌ぐかに見える。 エリックの盲目のピアノ教師ジャッキーとその華憐な娘アデレーンが、本書のヒューマンで心に響く部分を請け負うが、彼女らを守る立場に追いつめられるエリックの行動も、ヨーナともどもダイナミックこの上ない。北欧ミステリーならではの面白さをしっかり継承している本シリーズ、やはり過去作の再販が望まれる。さあ、どうでしょう、ハヤカワさん! | ||||
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<ヨーナ・リンナ>シリーズ5弾。エリックやヨーナの背景、人間関係等は1~4弾を読んでいた方がよくわかるが、事件は独立しており、この恐怖は本作のみでも十分堪能できる。 序盤、自宅に一人でいる女性がシリアルキラーに襲われるシーンは、読んでいてゾッとした。 次々と起こる猟奇的殺人事件。 …だが、それに対して関わる人物は小物ばかりでパッとしない。 まず妊娠後期にある殺人課女警部補マルゴットと相棒の小物刑事。これほどの事件なのに、動くだけでもたいへんな時期にある警部補をあてがうとは、よほど人材不足なのか。マルゴットは無残な現場を見ても一応冷静だが、胎教には決していい影響をあたえないような気がするし。 精神科医エリック(#1『催眠』でも登場)は、自ら薬物依存状態にあり、9年前に誤診した可能性が発覚すると保身を図るなど何だか怪しげ。 本来主人公であるヨーナは、前作『砂男』終盤で心身ともに病んで消息を絶った。あれから1年以上。本巻でかなり経てから登場するが、未だよれよれである。既に警官の立場も失っている。 上巻は誰が主なのかわからず、混沌としていた。 だが、下巻から俄然おもしろくなり、ページをめくる手が止まらなくなってしまった。 ヨーナは徐々に体力を取り戻して独自に捜査を始め、物語の方向も絞られてくる。 下巻後半は怒涛の展開。犯人はまるでゾンビのよう…。 難を言えば、犯人の特徴を安直にしすぎているところか(いつでも〇色コート、それも何年も前から)。不自然だし、こんな色にしなくてもいいし、別にこれがなくても解明できたような気がするのだが。 ラストは「えー、なんで―⁉」 …次巻の出版が待ち遠しい。 | ||||
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ウェルメイドなパズラー偏重の我が国のミステリ界の中、受け入れられているとは言い難いラーシュ・ケプレル。「砂男」(2020/1月)に続く新しい翻訳「つけ狙う者 (上・下) "Stalker"」(ラーシュ・ケプレル 扶桑社BOOKSミステリー)を読み終えました。前作は「背負った罪」に耐えられる強い者たちの物語でしたが、本作もまた同様に、そしてより深化しているように思えます。 YouTubeにアップロードされた盗撮映像。纏わる二つのグロテスクな殺人事件。つけ狙うものの存在。事件の関係者に催眠術を施すために巻き込まれる精神科医・エリック(シリーズ1作「催眠」参照)。エリックは、今回の事件と9年前に同じように催眠を施した猟奇殺人事件の犯人?との関連に気が付きます。犯人は「汚れた牧師」と呼ばれることになるシリアル・キラーなのか?追うは、国家警察・警部補、マルゴット。彼女は妊娠しており、にもかかわらずこの事件を優先させようとします。そして、勿論、前作の後、国家に頼らない、一人「証人保護プログラム」を展開する元警部・ヨーナ・リンナも姿を現します。「砂男」で渾身のアンダー・カバーを展開した女性警部・サーガがヨーナのある<囚われ>を取り除くことで、ヨーナのストックホルムへの帰還を導きます。(今回、不満が残るとすれば、サーガが途中退場してしまうことにありますね。) 前半は、いつか読んだシリアル・キラー物のように展開し、エリックと<盲目>のピアノ教師との交情が描かれ、少しドメスティックに進行していきますが、(作者は、その中でしっかりと<伏線>を散りばめながら、私たち読者のミス・ディレクションを誘い)、その後の展開が読めそうで読めない、或いは想像した結末どおりだとすると普通のスリラーかもしれないと一旦は思わせます。しかしながら、下巻を捲るや否や、強烈なサスペンスに牽引され、最後まで一気に読み進めることができることでしょう。よって、いつものように話せるのはここまでになります(笑)。 捨て鉢に見えながらも、等身大のキャラクターを併せ持つヨーナの強さとある「罪悪感」に囚われながらも事件に巻き込まれていくエリックの"かよわさ"が対比され、そこに野放しにされた「つけ狙う者」の存在が、ボールドで、ハート・ビートを伴うような強烈なサスペンスを生み出しています。イングマル・ベルイマンが最盛期の?デヴィッド・フィンチャーに乗り移ったかのような映画のように。 ストーリーを語れない以上、このスリラーのテーマを書くこともご法度なのかもしれませんが、すべては(Kindle の位置No.2117-2119)、 「〝答えは、「何も──ない」よ〟・・・人が死より恐れるものは何もない」というエリックの元患者・ネストルが問いかける「なぞなぞ」にあるのかもしれません。おそらく、元警部・ヨーナは死をも恐れない。 それでは、次回の翻訳を期待しながら、これから杉江松恋さんの解説をゆっくりと読ませていただくつもりです。 | ||||
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