ざわめく傷痕
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書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点7.00pt |
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著者の初期を飾った「グラント郡」シリーズの第二作。13歳の少女が引き起こした事件を、検死官兼務の小児科医であるサラと元夫で警察署著のジェフリーらが解明していく、サスペンス・ミステリーである。 | ||||
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装丁は綺麗だが、中はそれなりで価格が安いので良いのではないか。 | ||||
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現代の”Kisscut”の意味が分からなかったので調べると、こういうことわざかららしい。 Many kiss the hand they wish to cut off. 「多くの人が斬り落としてやりたい思う相手の手にキスをする」 ああ、そうかと。虐待された子供は「愛」の意味を異なる形で吹き込まれて、それに捕らわれたまま成長していく。そして、それはいつか決壊するのだ。 カリン・スローターが描く世界は現実離れしているのだろうか? むしろ、アメリカの歪んだ、正論、建前だけが大手を振って歩く世界をそのまま映し出しているだけじゃないだろうか? 彼女が描けるということは、それを実行できる人物がいるに違いないと思わせるアメリカの病んだ世界を垣間見ている気がする。 そして、その世界をあえて描くことで対比させるのが、サラやジェフリーの不器用な愛情表現やハンクとレナの微妙な距離感じゃないだろうか? ミステリーなんだけど、近しい間の愛憎劇とも読める本作は、読む人を選ぶけどはまる人にはまるんだろうなあ。 | ||||
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本書はグラント郡シリーズ『開かれた瞳孔』に続く第二作である。現在の人気シリーズであり今も続くウィル・トレントのシリーズに、三作目から登場しレギュラーとなっている医師サラ・リントンの過去の、それも二十年前ほども前の過去シリーズなのである。このグラント郡シリーズは、第一作『開かれた瞳孔』が先年改めて再登場したということで、過去シリーズも改めて翻訳されるようになった珍しい運命を持つシリーズなのである。 年間、二、三作品の勢いで、過去作と新しい作品が邦訳出版されている海外作家は、あまり思い当たらない。翻訳作品は、売れる見込みがなければ打ち切られることの多い現在、一作限りで過去に打ち切られたこのグラント郡シリーズが改めて見直され、商品価値を上げ、こうして市場に再登場、二作目以降も新訳されて新たにお目見えするとは、甚だ頼もしい限り。 他社が打ち切ったシリーズの翻訳権を、新たに入手しては邦訳し、文庫化してくれるハーパー・コリンズ・ジャパンという世界レベルの出版社の日本進出は幸運であった。価格も既存の出版社に比べ非常にリーズナブルである。心強い限り。 さてニ十年近く前の本書、サラ・リントンとその妹、そして前夫であるジェフリー・トリヴァーのアメリカ南部トレント郡という、アメリカの片田舎を思わせるローカルな場所で展開される、見た目には地味めの事件、ある少年に銃口を向けて引き金を絞ろうとしている少女を、ジェフリーがやむを得ず撃つ、というシーンで幕を開ける。 なのでミステリー要素は、フーダニットではなく、むしろホワイダニットに近いミステリー。しかし少女の亡骸には悲劇的な忌むべき傷痕が残されていた。ショッキングな導入部である。 本書はミステリーであると同時に、サラ・リントンや、被害者(or加害者)少年少女など、それぞれの家庭環境を描くシリアスなホームドラマであるかにも見える。いくつもの家族の物語であるかに。 同時に、前作でサイコパスに囚われの身となり、過酷な運命を強いられた女刑事レナ・アダムスは、本書では再生の物語を歩まねばならない。己れを取り戻すために傷だらけの道を歩みつつ、育ての親であもる叔父ハンクとの疑似父娘愛ともいうべき愛情を、苦しすぎる葛藤と共に徐々に取り戻してゆかねばならないゆれに、レナは本書ではもう一人の主人公なのだ。 壊れてしまうものと、繋がり続けるもの。それらのありさまを、家族というかたちで様々になぞらえて、苦しみ・信頼・裏切りといった過酷な渦に投げ込んでみると、こんなにも冷たく残酷、あるいは熱く苦しい、様々な人間模様ができるのだ、と提示されてみたかのような、見た目は地味でありながら相当な力作なのである。 冒頭で撃たれ死んだ少女が辿った悲惨な家族環境や、レナ・アダムスを襲った過酷な事件からの苦しすぎる再生、別れた夫婦であるサラ&ジェフリーの今も続くデリケートな距離感と迷い。見えない未来。おぼろげ過ぎる希望。そして壊れた家族がもたらす、あまりにも残酷な、見えざる犯罪への彼らの怒り。 家族という不透明な防壁を破壊し、白日の下に曝け出す。そんな地道で辛抱強い捜査の中での人と人のぶつかり合いを、いつも通り描き切るスローター節。ミステリーというだけでは収まらない、人間たち葛藤のぶつけ合いが本領発揮される本書。人間はここまで獣になれるのか、という残酷なまでの真相に唖然とさせられる作品。それでいてなぜかページをめくる手が止まらない。作者の怒りの叫びのような血まみれの作品。さすがの迫力、一流の語り口である。 | ||||
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グランド群シリーズ2作目! 待ってました。サラとジェフリーのその後が気になってました。 今回はある少女の残虐な殺人事件からそれぞれの登場人物の辛い過去が明らかになる とりわけ話の中心はレナである。 レナのレイプ事件のその後とレナ自身をどうやって救うのか。 サラとテッサ(妹)との関係性 サラとジェフリーとの関係性 事件で犠牲になった子供たちをどうやって救っていくのか、ここまで大人が愚かだと 犠牲になる子供たちが不憫、とういうか地獄である。 真犯人の一人は野放し、後味は悪いが、とにかく考えさせられる作品である。 | ||||
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<グラント郡>シリーズ2作目。 今作は、極めて悪質な大人によって、誤った方向に導かれたティーンエイジャーがテーマになっている。 最初は性欲に目覚めた十代の子供たちの乱交かと思ったが、事件を追及していくとその背景には…絶句する。 こうなると教育ではなく飼育だろう。虐待、倒錯、小児性愛、近親相姦。 そんな中でもこれは間違っていると気づいた少女、気持ちのやり場がなくなった少年……その末路があまりにも不憫だ。 1作目『開かれた瞳孔』から4か月後の設定で、女刑事レナは前作で負ったPTSD(心的外傷後ストレス障害)から立ち直っていない。気丈にふるまいつつも、折に触れフラッシュバックを起こす。自尊心を失うそのつらさはあまりあるもので、誰にも打ち明けることができない心境を人知れず語る終盤のシーンには心が動かされた。 終結もリアルだった。終わりのない悲劇。レイプされることがその人の人生にどれほどの影響を残すのか、カリン・スローターならではの女性目線による社会問題の提起だと感じた。 本作はサラやジェフリー等レギュラー陣のこれまでの経歴など、事件とは無関係な内容も多いが、<ウィル・トレント>シリーズを既読している読者にとっては興味深いところもあった。 一瞬だが、ジェフリーがかつて交際していたネルとその息子ジャレドに出会う場面がある。互いに全く気づいていないよう。 …これについては後日譚『ブラック&ホワイト』へ。 サラとジェフリーは離婚後2年経ているが、互いへの想いが再燃している。<ウィル・トレント>シリーズで後日のサラの新たな人生を知っているため違和感が若干あるが、そこは切り離して、本シリーズの今後の展開を早く知りたい(次の出版を心待ちにしています)。 加えて、あとがきによると<ウィル・トレント>シリーズ最新作が2021年初夏に出版予定とのことで、待ち遠しい。 | ||||
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