鏡の男
※タグの編集はログイン後行えます
※以下のグループに登録されています。
【この小説が収録されている参考書籍】 |
■報告関係 ※気になる点がありましたらお知らせください。 |
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点0.00pt |
鏡の男の総合評価:
■スポンサードリンク
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
現在レビューがありません
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
スプラッタ・ホラー? サイコ・スリラー? 警察小説? 否、それらのジャンルをブレンドさせ、娯楽作品に徹したツイストを仕掛けに仕掛けた、びっくり箱のような作品である。前作までで、連続殺人犯ユレック・ヴァルテルとの対決構造は終焉を迎えたはずなのだが、はてさて。 いつも仕掛けと残酷さと怖さとでこのシリーズに着いてゆけなくなる一歩前まで行くのだが、本作は久々のアイディアにやられてしまったかもしれない。夫婦作家共作のシリーズ向けペンネームで書かれたスウェーデン・ミステリーでありながら、甘いところは一切見られない、どぎついまでの暴力とサイコな駆け引きに満ちたシリーズを、図太い線で駆け抜けるのはお馴染みのシリーズ主人公ヨーナ・リンナであり、もう一つの主役を務める精神科医エリック・マリア・バルクである。 エリックの方は後半の少しだけの登場ながら、やはりいつもの主役クラスの展開に絡む。本書ではクライマックス・シーンと言っても良いような一点で。 いずれにせよ彼らシリーズ主人公は、物語の前半ではあまり活躍の場が得られない。むしろ悪の捕食者に捉えられ、辛く永く過酷な運命を辿ってゆく少女たちと、彼女らの運命が中心に語られてゆく。少女たちに絡む悲劇の夫婦が、本ストーリーにどう絡んでゆくのかが見えないまま、辛く凄惨な日々が過ぎてゆく。 運に恵まれない少女たちの物語には眼を背けたくなる読者が多いのではないだろうか。そしていつまでも見えないフリークなまでの残忍な犯罪者の正体は? 張りつめたバイオレンスの緊張感を通低音として聴きながら、誤った方向に進もうとする捜査と、警察組織への苛立ちをものともせず真実への最短距離を走り抜けようとするわれらがシリーズ主人公ヨーナ・リンナが本書でも頼もし過ぎる存在となってゆく。 謎の骨格が優れており、前半の暗い情景を丸ごとひっくり返すような驚く仕掛けで明かされるエンディングの妙は、シリーズ中屈指の面白さである。シリーズのスタート地点に立ち戻った観のあるエリック・マリア・バルクの活躍も苦闘も目立つ。 絶対に明かせない真相に向けて疾走するストーリーとその語り口の妙。状況のあまりの凄惨さに辟易を覚えた点を覗けば、久々に見る優れたサイコ・サスペンスとしておススメの力作である。辛く、痛く、そして真っ暗なトンネルを抜けたところにある快感を目指して、この長く冷徹なレール上を走り抜けて頂きたいと思う。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
スプラッタ・ホラー? サイコ・スリラー? 警察小説? 否、それらのジャンルをブレンドさせ、娯楽作品に徹したツイストを仕掛けに仕掛けた、びっくり箱のような作品である。前作までで、連続殺人犯ユレック・ヴァルテルとの対決構造は終焉を迎えたはずなのだが、はてさて。 いつも仕掛けと残酷さと怖さとでこのシリーズに着いてゆけなくなる一歩前まで行くのだが、本作は久々のアイディアにやられてしまったかもしれない。夫婦作家共作のシリーズ向けペンネームで書かれたスウェーデン・ミステリーでありながら、甘いところは一切見られない、どぎついまでの暴力とサイコな駆け引きに満ちたシリーズを、図太い線で駆け抜けるのはお馴染みのシリーズ主人公ヨーナ・リンナであり、もう一つの主役を務める精神科医エリック・マリア・バルクである。 エリックの方は後半の少しだけの登場ながら、やはりいつもの主役クラスの展開に絡む。本書ではクライマックス・シーンと言っても良いような一点で。 いずれにせよ彼らシリーズ主人公は、物語の前半ではあまり活躍の場が得られない。むしろ悪の捕食者に捉えられ、辛く永く過酷な運命を辿ってゆく少女たちと、彼女らの運命が中心に語られてゆく。少女たちに絡む悲劇の夫婦が、本ストーリーにどう絡んでゆくのかが見えないまま、辛く凄惨な日々が過ぎてゆく。 運に恵まれない少女たちの物語には眼を背けたくなる読者が多いのではないだろうか。そしていつまでも見えないフリークなまでの残忍な犯罪者の正体は? 張りつめたバイオレンスの緊張感を通低音として聴きながら、誤った方向に進もうとする捜査と、警察組織への苛立ちをものともせず真実への最短距離を走り抜けようとするわれらがシリーズ主人公ヨーナ・リンナが本書でも頼もし過ぎる存在となってゆく。 謎の骨格が優れており、前半の暗い情景を丸ごとひっくり返すような驚く仕掛けで明かされるエンディングの妙は、シリーズ中屈指の面白さである。シリーズのスタート地点に立ち戻った観のあるエリック・マリア・バルクの活躍も苦闘も目立つ。 絶対に明かせない真相に向けて疾走するストーリーとその語り口の妙。状況のあまりの凄惨さに辟易を覚えた点を覗けば、久々に見る優れたサイコ・サスペンスとしておススメの力作である。辛く、痛く、そして真っ暗なトンネルを抜けたところにある快感を目指して、この長く冷徹なレール上を走り抜けて頂きたいと思う。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
「ウサギ狩り」(2021/9月)、「墓から蘇った男」(2022/3月)に続くスウェーデン国家警察国家犯罪捜査部捜査官、ヨーナ・リンナ・シリーズの新しい翻訳「鏡の男 (上・下)」(ラーシュ・ケプレル 扶桑社BOOKSミステリー)を読み終えました。 或る雨の夜、公園の遊具に吊された死体が発見されます。被害者は5年前に拉致され、死亡したと思われていた少女・ヤンヌ。犯行を目撃したはずの男・マルティンには重い精神障害があり記憶を蘇らせるのが困難な状況が残されています。夫・マルティンを支えながら事故で娘を亡くした建築家のパメラは一方で17歳の少女・ミアの里親になることで前進しようとしています。連続殺人事件なのかどうか?各地で拉致された少女たちと彼女たちを支配しようとする悪しき心とのヨーナ・リンナによる満身創痍の戦い。すべての事象はいかに収斂していくのか?毎度のことですが、スリラーですから多くを書くことができません(笑)。 催眠療法。「外が暗いときに屋内の明かりを点けたら、窓は鏡のようになるでしょう」。いつものように強いサスペンスを伴うシーンが継続し、その謎解きは私の単純な頭脳では解き明かせないまま「何とまあ」と思わせる"はなれわざ"を決めてくれます。そのブレのない着地が、ラーシュ・ケプレルの真骨頂だと思います。 また、上巻の最後と下巻・25%あたりのアクション・シーンのキレはスウェーデン・ミステリの書き手の中では最上位に入るのではと思わせてくれて、たとえそれがどれほど酷薄で悲惨な状況を描こうとも、それはそれ、私にとっては一つの読書の楽しみであったりもします。 いくつかのミステリ的符牒といくつかのエキサイティングなアクション、そして常に重度の「精神障害」にアプローチしようとする作者の試みは本作でも成功しています。優しさなどほんの一かけらしかないような物語が何故か貴い体験として私には感じられますが、その優しさはサーガ・バウエルに向けたヨーナの眼差しが証明しています。次作を期待して待ちたいと思います。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
<ヨーナ・リンナ>シリーズ8弾。 ヨーナは国家警察に復帰し、かつてのように前線で活躍する。 内容は紹介にある通りで、いつにも増して若い女性が残虐に殺されるシーンが続発し、下巻中盤までは興味深く読んでいた。 しかし、犯人が解明したあたりからはエンディングまで興ざめ。 どんでん返し後、小説の中で作り上げた事実に、その理由を後から一生懸命こじつけた印象。 ウケを狙ったのだろうけど、それが露骨で薄っぺらいのだ。今回も活用される催眠療法(現実では有効性は確認されていない)併せて、私はこのようないかにも浅薄なフィクションめいたネタを好まず、今作はシリーズの中でも最低だったと思う。もうネタ切れなのか。 同僚刑事サーガは前作エンディングから心を病んだままで、ちらっと登場するが活躍は一切ない。 数年前ヨーナが現職を退いている間、妊娠後期でふうふう言いながら代行していた警部補マルゴット(#5『つけ狙う者』)は、ヨーナの上司になっている。あの時もたいした活躍はなかったが、今はプライドだけが高くものわかりの悪い能無し上司だ。 本シリーズは当初8作までとされていたが、前々作あとがきで10作目くらいまで延長されるようだとあった。ラストから受けた印象ではやはりさらに続くようだ。せっかくの大作シリーズなのだからファンをがっかりさせないためにも、残りの作品はもっと充実した内容を期待する。 | ||||
| ||||
|
その他、Amazon書評・レビューが 4件あります。
Amazon書評・レビューを見る
■スポンサードリンク
|
|