悪なき殺人
- サスペンス (353)
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書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点8.00pt |
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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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フランス人ミステリー作家の本邦初訳で、フランスの文学賞・ランデルノー賞ミステリー部門の受賞作。フランスの山岳地帯の村で殺害された女性の事件を巡り、関係者5人の独白を繋げて真相が明らかにされる凝った構成のミステリーである。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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フランスの山間の田舎町で実業家の妻が失踪する。彼女はどこに行ったのか、そして登場人物の一部 には彼女が死んでいることが分かるが、何故、誰に殺されたのか。このミステリーがこの作品のメインストリーム となっている。その山間の街でソーシャルワーカーをしている中年女性アリス、彼女が不倫関係になる羊飼いの 男ジョセフ、失踪する女性と同性愛の関係を持つ若い女性マリベ、そして大きく舞台が変わってアフリカで ネットを通じてなりすまし詐欺を行う黒人の若い男アルマン、最後はアリスの夫でそのなりすまし詐欺に 引っかかるミシェル。この5人の人間の独白で物語は進む。設定の巧妙さ、先を読めぬ展開、この5人が 絡みながらやがて全貌が見えてくるというスリル。面白い。実に面白いと思っていた。だが、最後の一行で 些か裏切られたと感じた。きちっと落ちのあるミステリーを期待した私には。ある意味フランスらしく皮肉と 孤独で味付けされた見事な結論なんだろうが。 | ||||
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ストーリーも練られ面白かった。 | ||||
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何とも奇妙で不思議な小説である。フレンチ・ノワールの流れを汲みそうなイメージなのだが、何とやはり、というか既に映像化され、現在はDVDとして観ることができそうである(「悪なき殺人」”Only the Animals”(2019))。しかし、、、。 そう、しかし、である。本書は文章作品としての味わいが実に個性的なので、先に映像化作品を見ることはお薦めしない。本書の構成は5人の登場人物が各章毎に主人公となって語る形式の小説である。全員の証言を読む毎に、作品の世界がまるで違った角度から見えてくる。そのことがこの作品を、格別、個性的なものに化けさせているのだ。 物語の中で起こるのはある女性の失踪。季節は冬、舞台となるのは山深い山間の村なのだが、失踪したのはアウトドア好きな主婦で、生死の判断もなかなか下しにくい。農協のソーシャルワーカーとして村の農家を訪問する女性アリスに始まる本作は、導入部から早速、危険の匂いを感じさせてくれる。と同時に失踪中の女性のことが話題にされる。この失踪した女性という謎が本書の軸になりそうだとわかる。 二つ目の物語はソーシャルワーカーの訪問を受けていた羊飼い。本作が凄いな、と思われるのはここで早くも失踪者の事件が見えてしまうからだ。しかし、その見え方はどうみても幻惑的に過ぎるように感じつつ、その不信感を基に、その後の物語に繋げてゆく。 しかし三つ目の物語辺りから物語の様子は変容する。マリベという他所の土地から来ている若い女性。時系列を記憶により戻したり、この先の展開に受け渡したりする役目の章だが、毎度視点が変わる毎に唐突な展開と思えるのが本書の構成の特徴でもあるようだ。しかし、物語は唐突なジャンプを繰り返すたびに、不思議なことに真相へと近づいてゆくのである。 四つ目の物語はいきなりアフリカに飛ぶ。若者たちが従事するネット詐欺の小屋へと唐突にジャンプした物語 に面食らうが、こうなると既に快感である。若い美人女性のふりをして、画像を挙げ、引っかかったカモになる男たちをたぶらかし大金を送金させるというネット詐欺。そしてそこに引っかかるカモ。 最後の章は短い。五つの物語が繋がったときに、それぞれの物語の環が完成する。なかなか珍しい構成だが、わかりやすく言えば芥川龍之介の『藪の中』、黒澤明監督により『羅生門』として映画化されたあれである。同じ事件であれ、観たものによって、それは万華鏡のように別々の形となる。一人の女性の失踪事件の真相を語るためにその手法を用いることで、五つの物語を繋げてしまったのが本書である。さらにそのことで起こってきた化学反応自体が、失踪事件以上に闇が深い。 人間の愚かさと悲喜劇と運命に翻弄される生き物という立場。それらが衝突し合うことで発生する化学反応を一連のストーリーとして物語ったのが本作である。ある意味、凄い発想。そして驚愕。刺激的な作品構成とその内容。フレンチ・ミステリらしいノワールさが際立つ作品である。 | ||||
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殺人は?えっそうなの、あぁ~そうだったのねと説明に困る物語。 読み終わりの感想は良かったのか?多少ホッとする感覚を覚えた作品でした。 | ||||
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五人の視点で語られるミステリ。 正直、この少人数で、一連の女性行方不明事件から始まり、何故被害者が殺される事になってしまったのか、遺体が誰にも知られることなく遺棄されたのか、上手くまとめて小説として、きちんと成立させている点は感心した。 個人的には、一番最初の語り手のアリスが印象に残った。 確かに押し付けがましい点もあり、挙げ句、不倫までするのだから、同情の余地はないように見える。 でも、アリスのような立ち位置にいる人って、案外、多い気もする。 所詮、他人は自分ではないのだから、相手が本当に思っていることなどわかるはずもない。 話し合えばいい、と言っても、こういった他者と自分の溝を埋めることは、決して容易ではないと思う。 夫からは、一度も愛したことなどないと思われ、不倫相手からも、実は迷惑だったと聞かされたら、どんな気持ちになるだろうと思う。 最近の、例えば本屋大賞の作品などによく見られる、お互い深く分かり合って、とか、分かり合えなくても、分かってあげたい、と言った、ある意味、人間関係の上っ面ではなく、本当に分かり合えない、相容れないという事は、こういう事なのだと、痛切に思う。 登場人物が、皆、身勝手だけど、でも孤独で、やるせなさが残る、哀しい話だとも思った。 この5人のうち、一人と関わりを持ったばかりに殺された被害者が、余りにも気の毒すぎる。 | ||||
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