ザ・マッチ THE MATCH
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日本でも好評を得た前作「森から来た少年」の続編。自身の家族を探すためにDNA鑑定サイトを利用したワイルド(前作の主役)が実の親を見つけるとともに、血縁者と思われる人物からコンタクトがあり、思いもよらぬ事態に巻き込まれていく社会派ミステリーである。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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『森から来た少年』は、奇想天外なアイディアで生まれた、いかにもコーベンらしい奇作であった。森に棲んでいた非文明的少年ワイルドは、40代にさしかかっている。彼は超奇妙な私立探偵存在として現代文明の中に沸き起こる現代的事件を解決に導いてゆく。解決できていないのが彼の正体。彼はなぜ独り森で育つことになったのかという謎。 またワイルドとダブル主人公的に活躍するのが、何作ものシリーズや単発作をまたいで登場する女性弁護士ヘスター・クリムスティーンである。そう。このシリーズは続編である本書と併せてワイルドの出生の秘密に迫るのが本書なのである。なので『森の中の少年』を読んだ人はこれを読まなくては完結しない。そう言われて読まない人がいるだろうか? 一方でヘクターの家族の歴史が重要な分岐点を迎える物語でもある。ヘクターおばちゃんのファンであってこれを読まないなんていう読者が果たしているだろうか? さて本書。主人公ワイルドがDNA鑑定を通じて近親者を探していたところ、DNAが50%マッチした人物がいることを知るが、特定には至らない。一方、ワイルドにメールを送ってきていた人物が母方の血縁者と知り、こちらでもDNAのマッチ確立を探るが、その人物がTV番組で名が知られた挙句、ネット内で追われ失踪中とワイルドは知る。ワイルドの追う人物がリアリティ番組の参加者がネット世界で怒りや攻撃の的となり炎上したと言う。そんななか、ワイルドは警察官らの悪辣な暴力に曝され瀕死の状況に追い込まれる。彼をも巻き込む闇ネットの存在は何か? スリルと謎の深さが半端ではなく、ジェットコースターなみのストーリー展開と、錯綜の複雑さが混乱とミスリードを呼ぶ。 読み進むにつれもつれた人間関係がほどけてゆくのだが、真偽や正邪の判断もつきにくい過去と現在の状況がネット情報とリアルの隔たりの狭間に溢れ、ワイルドとともに読者も混乱に突き落とされてゆく。何よりも見た目通りではない人物の多さと、何層もの虚実を剥いてゆくストーリーの複雑さが混乱を呼ぶ。 一気読みに近いが、登場人物が多く複雑に互いが絡み合っていることもあってキャラクター表での確認作業が読書中とても大変であった。リアルとバーチャルの多次元的ストーリー進行もあまりに現代的なので、コーベンの作品中最も難読度の高い作品であるように思う。森で育ったこどもが大人になってこれほどの多次元バーチャル化した世界に対応してゆく才能とその知性には驚かされるが、ワイルドという個性の持つたっぷりと溢れかえるヒューマニティが作品の殺伐さを根底で救っている物語であるとも言える。 いずれにせよ、設定も進行も奇才ハーラン・コーベンならでは個性に満ちている。語り口は平易で、場面転換も豊かで相変わらずのリズミカルなミステリーである。魅力的なヒーロー&ヒロインの悲劇と喜劇の多重構造の謎で構築されたこの世界。それらをしっかりと味わいながら是非とも丁寧に読んで頂きたい力作である。 | ||||
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ワイルドの過去が明らかに、 登場人物がみんな不思議で普通?なのに引き込まれていく、 さすが、H・コーベンです。 「WIN」で初めてコーベンに惹かれてマイロン・ボライター シリーズを読み漁っています。 デイビットとのストーリーをもっと読みたかった。と、前回の 「森から来た少年」でも思いました。 一癖ある素敵なキャラクター勢揃い。 一気読み。お勧めです。 | ||||
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前作「森から来た少年」(2022/1月)の1年後、森から来た少年・ワイルドはDNA鑑定サイトから実父を見つけ出します。場所はネヴァダ州、ヘンダーソン。そこで彼は父親から意外な事実を知らされます。一方、ワイルドは四ヶ月前にもう一人母方の血縁者らしき人物から連絡があったことに気づきます。その人物とは或るリアリティ番組のスター、ピーター・ベネットであり、彼は現在行方不明であることを知らされます。 ワイルドによる「親探し」の物語に前作からの主要登場人物であるへスター・クリムスティーンの法廷シーンがインサートされ、尚且つクリス・テイラーという謎の男たちのエピソードが語られていきます。ビデオ会議の中その男たち、或いは女たちはそれぞれが動物の3Dキャラクターに変換された姿で<ブーメラン>という名の集団を形成していました。目的は、法執行機関のデータベースを始めあらゆるネット上の情報をハッキングしながら「ネット荒らし」を特定し私的制裁を加える自警活動でした。その集団の存在とワイルドの「親探し」はいかに関連しているのか?やがていくつかの殺人事件が発生することによって物語はより深い混迷を迎えることになります。私の要約がいかにつまらないかを見せつけるかのように(笑)、より複雑に。 読書中、Netflix映画「ザ・キラー」(監督:デヴィッド・フィンチャー)をたまたま見ていたら<リアリティ番組>を揶揄するシーンを見かけましたが、それほどこの世界ではその手の番組が跋扈しているのでしょう。そこにかぶせるようにして<自警の論理>を語るコーベンの語り口はいずれにしても米国的な極めて米国的な主題を伝えようとしています。 それにしても冒頭でへスターが絡んでいた法廷の陪審員判断は語られたのだろうか?もしかすると私が読み逃したのか?いずれにしろその結果よりも「ネオナチとKKKは殺しても良い」というエスターの爽やかな結論が語られてしまっています。 かつてロス・マクドナルドはリュー・アーチャーを神の使いのようにして米国の「血脈」を繰り返し描いていましたが、その頃に現在のようなDNA鑑定があったならば、彼はいかように物語を紡いでいったのでしょうか?とても興味深い。 □「The Match」(ハーラン・コーベン 小学館) 2023/11/11。 | ||||
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