闇夜に惑う二月



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    初公開日(参考)2023年10月
    分類

    長編小説

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    闇夜に惑う二月 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

    2023年10月18日 闇夜に惑う二月 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

    胸に謎の言葉を刻まれ殺された男は、麻薬王の娘の婚約者だった。ギャングの抗争で治安が悪化する中、マッコイは捜査を行うが……(「BOOK」データベースより)




    書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.00pt

    闇夜に惑う二月の総合評価:9.33/10点レビュー 3件。Bランク


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    全1件 1~1 1/1ページ
    No.1:
    (8pt)

    力強くて切ない、アンチヒーローな傑作ハードボイルド

    グラスゴーを舞台にした「刑事ハリー・マッコイ」シリーズの第二弾。連続殺人事件を捜査することになったハリーが否応なく、忘れたい過去に直面させられるノワール・ハードボイルドである。
    建設中のタワー屋上で発見された惨殺死体は地元のプロサッカー選手で、彼はギャングのボス・スコビーの一人娘・エレインの婚約者だった。すぐに容疑者として、スコビーの汚れ仕事を担当していたコナリーが浮上した。コナリーは精神的に不安定になり、エレインにつきまとっていたという。ハリーたちはコナリーを追い詰めたのだが、すんでのところで逃してしまう。さらに、コナリーはエレインの周囲に出没し、ボスのスコビーまで襲おうとする。そんな中、前作(血塗られた一月)でハリーの命を救ってくれた、幼馴染で地元の若手ギャングのボス・スティーヴィーを見舞ったハリーは一枚の新聞記事を見せられ、激しく動揺する。そこには、ハリーやスティーヴィーが児童養護施設にいた頃に性的虐待を加えていた男が映っていたのだった。さらに、教会でホームレスが自殺する事件が発生し、残された遺品を調べていたハリーは、スティーヴィーに見せられたのと同じ記事があるのを発見する。花形サッカー選手とホームレス、全く無関係に見えた二つの事件が、ハリーの過去を媒介にしてつながっていった・・・。
    一匹狼の刑事が難事件を解決するという警察ハードボイルドの基本はしっかり守りながら、そこに児童の性的虐待の被害当事者をぶつけることで、ストーリーが何層にも重なり合い、ねじれあって展開する複雑で手応えのある物語になっている。訳者あとがきにもあるように、前作からさらにパワーアップしたことは間違いない。オススメだ。
    月名のタイトルから推察できるようにシリーズ化されており、イギリスでは一年に一作、現在では6月まで刊行されているというので、まだまだ楽しめそうである。

    iisan
    927253Y1
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    ※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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    No.2:
    (5pt)

    荒っぽくもデリケートな本作の愛と痛みに震えて眠れ!

    題名:闇夜に惑う二月
    原題:February's Son (2019)
    著者:アラン・パークス Alan Parks
    訳者:吉野弘人
    発行:ハヤカワ文庫HM 2023.10.25 初版
    価格:¥1,600

     ダーティな訳あり刑事ハリー・マッコイを主役としたシリーズの第二作早くも登場である。お次の第三作も既に出版されたばかりなので、遅れを取っているぼくは慌てて本作を手に取る。500ページを超える長尺の作品だが、スタートからぐいぐい牽引される、心地良いまでの読みやすさだった。

     アナーキーな印象の刑事マッコイに、年下なのに面倒見の良いワッティー、上司にはタフでハードでおっかないのだがどうにも面倒見の良いマレーという捜査トリオがとにかく良い。前作を引き継いで読んでゆくとレギュラー出演組の個性がそのまま増幅されるほどにシリーズの魅力にどんどんはまる。幼ななじみでギャングのボスのスティーヴィー・クーパー、女性記者メアリー。いずれもマッコイとのやりとりや距離感が素晴らしい。

     さて本作の事件は、前作よりさらに派手派手しい。建設現場の屋上での無残な殺害現場に幕を開ける。日付入りの場面転換は前作を踏襲。ただし今回は殺人者の目線での描写が日毎に挿入される。殺人の動機もこの殺人者の異常性もエキセントリック極まりない。全体ではこの作品のジャンルは、警察小説の形を取ったノワールだと思うが
    、殺人者のシーンや、もう一つの材料ともなっているロボトミー手術を考えると、サイコ・サスペンスと言ってももいいくらい。

     残虐性、荒っぽさ、そして過去の幼児虐待の記憶など、すべてが前作を引き継ぐと同時に上回って見える。とりわけ過去の孤児体験、修道院での男児性被害など暗すぎる過去を引きずる主要キャラクター二人の過去と、本作での決意と行動は全体を揺るがすほどの意外性に満ちており、警察小説としての枠組みすら破壊して見える。

     1970年代のスコットランド。グラスゴーを吹き抜ける時代の風。カトリック教会の光と闇。いつもながらの残虐な死と狂気に満ちた犯罪のタペストリーが、未だ二作目だというのにクライマックス感を見せてくれる。とんでもない作家。予想を覆す展開のシリーズ。善悪の彼岸にある心の深い傷と、半世紀前という闇の時代を吹き抜ける血腥い風の冷たさ。熱い怒りの血が流れ、愛に飢えまくる主人公マッコイのアンチ・ヒーローな魅力が凄い。彼のあまりに強烈な行動とその結末まで魅せられる力作。荒っぽくもデリケートな本作の愛と痛みに震えて眠れ。

     本作は、エドガー賞最優秀ペーパーバック賞の最終候補作となり、次作の『悪魔が唾棄する街』(2024年3月既刊)では見事に同賞を射止めたとのことである。楽しみな必読シリーズの登場である。
    闇夜に惑う二月 (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:闇夜に惑う二月 (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
    4151855025
    No.1:
    (5pt)

    ムーンライト・マイルの道を進軍するハリー・マッコイ

    前作「血塗られた一月」を読んだのは、2023/6月。早いペースで次作が翻訳されました。舞台は、スコットランド、グラスゴー。時系列は、前作後、1973年2月。主人公は、グラスゴー市警察部長刑事、血塗られたハリー・マッコイ。建築中のビルの屋上。血まみれで片方の目がくり抜かれ、性器が切り落とされて口に押し込まれた男の惨殺死体が発見されます。彼の胸には”Bye Bye”と刻まれていました。彼は、(嗚呼)セルティックの若きエース、チャーリー・ジャクソンでした。ジャクソンの婚約者エレインはノースサイド地区を牛耳るギャングのボス、ジェイク・スコビーの一人娘でした。
     そして、容疑者は、スコビー子飼いの殺し屋、ケヴィン・コナリー。精神が不安定なサイコパスの存在。しかし、彼は姿を消し、エレインの周りに出没しながら、ついにはジェイク・スコビーまでが殺害されてしまいます。何故?
     一方、前作で傷を負ったクーパーを見舞ったハリーは一枚の新聞記事を見せられます。そこにはダンバートンシャー警察の元本部長、ケネス・バージェスが写っていました。ここでハリーのもう一つの血塗られた記憶が蘇ってきます。そして、そこには我が国にも蔓延る或る悪辣な「性的事件」が横たわっていました。一つの事件と一つの記憶がいかに交わることになるのか?物語はいかに変転していくのか?前作同様、パズラーとしての構造はかなりシンプルですが、暴力に次ぐ暴力が良心を覆い隠す硬い石板を打ち砕きながらハリーのひりつく情念を剥き出しにするかのように、まるで進行性の病気の真っ只中にいるかのようにそのストーリーをぶん回し続けます。溢れかえるタバコの煙。ドラッグ。血の匂い。まるで若い時のジェイムズ・エルロイの著作のように。
     これも前作同様、ハリーの幼馴染でありながら今ではギャングのボスでもある「暴力装置」スティーヴィー・クーパーとの関係性がこれらの物語のリーダビリティを爆上げしています。かつてデニス・ルヘインの“パトリック&アンジー”にはブッバという「暴力装置」がその役割を担っていましたが、クーパーの威力はその何十倍も増幅されています。悪に彩られ知性に裏打ちされた暴力と言っていいのかどうか?いずれにしろ、常に読者は法の内側と外側を意識しながら、そこに醸し出されるサスペンスに傷口が晒されるような感覚に戸惑うことになるのかもしれません。わかっていることがあるとすれば、法の内側にいようと外側にいようといかに<共感>できるかがその鍵であり、暴力の中にも良心は存在しているのかもしれません(笑)。なんて事だ!
     二月の次は三月。エイドリアン・マッキンティの翻訳が止まってしまった現在、私たちは北アイルランドからスコットランドへと眼差しを向ける必要があるのでしょう。
     多くの70年代ブリティッシュ・ロックが背景を流れていきます。ストーンズの「ムーンライト・マイル」が流れる時、風が吹き、冷たい雨に晒され、雪まみれのままそのムーライト・マイルの道をハリー・マッコイは満身創痍、徒手空拳で進軍していきます。私たちにできることはその道程を見守ることだけ。もしかするとかつて「ムーンライト・マイル」を歩んだことがあるパトリック&アンジーも寄り添ってくれているかもしれません。
     □「闇夜に惑う二月 “February’s Son”」(アラン・パークス 早川書房) 2023/10/22。
    闇夜に惑う二月 (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:闇夜に惑う二月 (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
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