闇より暗き我が祈り
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葬儀社を手伝いながら、私的な探偵(のようなこと)をしている男、元保安官のネイサン。 教会の重要な人物が亡くなった件を巡り調査を開始するが、その裏には恐ろしく汚れ切った事実が・・・。 やがてネイサンにも各方面から圧力がかかる。果たしてネイサンは無事に事件の真相にたどり着けるか、という話。 友人の殺し屋や葬儀社オーナー達との関係性や、時に笑って噴き出してしまうような軽妙な遣り取りが楽しい。 ストーリー展開もしっかりしているし、キャラクターも立っている。 個人的には、非常に楽しめました。 S.A.コスビーのデビュー作ということだが、今まで読んだ4冊の中では最高傑作でした。 今までの本と同じく、なんでハーパーコリンズから出版されなかったか不思議です。 読む価値ありです! | ||||
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既刊三作が全て高評価の新進黒人作家S・A・コスビーのデビュー作。 主人公は従兄が経営する葬儀社に勤務する青年ネイサン(本職は内容紹介にある “私立探偵” ではない)。 ある日、地元の教会牧師の遺体が発見される。拳銃自殺に見せかけているが、信者の高齢女性たちから「自殺するような人ではない」と。さらに葬儀社員から見ても創部の状況から他殺ではないかと。 地元保安官の対応はらちが明かないため、ネイサンが数年前まで保安官補をしていたことから先述の女性に調査を依頼され、仕方なく引き受けることになる。 当初は軽く探るだけのつもりだったのに、思いもよらぬ深淵が次第に明らかになっていき、いつの間にかネイサンまで命を狙われることに―――。 保安官補の前は海兵隊員だったネイサン。度々襲撃に遭うが、体格に恵まれており格闘では無敵に近い。本来は争いごとを好まない理論的な白人父としっかり者の黒人母のひとり息子として愛情いっぱいに育てられ、ぎりぎりのところまでは自制するが、限界を超えるとキレる。「やっぱりこうでなくちゃ」とクライムノヴェルを好む読み手側としては、悪党をこてんぱんに叩きのめすシーンに爽快感を覚える。 主人公が青年であることからか、とにかく文中にアメリカンジョークや比喩が多い。特に序盤に。多少なら楽しいが、ここまで多いとちょっと疲れる。中盤以降は内容がシビアになっていき、かなり減るが。 コスビー作品では必ず語られる黒人差別。本書でも「以前に比べてずいぶん改善した」とあるが、都合の悪いことが起きると白人たちは男女問わず本性を現し「ニガ―」と差別的発言をする。実際これが現実なのだろう。 ラストで脇役(くそ)登場人物の行く末にかなり不満あり。ここが違えばもっとおもしろかったのに――。 それでもさすがのコスビー作品。後出のものに比べるとやや小ぶりながらも、構成、ミステリ解明、アクション等の見せ場が優れており、大物作家になる片鱗が伺えると感じた。 | ||||
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前3作品はハーパーBOOKから出版されていますが、本作はハヤカワ文庫。訳者も変更がないので抜群の暗黒感は変わっていませんが、順序が逆でこれが第1作とのことです。 南部の田舎町で深く根付く黒人差別をテーマにしている点は同じで、教会、葬儀場、居住地域は完全に区別されており、白人と黒人が交わった時こそ危険な兆候が見え隠れして、どす黒い欲望とカネが渦巻きます。元海兵隊員の主人公はその後郡保安官事務所に勤務していましたが軋轢により退職して、いとこの経営する葬儀社で働いています。 『警察がやれないこと、やろうとしないことをしてくれる人』との評判から簡単な調査を依頼されるのですがこれがまさにパンドラの箱であり、やぶ蛇でした。敵を『挑発して、血を吐け。』という単純明快な哲学のもとに突っ走ります。 なんといっても素手であれば完全に無敵であり、相手が銃を持っていても形勢逆転を容易に成し遂げます。もちろん傷も負いますが、なんと後頭部の傷口は鏡を見ながら『自分で』6針縫ってしまいます。さらに留置場にいれられますが『減らず口は忘れない。』という不死身のヒーロです。 「スコッチはライオンの小便の味がするだろう。」(逆にアメリカのビールは馬の小便の味、という悪口はよく聞きましたが)など言いたい放題、やりたい放題、暴れたい放題で巨悪を暴力で叩きのめすことが出来るのか、という明快なストーリですが十分に愉しむことができました。 | ||||
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「すべての罪は血を流す」(ハーパーBOOKS)を読んだのは、2024/5月。今回、S・A・コスビーによる2019年の処女作が訳出されました。 舞台は、彼の他の作品同様、ヴァージニア州。そして、田舎町・クイーン郡。主人公は、海兵隊上がりで従兄弟が経営する葬儀社で働くネイサン・ウェイメイカー。ニュー・ホープ・バプテスト教会で働くイーソー・ワトキンス牧師が牧師館にて死体で発見されます。賑やかな<過去>のある彼の事件は、自殺として処理されようとしていますが、彼の教会の信徒でもある二人の女性から(警察の調査に業を煮やしたのか、)ネイサンはワトキンス牧師に何が起きたのか保安官に尋ねてほしいと依頼されます。ネイサンはかつて保安官事務所に勤務していましたが、或る理由から事務所を辞めていました。彼は、重い腰を上げつつ密かに調査を開始しますが・・・。筋立てはシンプルですので、あまり詳しく書くわけにはいきません(笑)。私立探偵小説の枠組みにノワールの暗い闇が加わり、処女作とは言え、S・A・コスビーらしい<暴力>が<暴力>を呼び、<暴力>によって収斂する物語が激しく展開されています。 処女作だからか幾つか弱点と呼べるファクターも散見されますが、それを語ろうとするとストーリーをなぞる事にもなりますので、難しい。 主人公のキャラクターが今回も光り輝いていますが、女性にモテるのか?という私自身の低次元の嫉妬も含めて(笑)後の作品の主人公たちよりも未熟な部分を残しつつ、しかしその満身創痍の闘いぶりにはやはり感嘆を禁じ得ません。 バイブル・ベルトに於ける人種差別、保守性の高いキリスト教信仰、法執行機関をも信じることができない「黒き荒野の果て」のような土地で展開される<私闘>は、かつてのブライアン・ガーフィールドの著作(「狼よさらば」)を想起させます。良い悪いはともかく、それは米国の歴史に直結する伝統の表れと言ってもいいのかもしれません。 強烈な個性は、主人公と<過去>を分かち合う友人のスカンクの存在にあります。<私立探偵小説>、<冒険小説>の主人公たちには、常に闘いの化身の如きバディが必要です。古くはスペンサーにとってのホーク。翻訳が途切れているように思える猟区管理官ジョー・ピケットにとっての鷹匠・ネイト、そしてデニス・ルヘインからはパトリック&アンジーにとってのブッバのような存在が必ず必要になります。何故なら、やはり人は一人では何事もなしえないということに尽きるのでしょう。 最後に「すべての罪は血を流す」を逆に再現するように「<神>はいつものように不在のまま、”アムール”もまた雲散霧消し、しかしながら最後に男に残されるものは<血>の齎す愛だけ」ということになります。推して知るべし。 <暴力>を哲学的に考察するも単純な哲学は"Talk Shit.Spit Blood."(全体の23%あたり(笑)) ▫️「闇より暗き我が祈り "My Darkest Prayer"」(S・A・コスビー 早川書房) 2025/2/19。 | ||||
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