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サナキの森



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【この小説が収録されている参考書籍】
サナキの森
サナキの森 (新潮文庫)

サナキの森の評価: 7.00/10点 レビュー 1件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

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(7pt)

「サナキの森」の感想

第一回の「新潮ミステリ-大賞」の受賞作と言うことですが、本書を本屋さんでたまたま見かけるまで、こういう賞が新設されていたのを全く知りませんでした。

以前、新潮社が主催した公募の長編ミステリーの新人賞で、1996年から2000年まで全5回実施された「新潮ミステリー倶楽部賞」というのがありましたが、その後継として創設されたのでしょうね。
ちなみに、この「新潮ミステリ-大賞」の選考委員でもある伊坂幸太郎氏は、『オーデュボンの祈り』で、第五回(2000年)の「新潮ミステリー倶楽部賞」を受賞されています。

さて本書ですが、ます冒頭から驚かされました。
旧仮名遣いで書かれたホラー小説ような章(しかも最終章)に、思わず引きつけられてしまいました。
この部分は、戦前から「在庭冷奴(あらばれいど)」のペンネームで、売れない怪奇小説などを書いていた、主人公の荊庭紅(いばらばこう)の祖父・零(れい)が書いた「サナキの森」という小説の一節だと言うことが後ほど判明します。
でも、こういう話が旧仮名遣いで書かれていると、雰囲気があって興味を引きますね。

亡き祖父の本棚から紅に宛てた、「遠野市の佐代村の神社に隠してあるべっ甲の帯留めを探し、自分の墓に供えてほしい」と書かれた手紙が見つかります。
その意をくんで、祖父が書いた小説・「サナキの森」に書かれていたような凄惨な事件があったという遠野の旧家・東条家を訪れ、そこで中学生の泪子(るいこ)と出会います。
二人は、紅の祖父が書いた小説を手がかりに、現実に、泪子の家・東条家の庭にあった納屋で起きた80年前の「密室殺人」の謎を追って行きます。

この密室を構成しているのは、ちょっとした盲点を突くような謎でした。言われてみて、初めて気づかされましたが、読んで居るときには全く気がつきませんでした。
祖父が書いた旧字体の「サナキの森」と、紅の視点で書かれた話が交互に登場しますが、十代の泪子と二十代の紅の掛け合いがなかなか面白くって、この年頃の女性の雰囲気が良く出ています。
また、読後に、旧仮名遣いの部分・「サナキの森」だけ通して読んでみましたが、ホラー小説としても良く出来ているのには感心しました。
二つの異なった文体が登場し、どちらも上手く書かれているのには脱帽です。
ベースになっている話は、悲惨な怪奇小説なのですが、紅が思いを寄せる「陣野せんせー」や十代の泪子との関係も楽しくって、なぜか読後感が爽やかでした。
また、個人的にも、共感できるところが多々あって、楽しく読みました。

余談ですが、私の学生の頃は、戦前のミステリ(例えば「黒死館殺人事件」など)を読むと、ほとんどが旧仮名遣いで書かれていましたので、本書のその部分はさほど苦にはなりませんでしたが、旧仮名遣いに慣れていない読者には大変だったろうと想像します。
でも、だからといって、その作品がダメだって事になってしまうと、ちょっと残念です。

トラ
WFY887SY

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