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レーン最後の事件



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レーン最後の事件の評価: 7.60/10点 レビュー 5件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.60pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全3件 1~3 1/1ページ
No.3:4人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

ドルリー・レーンという男

その題名が指し示すように、ドルリイ・レーン最後の事件である本作は今までとは趣向が違い、ウィリアム・シェイクスピアの稀覯本の行方及びその本に隠された謎と、それに絡んで失踪した人物の行方を追う物語で、これはシェイクスピア劇俳優の第一人者であったレーンの掉尾を飾るためにクイーンが用意した謎なのだろう。
とにかく本作では謎の覆面の男と青い帽子を被った顎鬚を生やした男という、変装した正体不明の人物が物語に入替り立ち替わり介入してき、また本の行方や最重要容疑者であるハムネット・セドラーとエイルズ博士が同一人物か否かという謎がなかなか判明せず、ずるずると物語を引っ張っていくうちに、エイルズ博士の館が爆破されたりと、本格ミステリというよりもサスペンスに近いテイストで、しばしば謎の焦点がぼやけてくるのに苦労した。

本作では前3作で登場していたブルーノ地方検事が退場し、一切出てこなくなり、代わって前作『Zの悲劇』でお目見えしたサム元警視の娘で明敏なる推理力を発揮するペイシェンスがサムの相棒を務めている。とはいえ、前作のように語り手としての役柄ではなく、レーンも探偵として積極的に介入し、叙述も一人称から三人称に戻っており、前作のような違和感は全くない。そして結末に至って、やはりこのペイシェンスという人物が必要だった事が解るのである。
そのことは後に語るとして、で、本作で散りばめられた様々な謎については、事件の展開が目まぐるしく変わる作風のため、私自身の推理もその都度焼き直しを強いられ、試行錯誤の繰り返しだった。

例えば冒頭に出てくる博物館から盗まれたジャガード本が送り返された意図に関する推理は私の中で確立するものの、その謎は次の章で早々に解明されてしまったし、バスの乗客の人数の謎も17人だったのが18人だったことを発端にしており、これを現地で調査すると実は19人だったと謎が謎として深まっていく。つまり小さな謎がどんどん提出されては、解き明かされ、また次の謎が展開するという構成であり、今までの悲劇3作ではレーン氏は自らの推理に確証がないと自身の推理に自信があっても決して開陳しなかった、云わばクイーンの国名シリーズと同様の最後の最後で犯人と犯行方法・動機を解き明かす趣向とは明らかに違うものだ。そう、本作は失踪人捜しと稀覯本探しという、ロスマクなどの私立探偵小説に似たテイストなのだ。
で、これらの謎については私自身解き明かすことが出来た。上にも述べた返却された稀覯本の謎しかり、セドラー氏の正体もしかり。特にサムに預けられた封筒の手紙に書かれていた「3HS wM」の謎は的中し、これには快哉を挙げてしまった。そして最後の犯人もまた当ってしまった。しかしこれはこの作品の最大の特徴が巷間に流布しているので、それが頭の片隅にあったことに因るところが大きかったのだろう。

さて前作ではどちらかといえば、目障りな存在だと思われたペイシェンスだが、この悲劇四部作の最後においてどうしてももう1人の探偵の存在が必要だった事が解る。
クイーン愛好家の中では、やはり『Zの悲劇』を異端視し、このペイシェンスの存在を軽視している方々もおられるようだが、私としてはやはりこのシリーズの幕の降り方はクイーンがシリーズ当初から考えていたものであると認識する。

この悲劇四部作、全て読み終わった今、全体と通してみるとやはり巷の評判どおり『Yの悲劇』が抜きん出てその次に『Xの悲劇』、そして本作、最後に『Zの悲劇』という評価になる。
しかし、愛好家の中で云われている『Yの悲劇』が明らかに異色でこれはクイーンが国名シリーズで元々使おうとした話だった、『Zの悲劇』は不要だった云々などという話は単なる書好家の興味の対象として読むにとどめ、やはり悲劇四部作は悲劇三部作ではなく、悲劇四部作であったと思う。

また振り返ってみるとたった4作のシリーズなのにそのヴァリエーションのなんと豊かなことだったか。衆人環視の連続殺人、館での連続殺人、女性探偵物という趣向に、最後は失踪人探しとビブリオミステリを絡めた探偵自身の犯罪。たった2年で書かれた正に流星の如く駆け抜けたシリーズだった。
最後の本作でレーンという男の謎がいっそう深まったような気がする。たった4作のみの探偵レーン。しかしその名は今なおさんざんと煌めき、そして今後もずっと残っていくに違いない。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S
No.2:3人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

レーン最後の事件の感想

ドルリー・レーン四部作を読み終わりました。Xから順に読んで本当に良かった、正に衝撃のラストでしたね。単純に面白いかどうかと言う表現は出来ないです、それだけレーン氏の魅力に惹かれてしまったと言う事でしょう。いずれにせよ、オチを知らずに読めて良かった。
単独の作品としては地味でもう一つな感じですが、シリーズラストとしてとらえれば評価は変わります。今作だけなら7点、最終章と考えれば9点という印象です。なので、8点としたいと思います。
願わくば、まだまだレーン氏の事件簿が読みたかったです。Xの時みたいに、変装とかして格好良く輝いてる姿の、そしてまだYの事件が起きる前の。

なおひろ
R1UV05YV
No.1:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

レーン最後の事件の感想

ドルリー・レーン4部作の完結編。ラスト1章の急展開に引き込まれた。結末はペイシェンスの心情に同調して哀しくなった。この結末を書きたいがための4部作だったことを実感させられる。

水生
89I2I7TQ

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