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墓場への切符



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墓場への切符の評価: 8.33/10点 レビュー 3件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.33pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全3件 1~3 1/1ページ
No.3:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

マットスカダーを知るために、絶対外せない一作

この本から読めば、マットスカダーをもっと理解できたのかも?!
最初アトランダムに読んだせいで、初めはあまりマットのことが好きでなかったんです。
なんとなく好きになりだしたのは、二作目?三作目あたりだったでしょうか。
エレインの印象も、この小説を読む前と後とでは、多少違ったのかも?!

ミステリーというよりも、やっぱりハードボイルドを感じてしまう。
ジェットコースター的で、読む側にとっては、もう面白くないわけない!当然面白い!
ブロックの小説を読むと、ニューヨークへ行きたくなりますね!
未読の方へ是非お勧めです。



ももか
3UKDKR1P
No.2:
(9pt)

起こった後、我々は何をすべきか

マット・スカダーシリーズが今日のような人気と高評価を持って迎えられるようになったのはシリーズの転機となった『八百万の死にざま』と本書から始まるいわゆる“倒錯三部作”と呼ばれる、陰惨な事件に立ち向かう“動”のマットが描かれる諸作があったからだというのは的外れな意見ではないだろう。

本書が今までのシリーズと違うのはマットの前に明確な“敵”が現れたことだ。
彼の昔からの友人である高級娼婦エレイン・マーデルをかつて苦しめたジェイムズ・レオ・モットリー。錬鉄のような鋼の肉体を持ち、人のツボを強力な指の力で抑えることで動けなくする、相手の心をすくませる蛇のような目を持ち、何よりも女性を貶め、降伏させ、そして死に至らしめることを至上の歓びとするシリアル・キラー。刑務所で鋼の肉体にさらに磨きをかけ、スカダー達の前に現れる。

これほどまでにキャラ立ちした敵の存在は今までのシリーズにはなかった。
確かにシリアル・キラーをテーマにした作品はあった。『暗闇にひと突き』に登場するルイス・ピネルがそうだ。しかしこの作品ではそれは過去の事件を調べるモチーフでしかなかった。

しかし本書ではリアルタイムにマットを、エレインをモットリーがじわりじわりと追い詰めていく。つまりそれは自身の過去に溺れ、ペシミスティックに人の過去をあてどもなく便宜を図るために探る後ろ向きのマットではなく、今の困難に対峙する前向きなマットの姿なのだ。

それはやはり酒との訣別が大きな要素となっているのだろう。
過去の過ちを悔い、それを酒を飲むことで癒し、いや逃げ場としていたマットから、酒と訣別してAAの集会に出て新たな人脈を築いていく姿へ変わったマットがここにはいる。警察時代には敵の1人であった殺し屋ミック・バルーも今や心を通わす友人の1人だ。

平穏と云う水面に石を投げ込んでさざ波を、波紋を起こすのが物語の常であり、その役割はマットが果たしていた。事件に関わった人物たちがどうにか忌まわしい過去を隠蔽して平穏な日々を過ごしているところに彼に人捜しや死の真相を探る人が現れ、彼ら彼女らに便宜を図るためにマットが眠っていた傷を掘り起こすのがそれまでのシリーズの常だった。
しかし本書ではさざ波を起こすのがモットリーと云う敵であり、平穏を、忌まわしい過去を掘り起こされるのがマットであるという逆転の構図を見せる。マットは自分に関わった女性を全て殺害するというモットリーの毒牙から関係者を守るために否応なく過去と対峙せざるを得なくなる。

じわりじわりとマットに少しでも関わった女性たちを惨たらしい方法で殺害していくモットリー。AAの集会で何度か顔を合わせることで馴染みになり、たった一晩仲間たちと一緒に食事に行ったトニ・クリアリーもその毒牙に掛かり、さらには単純にスカダーと云う苗字だけで殺された女性さえも出てくる。
そしてマット自身もまたモットリーに完膚なきまでに叩きのめされる。さらには法的に人的被害を訴えることでスカダーを孤立無援にさせる邪悪的なまでな狡猾さまで備えている。
そんなスリル溢れる物語なのにもかかわらず、シリーズの持ち味である叙情性が損なわれないのだから畏れ入る。

特に過去に関わった女性に対して思いを馳せるに至り、マットは自分には常に自分の事を想う女性がいたと思っていたが、実はそんな存在は一人もいなかったのではないか、ずっと自分は孤独だったのではないかと自身の孤独を再認識させられる件には唸らされた。実に上手い。

そして追い詰められたスカダーはとうとうアルコールを購入してしまう。自ら望むがままに。
果たしてマットは再びアルコールに手を出すのか?
この緊張感こそがシリーズの白眉だと云っても過言ではないだろう。
そしてこのアルコールこそがまた彼の決意を左右するトリガーの役割を果たす。酒を飲めば元の負け犬のような生活に戻ってしまう。しかしそれを振り切れば、正義を揮う一人の男が目覚めるのだ。この辺の小道具の使い方がブロックは非常に上手い。

話は変わるが本書ではそれまでの作品に登場した人物たちが物語に関わってくる。
まずはシリーズ1作目から登場していたエレインの久々の登場に『聖なる酒場の挽歌』からマットにとってもはや相棒のような存在とも云えるバー・グローガンのオーナー、ミック・バルー、『八百万の死にざま』に登場した情報屋ダニー・ボーイ・ベル、名前は出ないがチャンスもまたカメオ出演を果たし、さらにはマットの警官時代の旧友ジョー・ダーキン、AAの集会で助言者となったジム・フェイバーなどなど。
それはようやく8作目にしてシリーズの基盤となるキャラクターが揃い、マットを取り巻く世界に厚みが生まれたように思う。

また象徴的なのは『聖なる酒場の挽歌』で店仕舞いしたとされていたスカダーの行きつけだったアームストロングの店が場所を変えて新たに開業していることだ。これこそ恐らく一度はシリーズを終えようとしたブロックがリセットして新たなスカダーの物語を紡ぐことを決意した表れのように私は感じてしまった。

本書にはある一つの言葉が呪文のように繰り返される。それはAAの集会で知り合ったマットの助言者であるジム・フェイバーによって勧められたマルクス・アウレリウスの『自省録』という書物の一節、「どんなことも起こるべくして起こるのだ」という一文だ。

これが本書のテーマと云っていいだろう。
どんなに用心していようがいまいが起こるべきことは起こるのだ。

しかしその後にはこう続くことだろう。
起こってしまったことは仕方がない。問題はそのことに対してどう振舞い、対処していくことかだ、と。

マットが住む世界ほどではないが、我々を取り巻く世界とはいかに危険が満ちていることか。地震や津波であっという間にそれまでの生活が一変する事を我々は知ってしまった。
しかしそこで頭を垂れては何も進まない。そこから何をするかがその後の明暗を分けるのだ。
本書で描かれた事件はそんな天変地異や大災害のようなものではないが、書かれていることはいつになっても不変のことだ。

困難に立ち向かい、己の信念と正義を貫いたマット。今後彼にどんな事件が悲劇が起こっていくのだろうか。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S
No.1:
(7pt)

この事件をきっかけにスカダーとエレインは恋人になったのでしょうか

ストーリーはいたってシンプルですがスカダーの独り言や会話が決まっていて読みがいがありました。モットリーの描写もとても病的で鬼気迫るものがありました。

わたろう
0BCEGGR4

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