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egut さんのレビュー一覧
egutさんのページへレビュー数773件
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頭部がない死体、胴体がない死体、右手がない死体……と言う具合に遺体の一部が持ち去られる猟奇事件の警察小説。
小説内でも示されていますが、島田荘司『占星術殺人事件』を模した事件です。横溝正史ミステリ大賞を受賞した作品でありますので、単純に占星術殺人事件を使わせてもらっただけの作品ではない、何かある期待を感じた為の読書でした。 島田荘司の御手洗シリーズの初期の頃を読まれている方は、あの作品やあの作品を感じさせる話なのでオチが見えてしまうのが残念。見立ての元ネタのファンがターゲットに含まれているのですが、ファンには仕掛けが見えてしまうという、もどかしい気持ちを味わいました。ただ、社会派的なテーマを盛り込んだ現代警察としては、面白い立ち位置にいる作風だと感じます。堅くなく、捜査はそれとなく熟し、特徴的でわかり易いチームメンバー物の雰囲気が軽い警察小説です。 悪い意味では、捜査の苦労が見えなく、解決へも理論的でなく思いつきの発想で真相へ辿り着いてしまう根拠の無さが納得できない。物語背景も壮大なんだけど何か重みがなくて軽い設定を読んでいる感じがする。と、不満はいっぱいなのですが、作品は面白く感じる不思議。たぶん好きな系統で、不満はもっと面白くなりそうな期待の裏返しなんだと思います。今後の作品に期待。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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金田一少年の事件簿の小学生編が青い鳥文庫の児童書でスタート。
青い鳥文庫は全漢字にルビが振ってあり、ミステリ特有の殺伐とした雰囲気は抑えられていますので、子供が読んでも大丈夫なミステリとなります。 小学6年生の金田一一と七瀬美雪の幼馴染の距離感は相変わらず。というか昔からずっとなのですね。学校内での金田一のふざけている姿、ふとした1コマで見せる推理、テンプレのような展開がいつもの金田一で微笑ましい。児童書でミステリとなると日常の謎か、冒険物か、vs怪盗物かと思う所ですが、本作はストレートに冒険もの。金田一が所属する冒険クラブの担任が古い宝の地図を入手。夏休みに宝探しをしようとクラブ一行が合宿に行く流れ。 合宿先の蝶の形をした烏島(からすじま)にて宝探しのはずが、姥捨て山の伝承に似せた島姥の怪物が現れ島はパニック。児童書ではありますが、歴代金田一作風のおどろおどろしい雰囲気は、島姥の怪物で健在。島で何が起きているのか?を金田一くんが挑みます。 ミステリ好きの大人が読むと、特に真新しい要素や驚きがあるわけでは無いと感じますが、児童書・小学生向けのミステリとしては読み易くて分かり易く、冒険心、ちょっと怖い所、大団円の気持ちよさと扱うテーマのバランスはとても良いです。ターゲット層に合わせた作品作りだと思いました。 金田一好きとして残念なところは「読者への挑戦」がなかった事。 「謎は、すべてとけた。」の名セリフは健在ですが、金田一少年シリーズといえば真相が解けたタイミングで、読者へ謎の要点を問いかけ、事件を再考する幕間がありましたが、今回無かったのが寂しい。謎を列挙して「この島で何が起きたのか君は分かるかな?」ぐらいの出題ページが欲しかったです。 事件の真相より、宝の意味を含む、島姥伝説の解釈が面白かったです。 なにはともあれシリーズ続編楽しみです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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凄く面白かった。というかクオリティが凄すぎた。満足でもっと読みたい。ミステリは壮大。人物も魅力的でもっとエピソードを読みたい。香港の歴史に触れられる。翻訳もよく読みやすい。海外ミステリという感覚がなかったです。
読書前は、海外ミステリだし、中国でより馴染みがないし、何か難しそう。そして警察小説で社会派で堅そう。なんてイメージで敬遠してましたが、多くの良い評判を耳にして手に取りました。いやーこれは凄い。ミステリ好きは読んで損はないですよ!先に書いた読書前の億劫な気持ちな人もいるかもしれないので払拭すべく紹介です。 6つの中編集であり、それぞれの作品の時代設定は2013年、2003年、1997年、……という具合に時代を遡る構成になっています。 最初の作品、2013年『黒と白のあいだの真実』は安楽椅子探偵もの。まず探偵の存在がぶっ飛んでます。 末期がんの為、人工呼吸器で繋がれて昏睡状態の老人。動く事も喋る事もできない名探偵。これはジェフリー・ディーヴァーの四肢麻痺のリンカーンライムを超えたかと存在に驚きました。昏睡状態のクワン警視は頭脳明晰、検挙率100%の実績があり、"謎解きの精密機械"、"天眼"の異名を持つ名探偵です。もう、この登場シーンだけで読書前の堅そうな作品イメージが払拭されていきました。ラノベではないですけど、キャラ物として面白そうと惹き込まれました。昏睡状態のクワン警視の病室に集められた事件の関係者達も寝たきりの老人をみて驚きます。どうやって事件を解決してもらえるのか?クワン警視の弟子にあたるロー警部が皆に告げた内容は、耳と脳は機能している、事件の概要を語りかけ、YESかNOか脳波を測定して名探偵の判断を仰ぐという事だった。って設定が凄い!2013年という時代設定は現代医学的な要素取り入れ、名探偵の末期から始まるのです。事件の真相は壮大であり、これで長編書けるのでは?というぐらい濃すぎる。 1作目から強烈な印象を読者に与えます。でもこれは本書の入口にすぎず、このクオリティがずっと続くよという挨拶でしたね。 2作目は2003年で10年遡り、まだ元気なクワンとローが関わった事件が描かれます。どんな話かは読んでのお楽しみです。 6つの物語は名探偵クワンを共通とした逆年代で進みます。各物語は本格ミステリとして非常に高密度。1作目が安楽椅子探偵もので、2作目、3作目と、各物語はミステリとして"○○もの"といった異なる趣向となっておりバラエティ豊か。そして各作品は大長編でも遜色がないぐらい壮大な仕掛けを施した本格ミステリであり贅沢三昧。中編に圧縮しているので、文章1つとっても無駄がない。事件の話以外にも香港の歴史、人物達の想い、ちょっとした会話のやりとりでどういう関係かが見えてくる面白さがあります。 年代を遡っていくので、人との出会いや、人生の教訓、人の変化がどこで起きたのか見えるのも面白い。ミステリだけではない物語が味わえる為、各エピソードが非常に心に残りました。 読み終わった人は、もう一度最初から読みたくなると思います。 これはトリックがあったという意味ではなく、逆年代構成で歴史を遡って読んだ事により、時代や人の想いの起点に触れた為、その後の人や時代の未来にもう一度触れてみたくなる為です。再読の1作目はクワンやローの回想や想いがより感じられる読書でした。 著者のあとがきより、作品構成の巧さを感じました。書きたい内容は、「ある人物とこの都市とその時代の物語」。「本格派」と「社会派」ひとつの小説で結合するとどちらかの味が強くなる為、6つの独立した「本格派」推理小説を描き、6つの物語をつなげると社会の縮図が見えてくる試みをしたそうです。いやはや、、、そうなってます。凄い。。個人的に苦手で敬遠しがちな社会派・警察小説・歴史物を意識することなく、名探偵の本格推理小説を楽しんでたら、いつの間にか社会派を味わって香港の歴史に触れていた。という感覚なのです。 あと、短編集というとハズレ作品が混ざっている心構えが起きるのですが、本書はハズレなしでどれも凄く、当り作品を6つ読んだ気分で大興奮でした。 なので本書のあらすじで、堅そうだな。難しそうだな。と敬遠していたら勿体ないです。好みは人それぞれですが、こういう作品は中々出会えません。非常にオススメです。 |
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戦争の特異性を活かした戦争ミステリであり、本書の状況だからこそ起きた事件という固性がある小説です。
著者作品はデビュー付近の作品を読んでいます。2017年度ミステリランキングで久々に名前がでたので手に取りました。 久々に読みましたが率直な感想として気軽に読めなくて難解になっていると感じました。特徴ある戦争色が強くでた内容で、作品を楽しむには戦争・組織・国の情勢の知識が必要、またはそれらに興味が無いと頭に入ってきません。ビルマ戦線、重慶軍、中国政権など、単語や当時の情勢のイメージが沸かず、自分には状況を楽しむ以前の問題でした。時代や軍隊など無駄な解説がない200P台のコンパクトさは良いので、戦争ものが好きな人が楽しめるかと思いました。歴史小説や戦争小説が嫌いなわけではないので、本書は単純に合わなかった模様です。 人物像も浮かばず、淡々とした文章が状況だけ書かれているように感じ、当時のレポートを読んでいるような気分でした。 |
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現役医者の著者ならではの医療の話を巧く取り入れた恋愛ミステリ。
本作はとても面白かったです。そして相変わらず著者作品は読みやすい。 気になるのは宣伝方法。 あらすじや帯が過剰広告過ぎ。"どんでん返し"とか"2度読み"とかそういう宣伝もういいからと個人的に思ってしまう。それに期待すると本書は誤解されて良くない。 程よく気持ちよい恋愛小説。そこにミステリ要素をプラス。ぐらいな感覚が期待値として良いです。ま、結果として釣られて手に取ったのでそういう意味では宣伝は成功なのかもしれませんが、なんかモヤモヤ。 あらすじは、富裕層向けのホスピスに研修医としてやってきた主人公が脳に爆弾を抱える女性と出会い、その女性と打ち解けていく中で、己の悩み、心の呪縛が解きほぐされ、やがて恋愛小説模様で惹かれるが、ある事件が起きて混迷していくと言った流れ。 主人公と女性の距離感や考え方やセリフが程よく、ちょっぴり大人な20代の男女模様がとても楽しめます。 そのうちドラマや映画になりそうな気がします。イベント的な要素・内容・仕掛けが良いのは然ることながら、小説としての文章やセリフの雰囲気、現場状況の把握のしやすさが良かったです。 久々に恋愛ミステリを読んだ刺激で点数甘いかも。でも好みで面白かったのでこの点数で。 |
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元マル暴で現在警備員、警察組織との折り合いがつかず抜けてから3年、辞めた時にバツイチとなり孤独に自堕落な生活を過ごす日々。そんな主人公が警備業務中にヤクザに追われていると思われる2人の男女を助けた事から陰謀に巻き込まれつつも人生を見出していく。
この序盤の主人公の過去・現在そして希望の無い人生の哀愁漂う雰囲気から、物語が一転する様子が楽しめました。ぶっきら棒な様で実は照れ隠し、言葉は汚いけれど人思いの主人公の優しさと熱さが魅力的でした。100kg越えの強面のおっさんなのですが味があります。序盤はハードボイルド模様。 中盤以降は、あらすじにある様な敵との戦いとなりますが、これは派手なアクション映画のようなドタバタ模様となり、著者が好きなんだと思われる機械や軍事ものの専門用語が飛び交います。 前半は"静"で後半は"動"と雰囲気が違う作品です。好みとなりますが、前半は面白かったのですが後半は好みに合いませんでした。 ただ、最後の最後は落ち着く所に落ち着いており、よい読後感でした。 |
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著者初読書。シリーズ3作目の長編をいきなり読みました。
というのは、著者作品は気になる存在でしたが、作品は短編集ばかりであり個人的に没入感が途切れやすい短編集は苦手で見送っていたのです。 今回は長編なのでやっと手に取った次第。同じような方へお知らせしますと本書から読んでも大丈夫です。 少し補足すると、序盤は主キャラの"マツリカさん"の存在が幽霊なのか実在する人物なのか設定不明であり、本書がファンタジーなのかよくわからず混乱すると思います。読後に前作を調べた所、マツリカさんは元々そういう"謎の存在"の扱いらしいので、気にせず読めば本書からで問題ないです。 さて、本書は学園ミステリにおいて女子高生に異常なこだわりを魅せつつ、それが本格ミステリに結びつけられた面白い作品でした。作中に『これが男性作家が書いた推理小説だったら、その作家はただの変態ではないか』という自虐的な地の文がありますが、これは特徴的要素なのでプラス。"学園ミステリ"として単純な高校生の物語ではなく、必然的な学園の設定を活かした内容が好感かつ面白かったです。 扱う事件は女子制服盗難事件。盗まれた制服がトルソーに着せられた状態で密室で発見されます。死体ではなくトルソーなので、人が死なないミステリを好む読者にもよいです。そしてこの密室をどうやったら実現できるかを、全10章のうち半分以上の各章において、各人の推理を披露・検証する推理合戦となっているのが見所でした。 主人公の男子は、うじうじしている情けないキャラなのでちょっと苦手でもどかしかったです。周りには一緒に考え相談したり、励まし合ったりできる仲間に恵まれているので、自信を持って周りと接する成長をしてほしい所ですね。みんなでわいわい相談している様は青春だな~と感じて微笑ましかったです。 気になる所としては、犯人がかなり面倒で綱渡りな行動をしており、何故そんな事をしているのだろう?というのが、何度か読み直してやっと納得出来る所。実際これって調べればバレバレじゃない?とか、やれるの?とか、もっと巧い方法があったのでは?とか余計な所で違和感が多く残りました。 まさかな着眼点からロジカルな推理を展開して犯人を特定する所など、見せ所豊富で面白かったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ライトノベルの作風で描くミステリのメタフィクション。
かなりトンデモナイ内容なので人に薦め辛い。この本が面白いというと白い目で見られそうな扱い注意本なのですが、かなり個性的かつ他を寄せ付けない狂気の怪作である事が印象に残りこの点数としました。 孤島に赴任してきた先生は強姦魔。表紙に描かれている少女を犯せば文芸部全員分達成となる具合。まず本書で目に付くのは"強姦"の文字。1ページに何回書かれるんだというぐらい頻繁にでてくる。それに関連した下品で低俗で卑猥な言葉を乱発し続ける。先生の頭の中は終始その事だけで続くので、まず下品な話が苦手な人は本書を避けるべきです。一方、実際の行為は行間で略されて描かれないので猟奇やエロを求める人にも不向き。官能的でもなく卑猥な言葉はライトノベルテイストで軽く描かれているので、読後冷静になって見渡すと単純な記号として扱っているんだなと思いました。 対する表紙の少女の「比良坂れい」はミステリ脳の推理少女。すべての物事には理由があり伏線として活用されるんだと、ある種ミステリ好き読者を揶揄するような造形です。先生に好意を持っており先生の犯罪は勘違いの噂か何か理由があるべき行動なのだと名探偵ばりに都合のよい解釈で論じていきます。が、実際に犯行をしている先生は、んなわけないだろ!と推理を否定したりします。 まとめると、終始、性的思考の犯罪者と犯罪者だと思いたくない迷探偵の推理の掛け合いが展開される話です。 上記の下品な内容や読み辛く勢いだけとも感じる散文な文章が障壁となりますが、それを乗り越えられる人は現代的なミステリのメタフィクションを楽しめます。 物理トリック、心理トリックの可笑しさ、孤島のシチュエーション問題、叙述トリックの扱われ方というミステリの小道具の話。古典ミステリが嫌い、何故ミステリは古典を知らないと馬鹿にされるのか、過去に同じ仕掛けがあるとか言われても読んでませんし、新しい作品を純粋に楽しんでいいじゃないですかという読書側の話。罪が重いのは殺人の方なのに強姦ばかり嫌悪され、子供の虐殺はよく性表現は禁じられるという表現の問題。 などなどミステリに関する著者の面白い視点の指摘を楽しめました。なので強姦やラノベ的表現など敢えて強烈にやっている事もわかりますし、最後の話の閉じ方も読者が求めるミステリ的な結末にはしませんよ。するならこんな風ですかね。という事前告知で表現しているのがワザとだと感じました。 そしてそして、こんな風に前向きに考えてしまう事や文脈を拾って色々解釈してしまう行為は、迷探偵のミステリ脳と同等の扱いを受けている事に気づき慄いてしまいました。 本書の評価について、多くの人は投げ本になると思いますのでお薦めしませんが、ラノベ耐性と寛大さと冒険心で触れるのもまた経験な気もします。 個人的には2010年代の奇書扱いとなりました。こういう頭がおかしい作品(褒め言葉)は好みです。 |
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著者3作目の読書。
作風なのか当りを引いているだけなのか分からないですが、本作も温かく爽やかに終わる読後感が気持ち良かったです。 謎を追いかけるミステリという作品ではなく、断片的なエピソードが終盤繋がる群像劇作品に近いです。 護送車が襲われ受刑者が脱走した話が始まり、その脱走したと思われる男の物語。事件を追う警察やその男と過去に接点がある人達のエピソードを読んでいくと、今時珍しいぐらいな男気設定で面白く読めました。なんというか少年漫画の主人公みたい。ご都合主義で巧く事が運びますが、それはそれで分かり易く楽しめる作品として良いです。 本書のあらすじが"連続殺人鬼"や"サンタクロース"なんて単語を使ってますが、猟奇的のイメージは全くないですし季節感の必要性も弱い為、ターゲットがずれた勿体ない宣伝かと思います。ミステリだけど陰鬱ではなく爽やかなヒューマンドラマを求めている人に好まれる作品です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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冬の別荘地。クリスマスパーティーの気分から一転、殺人鬼が襲い掛かる。岡嶋二人によるサバイバルホラーです。
岡嶋二人作品の好きな所は主題以外の無駄を省きシンプルに楽しめる事。本書は殺人鬼が襲い掛かる恐怖と、生き残るべく知恵を使う戦い。これだけ。 "殺人鬼もの作品" はホラー特性の演出の為に残虐で気持ち悪いシーンを描く事が多いですが、本作にはそういうグロい表現が無いのが特徴だと思いました。 死の表現はあっさり。死んだら退場。登場人物は殆どいないので名前が覚えられないといった余計な心配はなし。 雪の為、視界不良で下山は困難。電話線は切らて助けを呼ぶこともできない。とにかく逃げて、考えて、戦っての連続。スピーディーな攻防の連続で一気読みでした。 ま、ちょっと古い作品なので各所のイベント事は今となってはド定番で新鮮さが無いかもしれません。結末も予想の範囲で驚きはありません。ただそれは安心に繋がり読了感は悪くないので、雪の山荘を舞台としたシンプルなホラーを楽しむにはよい作品でした。 |
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本書は"ループもの"や"幽霊もの"ではなく、記憶障害を持つ恋人との青春物語です。
あらすじやタイトルで誤解しやすいというか、わざとな商業戦略なのかもしれませんが、こういうのは印象が悪いです。 ただ、望んでいた内容とは違いましたが、1つの物語として楽しませてもらいました。 記憶障害作品ですが、話の重さはなく、非常にライトで楽しめます。 中高生男子のラノベ色が強く、ちょっと訳あり主人公が、美人なヒロインにモテモテな設定。完全に男子向け作品です。 現実的に、恋人や友人や家族や身の回りに起こるであろう事を考えると、本書はとても都合がよい展開で、ツッコミ所は豊富でキリがありません。 なので、そういうのは一旦おいておいて物語として楽しむとすれば、全体はとても綺麗な小道具や言葉で描かれいるので、中高生向けの青春恋愛小説としてよく出来ていると思いました。主人公とヒロインの考え方には共感できないのですが、世の中の恋人の思考は人それぞれなので、1つのハッピーエンドでしょう。 さくっと読める読みやすさと、彼女の日記を間に挟む物語の構成など、作り方はとても綺麗でした。終盤の一言を配置するページの気配りなど、細かい所をよく考えられているのも好感。ライトな仕掛けのサプライズがあったり、 不思議な恋の物語としては中々面白かったです。 で、読み終わってから表紙を見ると、記憶障害の作品にしては綺麗な絵柄かつ意味深でタイトルも巧いなと思いました。 色々とわだかまりが残るのですが、全体的に綺麗にまとまっている事で好感が持てる不思議な作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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"密室物の名作"だったり、当時ミステリマガジン連載のみで書籍がなく入手困難で"幻の傑作"と言われていた本書。読む機会が出来たので読んでみました。
正直、期待値が高すぎた事や、70年以上前の作品である為か、今読んで面白いかと言われると首を傾げる次第。 前半はオカルトものです。交霊会が行われ、霊媒師が呼び出した死者と相続に関して真面目な会話が進みます。古い時代の作品なので仕方がないですが、今読むとなんか滑稽でした。その後、殺人事件や怪奇現象、雪に残る不可思議な足跡の存在が現れ、浮遊できる呼び出した霊でないと事象を説明できない状況が発生します。 "密室物"として名高くなった本所ではありますが、これは密室物ではないと思います。カーっぽいオカルト+不可能犯罪の状況です。まぁ雰囲気は好みでした。 事件解決方法やトリックについては、トンデモトリックで実際には無理でしょという机上の空論なのが残念。ただ、終盤の2人による舞台の裏側の背景は良かったのでそこだけ印象に残り加点です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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要所要所のネタは凄く面白いのに、B級ホラーのようなネタだけが目立って深みが弱い作品でした。文章表現が軽くてイメージが沸き辛いので絵付きの漫画かアニメ向きかも。小説というより仕掛けを楽しむ作品という感想でした。
舞台は廃墟がそびえ立つ無人島。ここに廃墟番組撮影のスタッフ9名が訪れた所、次々と人が死ぬ事件が発生します。このシチュエーションは好物です。 そこにホラー要素として、事件の予言の動画の存在が加わります。これは5年後の未来から主人公の元へ、未来を変えるべく犯人を暴いてほしいという動画で、動画には全身怪我を負い記憶を失くしたミイラ男が映っており、その人物の不気味さがあります。 生き残ったミイラ男は誰なのか?犯人は誰なのか?などなど、面白そう!と思う要素は豊富なのですが、なんだろう、、、読んでいて惹き込まれませんでした。 真相の仕掛けも面白かったので、アイディアは良いのですが煮詰まっていない勿体なさを感じました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ゲーム『逆転裁判』のオリジナルストーリー。著者は討論が魅力のルヴォワールシリーズを手掛けた円居挽。小説を過去に読んだ事があるので、言い争う逆転裁判の小説化の担当としては面白そうな組み合わせだと思いました。ゲームは逆転裁判1~4をプレイ済み。『逆転検事シリーズ』はプレイしていません。
その上での感想としては、とても逆転裁判を再現していて文句なしです。読んでいて画やBGMが浮かびました。シナリオの進行の仕方、敵役の証拠の隠し方とその暴き方の展開、セリフ回しなど、逆転裁判が好きな人は納得の出来だと思います。キャラ物として面白かったです。 一方、逆転裁判を知らない人が、ミステリや小説単品として見るとどうか?と思うと、非常に厳しい作品かもしれません。法廷ミステリでもあるのですが、展開はゲーム的なノリそのままなので、シリーズが好きな人は楽しめ、知らない人は何だこのふざけている裁判は?となるかと思います。 大きな主軸となる謎はタイムマシンが存在するのかどうか? 密室内に被害者と共にいた被告人。タイムトラベルをしたとしか思えない状況の数々。この非現実的な内容を謎として捉えられるかどうかがポイントです。 原作はゲーム作品だから、霊媒やらタイムマシンの存在もアリなんじゃないかと思えてくるわけで、違和感なく楽しめたかどうかが評価に繋がると思います。 個人的にはミステリも然ることながら、ファンサービスが強い印象でした。懐かしいキャラクターが多く登場したのが楽しかったです。 何故、被害者は死の寸前、密室内に閉じこもり助けを呼ばなかったのか?この解法は本書ならではの理由で唸りました。 タイムマシンネタも、一般ミステリでは扱い辛いので、逆転裁判と結びつけたのはある意味巧いなと思います。 点数について。 ゲームだと相手の証言を崩すべき、おかしな所を試行錯誤して論破するのが楽しい魅力ですが、小説だと解答への一本道な為、おかしな証言はそのままおかしいまま読まされるだけなので、検察側の理不尽な証拠隠しが目立ち、なんだこのふざけた裁判は?という印象でした。文章は正に逆転裁判なのですが、小説の一本道だと違和感がありますね。同じ文章や雰囲気でもゲームと小説での印象は大分違う難しさを感じました。手放しで面白いと言えない難しさが残った感想です。シナリオそのまま、本書をゲームとしてプレイしてみたいと思いました。 |
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5,6冊分ぐらいの警察小説を読んだ気持ち。良い意味でお腹いっぱい。充実過ぎる極太のハードボイルド小説でした。
冒頭より始まる手首を切り落とされた殺人事件から始まり、その被害者女性の夫の殺し屋、姿なき犯人、警察の三つ巴戦。この3つが大まかな区分であり、それぞれのストーリーでは、殺し屋やヤクザの背景、猟奇的な異常心理の殺人にまつわる話、警察側は現場や公安の組織の物語という具合で話がとてつもなく広がっていきます。思いつく警察小説におけるテーマがこれでもかってぐらい入ってます。著者コメントより6年掛けて2000ページ書き上げて1700ページにまとめた代表作とありますが、十分に納得できる密度と質が高い作品でした。 豊富な読み所の中で、読後に一層引き立つのはやはり主人公大河内刑事の物語。上司と部下の関係、刑事の仕事、家庭の悩み。猟奇的な事件の刺激に負けない、人間ドラマが描かれていました。 点数について。作品の質としてはもっと高いのですが、意外な驚きがない中での大長編なので、長かったという気持ちからこの点数で。見方の問題で、意外がなくとも王道で安心できる良さもあるので、ホントここは好みの問題です。 綺麗に話が終結し読後感もよい為、警察小説が好きなら外せない1冊かと思います。 |
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青い薔薇の温室。小窓はあるが室内の壁一面が薔薇の蔓が張り巡らされているという目張りされた密室の属性。首だけの被害者と謎のメッセージ。密室の情景が美しくとても魅力的でした。ミステリとしての仕掛けと物語の作りは非常に濃厚。読後感は凄く複雑な内容を作り上げる凄さを感じました。
読み終わってからの感想はとても良いのですが、そこへたどり着くまでの読書中はどうかというと、個人的な問題なのですが、あまりのめり込めなかったです。。。 本書は前作からの続きのシリーズとなりました。その為、時代設定がパラレルワールドの80年代。ちょっとSFが入る不思議な世界です。青薔薇におけるDNAや科学的の解説。「実験体七十二号」という怪物のような存在を感じさせる本書において、どこまでが現実的に解き明かせるミステリなのか?空想もの?読書中は判断が付かずで頭を悩ませてしまった次第。世界情勢も不明でU国やJ国という表現。登場人物名はカタカナの海外ミステリ模様。物語を楽しむ前段階で意図しない混乱をしてしまった次第です。本書はパラレルワールドの必然性は感じず、シリーズ故に引き継がれた設定が読みにくくしている難しさを感じました。作品はとてもよいのですが、好みの問題でこの点数で。 1-2作読んで傾向が分かったので3作目はちゃんと把握できると思います。しっかりした濃いミステリなので次回作も楽しみです。 言葉遣いが悪いけど特徴的なマリアと、丁寧な漣のコンビは中々よいです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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これは斬新で傑作。 大興奮の読書体験でした。
非現実世界での本格ミステリ。特殊設定のミステリはSFやらファンタジーやらで色々ありますが、本書はタイトルから察する内容のパニックホラーと結びつける事で斬新な内容に仕上がっています。読んでいてめっちゃ楽しかったです。 ホラー作品としての状況ならありがちというかド定番なのですが、ミステリを融合して見ると斬新なクローズドサークルものになっている事に驚きます。なんというか盲点で、ありそうでなかった。そしてただの思いつきのネタで終わるわけではなく、ロジック&トリックを絡めて、しっかりとハウダニット、フーダニット、ホワイダニットを検証していくコテコテの本格物なのが読んでいてテンション上がります。やっている事は懐かしいのに条件設定が新しいおかげで解が見えない。とても好み。 こんなに楽しめたのはアイディアだけじゃなくて、文章の読みやすさや、推理パートでの検証や謎の提示が巧くて先が気になる展開だからだと思う。 また、登場人物の作りがとても親切。人数が多くても把握しやすい。何故かというと例として、ホームズの愛称は明智恭介。美人な星川麗花。山荘オーナーの息子は七宮兼光(親の七光り)。山荘管理人は管野唯人。と言った具合で、キャラクターと登場人物名が一致しているので、この人誰だっけ?という心配が皆無。没入感を妨げず物語にどっぷりハマれるのが良かったです。 よくあるミステリはこうなるよね。というのを多く感じさせ、その展開を少しずらして新しくしているのも新鮮。 "斬新"という言葉を多く書いてしまいましたが本書はその要素の一発ネタではなくて寧ろ1つの要素なだけ。ミステリの舞台装置を整え魅力的な謎と丁寧な伏線や推理展開で楽しめる本格ミステリです。楽しいミステリを堪能できました。オススメです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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単行本と文庫で表紙とタイトルが変更されましたが、これにより作品の印象が大分変りました。
『死と呪いの島で、僕らは』として読むと序盤のホラーからして一転、ラストの結末への展開は若い世代向けのライトな青春小説とも感じます。 一方、『死呪の島』として読むと、呪いで閉鎖的になった島での不可解な怪奇現象に挑む、昔からなじみのあるホラー小説を感じます。 本書は6章ある構成で、各章ごとに、怪奇現象⇒プチ結末⇒新たな怪奇現象⇒プチ結末⇒・・・と続いていきます。章ごとに話の系統が変わる展開なのですが、色々なホラー小説を読んでいる気分になり、飽きさせない面白さになっています。個人的には2章目に出てくる『顔取り』が雰囲気含めて好み。漂流した首なし死体と、蘇る死者のホラー展開は、何が起きているんだ?という困惑と恐怖が楽しめました。4章ぐらいまでが好みだったのですが、終盤は全く予想外な話になっていき、ちょっと好みが逸れました。 読後に俯瞰して思う事は、1章~6章への各エピソードが、昔ながらのホラーから現代ホラーへと時代を駆け抜けて表現していると思いました。 科学が進化した現代では、呪いや超常現象的な恐ろしさを描こうとしてもホラー作品ではなく、「異世界ファンタジーもの」にされてしまう悲しさがありますが、本書は昔ながらのホラーから描いていく事と、全体を締める結末作りで一風変わった作品になっていると思いました。 そんな事を思ったので、改めて表紙とタイトルを見直すと、前半は『死呪の島』として感じる昔ながらのホラー、後半は『死と呪いの島で、僕らは』で感じる青春小説というわけで、人の好みによって本書は評価が変わるだろうなと思います。 他の方のレビューでもありますが、文章は読みやすく、いろいろ詰め込んだ物語なのに300P台でまとまっているのが凄いです。現代的な読みやすさでホラーが楽しめたという所は好みでした。終盤のなんでもアリ感はちょっと好みから外れたのでこの点数で。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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美術+コンゲーム。
投資詐欺に合い借金を抱えたそれぞれの男女。そこへ知恵者担当の協力を得て、借金返済の為に本書表紙になっているゴッホの『ガシェの肖像』を盗み出すという展開。 本書の面白い所はこの展開の中に史実として日本のバブル期の話を混ぜている所。 『ガシェの肖像』をWikiで調べれば実際にオークションで日本人が125億で落札している事が分かります。何故その時代に絵画が高騰して取引されていたか、土地や株の代わりに扱われた絵画の存在や、絵画に関わる富豪や画商などの美術関係者の話がとても面白く読めてかつ勉強になりました。銀行にて土地と同様に担保として扱われた絵画が倉庫に眠ったままとか、何故行方知れずになっている絵画があるのか感覚的に知る事ができた読書でした。 コンゲーム小説としても、詐欺模様が見えやすい所と隠す所が巧く、終盤の繋がりは大きくて面白かったです。 大仕掛けでパーっと気持ちが高揚した後、解説的な展開が数十ページ続いて熱がおさまり長く感じましたが、綺麗なラストで楽しめました。 絵画の価値は絵の内容や巧さの物についてではなく、その作品に関わる歴史に基づくものだと改めて感じた作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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