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egut さんのレビュー一覧
egutさんのページへレビュー数773件
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異世界転生×本格ミステリ。
これは好みの作品でした。☆8+1(好み補正) 剣と魔法の世界へ転生した元警察官の主人公。平民出身ではあるが、前世の知識を活用し貴族が集う名門校に入り優秀な成績を収めます。その後、王妃や姫も出席する表彰式の祝典にて密室による不可能犯罪が発生。警察や捜査体制がない世界、そして魔法が存在する世界において、合理的な解釈と推理によって事件を解決できるか。という流れ。 本書には「読者への挑戦」が存在します。 これは著者がフェアなミステリを心がけている事を感じます。 本書の世界において、魔法とはどのような存在なのか。仕組みやできる事できない事が丁寧に書かれている為、ファンタジー作品ではありますが突飛さはなく世界観に馴染めました。 前半の異世界転生ものの定番である俺つえー物語から始まり、学園内での友達との生活は青春ものとしても面白い。圧倒的な貴族の主人公属性のレオや、いじめっ子なんだけど憎めなくなるボブ、ヒロイン的なキリオ。魔術師の校長先生のマーリンなど。キャラクターがとても分かりやすく良いキャラなのが読んでいて気持ちよい。頭の中ではハリーポッター補正していましたが、そんな雰囲気。異世界転生小説の軽いラノベではなく、ハリポタのような雰囲気の学園ものとして楽しめました。表紙をみれば心構えを感じますね。中身は結構硬派です。それでいて文章が読みやすいのも〇。他、名探偵の名前が"ゲラルト"なのが、ウィッチャーっぽくてクスっときました。 ファンタジーの世界でミステリという作品は他にもあります。が、本書の良い所は魔法や異世界転生の設定がミステリに密接に関わり必然的である事です。主人公の状況や物語を含めて、雰囲気だけではない世界観の構築が素晴らしかったです。異世界においての名探偵の存在理由やゲラルトが行う推理についても楽しめました。後半でヴァンが名探偵を模す心情が見事。名探偵とは何かというテーマも楽しめます。 続編があれば続けて読みたいシリーズですね。本作にて誕生~学園編は大分やり切ってしまった感じがする所ですが、タイトルに『異世界の名探偵"1"』とあるので2作目も検討中なのでしょう。どのような続編がでるのか楽しみです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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館ものの本格ミステリ。
落雷により山火事が発生し、館へ火の手が迫るタイムリミット模様。さらにカラクリ仕掛けの館、殺人鬼の存在、名探偵の対決、山火事に囲まれるクローズドサークルetc...と、ミステリのガジェット豊富でワクワクな設定でした。 ただ、本書のテーマは犯人当てやトリックというミステリではなくて、「名探偵の存在意義」に趣が置かれていると感じました。もちろん推理模様もありミステリを十分に楽しめますが、変わった展開で話が進行します。 山火事による時間の制約がある中、生存と真実どちらを優先させて行動するか。なかなか面白いテーマでした。 ちょっと思う所として名探偵の葛城とワトソン役の田所君。エラリークイーンみたいに悩みや葛藤を描きたいのか、作品内で成長する青春模様な結果からなのか、完璧そうで弱く、弱そうで強くなるなど、キャラがぶれぶれなのが気になりました。圧倒的な名探偵なら気持ちが良いのですが、凄い所と弱い所で相殺された普通の高校生でモブ化の印象。敗北や負け惜しみにも見える弱さ。それを狙っているのかもしれませんが、名探偵をテーマと感じる本書において、終盤この二人の魅力が減衰していく感じは後味が悪かったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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館もの+数学のミステリ。堂シリーズ3作目。
五感を表現したという五角形の五覚堂。そこで起きた密室殺人。 冒頭で示される館の機構は、「館は動き」そして「回転する」という事。講談社から出版される館もの作品の傾向として、3作目は動く事が多いのでそれに沿ったテーマだと感じます。この奇妙な館と壮大な仕掛けが本作の面白さです。そしてそこに数学を絡めたミステリとしてとてもワクワクします。前作までの評判で苦手とされていた数学話も今作ではエッシャーやフラクタルと言った専門科目ではなく高校・大学辺りで触れるものなので大変読みやすくなっています。個人的にはどちらも好きな話だったので本作は苦なく楽しめました。 惜しい点としては、トリックや犯人特定の消去法について、とても凝った仕掛けを行っているのですが、伏線がないというか唐突に明かされる為に衝撃度が弱く、読者の記憶に残る名作になりそうでなり辛い勿体なさを感じます。仕掛けだけみたら島田荘司の御手洗潔シリーズみたいな大仕掛けで同じ傾向なのに名作にならない。本書の十和田も御手洗潔も変人なのに魅力度が違う。この感覚は何だろうと思う次第。キャラの心の問題だろうか。十和田は数学でドライな感じで近づきがたいからかな。そんな事を思いました。 とはいえ、減点的な考えでは色々気になる事が多い本シリーズですが、加点的に考えればミステリの面白さや魅力が豊富に盛り込まれていて大変好物。続きも読んでいきます。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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全人類が記憶障害になり、長期記憶が出来ない世界になった話。
非常に面白かったです。あまり経験のない新しい読書体験でした。 序盤は斬新な災害もの小説としての混乱が描かれます。 突然記憶が保てなくなる世界。何かおかしいと感じても、その感覚すら忘れてしまう。また、全人類が同時に記憶障害になると、そのおかしさを指摘できる者もいなくなる。災害小説としての斬新な発想と、そうなった世界では何が起きるかのシミュレーションとしてのリアルさを感じました。 中盤からは記憶が保てなくなった世界。長期記憶を補う為に、脳と外部記憶メモリを繋げた未来が描かれます。人間の記憶が外部メモリ化された世界では、どのような問題が発生するのか。また違法な犯罪が行われるのか。短編集のようにいくつかのパターンの物語が描かれます。これらも総じて面白い。個人的には、SFやミステリというより人間の心は何処にあるのか?という哲学を感じました。肉体と記憶が分離できる場合、人の死とは何なのか、肉体が滅んだ時?記憶メモリが破壊された時?と言った具合に考えさせられます。 著者の本は少し読み辛く苦手なイメージがあったのですが、本書は扱うテーマが難解ではあるものの設定や世界観が分りやすいので読みやすかったです。 |
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元々は東日本大震災を対象としたチャリティアンソロジーの為のショートショート。その話を元に長編化された作品。
その為、震災の被害の辛さ、大事な人を亡くした悲しみ、家族の絆と言ったテーマを根底に感じました。その点は非常に惹き込まれます。 本書パラレルワールドの面白い特徴は、異なる世界を同時に観測し行動できる人物がいる点です。世界にずれがあれば、ずれを同時に見聞きできてしまう。一人の人物が二人重なって見える状態です。 震災により父を亡くした世界。母を亡くした世界。その両方の世界に存在する息子。息子を介して父は別の世界の母と会話できる状態です。この設定は震災で突然亡くした大事な人へ伝えられなかった後悔や、亡くした人は別のどこかで幸せになって欲しいという希望や救済を感じられる内容だと感じました。 本書は二部構成。 第一部が上記震災と家族の話。第二部からは様変わりします。 長編化にあたり、小説として起承転結を構成する為に作られたと思われる第二部の事件については、著者の持ち味の時間SFを活かした内容でした。異なる世界と言わず、亡くした人との会話なら幽霊小説でも良いわけです。そうではなくパラレルワールドが意味のある内容となっているのは面白かったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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敬老の日を切っ掛けに老人が主人公の話を読書。
表紙の第一印象から、重く華がなさそうな硬派な話かと思いましたが、読んでみたらユーモアあふれるテンポの良い話でした。 まず話のストーリーがわかりやすいのが良かったです。 87歳の爺さんが戦友の見舞いに行った所、臨終の言葉として宿敵の相手が生きている事。そして財宝を持っている事が伝えられます。目的がハッキリしていて宿敵と宝探しです。この目的の話の中に不可解な殺人事件が発生する流れ。 本書の面白い所は主人公のバック・シャッツの爺様。皮肉や老人ネタをふんだんに盛り込んだセリフ回しが痛快。老人設定うんぬんではなく、文章が面白いので小説として意味のある所が魅力でした。キャラクターや主人公の人生物語を十分に堪能できましたね。 ミステリ的な点。特に殺人事件については心残り。理詰めでこちらから解決を見出すというより、事件に巻き込まれて、うまく乗り越えて解決してしまう。犯人は誰なんだろう?という分らなさは良かったのですが、犯人は何でそんなに目立つ事しているの?という行動が現実的にしっくりこなかったです。もうちょっと犯行の説明や犯人を割り出す面白さが欲しかった所です。 とはいえ、総じて面白かったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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凄い傑作でした。
帯コピーは『すべてが、伏線』の強気な一文のみ。発売したてなのにネットで絶賛ばかりの評判。実は宣伝活動やステマを懸念していました。でもここまでされると気になります。 美麗な表紙に惹かれて購入。きっと版元も自信あるのでしょう。という気持ち。 結果、疑念も払拭される超絶面白い本格ミステリでした。 予備知識が無い方が楽しめるので、軽い感想を。 著者の本はマツリカシリーズを読んだ程度ですが、その感覚と大分違い、重い雰囲気の真剣な本格路線です。そこへ男性が好みそうな女性キャラ城塚翡翠が登場しライトな雰囲気を加えます。キャラも推理も読んでいて楽しい。文章もとても読みやすく、何故か苦手意識が芽生えていた著者作品への印象を改めました。 とはいえ、所々に現れる制服やふとももetc...著者らしさもバッチリ。特に何かは読書前に印象を与えてしまうので述べませんが、読後に思う事は著者の今までの要素の集大成で構築されたミステリです。 本書単体作品なので、初めて著者の本に触れる方も大丈夫。 近年珍しくなったコテコテの本格ミステリが楽しめます。本格好きならおすすめです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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タイトルに名推理とありますがミステリ成分はほんのわずか。少女漫画のような青春恋愛小説です。
世界一のパティシエを目指すイケメン王子。学校では女性に冷たい態度。そんな彼にたまたまケーキ屋で出会った女子高生の未羽。彼女はケーキ大好きっ子。ケーキの事なら良い所も悪い所も熱く語れる。そんな二人の出会いとストーリー。 ちょっとした謎や疑問でも、王子が解いて語ればキラキラと鮮やかで頭良く見えます。乙女からは名探偵に見えるわけですね。タイトルの印象はその感覚でした。特段ロジカルな推理というわけでもないのでミステリを求める方には物足りないです。 一方、青春ものとしてはとても面白い。あらすじや設定はベタに感じますが、読書中の雰囲気がとても気持ちよい。デザート話で甘い。王子と未羽の青春模様も甘い。甘々な話ですけど悪くなく楽しい。話の起伏でピンチな状況もある。例えば学校一のイケメン王子と仲良くすればファンの女子からは嫉妬を買い陰湿なイジメになりかねない。そんな状況を読者の嫌になりすぎない絶妙な分量と感覚で描かれ解決する。これは悪い状況の描き方が巧い。読者は甘いだけでなくピンチや解決も体験してより良い気分になるというわけ。読後感も良かったです。 王子と未羽、二人ともキャラクターが良くて読んでいて楽しい。そのうちドラマ化しそうだと思いました。 |
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1作目読書後、文庫化待ちしたまま手に取る機会を失っていました。今年シリーズが完結したとの事で読書。
改めて本格の雰囲気はいいですね。奇人変人、探偵、奇妙な館が舞台、そしてその中で起きる事件。好物です。 本書の難点としては衒学的に数学の話が多く語られている事です。 個人的には数学好きなのでそこも楽しめて美味しい限りですがやはり分量が多い。これは文庫あとがきの著者コメントで自身も気にしている事が書かれています。文庫化にあたって削ろうか迷ったが、本書は数学者の物語である為に残したそうです。確かにまったく無くなってしまっては読みやすそうだけど個性がなくなりそうです。さらにコメントでは多少数学の話は読み飛ばしても物語の大勢に影響はないと書いてあるので、数学の長話の点で敬遠していたら気にせずミステリ部分を楽しみましょう。 ミステリとしては新しい大仕掛け……みたいなのはなく、どこかで見たような話なので物足りなく感じるのが前作と同じ心境。ミステリの雰囲気や舞台の感覚は好きなので今後のシリーズの展開でどうなるのか期待。 |
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探偵AIシリーズ2作目。1作目はとても好みだったのですが今回は相性が悪かったです。
1作目は短編集でAIネタとミステリを短編でサクッと楽しめ、かつ初登場のAI相以ちゃんの誕生と成長が楽しめる作品でした。 本作は前作を把握している前提での長編作品となります。その為、前作と読書間隔が空いていると登場人物達の相関図が把握し辛かったです。(これは個人の問題。)ただ相性が悪かったのはそれだけでなく、本作はシリーズ作品というより、いつもの著者の作品にAI要素というか調べたITネタを足した感覚が強い為であると感じます。過去に著者作品で相性が悪かった『RPGスクール』と同じ感覚でして、作品の中だけで盛り上がっていて、状況や情景がよく分からず、読んでいて楽しめませんでした。後半はAIネタが活用されますが、そこ至るまでは舞台設定やキャラクターの説明が多く、たまにITネタを挟む。という流れでシリーズでの必要性がわかりませんでした。AIの相以や以相の話が読みたいのに、登場人物の警察官僚達や右龍家の物語をずっと読まされた印象が強く、求めている物が違った作品でした。 |
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専門的な医療知識を活用した謎でありながら、雰囲気はライトかつキャラクターものとしてサクッと楽しめる医療ミステリ。医療モノの重い雰囲気はありません。シリーズ化しやすいですし、著者の読みやすい文章も後押して、これは人気出るだろうなと感じました。
個人的に思う所として、1話目の天久鷹央の印象から超人的で完璧な名探偵像を得て神格化していましたが、3話目『不可視の胎児』にて、完璧ではない一面が見えてしまったのはちょっと残念でした。ある意味人間的ですが医者かつ名探偵の立ち位置なら完璧な人にしておいて欲しかったです。4話目の『オーダーメイドの毒薬』は本書全体を通して綺麗に決まった作品でした。大きな驚きや刺激が得づらいのが物足りないですが、読みやすさとライトに楽しめる医療ものとして今後も期待な作品です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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作者のおちゃめな毒が緩和されており従来ファンは少し寂しい気もしますが、良い意味では大衆向けな優しいテイストで読後感も良い作品。
著者ファンなので過去作が頭によぎりながらの読書。 中盤まで読んで感じたのは、これって作者同じ?という気がかり。なんというか味が薄い。野﨑まど作品ってもっと尖がっているというか惹き付けて虜にさせる中毒があった気がしましたが、本作はなんかよくあるラノベ。いや、よくあると言ってしまいましたが、面白くないわけではない。でも"野﨑まど"の作品として期待すると違う気がする。そんな作品。 映画になる作品ですが、"野﨑まど"の原作を映画化するのではなく、映画化した話を"野﨑まど"が小説化した手順でしょうか。きっと後者で一般向けの為に成分が薄まった気がします。 さて、タイトルの『HELLO WORLD』。プログラム業界では新しい言語を習得する時に、最初に実行して動作確認するワードです。新しい世界へようこそ。本作は過去作の『know』に近しいSF世界を舞台とした青春恋愛小説です。映画原作という視点でみると、近年の『君の名は。』に近しい年代の青春恋愛物語にもう少し濃いSF要素を入れて別系統にした作品作りを感じました。また、野﨑まど作品と言えば終盤にひっくり返るどんでん返しのサプライズ。作品によっては裏目にでる程、雰囲気を変えて賛否両論を巻き起こす為どんな結末か不安を感じましたが、本作はいい具合のプラスなサプライズでした。要素としては恋愛要素に比重があります。映像映えしそうなシーンも多く改めて映画原作かつティーンエイジャーに好まれると思いました。 ヒロインは著者らしい女性キャラだなとか、狐面とか神の手とか、過去作を感じる所もあり、なんだかんだで楽しく読みました。本作から著者作品に入り気に入った方は、SF寄りなら『know』、青春寄りなら『[映]アムリタ』へと繋げていくと著者作品をより楽しめます。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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内容は観覧車に閉じ込められた人達の群像劇。
観覧車をジャックして人質を取った犯人。ママの誕生日旅行で来ていた家族。伝説のスリ師の爺。etc... 籠に閉じ込められた面々の状況が切り替わりながら話が進みます。 タイトルや表紙から、誘拐ものの緊張する堅苦しい雰囲気、またはホラーを連想していましたが中身はコミカルでライトな傾向でした。知名度がある作品で例えると、恩田陸『ドミノ』やゲームの『428』の雰囲気に近いです。重くなく気軽に楽しめます。 群像劇作品の舞台は街の中やホテル等の大型施設にて交わる事が多いのですが、本作品は個々が観覧車の籠に閉じ込められており、交わり辛い状況です。どう話が交差するのか予測がつかない珍しいシチュエーションでした。 どういう話に転ぶかは読んでからのお楽しみ。 総じて面白く、最初と読後の印象の違い、ストーリー展開や繋げ方、分かりやすいキャラクター達、そして読みやすさ。と、ストレスなく楽しめて面白かったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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アマチュア作家サークル内での事件。娘に、もう少し外に出た方がよいよと促されて訪れたサークルで事件に巻き込まれてしまった主人公のボブ。サークル面々とまだ深い関係がないのをいいことに、客観的立場で事件の相談を受ける事になる。
主人公と読者の視点が合っており、怪しい容疑者達との関りが面白い。著者の作品に出てくる登場人物は個性とユーモアがあるので殺人事件であれど雰囲気が重くならないのが好みです。 ミステリとしては犯人当てになります。どことなく古典作品を思わせる展開であり、少し言葉が悪いですが古い印象。大きな展開があるわけではないですが、丁寧な古き良きミステリといった印象でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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孤島のクローズド・サークル。児童養護施設内で起こる連続殺人事件。
犯人視点の倒叙ミステリでもある。いざターゲットを狙い部屋に忍び込むと既に何者かによって殺されていたというシチュエーション。自分以外にも殺人を犯すものがいる。 登場人物は胡散臭い面々。暴力団の子供、2重人格の子、探偵気取りの子供、などなど。館の見取り図まであって本格ミステリの雰囲気はバッチリでした。 80年代後半の新本格ミステリネタが豊富に盛り込まれています。初見なら大層びっくりするネタもある事でしょう。著者の本格好き健在です。ここでこのネタが来るとは思いませんでした。ただ新本格好きの既読者はこれが既視感と感じるかも知れない為、そこは好みの別れどころかと思います。うまく隠蔽していた為、巧さに感動です。 好みについて。児童養護施設内が舞台な為、登場人物達は小中高生です。殺人犯・殺人鬼と呼ばれる為の恐ろしさ、場の恐怖が感じられなかったのが残念でした。2重人格のキャラ含め、少しコミカルというか非現実的です。孤島のクローズド・サークルもので猟奇連続殺人ならもっと恐怖や緊迫感を感じたかった次第。著者の作品をいくつか読んできましたが恐怖や緊張・焦りなどの感情に響くようなものってまだないかも。版元違いで"殺人鬼"というタイトルなので、そういう雰囲気を期待してしまったのかもしれません。面白かったのですが、少し軽かったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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難病・余命ものの恋愛小説。
死期が近づくと体が発光する発光病というものが存在する世界。余命わずかな彼女と青年の物語。 発光病という設定について何かしら意味があるかと言われれば余りなく、現実的に例えると癌と変わらない。本書は設定どうこう言ったり既視感を述べて比較するものではないと感じます。余命ものでよくある話と感じてしまうのですが、本書の良さは雰囲気というか話の流れの切なさがとても沁みる作品でした。 MW文庫で電撃小説大賞作品より。ターゲット層にとても合った作品です。発光病の扱いも映像にしたくなる要素です。 主人公が余命わずかな彼女の為に何でも実行してくれる流れはピンと来なかったのですが、最後まで読んで主人公の心情を知ってみると思春期の危うさ、儚さ、葛藤、など、複雑な心を感じられて悪い事は言えない感じになりました。 雰囲気や流れがとても綺麗なので、中高生に向けた余命ものの恋愛小説として楽しみました。 |
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著者の切ない話を集めた短編集。
本作に収録されている作品は『未来予報』『手を握る泥棒の物語』『フィルムの中の少女』『失はれた物語』の4編。個人的に楽しめたのが『手を握る泥棒の物語』と『失はれた物語』の2作でした。 この2作は短編集『失はなれる物語』にも含まれています。この2作を読みたい場合は本書よりもそちらを手に取るとよいです。 著者はあとがきが面白く、そこには『未来予報』と『フィルムの中の少女』は生活の為に出版社から依頼されたテーマで書かれた作品であると書かれていました。まぁ、そんな気はします。面白くないわけではないですが、切ないテーマや怖いテーマを感じる事もなく、綺麗に描かれたシーンはありますが重苦しい読書でした。あまり心に残りませんでした。 以下は、『手を握る泥棒の物語』と『失はれた物語』の感想を。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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『13・67』の時に感じていましたが短編のクオリティが物凄く高い。またまた贅沢な作品です。
正直な所、表紙とタイトルが凄く難解そうなイメージを与えます。私自身、手に取り読む気持ちがなかなか芽生えませんでした。が、読んでみると大変読みやすくミステリ初心者からオススメできる素晴らしい作品集だと思い改めます。色々な味が楽しめるのでとてもオススメです。 本書は『13・67』のような連作ではなくバラバラの短編集です。本格ミステリはもちろんの事、ホラー、スリラー、SF、世にも奇妙な作品と様々なジャンルが17作品収録されています。ジャンルとしてはバラバラですが、どれもこれも一筋縄ではいかない結末に魅了されます。いやもう、『13・67』が凄かったというより、もともとの作品の作り方からして基本が驚かせて楽しませる作風なんだと感じました。 本書300ページ台なのに17作品なのです。1作品短いもので10ページ台。たったそれだけのページなのに、惹き付けるストーリーを描き、事件等のイベントが発生し、驚愕の真相を与える作品が何作もあります。これは長編で読むような仕掛けでは……と思いつつも贅沢な読書を満喫できるのです。ページ数が少ないのでちょっとの合間に読むだけでも充実した気分になります。 まず最初の『藍を見つめる藍』。40ページ。ネットストーカー・SNS犯罪を扱います。現代的なサスペンスだなと思いつつ読むわけですが、結末を読む頃にはすっかりと本書に魅了され、次の短編も期待に胸を膨らませる事でしょう。掴みはバッチリです。 『見えないX』は推理小説をテーマとした大学の授業。授業に紛れ込んでいるXの正体を暴けという内容でしたが凄く面白い。こんな授業を受けてみたいと思いつつ、本格ミステリを堪能しました。 この『藍を見つめる藍』、『見えないX』は群を抜いたミステリ作品。『作家デビュー殺人事件』『いとしのエリー』『時は金なり』も好み。『習作1~3』と言った練習作品も収録されており、著者のアイディア作りの一端が見れたようで楽しいです。 改めますが、表紙とタイトルから受ける堅物印象とは違い、大変読みやすくバラエティ豊かな作品集です。とてもオススメ。 |
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ベースはひと夏の青春小説。そこに幽霊+プチミステリを加えた感じ。表紙買いでしたが中身は印象と違いちょっと重かったです。感動する評判を聞いていたのですが、個人的には総じて喪失感とやるせなさが纏う雰囲気でして、読後の気分は曇り空と言った所。
物語は仲良し5人組の中で一番のエースであるケイタが死んでしまった所から始まります。 残りの4人の喪失感がすさまじく、5人の人間関係の事、ケイタに言えなかった事、知りたかった事、後悔の気持ちが立ち込めています。そんな時に生前仲が良かった人にしか見えないというケイタにそっくりな幽霊が現れ、ケイタの最後の願いを叶えるべく皆で亡くなった現場となる山へ向かう流れとなります。 設定が巧いなと思った所として、幽霊は物理的なものを透かしてしまう為に電車に乗れない事。目的地へ向かうのに歩いて行く理由が出来ているのが巧いです。4人が歩いて向かう中でそれぞれの想いが独白されます。何となく恩田陸『夜のピクニック』を感じる流れです。構造は面白く読めました。 内容はよくあるような青春模様で可もなく不可もなくと言った所。後半のケイタの願いにおける真相は驚きましたがちょっと急展開過ぎるかな。そうきたか!という驚きや納得ではなく、なんか辻褄が合わないような疑問が増えてしまいモヤモヤ。世の評判通り最後は綺麗にまとまってはいますが、事実となる結果を想像するとやっぱり悲しいものではないでしょうか。ちょっと好みに合わずでした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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クローズドサークル×予言もの
前作同様に特殊な状況を本格ミステリに加えた作品となっています。 封鎖された空間で起きる事件と検証の連続。読んでいて非常に楽しい読書でした。大好きな本格ミステリに予言という要素の新たな使い方を加えて斬新さを生み出しています。 読書前の気持ちとして、実は予言という要素はミステリではそんなに珍しくないですし、予告殺人というジャンルもあり見慣れている為、ある程度を想定して身構えていました。 本書の予言の面白い所は、予告殺人のような人的要素ではなく、SFの超常現象のようなものとして扱われている所です。前作同様に非現実的な事があるかもしれないというのを前提条件に加えてのミステリな為、事件検証方法や登場人物達の思考や行動が斬新に映りました。 また、物語の雰囲気やキャラが良いです。比留子さん&葉村の支え合うような関係も目が離せません。真面目な所と抜けてる所が程よく読んでいて気持ち良いです。特殊設定ミステリという要素だけ捉えてしまうと過去にも多くの作家さんが描いていますが、学園ミステリのキャラ立ちしている中では珍しいのではないでしょうか。この点も非常に好きな要素。新本格時代のクローズドサークルでミス研メンバーが活躍する中で新たな特殊条件が加わるという好きな要素てんこもり。大興奮な読書で読後も満足。次回作も楽しみです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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