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梁山泊 さんのレビュー一覧

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レビュー数681

全681件 101~120 6/35ページ

※ネタバレかもしれない感想文は閉じた状態で一覧にしています。
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No.581:
(7pt)

心臓と左手 座間味くんの推理の感想

「月の扉」の続編というか、大迫警視と座間味くんのその後を描いた7本の短編集です。
二人が酒を酌み交わしながら話題にするのは、既に決着した事件。
ラストの「再会」を除けば、解決済みの事件を覆す安楽椅子探偵という毎度同じパターンだし、また「こういう解釈も可能」の域を超えていないのですが、何れも見事な反転でキレを感じますね。
話を複雑にせずシンプルなのが逆にテンポを生んでいる感じがします。
因みに、パターンの違う、ラストの「再会」も、ある人間の人物像を反転させてるんですよね。
相変わらず上手いな、って印象です。

心臓と左手―座間味くんの推理 (光文社文庫)
石持浅海心臓と左手 座間味くんの推理 についてのレビュー
No.580:
(7pt)

水底の棘 法医昆虫学捜査官の感想

法医昆虫学捜査官赤堀涼子シリーズの3作目。
良くも悪くも相変わらずの安定感ですが・・・それにしても、レビューを描きづらいシリーズだなぁ。
今作の赤堀は水死体の第一発見者。
赤堀が第一発見者ならでは、の展開はなかったのですが、今作は解剖医の見解を覆す活躍を見せます。
今作は水死体を扱うため水中生物がメインで、残念ながら蛆虫は少なめ(笑) なので「虫の声」を聞いての驚く推理、というこのシリーズ最大の面白味が影を潜めてますかね。
あと、岩楯、鰐川のコンビがあんなハンパな連中に窮地に陥るというラストの展開は不要かな。

水底の棘 法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)
川瀬七緒水底の棘 法医昆虫学捜査官 についてのレビュー
No.579: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

プラスティックの感想

相変わらずリーダビリティはいいですね。
1枚のフロッピーディスクにおさめられた50を超える手記を順に読んでいく事になります。
登場人物達が代わる代わる登場してきてなされた証言が記されています。
作者の代表作の1つである「ラバー・ソウル」と同じ構成なのですが、その証言、矛盾しているにもほどがあります。
それはもう読み手を混乱させるにも限度があるってもんで、ここまで来ちゃうとオチは読めてしまいました。
まぁ、ワープロとかフロッピーディスクで分かるように、かなり昔の作品でもありますし、今読んでしまうと、ネタの鮮度と言うかなんというか、「古い」というのが正直な感想でした。
が、さすが井上夢人さんですねぇ。そんなオチで終わらせてないです。
最後にもう一捻りあるっていうか、ラストのほんの数ページで作品に更なる奥行きを持たせることに成功していますね。
ちょっとしたことなんですけどね。
「古っ」で終わってしまうのとは読後感がかなり違う気がします。

プラスティック (講談社文庫)
井上夢人プラスティック についてのレビュー
No.578: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

ドクター・デスの遺産の感想

刑事犬養シリーズで終末医療をテーマにした作品。
終末医療をテーマにした作品は多く、私も最近何冊か読んでいますが、医療現場を舞台にした久坂部羊「悪意」、南杏子「サイレントブレス」辺りと比較するとやはり分が悪く、同じ社会派ミステリの葉真中顕「ロスト・ケア」と比較すると遥かにスケールで劣る気がしますね。

延命措置が高額となる以上、医師から安楽死を薦められる事は多くないのでしょうね。
前述の3作品同様、こういう現状を問題提起する作品だと解釈していますが、だとすればラストが不満ですね。
更に、捜査していく上での、犬養の取る立場もどっちつかずですよね。
誰の口からメッセージを発信させるかって、それはやはり犬養であるべきだと思いますから、そのせいで結果的にメッセージ性が薄れてしまってませんかね。
う~ん、それにこのテーマで、どんでん返しとか要らんし。

ドクター・デスの遺産 刑事犬養隼人 (角川文庫)
中山七里ドクター・デスの遺産 についてのレビュー
No.577: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

147ヘルツの警鐘 法医昆虫学捜査官の感想

シリーズ最新作を先に読んでしまったが面白かったので1作目を早速読んでみた。やっぱ面白い。
やはり、主人公・赤堀涼子がいいですね。
1作目という事もあり、より変人ぶりが際立って描かれてます。
周りから認められていない変人法医昆虫学者がその活躍によって偏見を覆していく。
日本人はこういうの好きなんでしょうね。
蛆ボールのグロさに耐えて読み進めると・・・意外と読後感はいいんですよ。
ただ表紙の赤堀涼子、これはない。
私は、小柄なゆりあんレトリィバァをイメージしてるのですが・・・

それにしても賞受賞後の2作目に、こんな作品を描くなんて凄いと思います。
Wikiで調べると、女性でしかもデザイナー。
生物学者だった父親の影響のようですね。
また楽しみなシリーズを見つけてしまった。

法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)
No.576: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

ブルーローズは眠らないの感想

ジェリーフィッシュに続く「◯◯しない」シリーズ?第2段。
前作が航空工学で今作は遺伝子工学。
ここだけ聞くと理系ミステリ?森博嗣?って感じですが、前作でも感じたように、相当に綾辻館シリーズを意識しているように思います。
そして本格です。

動機がどうこういう人が多いけど、ミステリの仕掛けとしてはかなりのレベルだと思います。
相当に考え抜かれたプロットですね。
そして、密室殺人を装いながら、中には、自殺ではありえない首を切断された死体が・・・
これだけで結構そそられます。
ミステリの体裁だけでなく、マリアと蓮の人物造形だったり、サイドストーリー的なところまでよく描けていると思います。
面白かったのは前作ですが、1冊の作品としてレベルの高いのはこちら、そんな印象を持ちました。

青崎有吾さんのシリーズと共に、今イチ押しですね。
でもまぁ、これで一発屋でないことは証明されました。
続編が楽しみです。

ブルーローズは眠らない (創元推理文庫)
市川憂人ブルーローズは眠らない についてのレビュー
No.575:
(8pt)

潮騒のアニマ 法医昆虫学捜査官の感想

シリーズもののなんと5作目だったようだ。
ありそうでなかった・・・そんな印象ですね。
人為的に隠そうとしている事実をいとも簡単に暴き出す虫たち。最初の数ページで「これは面白いぞ」ってなりました。
元々外部からの介入を好まず排他的な捜査陣、そんな中、主人公である法医昆虫学者が少し変わった物怖じもしない若い女性である事、そして彼女の風変わりな捜査法を認めるベテラン刑事。
この二人の主人公の関係性がいいですね。
映像化を意識してヌルい作品を描く作家が増えている中、映像化したらTV局の電話が鳴り止まないだろうこのシリーズを描き続ける作者はスゴイ。
アリや蛆虫が苦手な人でも大丈夫ですよ。

潮騒のアニマ 法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)
川瀬七緒潮騒のアニマ 法医昆虫学捜査官 についてのレビュー
No.574: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

屍人荘の殺人の感想

鮎川哲也賞受賞作。
選考員の北村薫さんが言った「野球を見に行ったら、いきなり闘牛が始まったような驚き」
これが、一番分かりやすいように思う。
似たような例えをしているレビュアーの方がいたが、ミシュランシェフが田舎の大衆食堂で「クローズドサーキット」を注文して、出てきたものに目からウロコって感じだ。
本作品における、ホームズ、ワトソンでの続編に期待したいところですが、何れにせよ次回作で真価が問われるでしょうね。
単なる大衆食堂のオヤジだったのか、味吉陽一(古い?)なのか・・・楽しみに待ちたいと思います。

タイトルからして本格、そしてクローズドサーキットものなのだが、「新しい」って言っていいんでしょうね。
読中、最後どうやってまとめるのか不安になりながらの読書でしたが、
クローズドサーキットを作った原因も「あれ」だし、驚いたのは凶器として使用された「あれ」で、これはお見事としか言いようがないですね。
ただ、こういう状況で、「復讐を成し遂げるチャンスだ」なんて考える人は、絶対にただの一人もいないと思いますけどね。

屍人荘の殺人
今村昌弘屍人荘の殺人 についてのレビュー
No.573:
(4pt)

セリヌンティウスの舟の感想

この作者さんらしい「閉じられた空間での心理戦」なのですが状況がかなり特殊です。
テーマは「信頼」なのかな。
そして特殊な状況というのは、「悪意」が存在しない、そんな中での心理戦だという事。
メンバの一人が自殺をするのですが、心理戦により推理されるのは、「自殺の手助けをしたのは誰か」であり、一向に「誰かが殺したのではないのか」にいかないのです。
死んだ彼女が自分たちの事を考えてくれていなかった訳がない、とか、一向に核心に触れようとしないメンバにイライラしっぱなしでした。
確かに、特殊な体験に基づいての関係構築に違いないのですが、読み手からしたら奇人変人の集いというか滑稽で最早「異世界」であり、共感するのは困難でしたね。

セリヌンティウスの舟 (光文社文庫)
石持浅海セリヌンティウスの舟 についてのレビュー
No.572:
(6pt)

人面屋敷の惨劇の感想

「惨劇」なんてのは、石持ミステリにはやや違和感を覚えてしまう言葉でありコレだけで興味津々。
そして、タイトルからして「本格ミステリ」であり、「人面屋敷」なる不気味な館で「惨劇」が展開されるなんていう、これまで読んだ事のないような石持ミステリが読めるのかと期待したんですけどね。
それにしても、この作者さんにかかると本格ミステリもこうなってしまうのか、この題材ですら、この方向に持っていくの、ていう。
またしても、警察を呼べない状況に陥れての心理戦です。
ただ、これまでのパターンと一番異なっているのが、メンバ同士の信頼関係と言うか繋がりが希薄だという事。
いとも簡単にバッサリ切り捨てる感じで、その分、物語の展開にも複雑さがない。
そして、語り手の主人公が何故か常に受け身。
碓井由佳とまではいかないまでも、心理戦をコントロールできる切れ者が不在で、誰に注目していいものか、こちらも読んでいて落ち着かなかった。
ラストの、無理くりハッピーエンドっぽく持っていくなんてのも不要かな。


人面屋敷の惨劇 (講談社ノベルス)
石持浅海人面屋敷の惨劇 についてのレビュー
No.571: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

聖女の毒杯 その可能性はすでに考えたの感想

盃を回し飲みした8人のうち3人と犬だけが殺害されるという事件を題材にして、推理合戦と論理否定の連続。
本格ミステリランキング2017年1位。
う~ん、好きな人が多くいそうなのは理解できなくもないですけど、万人受けする作品ではないですね。
それ程ページ数のある作品ではないのですが、考えながらの読書が必須です。
読了までにえらい時間がかかりました。これは疲れますよ。
私は正直お腹いっぱいです。

聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた (講談社文庫)
No.570:
(8pt)

スリープの感想

それにしても、この作者さんは、登場人物を変態まみれにするのが好きなんですかね。

この作品については、一人称の表記が変わったり、とか、分かりやすいというか、露骨過ぎですので、読み手に「何かあるよ」って警戒させるようになってますよね。
その他にも、あの某言葉遊びにも気付いたんですけどね。
なる程、そうまとめましたか、って感じです。
「イニラブ」より分かりやすいと思いますし、全然面白いですよ。

スリープ (ハルキ文庫)
乾くるみスリープ についてのレビュー
No.569:
(9pt)

悪医の感想

現役の医師である作者が描く「悪い医者とは?」を読み手に問いかける作品。
ガンを患う主人公が、ある日担当医から「これ以上、治療の余地がありません」と告げられる。
残りの時間を有意義に、という思いの医者と、「私にすれば、死ねと言われたのも同然」という主人公。
一縷の望みに賭け、様々な病院を渡り歩き、そこで様々なタイプの医者に出逢うことになります。
まぁこういう医者もいるんだろうな、っていう医者も何パターンか登場しますが、本物の医師にそれを描かれると結構衝撃ですよね。
癌患者の苦悩だけでなく、それと向き合う医師の苦悩もしっかり描けている良著だと思いました。
自分が癌で余命わずかとなった時、どんな医者にそばに居て欲しいだろうか。

悪医
久坂部羊悪医 についてのレビュー
No.568:
(8pt)

届け物はまだ手の中にの感想

恩師を殺害された公務員がその復讐を終えた後、親友の豪邸に、殺害犯の生首を届け物としてアポなしで訪れるのですが、豪邸の中で「何か」が起こっているためか、肝心の家主になかなか会えない。それを、殺人犯が探偵となり、主の妹、妻、秘書を相手に推理していくという物語です。
「碓井由佳シリーズ」が大好きな私。
この作品も同系統で、この作者さんの描く、こういった閉鎖空間の中での心理戦、駆け引き合戦は本当に面白いですね。
殺人犯がいけしゃあしゃあと探偵役を演じる作品は何作か読んだ事がありますが、この作品の場合、全く別の事件を全く別の場所で推理するという。
この舞台設定がまず異質っていうかすぐれものな気がします。
この作品の場合、探偵役の公務員は、碓井由佳のような圧倒的な存在感がない、「弱い」かなぁ、と読中感じていたのですが、物語の幕引きを見ると、展開を支配していたのは女性陣だったんだなと。
この作者さんは、女性に対して何か苦い思い出をお持ちなのだろうか。

1つ難点を上げるとしたら、表紙のデザインで、屋敷内で何が起こっているか予想できてしまった事でしょうか。

届け物はまだ手の中に
石持浅海届け物はまだ手の中に についてのレビュー

No.567:

潔白 (幻冬舎文庫)

潔白

青木俊

No.567:
(9pt)

潔白の感想

DNA鑑定が信用に足りない時代の話で、それによる冤罪をテーマにした作品です。
しかも、死刑が執行された後の事であり、そんな冤罪をめぐる検察と、無念な死を遂げた父の汚名を晴らさんとする娘の戦いを描いた作品です。
高野和明氏の「13階段」とは、死刑執行前か後かの違いがありますが、こういう作品を読むと死刑判決ってやつの重さを感じますね。
読み応えがある作品です。

日本では、起訴された場合、その有罪率は99%を超えるらしい。
起訴、不起訴のふるいをかけるのは検察であり、要は検察が有罪だと判断したら、いくら無罪を主張してもその判決が覆される事はまずない事をその数字は示している。
ただ、こういう作品が世に数多く出ている事自体、検察の捜査能力に疑問を抱き問題提起したいと考えている人も少なからずいるのだろうなと想像してしまいますね。

潔白 (幻冬舎文庫)
青木俊潔白 についてのレビュー
No.566: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

神様の裏の顔の感想

お通夜の参列者達による群像劇で、神様のように慕われていた元教師が実は凶悪犯では? という話です。
参列者たちの何気ない一言が、パズルのピースになっていて、それが1つずつハマっていって1つの人物像を形成していくという流れになっています。
同じ事を感じられたレビュアーの方も多いようで恐縮ですが、その何気ない一言から読み取れる伏線ってのが、あからさまだったり、余りに唐突だったりで非常に簡単なんですね。
分からないように工夫していたりって箇所もあるんですが(後出しとか)、ここに何かある、ってのは、大部分の人が気付くかなと思います。
だって無駄な遊びがないんだもの。
予想できちゃって、それが当たっていて、「これでいいのか」って、少し失笑してしまいました。
兎に角、余りにも露骨というかわかり易すぎるので、私は読中、最後にもうひと返しあるものと思っていました。
正直、1つでも意外な伏線でも含まれていたなら、評価も大きく変わったかもしれませんね。
まぁ、それがなくても面白かったですけどね。
作者は元芸人さんらしいです。
それを知って思い返してみると、コントの台本って感じでしたね。


▼以下、ネタバレ感想
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神様の裏の顔 (角川文庫)
藤崎翔神様の裏の顔 についてのレビュー
No.565:
(5pt)

暗い宿の感想

火村シリーズの「宿縛り」の短編集です。
ロジック一辺倒の作家さんなので、短編集だと、パズルのピースが1つまた1つっていう醍醐味が味わえないですよね。
旅行記って感じで、ミステリーとしては物足りないですし、火村&有栖のファンならば・・・って感じですかね。
江神シリーズと違って、火村シリーズが退屈に感じるのは、有栖の立ち位置、キャラが悪い気がするんですよね。

暗い宿 (角川文庫)
有栖川有栖暗い宿 についてのレビュー
No.564:
(8pt)

風の墓碑銘の感想

音道シリーズは「凍える牙」「鎖」に次いで3作目の読了なんですが、正直この主人公に魅力を感じないのです。
「男社会で差別的な扱いを受けながらも頑張る女性」を描いたシリーズという印象ですが、この主人公は好きになれないですねぇ。
安易に「パワハラだ、セクハラだ」と吠えるアホさはないものの、思考が今風の女性って感じもしないですし。
音道の魅力ってなんなんでしょう。勘が鋭いところ? だけ?
音道を認める周りの男刑事たちの方が寧ろ格好良く思えるのですが・・・
これが作者の狙いなのかな。
これで3回目のコンビとなる滝沢なのに、一向に距離が縮まらずで、滝沢の音道の扱いづらさにイラついたり気を使ったりの「心の声」が面白いのですが、普通の男だったら同じこと思うよなぁ。
過去2作よりは好きですね。

風の墓碑銘(エピタフ)〈上〉―女刑事 音道貴子 (新潮文庫)
乃南アサ風の墓碑銘 についてのレビュー
No.563: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

出口のない海の感想

横山秀夫といえば警察小説ですが、そんな作者が描いた戦争小説。
さすがに期待は裏切りません。「永遠の0」が神風特攻隊ならば、こちらは人間魚雷。
背景的な意味合いを持つエピソード。
この作品では、大好きな野球、大好きな女性、なんですが、 物語に何ともいい味わいを出しているように感じましたね。
ただの戦争一色の作品ではないですよ。
人間魚雷として死という運命を目の前にした主人公が吐露する本懐に涙せずにはおれなかったです。
ホントに馬鹿な時代があったものです。国ごときのために捨てていい生命などないのですから。
昭和初期の、もはや時代遅れ、時代錯誤も甚だしい思考をお持ちの国、組織が今でもあるようですが、こういう作品を読んでみればいい。

出口のない海 (講談社文庫)
横山秀夫出口のない海 についてのレビュー
No.562:
(7pt)

ヘブンメイカー: スタープレイヤー2の感想

死んだ後、「死者の街」で蘇らされて、スタープレイヤーに選ばれた者は、10個までどんな願いでもかなえられるという、要は「神様ごっこ」な設定。
2つの視点で物語が進み、最後その2つの物語が1つに繋がるという構成もありがちだし、読み始めて好きなジャンルではないなとは思ったものの、その独特な世界観に魅了され結構楽しめました。
まるでまっさらな状態から、「町づくり」から始まり、グループが出来て、長が出来て、宗教のようなものが登場して、そしてやはり争いが起こる。
人類の歴史の縮図のようなものがそこには表現されていて、現代人としての知識や知恵を持っていても、同じ歴史を繰り返すものなんだろうか、と妙に納得できてしまった。
力を持つものは良識を持ち、力を持たないものこそがズルい事を考えるっていうのが面白いですね。
続編から読んでしまいましたが、十分楽しめました。

ヘブンメイカー スタープレイヤー (2)