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梁山泊 さんのレビュー一覧
梁山泊さんのページへレビュー数681件
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陽気なギャングシリーズ3作目。
安定した面白さ・・・と言いたいところだが、これまでの2作と比較すると、はっきり微妙だろう。 というのも、今作は銀行強盗というよりも悪者退治。 敵は、ゴシップ記者となるのですが、その火尻っていう記者が、相当にゲスの極みな描かれ方。 本来であれば、そんな悪を、4人が軽くいなすって感じになるはずが、どこかドタバタしていて、どこかこのシリーズらしくないよに感じてしまった。 人間嘘発見器、話術の達人、スリの名人、正確な体内時計を持つ運転の達人という4人の個性も活かされていないように思いました。 最後の収束のさせ方も、面白味がないというか、どこか投げやりな気がしましたね。 |
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犬養シリーズの3作目。
いわゆる裏七里と言われている御子柴や犬養シリーズでは、メッセージ性の高い作品を多く世に送り出している作者ですが、この作品はそれらの中でも最もメッセージ性が高いのではないかと思います。 子宮頸がんワクチンの副作用を題材に薬害問題を描いた作品。 犬養の特性も発揮しづらい舞台であった事もあり、それを補うべく女性のパートナー、とも思ったのですが、そのパートナー、犯人推理には全く役に立っていません。 女性の代弁者として、男どもに物申すといった役どころで、正直捜査の場には邪魔者以外の何者でもなかったですね。 ってなわけで、ミステリー色は薄くなり、社会派に傾いています。 そもそも登場人物が少なく容疑者候補が絞られる上に、◯◯犯にしか思えない手口でしたから、読中から最後の展開が何となく予想できてしまいました。 お得意のどんでん返しも、着地点が予想できていたので効果半減といったところでしょうか。 だったら面白くなかったのか、というと決してそうではなく、これまでの無理くりなどんでん返し作品が安っぽく思えてしまえるくらい、読後はずっしりと印象深い作品になりました。 |
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岬洋介シリーズ最新刊で、彼の高校時代のエピソードが描かれます。
ドビュッシー、ラフマニノフ、ショパンときてベートーヴェン。 岬が抱える障害を考えると満を持してのベートーヴェンなはずで読む前から期待大でしたが、続編ありきのあくまで助走という感じで終わってしまった。 なるほど、既に「もう一度ベートーヴェン」という続編が用意されているらしい。 続編が楽しみになる終わり方と言っていいかも知れませんね。 ただ、この作品単独の評価はイマイチと言う事でいいでしょう。 ピアノの才能はもとより、何もかもを達観しているかのように冷静であるものの、何かを感じ取る洞察力、そしてその後の行動力は学生時代から健在。 予想通りクラス内で浮きまくる岬。 音楽科は普通科とでは在籍している生徒の質のようなものが違う事は何となく理解していたものの、それにしてもあの嫉妬は醜い。 小学生レベルの言動に呆れるばかりで、音楽科卒の人間に対する印象が変わりそう。 |
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毎作社会的なメッセージを含める中山七里作品であるが、今回は「麻薬」
被害者である製薬会社社員をはじめとして、薬大生である被害者の彼女、本庁から来た宮條、そして主人公である槇畑の過去物語が次から対へと語られ、前半の物語は非常に重苦しい雰囲気。 しかし後半、カエル男を台無しにしたあのバイオレンスがここに再登場する。 意外すぎる犯人もその原因の一端ではあると思うが、このバイオレンスが、「麻薬は恐ろしい」「麻薬は憎むべき存在」という作者のメッセージを遥か彼方に忘れ去らせてしまっている。 まぁ、舞台となった薬物研究所は謎が多く残ったままで、ここに勤務していた社員達は全員の名前まで明らかになったものの連絡が取れないまま。 昔のパートナーを失った渡瀬も、宮條の協力者だった人物も、「彼の意思を継ぐ」的な何のアクションも起こさないまま。 古手川もこのままでは使えないただの笑いもののまま。 特に、麻薬を憎みその撲滅に全てを捧げているキャリア組宮條が、あのようなな退場をさせられた事については流石に納得がいかないのですが、この作品には続編があるということ。 出し惜しみしない作者さんのことだから、宮條を物語の舞台から降ろしたのにもしっかりした理由があるのではと思ってます。 それは後編を読めば分かるはず、と信じたい。 この作品単体では低い評価となるのは仕方ない。 で、埼玉県民から言わせてもらうと所沢はそんな僻地ではないです。 |
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将棋をモチーフしたバトルゲームで、主人公を含め登場人物(?)は作者お得意の異型キャラで、コマそのものであり、ゲーム自体は仮想空間で行われるという感じです。
何故こういったゲームを行うハメになっているのか、などは全く明らかにされないまま、いきなり戦闘シーンから開始されます。 で、その謎は、最後の最後に明らかにされるのですが、これまでの流れにマッチしない、想像もしなかった受け入れがたい地点へ着地させられた感じで、驚きというより呆れや怒りに近いですかね。 将棋をモチーフにはしていますが、勿論、その設定自体、将棋そのものというわけではないです。 正直「設定負け」ですかね。 まずターン制ではないこと。 そして、視点が主人公のチームに固定されたままなので、相手側の考えが見えないです。 対戦ゲームならではの心理戦の面白味を感じる事ができなかったです。まして将棋でしょ。 次に7局4本先取という点。 残りページでおおよそこの対局の勝ち負けの予想がついてしまいます。 まぁこれはある程度仕方のない事かもしれないのですが・・・ 次に冒頭に舞台となる軍艦島の地図こそありますが、場所の特徴が全く不明だという事。 位置関係どころか、この場に留まる事、または移動する事の意味、メリット、デメリットが全く分からないです。 将棋を意識しているのに、この辺りの設定が出来ていない(少なくとも私には伝わっていない)のは、どうか、というより将棋である意味がないように思います。 そして最悪だったのが、コマが持つ特性の設定が大雑把すぎた事です。 三竦みの関係になっているコマがありました。 「新世界より」にも同じルールがあって、「新世界より」では非常に効果的な設定だったわけですが、この作品では完全に逆効果になってしまっています。 決着をつけるためには局面を動かす必要があります。膠着状態を続けるわけには行かないのです。 「新世界より」のレビューで、このルールにより「トンデモSF」にならずにすんでいる、と書いたのですが、この作品は「トンデモSF」とは言わないまでも、1角が崩れた時点で勝負ありになってしまってますよね。これは「昇格」ルールにも同じ事がいえますね。 一気にゲームバランスが崩れてしまってますもんね。 もう少し凝った設定にして欲しかったですね。 「黒い家」「天使の囁き」「新世界より」を描いた時とは、明らかにモチベーションが違うでしょ。 どこか投げやりな気がするのですが・・・ |
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【ネタバレかも!?】
(2件の連絡あり)[?]
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御子柴礼二シリーズ3作目。
今作ではこれまでのダークなイメージを払拭。 というのも、前作で明らかになった彼の過去による世間からの逆風の中、昔の恩師であり、自身のせいで半身不随、そして失職させてしまった稲見のために奔走する姿が描かれます。 前作で岬洋介の父を登場させたかと思ったら、今度は恩師稲見。 それにしても出し惜しみしない作家さんだ。 そして、メッセージ性の高いシリーズという点は今作も踏襲しており、今作は「介護施設」 自分の親ですら投げ出して全てを終わらせようとする人間もいる、ましてや赤の他人相手である。 劣悪過酷な仕事、だったらお前がやってみろよ、となるのは理解できるが、だからといって虐待が許されるわけない。 これが高齢化社会の現実なのかと思うと悲しくなってくる。 最終的には御子柴の敗北とも言える判決。 しかし、自分の罪を裁くのは裁判所ではなく俺なのだという頑なまでの恩師の姿に、新たに大切なものを教わったんじゃないでしょうか この経験を機に弁護士御子柴がどのような変化を遂げるのか、次作が楽しみである。 |
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【ネタバレかも!?】
(1件の連絡あり)[?]
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アンチミステリの問題作で、賛否両論の激しい作品だという前知識を持った状態で読み始めました。
「後期クイーン問題」を意識させるような、そういう類の作品なのだろう、というある程度の先入観を持っていましたが、そんな先入観など遥かに突き抜ける空前絶後の展開に絶句してしまいました。 作者は明らかに、ミステリ好きの間ですら、相当の物議を醸すであろう事を見越して描いてますよね。 これ一応、名探偵・石動戯作っていうシリーズものなんですけどね。 アントニオの設定はどうすんのさ(笑) 私はシリーズ3作目の「鏡の中は日曜日」を先に読んでいるわけですが、取り敢えず人類は滅亡しなかったという事で・・・ 夢求が勝ったんですね(笑) やったね!!夢求(呆笑) 本格ミステリの定義の1つである「手掛かりを全て作中に示す」事が作中でどのように保証されるかを問題にしたプロット。 で、扱われるのはアリバイトリックで、クロフツへのリスペクト。 前作「美濃牛」は横溝正史でしたね。 作者がやりたかったであろう事は何となく理解できます。 その表現の方法が独特というかもはや異常なんですけどね。 で、その「何となく分かる」が、この作品を読む事の出来る(或いは楽しむことが出来る、或いは壁に投げつけないで読み切れる)下限ではないでしょうか。 今後この本を読まれる方が「何じゃこりゃ!」になりませんように、お祈り申し上げます。 この作家さんの新作を拝めないってのは悲しいなぁ。 |
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【ネタバレかも!?】
(1件の連絡あり)[?]
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平成のエラリークイーンと呼ばれる作者だけあって、主人公の探偵に、徹底的に論理的に推理させる訳ですが、個人的に凄く気に入っているシリーズであります。
1つの「物」に着目して、そこを起点にして、推理を展開するというお決まりのパターンですが、今回はダイイングメッセージという決定的な物証がありながら、それを脇に追いやっての・・・ですから、これまでのシリーズの1つ上を行った、という点で好印象。 また、「図書館の殺人」において、凶器が本、ダイイングメッセージも本、そして事件の重要な要素としても本が絡んでくる、なんていう小洒落たところは、3作目にして格段に・・・という、これも好印象。 しかし、 「動機が弱い」っていうレビューが散見されますね。 「弱い」というより「不自然」と言った方がいいでしょうか。 この手の論理づくめで犯人を突き詰めていくタイプの作品の場合、まずはWHOでWHYは後付でも(ある程度)いいのではないかとは思うのです。 前作「水族館の殺人」でもこれは感じていました。 ただ、今作はちょっと突飛過ぎますかね。 意外な真相で無理矢理読み手を驚かそうとしなくてもいいと思いますけどね。 また、ロジック重視の作品にありがちな、主観による他の選択肢の軽視も、ちょっと目立ちましたかね。 髪が長い、視力が弱いなんてのは納得できるんですけど、「髪に血が付いたのでトイレで処理する(のは当たり前)」なんてのも正直どうなんでしょうか。 何かサイドストーリーの方もどんどん膨らんでいきますね。 必要かな? |
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人形シリーズ第三弾。
朝永と睦月と鞠夫がバスジャックに巻き込まれる話になりますが、今回は長編。 バスジャックされているそのバスの中で、安楽椅子探偵よろしく、犯人が目の当たりにした密室トリックを見破らなくてはならない、という設定は面白いのですが、ハイジャックという緊張下は微塵も感じる事ができません。 幼稚園児が人質に取られているという設定も全く意味がないですし・・・ キャラ設定から考えても、日常の謎的な感じの方がいいんじゃないですかね。 |
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正直、森博嗣の短編集は好きじゃない。
上手く言えないですが、作者独特の詩的な表現が、長編作品より明らかに目立ってしまうためだと思う。 理系作家として名高いが、元々、やはり表現力が独特で、どこか理屈っぽく固く、また軽く深みがないように感じてしまう。 理系作家という先入観がそうさせるのか・・・ただ東野圭吾には全く感じないので。 あくまで個人的な意見であり、好き嫌いの問題かもしれませんが・・・ S&Mシリーズの短編も2作含まれています。 「すべてがFになる」以外は低評価にしたシリーズですが、そんな彼らが登場してくると何故かホッとしてしまうのは何故でしょうね。 全部で10編。 バラエティに富んでいると言えますが、何作か既視感のあるものがありましたかねぇ。 人が殺される話はありませんので、ミステリを期待しているとがっかりするかもしれませんね。 |
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芸術探偵シリーズのスピンオフ作品となる短編集。
本格ミステリのお約束や定番となっているガジェットを暴走すれすれのラインで茶化しまくっています。 一見脱力もののバカミスに見えて、相当にマニアックで玄人好みの作品ですね。 そこでクスッと笑えるか笑えないか、ある程度読み手のスキルも要求されるかと思います。 単なるギャグで終わらせることなく、しっかり尻は拭けている、破綻させずに収束させる事ができているところは好感が持てます。 ただ、これまでに読んだ、この手のいわゆるアンチミステリといわれる作品と比較して目新しいとか「鋭い!!」といったものはなかったですかね。 キャラ設定で目先を変えている・・・だけかな。 っていうか、この警部さん、こんなキャラでしたっけ。 |
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【ネタバレかも!?】
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物語は3部構成になっています。
第1部は、主人公が所属する奇術同好会が奇術ショーに出演する模様。 第2部は、物語の登場人物の1人が描いたトリックを題材にした作中作。 第3部は、世界中から著名なマジシャンが集まる国際奇術家会議。 このアジェンダだけ見れば「ポカ~ン」でしょう。 実際、「ポカ~ン」なわけですが・・・ 第1部の最後に殺人事件が起き、第3部の最後で謎解きがなされます。 まるでコントのような失敗続きの第1部は、数多い登場人物の自己紹介的な役割も果たしています。 作者がアマチュアマジシャンという事で、ショーの裏側などが垣間見れるのは面白いと言えば面白いのですが、とにかく長く、とにかくゆるい。 「さぁ次はooooさんによるXXXXです」が登場人物分続くのですからたまりません。 ミステリを読んでいるということを忘れてしまいそうになります。 第1部の最後にやっとこ殺人事件が起き、「さぁ」となったところでの第2部。 この作中作は、いわゆる表に出なかった奇術同好会内のボツネタトリック集といったところでしょうか。そして第3部も世界マジック大会なわけです。 マジック好きにも程がある、正直な感想はキムタク的に言うなら「ちょ、待てよ」です。 実際、第2部が殺人事件の謎解きの伏線となっているというか、伏線まみれなわけですが、それに感動できるかは読み手次第ではないでしょうか。 ミステリを読んでいるんだというモチベーションを保てていればという条件付きですね。 私の場合、壁に投げつける寸前までいった、と正直告白しておきます。 で、肝心のトリックですが、 本物のマジシャン(作者)が、その手段を文章に変えて読み手に仕掛けてきたと考えていいと思います。 マジックといっても、視覚的にイメージしづらいままに読み手をごまかすような類の作品ではありません。 この作品はすっごくフェアです。誰もが納得できるはずです。 ただ「ふーん、なるほどねぇ」とか「ほぉ、たしかにね」のレベル。 まぁ、こんなにマジックマジックしてなくて普通にミステリミステリしていたら「うまいなぁ」と思えたのかも知れませんが、何れにしても驚けるものではないですね。 ただ最後まで読んでみて、高評価する人がいるのも頷ける作品。 ただ私はしない。 |
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1980年乱歩賞受賞作品。
御大の「占星術殺人事件」をおさえての受賞作品。 現代の大学生が、その精神のみ過去にタイムスリップして、折口信夫に同化、猿丸と柿本人麻呂が同一人物かなどの謎を解き明かしていくというお話です。 大学の国文学の講義を聞かされているような感じで、折口信夫が実在の人物である事すら知らない理系人間の私には敷居が高いというより、読む資格がないです、って言われているような気がします。 「さぁ猿丸と柿本人麻呂は同一人物なのでしょうか?」と問われたところで、私の場合「知らんがな。どうでもええわ、そんなもん」なわけで、まぁ読む資格ないですね(笑) 本文も難しいんですわ。 「占星術殺人事件」の冒頭の40ページ程の例の導入部分が延々と続いている感じ・・・なんて言ったら未読の人に敬遠されてしまうか(笑) 国語苦手な私には、それに近い感じでした。 謎自体は、ほぼほぼが暗号なのですが、図解まで挿入してくれているにも関わらずさっぱり。 時刻表トリックと同じような感じで、読み飛ばさずじっくり数字(文字)を追えるような読み手であれば楽しめるかもしれません。 まぁ国文学に明るい、というのが前提条件になりますが・・・ 物語は中盤以降、折口信夫視点で進むので、舞台は明治末期。 現代ではなく当時の識者に、その謎を解かせたいというこの設定は面白いと思うのですが、現代パートが余りにもおざなりというか、ラストに戻ってきておしまいというのでは、現代パートの役割が何だったのかよく分かりません。 そもそもタイムスリップに意味があったのかって事ですね。 内容を理解できなかった私がこんなことを言うのはおかしいかもしれませんが、設定を上手く料理しきれていないのではないかと思いました。 |
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【ネタバレかも!?】
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湊かなえを彷彿とさせる、調書、独白、インタビュー形式の構成。
登場人物達が語るストーカー、そしてそれが引き金となって起こった殺人事件。 その中心にいるのが、一人の女性に心を奪われた、社会との関わりを持たない男。 「社会との関わりを持たない(或いは持てない)」というところがミソで、それこそが最後の壮絶な大どんでん返しをより見事に成功させているのだ。 井上夢人版「容疑者Xの献身」というべきか、いやあの「容疑者Xの献身」こそ、東野圭吾版「ラバーソウル」というべきだ。 言いすぎかも知れないですが、個人的にそれくらいの衝撃作。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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高校を舞台とした学園の謎モノです。
連作短編の体を取っていて、細かな謎を毎回解決していきながらも、その裏には、自殺した少女の幽霊の謎というテーマが全編を通してあります。 変わっているのは主人公の女性がマジシャンという事でしょうか。 クラスメイトであるその女性に一目惚れした男性をワトソン役として、マジックのテクニックを使いながら事件を解決していきます。 山田奈緒子と上田次郎の学園の謎シリーズという感じでしょうか。(ウソです。かなり違います) 米澤穂信さんの古典部シリーズの男女を入れ換えた感じですかね。 この手の作品の場合、ワトソン役の男性が間抜けで鈍感でというパターンが多いですが、この作品も例に漏れずというか拍車をかけたようにダメダメです。 一方主人公の女性の方も、高校生マジシャンという時点で変わり者で、手先は器用だけど人間関係がダメダメ。 正直両名ともに感情移入できるタイプではなかった。特に女性の方。 千反田えるや山田奈緒子のような魅力がなく、ただただ疲れる女という印象。 またマジシャンという設定を活かせていないようにも思える。 騙す側、騙される側の心理というか、そういうところをもっと突いてくると思っていたのですが・・・ この題材なら、もう少し面白いミステリに仕上げられたのではないかなと思います。 なのでミステリというよりかなりライトノベル寄り、つまりは自分の好みからは外れる方向へベクトルが向いてしまったって感じです。 |
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【ネタバレかも!?】
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「臓器移植問題」をテーマとして、その影となる部分を描いている社会派サスペンスです。
この題材に対して、現代に甦った「切り裂きジャック」が移植した臓器を取り出す、という料理の仕方。 この作者の着想には正直感心させられました。 ドナーとレシピエントは単に臓器を受け渡しした関係だけではないって事なんですね。 ドナーは自らの意志で臓器を提供するわけですが、ではドナーの家族の気持ちはどうか。 そんな事、考えたことなかったです。 生き長らえたレシピエントが不健全な生き方をしていたら・・・ この作品を読んで、その気持ちがわかるようになりました。 レシピエントとドナーの家族は、ドナーがいなくなった後の時間を共有するべきなのでしょうか。 問題提起という意味でも、自分にとって相当にインパクトのあった作品でした。 たくさんの人に読んでもらいたい作品ですね。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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テーマは親子愛でしょうか。
歪な形と言えますが、父娘の愛情の深さを痛感させられました。 物語の中心となる父娘には、かなり同情的な読み方になってしまいましたね。 正直、もっと違う方法があっただろうに、と思うものの、かと言ってじゃあどうするのが正解だったのかと聞かれても言葉に窮してしまいそうです。 裏切られて残された者の苦しみ悲しみ、ってな作品は数多く読んできた記憶がありますが、父と娘ってのが私にはツボだったかも知れません。 人間関係はかなり複雑となる今回の事件ですが、加賀母子も相関図に登場します。 これまでのシリーズで謎のままとされていた、加賀の母親の失踪の理由、そして加賀が日本橋の所轄に固執した理由が明らかにされました。 本庁復帰が決まり、私生活の方でも変化がありそうです。 新たなる加賀恭一郎の幕が開けられるのでしょう。 次回作を楽しみにしたいと思います。 |
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出光興産の創業者である出光佐三氏をモデルにした、ほぼほぼノンフィクションな作品だろうと私は解釈しています。
同じような事を言及されているレビュアーの方もいらっしゃる通り、私も少し「盛ってるなぁ」って感じます。 というのも、主人公を余りにも素晴らしい人物として描き過ぎているんですよね。 そうなると、どうしても作り物っぽく聞こえてしまいますよね。 主人公の振る舞いが全て正義であるわけがないのですから。(あれだけ目立ったことをして) 敵対勢力が幾つか登場してきますが、彼らにも彼らの正義があるわけで、もし彼らの視点からこの物語が描かれたならば、主人公はボロカスに言われることでしょう。 あと、章が短く区切られており読みやすいのですが、その分、苦難、苦悩に対する描写に深さがなくなっている気がします。 わずか数ページ後には解決してしまっているのはどうなんでしょう。浅くないですか。 なので短い章立てについては、どういう効果を狙ったのかは不明ですが、個人的には効果的ではなかったのでは、と感じています。 私がこの作品を読んで一番印象に残ったのが、 主人公が本を読まない、というか読めない人であったこと。 そしてそれが彼に「考え抜く」という力を与えたという下りです。 まぁ確かに、私なんぞは、本で仕込んだ事をまんま職場で実践してたりしますね。 主人公の、石油が世の中を動かすという先見の明や「ブレなさ」には大いに感銘しましたが、彼のやり方は、今の時代では通用しないですよね。 生きていくためにやるしかない、寧ろ「やらせて下さい」という時代だったわけですから。 それに今時、経営者に敬意を表する社員なんていないでしょうし。逆に上から目線です。 時代が違いすぎますね。 まぁ、「やりがい」があれば、どんなにキツイ仕事でも、人は喜んで働けるという事は今の時代でも変わらないと信じたいですが・・・ 多分これも当てはまらなくなってきている気がします。 |
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日常のちょっとした謎をテーマにした作品。
そういう意味で、米澤穂信さんの古典部シリーズに似た作品といえるのだが、この作品の場合、謎の向こうには「人間というのも捨てたもんじゃないでしょう」的なものが潜んでいますかね。 そういう意味では、古典部シリーズと比較すると「大人版」という感じがします。 主人公は女子大生なのですが、純情潔白で文学好き、そして落語好きという、少し変わった・・・というと言いすぎかもしれないがちょっと珍しいタイプ。 おかげで青春小説という感じもしませんね。同級生と一緒にいてもどこか冷めているというか、体温を感じないというか・・・ 正直苦手なタイプだったかもしれないですね。 ミステリ的な驚きは感じられないですかね。そういうところを狙った作品ではないのかもしれませんが・・・ 大衆文学より寧ろ純文学に近いかもと感じました。 ミステリ読みには評価が難しい作品ですね。 |
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