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梁山泊 さんのレビュー一覧
梁山泊さんのページへレビュー数681件
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偽札作りの物語ですが、主人公がその困難に立ち向かい1つ成し遂げる度に、名前と顔を変え新しい目的に向かっていく。
新しい仲間が加わり、偽札作りの技術もレベルアップしていき敵も巨大化していくという。 こそ泥が最後天下の大泥棒に変貌を遂げるという感じでしょうか。 誰もが好きな展開と言えるかも知れませんね。 ただ、多くのレビュアーさんも語っているように、製法に関する薀蓄が過ぎる。 よく調べあげたなとは思うのだが、長編作品全体の1/4くらいがそれで、しかもリアリティの追求という事なのだろうが、読み手には詳細が過ぎないだろうか。 一方でその薀蓄を除く本編のノリは道尾秀介「カラスの親指」を髣髴とさせる軽さがあるのである。 「重い」「軽い」が交互に来るアンバランス感が最後まで拭えなかった。 そして「カラスの親指」との決定的な違いは物語のラストにある。 こういう終わり方もありだとは思うが、「カラスの親指」を意識させた分、その落胆は大きかった。 ただ標準点を大きく上回る面白い作品だったことは間違いない。 |
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Gシリーズ1作目。
S&Mシリーズの続編という事でよいのでしょうか。 S&Mシリーズは1作目が強烈だっただけでなく、登場人物がそれぞれ個性的で次回作を期待させるに十分だった。 しかしこのシリーズの1作目は導入という意味では相当に地味。 3人の主要登場人物にしても、萌絵、そして殆ど登場しない犀川に完全に食われている。 また萌絵、犀川だけでなく、過去作品からの登場キャラが複数いるらしい。 なのにその説明がないのである。 この作品を最初に手に取った人に萌絵の何が分かるというのか。 私は先日「スカイ・クロラ」を読んだのだがなんのこっちゃさっぱり分からなかったよ(泣) 同じじゃないの(笑) ちょっと違うか(爆) ▼以下、ネタバレ感想 |
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若年性アルツハイマーにかかった働き盛りの50才の男性が記憶を無くしていき、徐々に変わっていく日常生活を彼の一人称で描いた作品。
「記憶が消えても私が過ごした日々が消えるわけでない。私が失った記憶は私と同じ日々を過ごしてきた人たちの中に残っている」 これは人間の死に置き換える事も出来てしまう。 記憶を失うことは人間としての死を意味するのだろうか。 読んでいて相当に息苦しい。 その辺のミステリーよりよっぽど怖い。 最後残りページも少なくなってきて「作者は一体どのような形にこの物語をまとめようとしているのか」気になって仕方なかった。 正直少しイライラしていたかも知れない。息苦しいまま終わるのではないよな、と。 で、ラスト2ページ。 「あぁこういう終わり方ね」と最初思った。 わずか2ページ。 読み終わる頃には涙が止まらなかった。 妻の愛の強さに感動。 |
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エイジとツカちゃんとタモツくんそしてタカやん。
「ちゃん」と「くん」と「やん」 何となくだがエイジとの距離感を上手く表せている気もしました。 で、「やん」が少年Aに。 被害を受ける側を気遣うツカちゃんに対して被害を与える側の気持ちが気になるエイジ。 そして無関心なタモツくん。 エイジは少年Aを可哀想な奴とも思わないし、許せない奴とも思わない。 そして、心の中では相手の背中にコンパスの針を刺しているエイジ。 心の中に潜在意識として存在している「キレる」が表に出たか出ていないか。 少年Aと自分の差はわずかこれだけ。 「ぼくもいつかキレてしまうんだろうか?」 設定が中学生の妙だろう。 精神的にクラスメートよりも少し先に大人になりかけているのですが、「多感」という2文字では表現しきれないくらい不安定なのです。 半分大人、半分子供。 そして幼い連中が多く残るなかでエイジの葛藤が際立っています。 また、自分を束縛するものに何とか贖おうと親、特に母親には冷ややかな態度を取ってしまう一方で好意を寄せる異性に対する接し方の幼さ。 そうそう、この青さが中学生なんだよ。 自分もそうだったかなぁ・・・なんて思い出しながら読みました。 |
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音道貴子シリーズは「凍える牙」を既読なので2作目になります。
「凍える牙」の「動」な音道とは真逆の「静」な音道、といっても監禁される身分で身動きがとれない訳ですが・・・ この作品の音道はヒーローではない気がしました。寧ろ汚れ役と言っていい。 窮地に陥った時の人間の本音を主人公であり警察官である音道の口に語らせています。 正直格好良くないだけでなく、「音道ってこんな奴?」なのである。 そもそも元はと言えば彼女の軽率な行動が原因。 彼女の刑事としての今後のキャリアに大きなペナルティがあっても不思議ではない失態な気がします。 これが原因で、やはり最前線に女刑事を送り込むのは・・・となりかねないのでは。 このシリーズが、男社会の中に生きる女性の強さを描きたいものだとするなら・・・なんて感じながら読んでいました。 一人の女性としてはよく頑張った、耐えたという事になろうが、一人の女「刑事」としてはこれは合格なのだろうか。 もう1つ、犯人側に魅力がないという事があります。 行き当たりばったりで無計画または無知過ぎます。 音道の失態には、こんな間抜けな犯人達にというおまけまで付きますね。 |
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宮部みゆきさんのホントに初期の作品。
作者得意の超能力モノで登場するのは読心術と瞬間移動です。 相手の心が読めるとなれば色々なメリットがあることでしょう。 成功者となる事は容易。 当然そう考えてしまうのですが、作者はそこへ向かわず、ひたすら力を持つが故の苦悩を描きます。 確かに他人の本音が全て聞こえてしまえば辛いでしょうね。 ただ私ならそんな事は承知の上で、それを利用してズルい事を考えてしまいそうですが・・・ 物語には2人の超能力者が登場しますが、ベクトルの向きが異った方が面白かったんじゃないかな。 どうも私が期待するように動いてくれなくてもどかしいというか・・・まどろっこしい事するなーなんて感じました。 なので超能力を扱っている作品としては地味だしどこか流れにメリハリがなく緩いです。 登場人物の中に言葉を話せない女性が出てきます。 人より多く持っている主人公達に対して欠けている女性。 この設定には期待せざるを得なかったのですが、正直「あれっ?」で終わってしまいました。 |
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「グリコ・森永事件」から着想を得て書かれた作品らしい。
中心に添えられるのは「企業テロ」なのですが、そこに同和問題や企業と総会屋の癒着問題や仕手筋による株価操作など企業を取り巻く様々な社会問題が取り上げられます。 当然そこに警察やマスコミも絡んでくるわけで兎に角登場人物が多いです。 そしてそれら多数の登場人物の視点に頻繁に切り替えられながら物語は展開していきます。 最初はこの視点の切替の多さに戸惑うのですが、その分登場人物一人一人を非常に丁寧にそして深く描けておりそこにまず感心します。 レディージョーカーとは犯人たちの呼称なのですが、社会から「ババ」を掴まされた男たちの反逆という背景をよく表せていると思います。 彼らは20億円もの大金をせしめる訳ですが、そこに歓喜はなく、読む方にも爽快感や痛快感はまるでないです。全編どこか息苦しいのです。 題材から一見サスペンスものと思っていたのですが、読み進める内に違うなーって思えてきます。 社会悪、組織悪・・・この作品には悪が充満しています。 悪とは何か、本当の敵は何なのか、そして人間の尊厳とは何なのか。 そんな高尚な文学的要素を兼ね備えた・・・というより、もう文学作品と言ってしまってもいいのかも。 想像していた作品とはまるで違いました。 一個人の存在など組織の前では単なる歯車の一部にしか過ぎない。 しかし大企業の社長誘拐という未曾有の大事件を核としたこの大作、2人の人間の個人の尊厳をかけた戦いという想定外のラストを迎えます。 「合田VS半田」 警察という巨大な組織から外れ(いい意味で言えば)「孵化」した2人の戦いに置き換えられるのです。 読み手にも意味不明なほど、物語前半から執拗に互いを意識しあっていた2人。 水と油、裏と表。性格は全く正反対な印象を受けますが、組織に従順ではない、どこか反骨心を持っていたという点では同じ。 どこかお互いに感じる何かがあったのだろう。 このラスト、後からじわじわきた。 最後の最後に、何となくだが作者がこの作品を通じて一番何が言いたかったのか分かったような気がした。 競馬のシーンがよく登場しますが、G1馬だけでなく条件戦に登場する馬に至るまでが実在した馬です。 競馬歴25年の私にとっては懐かしいことしかり。 高村薫さんは女性ながらに相当の競馬好きなのだろうか。 競馬好きでないのだとしたらこの取材力は半端ない。 |
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作中「アマゾン牢人」「棄民」という言葉で揶揄されるブラジル移民の悲劇、ずしりと重い歴史問題がまず提示されます。
そして、そこから生き延びた人間たちが日本に戻り国に復讐するという物語。 スケールの大きいクライムノベルです。 冒頭の100ページ余りの地獄絵図の描写は読むのに多少の苦痛を伴いますが、復讐者達に感情移入するには相当に効果的です。 ハードボイルドまたはバイオレンスとも言えなくはない。 確かに、その手の作品にありがちな暴力とセックスの描写もある。 ただ、ガチガチの・・・ではなく、復讐劇と言うには全編どこか軽く読みやすい。 派手にぶちかますのかと思いきや彼らのやり方はどこか紳士的。ここで更に読み手を味方につける。 読み終えて感じたのだが、この軽さが最後の爽快感を生んでいるのではないかと思った。 3人の実行犯。 それぞれが違った結末を迎えるというのも凝っている。 特筆すべきはケイと松尾のキャラクター。 負の境遇を共有し目指すところは同じでも、何もかもが正反対。 人間の人格は育ちの環境が形成するのだなと興味深く彼らの活躍を楽しんだ。 まぁ彼らと比べると日本の女子アナのなんと稚拙なこと。 |
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私の読書歴でかじってきた作家さんの数なんてたかが知れているのであるが、この作品を誰の作品か知らずに読み始めたとしても「恩田陸さんじゃないか」って思うんじゃないだろうか。私の知る限りでこんな作品を描くのは恩田陸さんしかいない。・・・そんな作品である。
エリザベスとエドワード。 この二人の時空を超えたラブストーリーなのだが、相当に難解であるので流し読みでは何のことやらサッパリ分からないはずである。 ラブストーリーの中でも恩田陸が描く少女漫画的ラブストーリーである。 普通男性が読むには厳しいモノがあるのだが、この設定の難解さを読み解くという意味で読む価値はあると思う。 5章立てなのですが、輪廻転生の繰り返しのなせる技か、年代や場所だけでなく二人の年齢、年齢差もバラバラ。 更に物語を複雑にしているのは、お互いにとっての初めての出会いの場所と時間が違うという設定。 第4章がキーで冒頭の出来事と繋がっているのではないかというのは何となく分からんではないのですが・・・ 兎に角難しい作品です。 |
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警察組織をあざ笑い叩き潰す。裏切り者は誰だ。
タイトルからはこういう内容を連想できないだろうか。 実際は「真逆」だった。誰一人笑ってる奴などいなかった。 作品のタイトルが「笑う警官」になった経緯は解説に描かれていたのですが、正直作品の内容と合っていない。 そんな気がします。 実話をモチーフにして描かれた作品という事で、リアル感こそあるものの正直ドラマ性には欠けますかね。 地味ですね。 「内部腐敗を証言させまいとする上層部VS仲間を無実から救おうとする同僚」 という構図ですが、その割には、その同僚たち、意外と自由にそしてトントン拍子に捜査を進めていきます。 上からの非合理な圧力を受けての苦悩といったものが感じられないですし、トンデモ人事異動によるド素人集団による捜査っていう設定も活かされていないですよ。 まぁタイムリミットまでが余りにも短いんで仕方ないのですが・・・ それにしてもいたって「普通」です。 解説には、各分野の一芸に秀でたエキスパート達が集い・・・なんて描かれていた気がしますが、正直「あの女性警官、ハッカーだったの!?」ってな感じ。 要するに人が描けてないって事なんじゃないかなと。 つまらなくはないのですが、全てにおいて中途半端だった気がしますね。 |
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当方仲間由紀恵の(元)ファンであり、この「顔」のドラマDVDを所有しており何回も見ている。
嫌いじゃなから何回も見ている訳だが、この平野瑞穂という主人公は好きではなかった。 正直「めんどくせー女」という印象だった。 「だから女は使えねえ!」 「疑惑の似顔絵」を書かされた似顔絵婦警の心理状態については正直理解不能ですし、そんな感情を持ち込んで良い職場ではない気がする。 はっきり浮いている。 頑張っているのは分かるので、応援はしたくなるとはいえ・・・どちらかというと「そういうスタンスじゃダメだよ」ってアドバイスしたくなる。 当然ですが男だって社会生活において傷は持っています。その数は女性の比じゃないでしょう。 でもそんなもの物語になりゃしないし誰も読まない。「甘ったれてんじゃねーよ」でおしまい。 男の職場で「男尊女卑と戦い成長する女性の話」というレビューも見られますが、私は逆な気がします。 こういう描かれ方をする事自体が、女性蔑視といえば大袈裟ですが、対等に評価されていないという感じがしてならないのですが・・・ まぁ中には女性特有の視点で解決できた事件もありましたけどね。 作者の他の警察小説とは明らかに異なった視点からの物語であるし、ひょっとしたらそれが狙いなのかとも考えますが、やっぱり面白味という意味ではイマイチですかね。 |
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噂や口コミが社会に及ぼす影響やその怖さを描いた作品です。
学校や地域社会といった範囲にとどまらず、今や企業や国家の戦略としてさえ存在しているという事。 そして、そこに人為的な操作が介在している事に対しても不思議だと思っていないのですが、騙されていないと思っている自分がいる。 騙されていたとしても、自分がそれでハッピーなら問題ないのかも知れないですが・・・ あの東京五輪エンブレム問題にしても、あの不祥事を連発するハンバーガチェーンにしても、さてさて事実なのか虚偽なのか、人為的なことが働いているのか違うのか・・・疑いだすときりがないですね。 操作した側が結局その噂により消されるというこの作品の結末。 たかが「噂」、しかし発動したら最早人間の力では止められない強大な力というか津波のごとく全てを飲み込んでしまう怖さを感じました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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感動的な物語だという事は知っていたが、映画も見ていないし結末も知らないまま読みました。
妻殺しの警察官の、殺害から自首までの「空白の2日間」の謎を解明していくという物語。 物語の中心に据えられるのはその殺人を犯した警察官で、彼を取り巻く、警察、検察、裁判官、新聞記者ら6つの視点から描かれます。 この手法はこの作者の得意とするところなのでしょうか。以前読んだ「動機」も同じでしたね。 殺人犯である中心人物はいわゆる「静」、黙秘の姿勢を貫きます。 余りにも存在感がないのは気になりましたが・・・ その分彼を取り巻く「動」の面々が魅力的で、仕事に命をかける男たちの生き様には迫力があり、そこに存在する軋轢や摩擦そして挫折といったものは読み応えがありした。 彼から「自死」の臭いを嗅ぎ取り、自分の保身を考えずリスクを負いながら、何とか死なせまいとする男たちが何とも美しかったです。 ただ・・・ ▼以下、ネタバレ感想 |
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これも15年ぶりの再読。
「リング」で始まるこのシリーズ、「呪い」から始まった謎に、この作品でしっかりとした(より現実的な)オチをつけています。 その代わり、多くの読者がこのシリーズを手に取るに至ったホラー色は薄くなり、というか完全に消え去り、最早完璧なSF作品になりました。 ここには賛否両論あるでしょうが、冷静に考えてみると、構成という意味で、これ程までに綺麗に嵌ったシリーズも珍しいのではないかと思います。 シリーズを追う毎に物語のスケールが飛躍的にアップしていきます。しかも舞台となるのは全く異なる分野です。 そんな中で、前作からの繋がりをしっかりと感じる事ができます。 時系列を考えてみても面白いですね。予想外の繋がりを見せてくれます。 この点は素晴らしいと思うのですが・・・正直この作品は面白くないんですよね。 まず作品の持つ「色」の違い。これまでの2作品とのギャップがでかすぎます。 知った名前も一切出てこず、一体何が始まったんだ・・・って感じでしたから。 続編を楽しみにしていた読み手をがっかりさせる効果は抜群でしょう。 蔓延しているガンウィルスってところに、繋がりのヒントを汲み取ることは出来ますが、正直もう少し何とかならんかったかという気持ちです。 まだあります。(ネタバレにて) ▼以下、ネタバレ感想 |
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15年ぶりの再読。
「このビデオを見た者は1週間後に死ぬ」 正直アイデアの勝利でこれに食いついた人は多い。 おまけに山村貞子を全国区に仕立てあげた映画のあのホラー演出。 山村貞子=リング であり リング=山村貞子 となるのもやむを得まい。 しかし小説の「リング」は消化不良な終わり方をしており正直単独では評価できない。 個人的には「らせん」あっての「リング」だと思っています。 得体のしれない恐怖が、浅川、高山、たった二人だけの世界で展開された前作から、 前作の主要人物であったその二人は姿を消し、徐々に真相が明らかになってゆき広がっていく。 その広がってゆく、最早止められないという恐怖。 小説では読んでいてドキドキするのは圧倒的に「らせん」なのだ。 それに、小説リングではTVから貞子は出てきませんが、小説らせんではFAXから出てきます(笑) ほら、こっちの方が怖い(笑) 「呪い」だったものが「ウイルス」へ。 非現実的である「呪い」を主人公の医師が解き明かしてゆく。 前作の「呪いのビデオ」というオカルトを根底から否定して論理的に解き明かそうとするところが面白い。 その時点でこの作品はホラーではなくなっている。 そもそもビデオを見る事で人が死ぬというという事象に現実的な理由を付けることなど不可能な訳で、突拍子もない展開を見せるわけだが、決してトンデモ作品になってはいない。 医学に明るい人には「はぁ!?」なのかも知れないが、少なくとも私にはジャンルを突き抜けたスケールを感じる事ができた。 想像を遥かに上回る結末に舌を巻いた。 シリーズに相当な奥行きを与えたと思う。 |
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既読ながらまだレビューを書いていなかったので15年ぶりくらいに再読。
原作を読まず映画だけ観た人にとっては「THEホラー」なのだろうが、実のところ原作はSF+ミステリって感じですね。 正直ホラーは好きではないのですが、この作品に関しては圧倒的に映画に軍配ですね。 山村貞子の出世作となる訳ですが、「あのように」映画化されていなければ、これだけ持ち上げられることもなかったでしょう。 15年ぶりとはいえ結末を完璧に覚えているという事もあり緊張感はイマイチ。 これはある程度しかたないにしても、結末まで紆余曲折もなく一直線ってのも気になりましたし、何より、謎を解く鍵はビデオの映像になるはずなのに、「こんな描写で読み手に伝わるのか?」という感じでしたね。 映像の描写だけでなく、その謎解きについても正直説明不足に思いました。 続編がある事を知らないで読み終えてしまうと、とてつもない消化不良感に襲われるのではないでしょうか。 |
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読み進めていくうちに、その作品のスケールのデカさというか奥行きの深さに圧倒されていく作品。
筆致自体は終始淡々としているのになぁ。 その時代を代表する女達の力強さって事なのかな。男にはない強さってやつ。 万葉、毛鞠、瞳子・・・製鉄一家に嫁いだ、或いは産まれた女三代の物語です。 読み出してしばらくは「何これ?日記?単なる伝記?」だったのですが、次第にはまっていきました。 自分が真ん中、2代目毛鞠世代な事も大きかったのかも知れませんね。 「男の時代」「可能性と進出の時代」そして作中の言葉を借りれば「語るべき物語を持たない時代」 それぞれの時代の女の生き方を描きつつ、製鉄産業の栄枯盛衰の物語もその脇を添えています。 男性陣も各世代個性的な人物が登場するのですが、時代の流れに乗れなかった男たちは自然と淘汰され、時代の流れに乗り仕事に全てをかけた男たちも、その存在感をなくしいつの間にか死んでいる。 どこか哀れだ。 今の日本を作ってきたのは男たちだが、時代を作ってきたのは女なんだな。 なんて思いながら読みました。 第3部になっていきなりミステリ的な展開があり、「おっ!」と思って期待したが、ミステリとしては正直大したことないです。 そんな事より、第3部が始まると否応なしに押し寄せてくるリアリズム。 自分の時代がはるか昔であるかのような錯覚に襲われてしまいました。 何なんだこのギャップは。 さすがこれが「語るべき物語を持たない時代」ということなのか。 これまでの「時代を作ってきた」という印象が一転「時代に支配され翻弄されている」という感じかなー。 一見「自由で奔放」に見えますが、どこか抑圧されてるような。 明らかに浮いてるぞ現代。 第3部のちょっとしたミステリチックな趣向は、これまでの物語の流れから浮いている現代と過去を上手くつなげるのに大きな役割を果たしていたように思います。 大したミステリである必要なかったというか、もっと大切な役割を担っていたのではないかと。 万葉の千里眼の「謎」も最後上手くおさまりましたしね。そのための千里眼だったんでしょうね。 今から数年後、今の若者達は何か時代を築け残せているんでしょうか? 作者のそんな皮肉もどこか伺える気がしましたけど・・・違うかな。 |
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警察官、裁判官、新聞記者、元犯罪者と、警察とどこか関連のある4つの異なる立場の視点から描かれた4編の短篇集です。
事件は発生しますが、事件と言っても「警察手帳の盗難」などちっぽけなものばかりで迫力という点ではいまいちかも知れません。 どこか「警察あるある」的な軽さがあります。 些細な事件、些細なきっかけ・・・だったりするのですが、そんな些細な事が「動機」に繋がる。 人間の内面の弱いところにスポットを当てて、浮かび上がってくる「動機」に至るまでの過程を描いている。 そんな作品だと思いました。 正直、短篇集だと知らずに読み始めました。 面白かったのですが、男臭い長編警察小説を期待していたわけで若干拍子抜けくらったかな。 |
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