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梁山泊 さんのレビュー一覧
梁山泊さんのページへレビュー数681件
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複数の父親に一人の息子。この設定はどこかで見た事があるのだがそこは伊坂流。
博才のある男、運動神経抜群の男、頭脳明晰な男、女性の扱いはお手の物の男。 単に4倍の愛情を受けてという単純なものではない。 四者四様の発言、行動の違いが面白いが、この4人が一つの目的に向かってタッグを組んだ時は最早無敵。 この作品、ゴールデンスランバーの1つ前の作品だそうで、作者曰く、この作品が第一期最後の作品だという。 何となく納得できるかなと。 散りばめられた伏線とその一気回収というスタイルは第一期、第二期とも同じだが、第二期の作品に多く見られる「重さ」がこの作品にはない。 単純に作者の繰り出すユーモアを楽しむ作品かと思う。面白くて一気に読めてしまった。 ただ軽すぎて、作者がこの作品を通して何を訴えたかったのかがイマイチ分からなかったかも。 血が全てではないと言いたかったのかな。 それと、富田林や鱒二の父親といったせっかくの個性的なキャラの扱いが中途半端に終ってしまったかなという印象はあります。 |
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名探偵の存在を否定し、そんな名探偵が登場する探偵小説に対し一石を投じる風刺の効いた作品です。
トレント最後の事件というタイトルですが実はトレントは初登場だったりします。 これで思い出したのが「メルカトル鮎最後の事件」 これまでのミステリの概念をぶち壊す迷探偵メルカトル鮎。 アンチミステリを打ち出す麻耶雄嵩が描く作品の背景にはこの作品の思想がはっきりと浮かんでいる気がします。 私の場合、読んだ順序が逆ですし、今頃気付いたのと言われそうですが、何かこういう気付きって嬉しい。 読書の醍醐味の一つな気がしました。 ほぼ最低点を付けてしまった麻耶さんの「翼ある闇」ですが、もっと自身の経験値を上げてから読むべき作品でしたね。 再読したい気持ちになりました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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相変わらずロジック一本槍で、動機であるとかトリックに関してはおざなりな印象ですし、そのロジックのひも解きに全く到達しない警察の描き方も少しご都合主義的かなと思いますね。
そのロジックですが、(私には)正直納得のできるものではありません。 ただ、(納得できないにしても)作者の意図は何となく読み取れるので、その思惑にわざと嵌って読み進めれば、この作品に関しては犯人の特定はある程度可能ではないかと思います。 この分かり易さが高評価の秘密なのかなとも思いますが、登場人物が余りにも多いのは、その容易さを隠蔽して意図的に複雑にしようとしたのでは・・・という穿った見方をさせてしまいますね。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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何やらシリーズの2作目のようです。短篇集です。
主人公の探偵役が、例えばエッシャーの絵画が現実化された世界といった異世界に迷い込んだり、或いは過去のある人物に憑依(?)したりして、そこで起こる事件を解決するといったかなり特殊な設定になっています。 シリーズ1作目を読んでいない私にとっては最初何が起こっているのか理解するのに苦労させられる事になりました。 一見西澤保彦氏的なノリなのですが、読みやすさという点では惨敗です。 絵画や特殊な構造をした建物を扱っている割に、その描写の殆どが文章のみなのではっきり言って解りにくいのです。 読み手にトリックを気付かれないようにするため意図的に解りにくくしているのではないかと勘ぐりたくなるほどに解りにくいです。 読み切るのに気合と時間を要する作品です。マニア向けと言えるかもしれません。 考えついたトリックを成立させるために何よりも先に物語の背景となる特殊な舞台を構築させる。それが最優先。 そしてその部分に傾倒しすぎるがために、肝心の物語の方に必然性というかドラマ性が欠けてしまっているように思えてなりません。 理詰めで堅苦しすぎるんですかね。 オチの方も、眉間にしわを寄せながら読んだ割にがっかりするものが多かったです。 こういう評価は多分に、この読みづらさ、どこかストレスを感じながら読んでいた事が影響しているように思います。 読了後改めて考えてみるとそこまでがっかりするような内容でもなかったですから。 |
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序盤は、恋愛要素のない古典部や小市民シリーズといった印象で「またこのパターンか」であり、恋愛要素がない分何とも地味に感じる。
しかし途中で「なるほど」とある事に気付くのだ。 これなら恋愛要素など必要ないしかえって邪魔かな・・・と、これで十分面白いと思ってました。 しかししかし、ここまでは大部分の読者が気付く様に出来ているとのこと。 つまりこの作品、予想を大きく上回る作品だったと言うことです。そして私は大部分の読者止まりの男なのであった。 最後の一行。 どんでん返しに持っていったのが「儚い羊たちの祝宴」だったが、この作品は隠しているのだ。 所謂リドルストーリー。 巷によくある読み手に全てを委ねる投げっぱなしのものではない。 何て緻密に計算された構成。初めて読んだな、こんな作品。 「インシテミル」や「折れた竜骨」など好きな作品はあるものの、ライトノベル作家という印象が強かったこの作者さん。 正直、古典部や小市民シリーズは、ライトノベルの延長上だと思っている私。 第一作目を読んだのでまぁ続きも・・・っていう感じで手にとっただけで実際まだシリーズ全てを読み終えていない。 正直食欲がわかない感じ。 軽く見ていたわけではないが、この作品を読んで、物語だけでなく作者の評価も反転。 こういう作品、もっと読みたい。 |
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一人の女性をめぐる二人の男性、二人は幼い頃からの親友であり、非常に優秀で将来を嘱望されているのだが、対女性となると共に未熟と言えます。
主要登場人物の構図がこうなので「友情を取るか恋愛を取るか」になるのかと思いきやそうではない。 こういう青い展開を「深い」とは思いたくはないですが、そこにすら至らなかったのである。 三人の人間ドラマに全く魅力を感じられませんでした。 序章での、山手線と京浜東北線における出逢いの導入は、タイトルの「パラレルワールド」をどこか連想させますし、恋愛小説が得意でない私にとってもこの先の展開に何かを予感させるものであったのですが・・・正直これは「ラブストーリー」ではないですよね。 女性が単なる「飾り物」のような浅い造形ぶりですし、作者もラブストーリーを描くつもりはなかったのかも知れませんが・・・だったらタイトルが・・・ ▼以下、ネタバレ感想 |
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加賀恭一郎シリーズの短篇集です。
全作品通しての共通のテーマはタイトルにもある「嘘」です。 トリックを見破るというよりも、犯人がつく嘘の僅かな綻びを見逃さず加賀が看破するという流れです。 また、読み手に犯人は初めから丸わかりで、且つその犯人視点の作品が多い事を考えても、追い詰められていく犯人の心理状態の描写に重点が置かれた作品と言えます。 如何にも加賀らしい観察眼とねちっこさは、短編とは言えしっかりと表現されており、シリーズのファンにも納得の一冊だろうと思います。 ただやっぱりこのシリーズは長編で読みたいかな。感情移入できる間もなく終わってしまう。 加賀の人間味にどっぷりと浸りたいですね。 |
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【ネタバレかも!?】
(1件の連絡あり)[?]
ネタバレを表示する
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アイデアは面白いし、プロットも非常に練られているレベルの高い作品だと思います。
ただ評価が余り高くないですね。でもそれも何となく分かる、そんな作品です。 第一幕の殺人における動機云々を言う方が多いですが、私にはこのプロットを考えるならこの動機はすんなり受け入れられます。 ポアロが苦戦したこの動機ですが、今読めば推理できた人も多かったのではないかと思います。 そんな突飛な動機だとは思いません。 私にとって問題だったのはこの作品におけるポアロの立ち位置でした。 戯曲風にアレンジされた凝ったプロットで、ポアロを完全に脇役へと押しやる必要があるのはやむを得ません。 主要登場人物の一人である女性からは完全に邪魔者扱いされてましたしね。 ただそれによりポアロの登場頻度が極端に減っているのですよ。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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16年前に起こった殺人事件をポアロが関係者の証言から推理する物語。
犯人として逮捕されたのは依頼者の母親で既に獄中死している。 関係者=容疑者は5人。その5人をマザーグースの「五匹の子豚」に例えているという事なのだろうが実際それ程関係なかったりする。 物語の大半が、5人の容疑者に対するポアロのインタビューと、その5人が事件当時を回顧して記した手記となっている。 真犯人である一名を除いて故意に嘘をついたりはしていない。 面白いのは、容疑者5名は何れも誤認逮捕された依頼者の母親に近しい関係であったにもかかわらず、その思い描く人物像がそれぞれ全く異なっているという事だろう。 しかし、描く人物像こそ違えど依頼者の母親が犯人である事に誰もが疑いを持っていないのである。 この5人の同じベクトルを示していそうな主観を、ポワロが客観的にぶった斬りその盲点を突くのである。 これは面白い。 誤認逮捕された母親の振る舞いなどを考えても、5人の中に真犯人がいるのならあの人しかいないと多くの読者が予想したはずだが・・・ さすがクリスティって感じですね。 |
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国名シリーズ第2作。
数多い登場人物から消去法により犯人を絞り込んでいくという手法で、パズラーにはたまらないフーダニット作品になっています。 犯行現場→犯人の性別→共犯/単独犯→関係者による犯行→そして・・・という無駄のない怒涛の論理展開で非常に好感度の高い推理小説。 そして今作に限って言えば、よくありがちな強引なロジック操作もありません。 しかし逆に、推理小説をよく読まれる方にとっては既視感ありありで当たり前だろと思えること、例えばこの作品で言えば「犯行現場の特定」に対して長々とページを割いており「・・・なので犯行現場はここでは有り得ないのです(ドドーン)(一同驚嘆)」なのですが、「・・・30頁くらい前から知ってるって(汗)」ってツッコミを入れたくなります。 DNA鑑定やルミノール検査が出来ない歯がゆさもありますね。 まぁそれが「古典」だとも思うので減点の対象にはできませんが・・・ この作品では警視が人間関係の軋轢の中存在感がなく、エラリーが完全に推理の主導権を握っています。 普通なら最後の最後までダンマリを決め込むはずが捜査過程で喋る、喋る。 読者への挑戦が挿入された後、事件関係者を集めての大団円があるのですが、本来なら「待ってました」のはずが、そこでの謎解きが、殆ど読者にとって既知なのです。 「さっき聞いたよ」なのです。本来最後の謎解きで生まれる「驚き」が、既に捜査の過程で明らかになった時に「驚き済み」なのです。 そこが少し残念でした。 最後の最後に・・・ってのは中々洒落た演出だと思いましたけど。 あとロジック重視で動機が後から取ってつけたような感じなのはいただけないかなぁ。 あの「粉」の正体が明らかになった時、真っ先に疑われるべき人物は明白なのに一言も触れないのも不自然ですかね。 まぁ細かいこと言ってもきりがないので・・・前作の「ローマ」よりはかなり完成度高いように思います。 |
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