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火刑都市
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火刑都市の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.08pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全9件 1~9 1/1ページ
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この時代だから描けた綿密で丹念な物語、惹き込まれるように読破しました。 ストーリーは最初の事件からその解決までの1年以上にわたっていて、起伏が大きかったりどんでん返しがあったりといった派手さはなく、淡々と着実に真実に迫っていくストーリーになっています。 (以下ネタバレあり)島田先生の作品は本当に読ませる力があるのですが、こちらはある意味テロリスト的犯罪の犯人が、なぜそのような犯行に至ったかの内面描写はなく、なぜその当時の若い男性にそういう思想があり得たか、を理解出来た感じでした。1970年ぐらいの学生運動から十数年ぐらいは経ってはいっているものの、今の大学生とは全く違うメンタルを持っていたであろう犯人が反政府的なこのような思想を持つことについては充分に納得ができますし、何と言ってもこの話のヒロインは消えた女性なので、その女性の生い立ちや上京して転々とするに至る経緯の方が主流なのです。 しかしこの話の大黒柱は何と言っても往年の刑事の地道な捜査です。意味不明な縁故的人脈を持っていて都合よく情報が入ってくるジャーナリストなんぞは出てきません。自分の感じた違和感を放置せず、何かあると調べ続ける実直な刑事がいるのみです。ここに断然たる昭和作家のリアリティがあります。 相手が刑事だからして周りが協力的なのは然るべきですが、それにしても「そんな都合のいい偶然あるか」「なんで相手にメリットもデメリットもないのに情報提供受けられた?」といった違和感を全く感じさせません。犯人側には犯罪を成功させるための若干の都合の良さが感じられないこともないのですが、それを追う側には都合の良さ・棚ぼた・あの人が実はあの人で(そりゃないぜ)が全くないところが珠玉です。最後犯行現場を巡る偶然については、普通考えられない確率のことだと思いますが、この一点だけがそうなので全体に納得感が保たれた上でドラマティックなのであり、なんでもかんでも都合よくあてはめてしまう事例が昨今の小説には散見されることを実感するに至りました。だからこそ最後のすごい確率の偶然が、ヒロインが犯人を殺すという幕引きに至るところに偶然を通り越した必然にすら感じてしまうのです。 なのに、その感動的なラストに事後談や無駄なセンチメンタルな語りをくっつけることをせずに、サラッと終わるのも素晴らしく清々しいのです。 | ||||
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島田荘司は、『島田荘司全集IV』の後書きの中で、『改訂完全版』としてリマスタするプロセスの中で、『夏、19歳の肖像』と『火刑都市』について、読み直してみて、自分の初期を代表する作品だと書いている。 この作品は、ホテルで缶詰ではなかったようだ。この前に書かれた『確率2/2の死』と、『サテンのマーメイド』・『夏、19歳の肖像』の3作は、出版社にホテルに缶詰にさせられて書いたらしい。ただ、この次の角川からリリースされた『消える上海レディ』は、御茶ノ水の山の上ホテルで缶詰になって書いた、と書かれている。 さて本作は、島田荘司の東京あるいは江戸についてのノウハウが随所に生きている。御手洗の短編集の中に『ギリシャの犬』というのがあるが、あれは『東京の橋』についてのノウハウが凄かった。あれと似たものを感じた。とても好きな作品です。 | ||||
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『占星術殺人事件』や『斜め屋敷の犯罪』などを読んで、江戸川乱歩や横溝正史直系の子孫だと思っていた島田荘司が、松本清張らの社会派ミステリの遺伝子も合わせ持っていたことを示した作品。なるほど主人公の刑事が、容疑者リストに浮かびあがった謎の女をおって、雪と日本海の荒海にだかれた北の寒村を訪れるところなどは、清張の名作『ゼロの焦点』を彷彿とさせるものがあった。 都市論に根ざした劇場型で偏執的な連続放火事件に殺人事件をかさね、時間的にも空間的にも広く興味をそそる物語展開で、飽きさせることなく読ませる。また、人生の勝ち組をもとめるゆえの犯罪者という、ある種の社会派推理小説にありがちな類型的な殺人者に堕することのない、より繊細で深い人生の機微を感じさせる犯人像の造形にも成功していた。細かな意外性やトリッキーな部分まであり、味わい深い島田流・社会派ミステリの傑作になっていると思う。 | ||||
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新作読書の合間に島田荘司の過去の名作を読むことが多くなりました。「改訂完全版 火刑都市」(島田荘司 講談社文庫)を読みました。 初出が1986年。初版で読んだ記憶がありますが、ディティールは忘れてしまっています。かつては、新刊を読むと即古本屋に持ち込み、売ってしまっていました。 東京、四谷でビル火災が起き、宿直のガードマンが焼死します。警視庁の中村刑事が事件を担当しますが、そのガードマンがいつもは使わない睡眠薬を飲んでいたことに疑問を持ちます。果たして、これは事件か、事故か、「殺人」か?亡くなったガードマンの恋人の存在が浮き上がり、その女性・由紀子がその痕跡と共にいなくなってしまっていることに気づきます。そして、唯一の手がかりから中村刑事は、日本海、「越後寒川」へと単独捜査に向かいます。島田荘司は奇想の作家ですが、「寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁」同様、日本ローカルの荒涼とした風景をリリカルに描いています。 そして、その四谷で起きた放火事件は、赤坂のホテル、虎ノ門のビル、「連続放火事件」へとつながっていきます。ここから、物語はもう一つ転調して、主役は刑事から都市「東京」へと受け継がれていきます。東京という「都市」を遡って描くそのロジックは、奇想でありながらも、パズラーとしての美しいアーキテクチャに裏打ちされています。そのことは、近頃、佐々木譲が描いたオルタネート・ヒストリー「抵抗都市」の東京の「地図」と相まって、東京という悪しき街の進化へと誘い、その幾重にも折り重ねられた「地図」は、現在の温暖化に苦悩する都市へとメタモルフォーゼを繰り返してきた証として、時の重さを体感させてくれるのだと思います。そういう意味では、このミステリは「予測」の書としてもその価値が高い。 失踪した女性・由紀子の存在も忘れがたい。昭和の時代、いい悪いはひとまず置くとして、このような「女性」の生き方が確かにあって、そのことを誰も責めることはできないと実感できます。使われる「愛」という言葉はとても気恥ずかしい語彙ですが、もしその語彙を使っていいのであれば、名声や資産や地位も一切かかわり合いのない場所にそれはあって、その「悲しみ」がこのミステリの底流に深く長く流れているのだと思います。それはまるで東京という都市の地下に流れていた多くの「掘割」のようだと思います。 未だにリーダビリティーの高い、島田荘司の「予測の書」としての傑作です。 1980年代当時、古本屋に何冊かの本を持ち込むと、顔なじみの店主は、私の顔をみて、いつもこう言ってくれました。 「それで、今日はいくらほしいですか?」 私が新刊の定価の7掛け*冊数分の金額を告げると店主は何も言わずにお金を渡してくれました。この小説の由紀子は「東京が怖かった」と言っていましたが、私はそのクールな東京にいて、下町に残る<人情>に何度も助けられていたような気がします。ありがとうございました。 | ||||
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推理小説愛好家ではないので、謎解についてはそれ程興味がありませんでしたが、ちょっと古くなっているますが、k都市伝説と結びつけたところが大変興味深いところとなっています。 | ||||
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週刊文春 1986年 国内5位 島田荘司さんの作品は、ブックランキングを過去から遡って読んでいるだけなのだが、奇を衒ったプロットと大胆なトリックで度肝を抜くミステリ作品が多いように思う。本作品は、事件を足で追う刑事が主役で、島田荘司さんの作品の中では地味な部類に入るだろうか。 新宿区四谷の雑居ビルで放火と思われる火災が発生した。現場からはガードマン土屋の焼死体が発見される。土屋は睡眠薬を飲んで熟睡しているうちに、火災に巻き込まれたらしい。捜査を担当する中村刑事は、土屋の謹厳実直な人柄から、仕事中の居眠りに不審を抱き殺人を視野に入れる。まだ二十代の土屋は、人付き合いが苦手で孤独な生活を送っていた。中村刑事が土屋の身辺の聞き込みを続けるうちに、土屋と暮らしていたらしいひとりの女性の影が浮かび上がる。彼女は土屋が焼死する当日、家を出ていったまま帰らないのだ。しかし、土屋の部屋に彼女のいた痕跡は見当たらない。中村刑事の捜査が遅々として進まないまま、第二、第三の火災が発生する。 ・・・ 中村吉造刑事は、島田荘司さんのシリーズキャラクター御手洗潔、吉敷竹史が主役の作品に、脇役として登場するようだ。僕の読了した作品にも登場しているはずなのだが、残念ながら記憶にない。中村刑事が過去の事件に時折言及したりするので、島田荘司さんの作品を読み込んでいると、本作品をより楽しめるのだろう。画家にさせたかったという母親のため、つねにベレー帽をかぶっているという中村刑事の設定も憶えておこう。 事件は、中村刑事が謎の女を突き止めてから、連続放火事件が勃発し混迷を深めていく。発火場所は全て密室。そして、燃え残された東京の文字。謎の女と第一の事件、そしてその後の放火事件との関連性が判然としないままストーリは展開し、ついに第二の殺人が発生する。犯人から届けられたメッセージ「地の水で消せ」の意味は何か。 東京という都市の成り立ちを背景にして、そこで暮らす孤独な人々の悲哀が描かれた作品である。トリックが地味めで、事件そのものも納得性がいまひとつ。けれど、地方出身者の私にとって、大都会の中で生きていくということについては、寂しさをともなった共感をおぼえてしまう作品だ。 | ||||
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昔の作品だけど、今読んでも、社会(今回は都市作り)の事を色々と考えさせられてしまいます。あと、一生懸命な刑事さんが出てきます。ちょっと応援したくなるような。総合的には、面白いです。特に動機が、社会問題をテーマにしてますから。 | ||||
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「カンコ」の謎を追う為に、刑事が新幹線に乗って出かけていく箇所が好きです。 その描写が心に残りました。 | ||||
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この頃の作品が一番良い頃でしょうか?冒頭の幾つかの謎がだんだんまとまり始める。東京ってなんなの?と考えさせられます。何気なく歩いているけど、それぞれの想いがあるのだなー と、内容はおもいけど楽しめます。 | ||||
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