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犬の力
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犬の力の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.97pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全50件 21~40 2/3ページ
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下巻まで一気に読んだ。 登場人物が多く、似たようなカタカナの名前なので登場人物のリストと行ったり来たり。でもそれほど苦にはならなかった。 ハードボイルド小説臭さがちょっと鼻につく部分があったので★-1。 | ||||
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久しぶりに読み応えのある作品だった 最後まで緊張感を持続させ読み終えるのが惜しいくらいの充実度 官憲社会・政界と裏社会を中心に虚実織り交ぜながら展開していく様はJ.エルロイのアンダーワールド三部作を読んでいるようであり こういった種類の物語が好きな人にはマストだと思う 中南米の地理や社会情勢をある程度知らないと面白さを楽しめないと思うので そういった意味では万人向けではないかな 登場人物が多いので巻初めにある紹介をもう少し多くしてほしかった せめて上下巻別にするくらいの手間をかけなきゃ | ||||
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上巻を入手してから、なぜかしばらく読むのを中断し、1年後に改めて 読み直して週末に一気に読了しました。 よかった、下巻も買って。なんだすごいじゃないか。 他のレビューを書かれた方がおっしゃるように、「麻薬戦争」がテーマの書です。 過激すぎるほど過激な暴力描写もあります。 しかしこの本には、「ミレニアム」同様、愛があります。 この愛が、すごくていねいに、そしてうまく描かれています。 殺人者の愛、聖職者の愛、正義に対する愛、男と女の愛、 古くはゴッドファーザーもそうですが、この本の登場人物も極めて過酷な状況に 立たされ、選択を間違えば、自分の死という対象を払わなくてはいけません。 2013年の日本では、現実的にはほぼあり得ない過酷な状況。 その中で登場人物たちは、誠実に強く生き、自分なりの愛と正義(と悪)を選択します。 そして結末では、すべての糸が一つにつながります。 読み終わった後には、何にか、こう言葉にできないかたまりのようなものが 胸の中に育ってきた気がしました。 それは不快なものではなく、何か。言葉にすると陳腐なので書けませんが。 久しぶりに、極上の小説に巡り合えました。 | ||||
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感嘆! 褒め称える言葉が100あるなら、全て書き入れたい。 BEST OF BEST! 国士無双! | ||||
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さて、わたしは数秒前に下巻を読了したばかりだ。それには理由がある。世間の本好きの皆さんが、本屋に並ぶ本書を買うか買わないかで棚の前を行き来する姿を想像するに、アドバイスせずにはいられなくなったからだ。 本書は買うべし。蔵書のうちの一冊として永久保存するのが良し。 久しぶりの一気読み本である。冒頭から読者をぐいぐいと引き込む物語、いや語りは近年まれに見る傑作と言わねばならない。個人的な所感としてみれば、本書に手を出す前に読んでいたのが「神は銃弾」で、その反動があったやもしれんが、それにしてもこのボリュームにして途中ダレることなくクライマックスまで突っ走るストーリーは簡単するほかない。ことに船戸与一ファンならピクリとするような組織の登場もある。藤原伊織の名著「蚊トンボの冒険」のラストで、こんな文言があった。 「恋と冒険」 状況はや舞台は違えど、本書にもロマンスと冒険を見いだせるだろう。 騙すつもりはないが、騙されたと思って読んで欲しい。 常日頃思うが、これほどの傑作がブックオフで100円で買える世の中が、嬉しくも悲しいと思っている。 | ||||
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上下合わせてあっという間に読み終わりました。 素晴らしい小説です。まさに圧巻。 | ||||
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◇元々、私はミステリ好きだったのですが、 最近は何か物足りなくてガッカリということばかりでした。 でも、この本は違いました。 圧倒されます。 この凄味は一体、何なんでしょう! 息が詰まり、疲れました。 ◇私が読書に目覚めてから、ミステリと言われる分野で、はじめて満足のいく1冊でした。 こういうのを読んでしまうと、他がますます物足りなく感じるのでしょうねー、、 | ||||
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待ちに待ったウィンズロウ作品。 今までの軽妙さはすっかり姿を消し、怒りが荒れ狂うような小説です。まいった。引き込まれました。 | ||||
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「チャイルド44」「グラーグ57」「エージェント6」3部作。 「ミレニアム」3部作。 文字道理作品世界にどっぷりつかって、 読み終わるのが寂しくてしかたがないくらい面白くて感動した。 読み終わったとき呆然としてしまったくらいだ。 他の方の評価を読んで、犬の力を読み始めたが、 上巻で挫折。 面白くなくて、読むのが苦痛で・・・。 作品のせいというよりも自分自身の感性と会わないんだと感じている。 まあ、上記の3部作がすごすぎるのね! 残念! | ||||
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一読すると荒唐無稽で、ありえない残酷な世界と思いがちですが… 先日もメキシコで「刑務所に収監中の囚人が刑務官の協力で町に繰り出し、機関銃乱射」 こんな事件が起こりうるのがメキシコなのでしょう。 レビューでも否定的な書評もありますが、この本の描写は決して現実から離れたものでは ありません。先のメキシコの事件よりもより残酷な現実があります。 南米コロンビアでは、右派左派入り乱れ、おまけに政府の腐敗・アメリカの介入で 信じがたいことが連日起きています。左派ゲリラに便宜を図ったとされ村民が全員虐殺とか… TVのドキュメンタリーでもやっていましたね。 ことほどさようにメキシコや中南米を取り巻く状況には複雑かつ陰惨な政治力学・麻薬権益が 交錯しています。 それなりの知識がないと「犬の力」は、面白おかしく描写されていると思われがちですが 実際はかなりリアルにその現実を描いていると思えます。 単なる「復讐物」ではなく、政治(麻薬取引や社会主義勢力に対するアメリカの対応)の裏面に 迫った本です。 「暴力」と「残酷」だけで、この本を評価しないようにお願いします。 私は一気に読み終えました。 読後感は悪かったけど… 一度読んでくださいね。 | ||||
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いやぁ、大作です。 印象的には、船戸与一氏を彷彿させる血と汗と暴力、善・悪は一体となり国や権力の不可避な暴力が描かれます。 1975〜2004年の間、主人公4人の絡み合う人生を、アメリカ・中米麻薬犯罪と政治関与、事件史実をまぶし織りなします。 この一大サーガをまとめきったウィンズロウの手腕にまず驚きました。ストリートキッズシリーズの時も長編がありましたが、その時と変わらない項数が上下巻になっています。また、分量だけでなく内容も上記のように重いものですが、話運びの巧さに結末まで必死に読み進みました。 これは、物語冒頭で提示される状況への主人公の無力感というか、悔しさと怒りに牽引されています。 その後、時間を遡って綴られる抗争の歴史から怨念が積み重なり、時間軸が追いついたときの話の広がりは、結末に収束されるまで予断を許しません。 ここでは、圧倒的な悪や暴力にたいして、反攻するのもやはり悪や暴力である、ということでしょうか。個的な感情では物事は動かず、別の悪と結ぶことにより個的な感情を充足することができる。ただこの感情は善・悪ではなくもっと情緒的なもので、ここがあからさまなのがこの物語の気に入ったところでしょうか。 | ||||
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赤ん坊が母親の腕の中で死んでいる。 ――冒頭の一行は重苦しい出だしだ。当然、この母親も死んでいる。メキシコのとある村。結局19人が虐殺された。戦争ではない。いや、戦争かも知れない。麻薬戦争という悲劇だ。 駆けつけたメキシコ人警官のひとりがぽつりと呟く。「エル・ポデル・デル・ペーロ」(犬の力)。本来は旧約聖書の一節にある苦難の道を歩む民が、その窮地からの解放を神に願うくだりで、「剣」も「犬の力」も民を苦しめ、悪の象徴という意味合いで使われるのだが、ここでは「犬畜生のしわざ」という意味で捉えられる。 1900年代後半のメキシコでは表面上は非合法だが、事実上は政府、軍、警察が一体となって麻薬カルテルの存在に見て見ぬフリをしていた。我々は、少なくとも私は麻薬の供給元は南米のコロンビアが主流だと思っていたのだが、合衆国直下のメキシコも豊穣なケシ栽培の土壌をもっていたのだ。 麻薬捜査官アート・ケラーはそこに敢然と乗り込んで行くのだが、当然挫折する。しかし、不屈の闘志で徐々に這い上がって行く・・・・・。一方、ニューヨークのチンピラ、ショーン・カランは成り行きでギャングの用心棒を射殺し、それがきっかけで頭角を表わす。隠然たる勢力を持っていく途上で、ある女性と恋に落ち、足を洗おうとするのだが、洗えるわけもなく、やがてその女性とも別れ、ヒットマンへの道を歩む。さらに、生まれながらの美貌に恵まれたノーラ・ヘイデンは、自らの意思で高級娼婦への階段を上り、やがて、麻薬王アダン・バレーラの愛人となる。 メインはこの三人だが、多種多彩な人物が彩りをそえる。アート・ケラーの活躍で、メキシコ独自の供給が覚束無くなった麻薬カルテルは、新たなルートを確立する。云うまでもなくコロンビアだ。後半部はコロンビアの反政府革命党と麻薬カルテルが取引を行う事になり、反政府革命党は金より武器を要求する。麻薬カルテルの一統アダンは、その武器の調達先を模索し、香港(中国)に目をつけるのだが――。 本来は出会うはずもなかったアート・ケラー、ショーン・カラン、ノーラ・ヘイデンが、アダン・バレーラを軸に、蛾が誘蛾灯に吸寄せられるように出会い、クライマックスに突入する。 ドン・ウィズロウは本来、残酷描写をしない作家だが、上巻のラストで身体が凍りつく残酷体験をさせられる。そして、後半部の疾走感は目まぐるしく、文字通り、眩暈を覚えるほどの昂奮を覚える。 | ||||
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スリリングなだけでなく、この物語には独特の凄みがあります。 ただのドンパチではなく、濃密な人間ドラマがあるんです。 ヒールとなるアダン・パレーラがその障害を背負った娘に 注ぐ愛情の深さは、読者の心を動かさずにはいないでしょう。 主要登場人物たち、ミゲル、アダン、ノーラ、カラン、 それから凶暴な捜査官ラモスや枢機卿パラーダなども、 誰もが一篇の主人公足りえる魅力的なキャラクターばかりです。 こんな熱いキャラたちが情念を燃やして激しく ぶつかり合う物語が面白くないわけがありません。 | ||||
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アメリカもののサスペンス小説は大好きで、触手が動くのだが、壮大な長さと人物相関図が付くほどの登場人物の多さに恐れをなし、好きなくせになかなか手をでない。しかし、いったん読み始めるともう止まらない止められないのですね。そのため、ドン・ウィンズロウの名前はまったく知らなかった。しかし「犬の力」という魅力あるタイトルに魅かれ、『ものは試しだ』と思い購入したのは一昨年なのだが、バタバタしていて先月程やっと読んだ。まあ、なんと桁はずれのストーリーテラーがいる事に驚いた。 アメリカ・南米・麻薬捜査官・マフィア・ギャングの世界が複雑に交錯して織りなされた物語は圧倒的な完成度とパワフルなストーリテリングでぐんぐんで進んでゆく。これだけの情報量を物語に構築してゆく実力は見事なものだ。 物語は下巻にゆくに従ってヒートアップし力強く進んでゆく。ドン・ウィンズロウの緻密で明晰な文章が複雑な人間関係や組織を一挙に纏め上げ、特に下巻はページのめくるのがもどかしいほどに、面白かった。 ただ、少々難を言えば上巻が-(完成度は高いのだが)-物語の背景と人物相関の設計をきっちりみせるため、ストーリーテリングのテンポが若干落ちる。しかし、これだけの情報量を物語に構築するとなると、読者に物語の背景を明確に理解させないといけないので、多少のテンポダウンも作品の質を落とすほどのものでもない。 これだけのストーリーテラーはそう居ない。まるで、全盛期のフレデリック・フォーサイスを彷彿させる実力だ。 | ||||
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「このミステリーがすごい!」海外編で2010年度1位。 上下巻で、900ページ以上の大作である。 「わたしの魂を剣から、わたしの愛を犬の力から、 解き放ってください」 という、聖書の引用から始まる本作は、1980年から 1990年のメキシコを舞台に、麻薬戦争を描いた小説である。 麻薬戦争というと、「トラフィック」という映画を思い出すが、 北米という巨大市場と、貧しい南米で製造される巨大な 輸出産業という対比から、北米で消費される麻薬、運び込まれる 麻薬、製造される麻薬流通のそれぞれの問題点を見事に描き出した 一作であった。 「犬の力」は、製造地から北米の国境を越えるところまでの、 取締当局と麻薬組織との攻防を描いている。 取締側は、アメリカ側から派遣されたチームが現地警察や軍とも 連携しながら、密輸と違法製造を阻止しようとするが、現地では 圧倒的に麻薬組織の影響力が強く、警察内部も安心できたものでは ない。 麻薬組織は、圧倒的な財力で、人々を買収している。 メキシコ大統領ですら買収されている設定である。 財力だけで人々を操るのではなく、残虐を極める暗殺、虐殺も 繰り返され、強要されると、選択肢がない。 麻薬組織のトップは、取締当局の行動を苦々しく受け止めながら、 反面、密輸が困難になることで、北米での末端価格が高騰するため、 麻薬流通に欠かせないとも語るのである。 メキシコ語のルビもあったりと、情景がありありと浮かんでくる。 と、ここまでがベースになって、抗争はますます激しくなっていく。 ディテールがしっかりしていて、人間の弱さが見事に表現されている。 瞬間瞬間の打算、妥協、などの感情が見事に切り取られていて、 小説を飛び越して、ノンフィクションかと思ってしまう。 善を行う者は干からびていくようで、悪をなす方は、 華美に、豊かで、偽りではありながらも幸せそうなのが、 見ていて辛い。そこに周囲の人々の妥協が生まれる。 辛い理想と、豊かな現実(但し違法)、選択することは難しい。 宗教なども交えながらも、理想を口にするものは、ほとんど登場しない。 あくまでも現実と、具体的な行動だけである。 生きるために、という非情が見事に描かれた良書である。 二人の主人公は、どういう結末にたどり着くのか、圧巻の結末が、 全てはその瞬間のための下準備ともいえる一冊。 「犬の力」って、結局なんだったのかということになるが、 一言では言い表せない、この本作を通して感じ取ることができるものだと 思う。 | ||||
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需要があるから供給があるのだろうが、アメリカ社会から麻薬を根絶することなどと考えるのは、サハラ砂漠で小さなダイヤモンドを見つけるようなものだ。 が、本書の主人公DEA捜査官のアート・ケリーは、何故かこの不毛ともいえる戦いにのめりこんでしまう。 プロローグは、1997年、バハカリフォルニア州エルサウサル(メキシコ)で麻薬シンジケートの幹部の一族19人が惨殺された描写から始まる。 1975年に時間をさかのぼる次の第一章では、主人公のアート・ケリーが、物語の最終章まで追いかけることになるとは夢にも思わない若かりしアダン・パレーラ(後の麻薬シンジケートのトップ)と親しくなる設定など、かなりの構想を練った末での著者の布石とも思える。 プロローグの情景が、下巻12章「闇の中へ」へ続くなどの意外な展開は、読者の琴線に触れてなかなかのものだと感心してしまう。 アメリカとメキシコ国境あたりの情景描写も読んでいても、映画を観ているような錯覚さえ覚えるから物語の展開の邪魔にはならない。 本書のタイトル、「犬の力」の意味が旧約聖書の詩篇二十二章二十節からの引用ということも訳者後書きで知った。 この二十二章には、苦難と敵意にさいなまれる民がその窮地からの開放を神に願う下りに、”剣”も”犬の力”も、民を苦しめ、いたぶる悪の象徴という意味で使われている。 おかしなタイトルの本だと思いながら読み始めたのだが、訳者の後書きで、まさに「犬の力」とのタイトルは、本書にふさわしい。 本書中、「犬の力」という言葉が書かれていた箇所がたった5箇所だったのにである。 最近読んだこのジャンルの本の中では秀逸な一冊であった。 | ||||
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メキシコと米国の間を流れる大量の麻薬と金に関わる国家と人間の20年超に及ぶ有様を描いた超大作。 麻薬を動かすメキシコの犯罪組織の一族とそれを取り締まる米国当局の捜査官を中心にストーリーは展開していくが、前者が悪で後者が善というような綺麗な図式ではない。 巨大な金を動かし邪魔するものに対しては家族全員の死で報いる力を備えた犯罪組織は、メキシコの国家や警察組織さえ操る力を持つ。それに対するはずの米国当局も、中南米諸国の共産化を防ぐために、時にはメキシコの犯罪組織は手を結び、各地で悲惨な暴力を繰り広げる。 フィクションなのでどこまで本当かという部分はあるとは思うが、本書の登場人物が何れもあまりにリアルなのでここに描かれていることこそ現実なのではないかと思わされてしまう。目をそむけたくなるような暴力シーンが満載で、気楽に読める作品でないが、スケールの大きさと迫真のストーリー展開を備えた一級の作品だ。 原書で読みましたが、頻繁に出てくるスペイン語と麻薬関係のスラングを除けば、読みやすい平易な英語だと思います。 | ||||
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1970年代から90年代に至る中南米およびアメリカ合衆国を舞台にした麻薬戦争を描く巨編。まず読み終えた上巻だけで574頁あります。 米国麻薬取締局の特別捜査官アート・ケラー。 メキシコの新興麻薬組織を率いるバレーラ一家。 高級娼婦となった美貌の高校生ノーラ。 苦悩する司教フアン。 NYの貧しいチンピラ、カラン。 ヒスパニックからイタリア系、アイルランド系など様々な国や民族の出自を抱えた痛ましい男女が、おのおの閉塞感を抱えながら物語を生きて行きます。 中南米の70‾90年代はアメリカの反共政策に翻弄された時代です。 この小説にはサンディニスタやイラン・コントラ、解放の神学、メデリン・カルテルなど私が学生時代に報道で幾度も目や耳にした実在の組織や事件の名前が現れ、またオリバー・ノース中佐がモデルとみられるクレイグ大佐(469頁)なる人物が登場するなど、懐かしい歴史をその現場で実際に生きてみる感覚が私にはあります。虚実ないまぜの物語を作者創造のキャラクターたちが疾駆する姿はなかなか読ませます。 バレーラ家のアダンが、難病の娘を抱える父、妻を愛する夫であるかたわら、組織の要として対立勢力との激しい抗争にあけくれる姿が奇妙に心に残りますし、民衆救済を実践する司教フアンが、娼婦ノーラと特異な友愛関係を結んでいく姿もこれまた強く印象に残ります。 仮借なき麻薬戦争がどう展開されていくのか。下巻へと進んでみます。 *原文に登場するスペイン語を訳者は、日本語の訳語にカタ仮名ルビで原音表記しています。残念ながら幾つか表記に誤りがあります。「でくの坊=ヒホ・デ・プタ」は「イホ・デ・プータ」、「不可触=イントカブル」は「イントカーブレ」、「古狐=ツオツロ・ビエーホ」は「ソロ・ビエーホ」とするのが原音に近いといえます。 *162頁の「ミッキー・D」は、俗称で「マクドナルド」のことです。 | ||||
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作家名を知らずに読んでいたら、決して「ニールケアリー」シリーズを書いた人の作品だとはわからないでしょうね。 ちょっとうれしい驚きでした。 「これが名訳か?」なんてけなす人がいるようですが、まあこのレベルの本を原書で読めるんなら最初っから原書で読むべき。 「ニールケアリー」シリーズならなんとか原書で読めそうですが、この本はキツイなあ〜。東江さんの翻訳のほうが楽しめます。 | ||||
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オリジナルは2005年リリース。邦訳は2009年8月25日リリース。2010年版海外編『このミス』第1位。『週刊文春ミステリーベスト10 2009』第2位。事実上2009年の海外ミステリーは『ミレニアム』とこの『犬の力』の一騎打ちだった。間違いなくドン・ウィンズロウの最高傑作だ。 自身がニューヨークをはじめ全米・全英で私立探偵をし、一方で法律事務所や保険コンサルタントをしていたというキャリアが実に作品に生きている。つまりここでのストーリーが極めて『現実に近い』のだ。それ故、ストーリーの登場人物も極めてリアルで、実在している(あるいは実在していた)としか思えなくなる。他作品例えば『ボビーZの気怠く優雅な人生』でもここに登場するDEAは登場してくる。ただそのリアルさが極限に近くなっている。 まるで現代版『ゴッド・ファーザー』を眼で見ているような映像性はすばらしい。この作品は是非とも映画で観てみたい。そう思った。 | ||||
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