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グラーグ57
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グラーグ57の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全23件 21~23 2/2ページ
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1956年、フルシチョフが突如スターリン批判を展開してソビエト社会が騒然となる中、犯罪者集団ヴォリがかつて自分たちの人生を大きく狂わせた国家保安省の元役人たちを殺害し始める。ヴォリの頭目は7年前に保安省が告発した司祭ラーザリの妻アニーシャ。元保安省職員レオ・デミトフも彼女たちの標的となり、養女に迎えたゾーヤを誘拐されてしまう。アニーシャがゾーヤの無事と引き換えにレオに要求したのは…。 「チャイルド44 下巻 (新潮文庫)」から数年後を描いた続編です。 上巻はモスクワでの謎めいた追跡劇から、極寒の極東グラーグ(強制労働収容所)へと物語が動きます。そのスケールは前作「チャイルド44」を遥かにしのぎ、手に汗握る展開を見せてくれます。 スターリニズムが大きく転換期を迎える中で大変厳しい状況に置かれる我らが主人公レオ。彼は粛清する側に身を置いていた人物であり、今日的視点からいえばソビエト社会主義の手先として糾弾されるべき立場にあります。 しかしこの物語でのレオは良き夫、そして良き父であろうと不器用ながらも懸命に努力する一市民として描かれ、私たちはこの体制側の男に同化しながらスターリニズム末期のソビエト社会の混乱の中に放り出されることになるのです。全きヒーローとしてではなく、指弾される過去を抱えた主人公として描かれるレオという人物設定が見事です。 さらに養女ゾーヤは前作での経緯を受けて激しく養父レオを憎み、妻ライーサも “努めて”夫を愛する日々を送る。 これは、社会主義ソビエトに生きた人々の一筋縄ではいかない人生に自らを重ねながら読み進むという、大変複雑で奥深い体験を読者に味わわせてくれる小説です。 さて、上巻では物語はまだ折り返し点を通過したばかり。レオは果たしてゾーヤを救うことができるのか。そして物理的に救うだけではなく、その魂の救済は果たされることがあるのでしょうか。 | ||||
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前作でレオが築きあげたものが、続編では次々と壊されていきます。想像をはるかに上まわる容赦のない展開には、ただただ脱帽。前作での“まとめ方”も見事だったのですが、本作の中盤へ向かっての“壊し方”もすごい。著者の実力を見せつけられたような気がします。 とにかく登場人物ひとりひとりの描き方がすばらしくて、どんな脇役も手を抜くことなく丁寧に描かれている。みんな時代の流れに翻弄されながら自分なりに生きる道をみつけて必死に生きていて、そんな人々の生きざまと死にざまに胸を打たれました。ひょっとしたら何よりもまず、時代の犠牲者たちの姿を描きたかったのかもしれない。そう思わせるほど、登場人物たちの姿をとおして著者の熱い思いが伝わってきました。 そしてなんと言っても、読者を楽しませることには決して手を抜いていない。前作ほど圧倒的ではないにしろ、読者をぐいぐい引っ張っていく牽引力は健在。最後まで一気に読ませます。で、読んだあとには怒濤の時代を登場人物たちと一緒に駆け抜けた確かな余韻が残ります。この余韻は前作以上かも。お勧めです。 | ||||
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圧倒的なストーリーにひたすら脱帽!という感じだった前作。ただ、続編があると聞いたときには、あまりにきれいに終わりすぎたエンディングが少し気になっていた。で、本作を読んでみると、前作の大団円を大胆に切り崩していく展開にうならされた。この人、本当にすごい作家だなと思う。 前作は善悪の対立構造がわりと単純明快だったけれど、この作品では、主役級はもちろん脇役にいたるまで、登場人物が自分なりの信念を持って生きるさまがより丁寧に描かれている。正直、読んでいるうちに、誰が正しくて誰がまちがっているのかよくわからなくなった。作品中で死んでいった多くの人々のように、現実に即して生き残る道を選ぶことだって、あの状況下では卑怯だとも思えなかったし…。 映画化を意識しているのでは? と思わせるようなアクション・シーンも満載。最後まであっというまに読めて、エンターテイメントとして充分楽しめるつくりはさすが。個人的には物語の中盤で起きた悲劇に泣いた。 登場人物の一人ひとりにじっくりスポットを当てたぶん、物語の牽引力が弱まった感は否めないけれど、〈レオ・デミドフ物語〉として考えると、この作品が前作を補完する形で物語全体に深みを与えていると思う。最終作で、レオがどんな着地を見せてくれるのか、今からとても楽しみだ。 | ||||
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