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アフターダーク
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アフターダークの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.48pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全468件 461~468 24/24ページ
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~村上春樹の小説の中心的な主題は長い間「喪失感」と「detouchment(関わりのなさ、他人との距離)」であったように思う。しかし、地下鉄サリン事件被害者へのインタビューや阪神大震災の追体験などを通じて、社会やコミュニティーに積極的に関与すること(commitment)に関心が移ってきたらしく、河合隼雄との対談でもそのことに触れている。本書は19歳の女性のある夜~~の7時間ほどの出来事を軸としているが、中心的な主題は主人公が感じる喪失感をcommitmentによって修復していこうとするもので、前者よりも後者に重点が移ってきている点が新しい。登場人物のほぼ全員に名前が与えられ、その描写はリアルである。また、文章表現は意図して映像的なものになっていて、今までの作品とは趣を異にする。にも関わらず、そこには村上春樹~~でなければ表現できないであろう「核」のようなものがあり、具体的な描写とは反対に、読後に残るのは普遍的で抽象的な概念である。detouchmentからcommitmentへ、方向を大きく変えつつある村上春樹の転換を象徴する作品として評価したい。~ | ||||
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村上さんの本を読まなくなって随分と長い時間が過ぎました。久しぶりに読んだ新作は、中年男性にお勧めできる内容です。蘇生すること。壊れかけた人間に生の息吹がもたらされること。村上さんはそのような可能性を、絵空事ではなく描きたいと長年思い続けていたように推測します。癒しという言葉にかなりアレルギーを持つものとして、彼が以前に「癒されるのではなく、赦されるのだ」とどこかで書いていたことを想起します。美しくて、しかし内面はよくわからず(そもそも内面があるのかどうかもわからず)自分から悪夢のような眠りを続けるエリを、作者は懸命に赦そうとします。感情移入することが困難な登場人物への、このまなざしに作者の成熟を感じます。 | ||||
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以前の作品に比べ、今回は作品内部の世界を時間的に制限することで、描写や会話に重点を置いている、と思いました。(「トニ-滝谷」などの短編などを除けば)「スプートニクの恋人」あたりから本格的に意識するようになった三人称の文体が、より洗練されていて鳥肌が立ちました。レトリックのリズミカルかつバリエーション豊であることが、時間推移が遅く冗漫になりがちな構成にもかかわらず牽引力と求心力を与えている、と思いました。散文詩みたいですが、小説です。輝いている文体でした。また、三人称の視点(神の視点)の「私たち」を、「カメラ」という視座を設けて明確にすることで、「私たち」が「他の世界」に「入っていくこと」も明確になっている、と思いました。これは映画的なスリル・ダイナミズムを生む以上に、興味深いことだと思いました。あと、村上春樹さんの「僕」という一人称の作品には、「個人主義」に徹底しようとする意志のようなものが感じられましたが、三人称を意識し始めてから、その意志のようなものが、ちょっと変化してきているのかな、と個人的に感じました。人称の変更に伴う感興に過ぎない、と言われればそれまでですが。いずれにせよ、この作品は「国境の南、太陽の西」「スプートニクの恋人」と同じように、次の長編へ向けてのウォームアップだと思うので、次の作品が楽しみです。マリとエリが一緒に眠るところがとても美しかったです。 | ||||
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魂の漆黒の闇の中では時刻はいつも午前三時だ F・スコット・フィッツジェラルドこの作品を書くにあたって、村上春樹がこの言葉を意識しなかったはずはない。魂の漆黒の闇。全編に渡ってここには、魂の漆黒の闇と、それをほんの微かに照らすわずかな光しかない。無と同様に、真の闇はどこまで行っても闇であるし、闇は夜に溶け込み、都市の(もっと言えば我々の生活の)至る所に潜んでいる。思えば村上春樹はずっと「闇」を描き続けてきたのだ。闇、虚無、不安、沈黙、深淵、そして形而上学的死。これらは小説以外の媒体では、ほぼ表現(表象)不可能であると僕は信じている。だからこそ、こうして村上春樹の作品を読むのである。僕は常々、村上春樹はいつか必ずフィッツジェラルドの『THE GREAT GATSBY』を自らの手で翻訳するであろうと思って来たが、この作品を以てその確信をますます深めた。確信というか、希望・期待であったりはするのだけど(やはりフィッツジェラルドの真のおもしろみは、英語でなければ感じ取れないと、思ってみたりはする)。パブロ・カザルスのチェロを低く響かせながら、この本を読んでいるとき、僕もまた不完全な闇の一部の中にいた。村上春樹の新しい小説世界に期待したい。そして、哀しみを帯びた夜明けの美しさに、ただの一度でも触れたことがあるのであれば、村上春樹の描く「闇」と「夜明け」をどうか一度体験してみて下さい。 | ||||
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~「私らの立っている地面というのはね、しっかりしているように見えて、ちょっと何かがあったら、すとーんと下まで抜けてしまうもんやねん」これはアフターダークの中の一節です。村上春樹という作家はありふれた現実の姿、生活の姿を正確に切り取ることが非常にうまい、と僕は常々、~~思っていました。ああ、うまいなあ、この表現、などと思いながら、その文章の心地良さに身を任せているのですが、著者は巧妙な罠を仕掛けてきます。現実の描写の中に非現実の世界の雰囲気をそれは自然に滑り込ませていき、僕などは凡庸な主人公とともにあれよあれよと事件のまっただ中に放り込まれてしまいます。~~しかし、これははたして小説の中の登場人物に限った話なのでしょうか?僕やこの拙文を読んでいらっしゃるあなたの周りでも起こりうる話なのではないでしょうか?上の引用文に端的に示されているように。と、抽象的なレビューになってしまいましたが、僕が読んでおおよそ上のような感想を持ちました。それはさておき、この小説にはまだまだ続きが~~あるようです。続編での物語の展開が多いに期待されます。~ | ||||
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春樹さんの作品を読むことは、見落としていた心の一部分に目を向けさせられるような、自分自身の深い部分に潜っていく感覚が伴います。この作品でもそういう感覚を堪能しました。視点は異なるものの、作品のテーマもこれまでの作品と同じだと思います。春樹さんのファンの方なら作品の世界に違和感なく入り込めるのではないでしょうか。ただ以前の作品と比較して、文体に変化が見られるようです。そのせいか息苦しい程の緊迫感が感じられ、これは他では得難いちょっとした体験でした。春樹さんの新しい一面を見せつけられたようで、次の作品が今からとても楽しみです。「ねじまき鳥」級の大作を期待しています。 | ||||
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真夜中の都会の片隅で繰り広げられるお話です。ひとりでしかも設定と同じ真夜中に読むと作品世界と一体化できておすすめですよ。 書き下ろし長編となっていますがむしろ中編、あるいは超短編と言った方が適切かもしれない分量です。少し物足りなさがあるかもしれません。 | ||||
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ファンゆえに、こころ苦しいのだが、この長編は、「海辺のカフカ」の延長として期待して読んでみて、いささか残念であった。セリフは冗長に無味乾燥であり、ストーリーも起伏がなく、退屈ですらある。伏線は意図的に解明されないままだが、もちろんミステリーではないのだから、解明などなくてもよいが、終盤が淡白すぎる気がする。しかしながら一気に読ませるストーリーテリングの手腕はさすが。みるべきところはあるが、次回に期待したいと思う。春樹ファンならば、おさえておいていいと思います。ファンではない方は著者の、他の長編を個人的にはお薦めいたします。 | ||||
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