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忌館 ホラー作家の棲む家
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忌館 ホラー作家の棲む家の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.68pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全22件 1~20 1/2ページ
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異形コレクション・シリーズに発表された短編→「禍家」→「のぞきめ」→「赫眼」→「凶宅」→「蛇棺葬」そしてこの「忌館」と読んできました。なのでこの範囲内での感想です。 短編は民俗学的土着的な怪奇小説好きの自分にはぴったりツボだったのですが、なぜか長編はどれもいまひとつピンとこず・・ひょっとして相性悪い?結局好みじゃなかったのかも・・と思い始めていたところでした。 が、すでに買ってあったこの本まではと思いとりあえず読んでみたところ、意外、今までで1番おもしろかったです。まさかデビュー作が最高だとは思いもしませんでした。とても第1作目とは思えないほどの出来でした。 ホラー・ジャンルの編集者である三津田信三氏ご本人が主人公で登場します。担当していた怪奇ホラーのムック本やシリーズものを出版するまでの経緯などは実際にあったことのようで、そんなエピソードが混じるので、あとに続く話のあれもこれも実話なのか?と思わせる臨場感があります。 たとえば、新人作家コンテストの審査をしている友人から、三津田信三の名前を騙って作品が応募されていることを知らされたり、とある同人誌に怪奇小説の連載を依頼され書き始めるところとか、郊外の緑の多いところに家探しをしていた著者が武蔵野方面で竹林に隠れた洋館をみつけ、その怪奇な雰囲気に魅かれて借りることにした話、などが並行して進みます。 不動産屋の不審な態度からその家のことを調べるうちに、家は英国から移築されたことがわかり、しかも過去には忌まわしい一家惨殺事件が何度も起きていました。日本に持ってきた日本人建築家の一家までが同じ目にあっていましたが、ただ1人生き残ったという息子は行方がわからないままです。 三津田氏が同人誌に連載している小説の内容と、家で起きる出来事、屋根裏でみつけた精巧な家のドールハウスの中に見えることが連動し、どこからどこまでが実際にあったことなのか、現実と創作(または妄想か怪奇現象か)の境目が混沌としだんだんと曖昧になっていきます。三津田氏の頭がおかしくなっているのか?それとも・・? よくこれだけ複雑な構成を考えたなと思いました。過去の惨殺事件の不気味さも見事に印象付けられています。古典的なドールハウス怪談としても秀逸です。 読後、思わずいろんなことを調べたくなります。投稿したという同人誌は実在しているのか?あとがきを書いておられる笹川吉晴氏が実際に武蔵小金井に行ってその家を探したということは・・その家は実在している?今もそこにあって、誰か新しい借主が現れるのを待っているのかも・・などと考えてしまいました。 | ||||
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著者のデビュー作ということで覚悟していましたが 優に2/3はあるかとすら思われる 本筋に関係ない描写や蘊蓄には読んでいて苦笑してしまいました。 本筋にどっぷり浸かりたい派の自分にとってはちょっと合わなかったです。 ホラーとしても実際の怪異に見舞われるのは本当に終盤です。 ただ追い詰められる描写はこの頃から健在で読んでてハラハラしました。流石。 著者のホラー描写を純粋に楽しみたいなら短編集や単発のお話の方がおすすめかも。 | ||||
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刀城言耶シリーズから読み始めた身としては、残念ながら合いませんでした。 先に、蛇棺葬、百蛇堂を読んでしまったため、穿った見方となり、読む順番を間違えたのもあるかと思います。 ただし、上記2作品よりはデビュー作のこちらの方が精度が高いと感じました。 他の方も書いてますが、編集者ならではの忙しい業界の話、他の作家の作品の話やホラー映画の話など興味のある人には面白い蘊蓄が多い。 そのため、ひたすら物語のみを追っていきたい人としては主筋から外れてしまう部分は読むのが辛くなるのでは?と思いました。 蘊蓄にお腹いっぱいで、自分はそういった部分は飛ばし読みしてしまいました。 作者自身の名前や体験などで物語が進む、という興味深い設定であるのに、その作者の蘊蓄が多いため別口で司馬遼太郎さんのようにエッセイを書いたほうがいいのでは?とも感じました。 怖さで言ったら【のぞきめ】、秀逸さで言ったら【水魑の如き沈むもの】の2冊が好きな自分としては、蛇棺葬、百蛇堂と同じく再読はしませんが、三津田ファンで未読の方は、デビュー作品ですので一度は読んでもいいと思います。 | ||||
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デビュー作なだけあって、三津田作品の魅力が凝縮されてる。ただミステリとホラーの融合といっても、なんだかんだ本格ミステリな刀城言耶シリーズと比べるとホラー寄り。あと民俗ネタはない。 解釈次第でホラーにもミステリにも読める点では、カーの『火刑法廷』が作風としては近いかもしれない。 前半は三津田信三の遍歴を楽しめたり、乱歩や連城三紀彦について作者と語り合っているような面白さもあったが、後半は怖すぎて何度も声が出た。そして末文まで凝ったメタ構成。大オチには全く気づかけずひっくり返った。 無駄に長い文章や無駄に複雑な構成に伏線を仕込むからタチが悪い(褒めてる)。 あと相変わらず擬音が上手い。デビュー作から擬音が満載。擬音って濫用すれば稚拙な文章に見えちゃうんだけど、バランスとオリジナリティが絶妙なんだろうな。にちゃり。 ただ相変わらず見取りがわかりにくすぎる。見取り図ありの文庫版を強く進める。『凶鳥の〜』で見取り図なしの講談社ノベルス版を買った時はあまりにも意味不明すぎて文庫版を買い直したものだ。 そんなわけで賛否別れるのもわかるが、個人的には大傑作だった。 あと何気に解説が素晴らしい。三津田作品と半村良の作品を比較した評論は初めて見た。目からウロコだった。どうして伝奇SF好きな自分が三津田信三にハマったかが教えられたようで、ちょっと感動した。 もちろんジャンル自体はミステリとSFで全く違う。 でもSFと歴史、ミステリとホラーと相反するジャンルの融合。オカルトや神話、怪奇小説や民俗学の薀蓄。現実の要素やメタ構造を使ったリアリティ演出。日常の世界から非日常の世界へするっといつの間にか移ってしまう世界…… こう比べると半村良と三津田信三は作風がそっくりなわけで、両氏がドツボなわけだ。 | ||||
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三津田信三氏といえば、『厭魅の如き憑くもの』に始まる<刀城言耶シリーズ>に代表される、ホラーとミステリの融合に挑戦し続けているホラーミステリ作家です。しかしながら、所謂、作中に三津田信三氏の名前が登場するシリーズの長編第一作となった本書は、随所にミステリ的な要素が含まれているとはいえ、どちらかと言えばホラーをメインに据えているという印象です。 本書において何より目を引くのが、本書の著者である三津田 信三氏の名前が、作中にそのまま"三津田 信三"として登場し、さらに著者の現実を取り巻く環境がふんだんに作中に取り込まれるなどのメタフィクショナル的な手法が採用されていることです。さらに、『忌館 ホラー作家の棲む家』の中で"三津田 信三"が「忌む家」を作中作として書き始めることで、「現実」「作中の現実」「作中作」の三階層が存在している点が何よりの特徴です。 そして本書が秀逸なのは、「現実」を第一階層、「作中の現実」を第二階層、「作中作」を第三階層とすると、それぞれの階層の境目を意図的に曖昧にするような仕掛けが随所に仕込まれている点です。第二階層と第三階層の境目が徐々に曖昧になり、第三階層の内容が第二階層に影響を与え始め、それが加速的に一体となっていく終盤は圧巻。それと同時に、それらの境目が曖昧になることで、第一階層と第二階層の境目までもが曖昧になり、読者の「現実」にまでも影響を与え始めるのではないかと思わせるところが何とも上手いところです。 基本的にホラーテイストな本作ですが、終盤ではミステリの要素も取り入れた――その量は決して大くはないが――三津田信三氏の出世作と言えるのではないでしょうか。 | ||||
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実は購入したものの1ページ読んでまだ読んでいません。先、ついてくるものを購入したので家に届く前に読んでおこうと思います。 | ||||
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今年の春、ホラー映画「のぞきめ」の公開に際して某所に全あらすじを書くことになったので、予習のために図書館で原作を借りて読んだ。 映画の方の評価は・・・まぁ置いとくとして、小説「のぞきめ」は思いのほか面白かった。 味をしめて図書館でこの作家の本を次々に借りまくり、刀城言耶シリーズや死相学探偵シリーズ、家三部作やその他の単発作品などを読破した。 (自分も長年大ファンである映画監督ダリオ・アルジェントが好きというのも嬉しく、またある作品の中で「間違っても観てはいけない」と紹介されていたB級ホラー「パジャマパーティー・マサカー 血の春休み」を試しに観てみたら妙にテイストがツボに入ってしまったりと、作家本人の人柄や趣味には個人的に好感を覚えた) ところが、デビュー作の本書だけはなぜか図書館になかった。 これだけ作品を読めば、自分ももう一応ファンと言っていいかもしれないし、そろそろ購読しないと悪いような気がして、電子書籍でこの「忌館 ホラー作家の棲む家」を買って読んだのだが・・・今、軽く後悔している。 まず、一番残念というかイラっとしたのが、ほとんど全ての各章の最後が、盛り上がったところで尻切れトンボのように終わっていること。 これはバラエティ番組の“山場CM”や海外連続TVドラマシリーズの“クリフハンガー”など昔からTVでよく使われる手法で、何も目新しいものではないしこの作家の他の作品でもよく見かけたのだが(もちろん今までもその度にイラっとしていた)、小説という形態で、しかもここまで多用するのは芸がないというか、品がない。 デビュー作ということを差し引いても、やはりうんざりしてしまう。 そして改めて認識したのは、「この作家の作品は小説というより論文かエッセイに近い」ということだった。 この作家の一番の特徴である“ミステリとホラーの融合”という性質上、多くの作品では最後の最後まで犯人や動機が一般的なミステリ小説のようにスッキリと無駄やブレがないように解明されることはない。 全ての可能性を考慮していくつかの仮説が提示されたのち、もっとも“それらしい”説が浮かび上がるのだが、それでも腑に落ちない点が残るという結末がほとんどだ。 それに加えて、途中で作者が興味の赴くままに蘊蓄を語りに語るため、読んでる時は面白いのだが、読み終わってみると結局何が書かれていたのか記憶に残らない。 コリン・デクスターの「モース警部シリーズ」も読後の印象はこんな感じだが、モース警部の方は何度も読み返したくなるのに比べて、こちらは「一度読めばお腹いっぱい」なのが違うところだ。 (今まで読んだ作品でもう一度読み返したいのは「のぞきめ」と「水魑の如き沈むもの」) あと気になるのは、登場人物のネーミング・センスが駄洒落すぎて脱力なのと、恐怖を感じるポイント。 人が何に対して恐怖という感情を抱くのかは、個々人の性格や経験、嗜好などに大きく影響される -そんな当たり前のことを、本作を読んで再認識させられた。 正直言って、今まで読んだ三津田作品に恐怖を感じたことはない。 主人公が作中でビビりまくって膝をガクガクさせているシーンの描写は、退屈なのでつい走り読みしてしまう。 全然怖くないのにとても面白いホラー作品、というのもある意味大変貴重な存在なのかもしれない。 | ||||
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作家本人が実名で現実の肩書をもって登場するだけでなく登場人物も同様で現実なのかフィクションなのかわからないゾクゾク感が楽しい。 新書版へのこだわりがありユーズド品を探して購入した。 | ||||
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デビュー作としては、よく出来ている。 新人時代に書いた文章とは思えない。 その構成、表現力、非凡な才覚があると思う。 内容は、三津田信三氏と、作中の主人公作家を、交錯させ、 作中の主人公作家が書いた小説世界(=作中作)と、作中の世界を、交錯させる。 この交錯の連鎖が、読者及び三津田信三氏の居る世界と、作中の主人公が居る世界と、 そして、作中の主人公が書いた小説の世界、三つの世界を、交錯させる。 非常に緻密に考えられたものだという印象だった。 ただ、なにか決め手に欠けるような感じもした。 だらだら読んで、何となく終わった、とでもいうべきか。 「本格ミステリーとホラーの融合」ということらしいが、 特にミステリー要素は感じなかった。 というか、ミステリー要素は、無いのではないかと思う。 ホラー要素は、あるにはあるが、恐ろしいという程のものでもなく、 ちょっと怖いかなあ、というものだった。 | ||||
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デビュー作としては、よく出来ている。 新人時代に書いた文章とは思えない。 その構成、表現力、非凡な才覚があると思う。 内容は、三津田信三氏と、作中の主人公作家を、交錯させ、 作中の主人公作家が書いた小説世界(=作中作)と、作中の世界を、交錯させる。 この交錯の連鎖が、読者及び三津田信三氏の居る世界と、作中の主人公が居る世界と、 そして、作中の主人公が書いた小説の世界、三つの世界を、交錯させる。 非常に緻密に考えられたものだという印象だった。 ただ、なにか決め手に欠けるような感じもした。 だらだら読んで、何となく終わった、とでもいうべきか。 「本格ミステリーとホラーの融合」ということらしいが、 特にミステリー要素は感じなかった。 というか、ミステリー要素は、無いのではないかと思う。 ホラー要素は、あるにはあるが、恐ろしいという程のものでもなく、 ちょっと怖いかなあ、というものだった。 | ||||
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三津田氏のデビュー作で自身の身に覚えのない投稿小説が事件の発端となる、折原一のミステリーでよくあるような設定のホラー作品。 著者自身が主人公で劇中作ネタなどメタ趣向がなかなか凝っているが、それがいまいち終盤の向けて恐怖感が盛り上がるような構成になっておらず、最後まで読んでも恐怖感が殆ど感じられない。 ホラー作品としては本格推理的な謎解き要素もあり、ミステリーの蘊蓄ネタなども含まれていて、退屈せずに読めるが、読後はイマイチ印象に残らないような。 | ||||
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三津田さんの作品は、じめっとした暗さが好きで短編が特に大好き。 短編を読んでたので、こちらを購入しましたが、もっとこう・・・じめっとした怖さが欲しかったかなあ。 | ||||
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初めて三津田氏の作品を読みました。 内容は雑誌編集者がある洋館に移り住み、そこで怪奇小説の創作活動をするうちに非日常の怪異に巻き込まれていく…といったものです。 作家の日常と作家の書く怪奇小説の内容が交互に描かれていきます。 感想ですが、 話のところどころで古今東西の怪奇談や推理小説の挿話がされるのですが、その知識の豊富さに目を見張るものの、ややくどく、話の主筋が中断されリズム良く読むことができませんでした。 徐々に非日常に侵食されていく様子にも、著者の意図と反して「この状況怖いかなぁ…」と鼻白んでしまいました。 またクライマックスにかけて、現実が作家が書く小説内容に侵食されていくのですが、作品中盤でのめりこめなかったため、完全に乗り遅れました。 この分野の作品の醍醐味である、次の1ページをめくるとき、あのハラハラドキドキの高揚感を残念ながら感じることができませんでした。 | ||||
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作者の一人称で話が始まり、別の話が並行して進んでからまりだして、といった形式の話です。 一応ホラー小説の括りなのかもしれませんが、取って付けた様な後半のホラー&ミステリ部分より、出だしの一人称部分が凄く好きです。 編集の仕事をしてる主人公が、実在する出版社や小説家の話を出したり、怪奇小説にたいする蘊蓄が続いたり、新しい家を気に入って引っ越したりするところなんかが。 え、どこまで本当の事、って思ったもんなあ。 ここから始まって、結局それなりに読み続けてるものなあ、三津田作品。 力はある作家さんだと思います。 | ||||
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編集者の三津田信三は、たまたま見つけた空家の 洋館〈人形荘〉に心奪われ、そこに住むことにする。 やがて三津田は、同人誌『迷宮草子』において、〈人形荘〉を舞台にした 怪奇小説「忌む家」の連載を始める。その後、三津田の前に、「忌む家」 の愛読者だと称する信濃目稜子という人物が現れ、あくまで作家と読者 といった関係で交流するようになるのだが、しだいに変事が起こり始め……。 作中現実と作中作という入れ子構造にとどまらず、作者自身の現実を作品に 取り込み、虚構化した上で、異なる虚構レベルの世界が境界を浸食する現象 ――いわゆる〈メタレプシス〉を描いた意欲的なメタフィクションである本作。また、 本格ミステリとホラーとを鮮やかに融合させた、作者の処女長編でもあります。 | ||||
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創作と実話がごちゃ混ぜになってるような雰囲気です。主人公に感情移入していないにもかかわらずゾッとしました。この人、いっぺん病院に行ったほうがいいのでは?とも思いました。(作者の方ごめんなさい)作者のルーツに纏わるような話もたくさん出てきましたが、私は三津田さんが好きになってから読んだので興味深く読めました。文庫には後日談のオマケも付いてて、大変楽しめた?一冊でした。 | ||||
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怪奇、オカルト、ミステリが好き、乱歩が好き〜、っていう人には、著者と文学談義をする気分で楽しめる小説です。 しかし、物語としてはイマイチなんだなあ。 ものすごく斬新でもないし、突っ込みたいとこもいろいろあるし。 特に後半は現実と作中作がごちゃごちゃになって進んでいく展開なんですが、最後のほうは「もうどっちでもええんちゃう?』っていう気分になってきて、私はついていけませんでした。 ついていけないというのは、つまり私の想像力が、著者の書こうとしている恐怖に追いついていないということで、要するに、これは好みの問題なのかもです。 私はむしろ、これを読んで、やはり連城三紀彦はすごい作家なのだということを改めて知り、そのほうが収穫でした。 (本文中に、連城作品に関する講釈があります) | ||||
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民俗学的伝奇ホラーと本格との融合で知られる作者のデビュー作。本作を読むと、当初は乱歩風の怪奇幻想味を嗜好していた事が窺える。H.ヘイクラフト「娯楽としての殺人」の名称を自作名として扱ったり、初歩のミステリ論を熱く展開したりと、遊びとも気負いとも取れる試みが微笑ましい。本作の趣向は英国風ゴシック・ホラー、そして一人称と同人誌連載の小説のカットバックで描かれる叙述形式。 <私・三津田信三>は雑誌編集を続けながら、作家としてデビューもしている。発端は、友人からの連絡。<三津田信三>を一人称の主人公とする作品をペンネーム津口と言う者が、ある賞に応募していると言う。住所も本物と同じだが、私には覚えがない。そして、ここから私がある西洋館(人形荘)に住み始める経緯が語られる。それに加え、同人誌に連載する事になった小説(作中作)の内容がカットバックで入る。私の体験と、人形荘をモデルにした作中作から、その館が英国から移築したもので、「忌まわしい」雰囲気を漂わせている事が強調される。「英国幽霊屋敷」本中の具体例も紹介される。作中作では四人家族と言う設定だが、これは上述の具体例の一つと同一。そして、人形荘に"津口"が訪れる。この作中作の意図は何なのか ? 更に、津口から私の元に天井裏に続く秘密の扉の鍵が届く...。そして、私のファンと言う若い女性綾子が登場して人形荘を訪れる。素直に捉えれば「綾子=津口」であり、館の元所有者であると共に幽霊であり、(霊力で)作中作を書かせた、との想像が浮かぶ。正統派幽霊小説なら、こうなる所だが...。 作中作の意図も説明され、ドールハウスを中心とするホラー味との間で融合が図られるが、後年の「...の如き...もの」シリーズと比べると、今一つ冴えない。怪異現象が主に作中作で起こりインパクトが弱い点と、作者の趣味の押し付けが強過ぎる点が原因だろう。 | ||||
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三津田信三のデビュー作「ホラー作家の棲む家」を改題し、 改訂された「完全版」として文庫化されたもの。 まず、なんといっても「忌館」は怖い。 暗闇への畏怖が、見てはならないものへのあくなき好奇が、全体を覆っている。 本の中に本が登場する手腕は、夢野久作「ドグラ・マグラ」を髣髴とさせつつも、 交互に差し込まれる小説の中の小説と、小説の中の現実は、 次第に境界線が失われてゆき、読者は作家の目眩ましに遭う。 それゆえ、ラスト間際の「謎解き」は難解を極めている。 じっくり腰を据えないと先述した「目眩まし」に翻弄されるからだ。 本文後に追記された「跋文」そして「西日」まで完璧な構成になっているが、 これらは決して解題ではなく、謎はより深くなる。そんな点も見逃せない。 また、この小説は作者「三津田信三」の体験記として綴られているため、 本文内には実際に活躍している作家や評論家の実名も出てくる。 しかし、「そうではない作家」の名前もしれっと紛れ込んでいる。 どこからどこまでが虚なのか実なのか。 翻弄されることを楽しむのも、また一興。 それにしても三津田氏は、ほんとうに乱歩が好きなんだなぁと思った。 乱歩が好んで記していた言葉「うつし世は夢 夜の夢こそ真」、 これがこの小説のテーマなのではないだろうか。 吸い込まれるような真っ暗な夜空や、暗闇の茂みが姿を消しつつある現代に、 三津田信三が執拗なまでに表現した「闇」はどこまでもいとおしく、 そして恐れおののくべき存在だと思った。 | ||||
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語り手がミステリ編集者という設定のため、 随所に、ホラー・ミステリの名作についてなどの記述があります。 熱心な読書家ではない私などには、 「次はこれを読んでみたいな」と思わせてくれました。 ストーリー自体は、子供の扱いに目を覆いたくなりましたが、 文章も読みやすく、そこはかとなく品が感じられ、 展開もそれなりに工夫されていて、飽きることはありませんでした。 登場人物の名前(命名理由はありますが)が読みにくく、 そこが気になったりしましたが、ホラー作品では名前に凝るものなのでしょうか? ともあれ、面白く読めて、今後の読書の手引きにもなってくれて、満足の一冊でした。 もう古書でしか入手できないとしたら、もったいないなと思います。 | ||||
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