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二度死んだ女
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二度死んだ女の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.20pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全5件 1~5 1/1ページ
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相変わらず楽しく読めました | ||||
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おそらく、他の人達同様、ペーションの作品は「許されざる者」から、ベックストレーム・シリーズを発刊された順に今作まで読んだ。普通の小説を読んでいて、吹き出したり声を出して笑ったのは、このシリーズだけのような気がする(なので外では読めなかった...一度やったけど、5ページで断念)。シリーズ1作目の「見習い警官殺し」から今作と、例外なく夜中に笑いが止まらなくて大変だった。 でも、いつも内容はしっかりしていて、特に、今作は純粋なミステリーとして非常にしっかりした構成、ある意味正統派の謎解きだと思った。今回スウェーデンで発見された被害者は10年以上前にタイで津波で死んだはず。でも、読者として、署の捜査官同様、当時の状況に妙に違和感を覚える内容...。本当に死んだ?別人?なら、本当は誰?どうやって?何故?それとも今回の被害者はそのことと全く無関係の第三者...?ただ、当時の被害者の夫は現在こちらにいるのだし、実際タイで死んだのが誰であれ、普通ならもっと早く(容疑者としてでなく)一応の聴取をしないのかな?相手が外交官だから慎重になった?あちらはやり方が違うのかな。 あと、毎回チビでデブと馬鹿にされるベックストレームって周りの評価よりずっと優秀だよな、と常々思っていたら、当然それを認識している警察関係者もいた。情報を流して賄賂を受け立ったり私腹を肥やすけど、それでも決定的な尻尾をつかませることなくやってきている(今作では、新たにアパートの隣の部屋も購入し壁をぶち抜いたことが判明。クングスホルメンで2部屋所有してるとは、とんでもない金持ち!)。ベテラン捜査官として勘は鋭いし、全体の状況を素早く読める(自分に有利なものに敏感というだけかも?)。だからなんだかんだと事件解決率がトップで、結果を出すので、まわりは不本意ながらもそれを認めざるを得ない。部下や同僚が優秀なのもあるけど、意外と悪くない上司なんじゃないかとまで思ってしまった。 北欧ミステリは現実社会や世界情勢を反映したものが多く(古くはヘニング・マンケルから?)リアリティーがあって好きなんだけど、それゆえ、悲惨で鬱々とした暗い内容の作品も多い。そんな中、このベックストレームものは北欧ミステリらしい現実性は十分保持しながら、カラカラ笑いながら読めるという、自分には非常にレアな体験で、すっかり気に入ってしまった。作者が高齢なため、これから新作があるかどうかは未定とのこと。あと少しは読みたいなぁ。 | ||||
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北欧ミステリーのジャンルの広さを示すようなベックストレーム四部作の完結編。当初、ガラスの鍵賞を獲得した『許されざる者』でこの作家が気に入ったものの、本書のベックストレーム警部は、腕利きではあるものの酒と美女をこよなく愛するモラルの少し欠如したお笑い系キャラクターである。 ちなみに『許されざる者』はふざけたところなど一切ない心打つ傑作であり、その主人公ヨハンソンのキャラクターは、忘れ難い。しかも同名の名作映画もぼくは好きである。バート・ランカスター&オードリー・ヘップバーンの1960年版の映画は特に。クリント・イーストウッド監督主演の1992年のもの、それを開拓期の北海道を舞台にリメイクした李相日監督の渡辺謙主演版日本映画作品も、それぞれ忘れ難い映画である。ペーションの日本デビュー作品は、それらとは同名にして全く異なるシックな警察小説であった。 しかし本シリーズは、ミステリを主体にした警察小説でありながら、ベックストレームという経験豊富な警部による、実に快楽主義的な生活の日々と、優れた捜査感覚という相いれない二つの特性を持つ主人公を据え、それにも増した個性豊かな捜査スタッフたちによる執念の捜査が実を結んでゆくコミカルかつ熱心な模様が軽妙と重厚をクロスさせてなお面白い。何だか趣味じゃないなあと思いつつも、とうとう全四作読まされてしまったリーダビリティと、小説の核となるミステリ部分が優れているところがこの作家の個性である。 何を隠そうペーションという独自なこの作家は、長年に渡りリアルな捜査畑にいた経験豊富な警察人生の後半より作家デビューした人である。なので捜査のリアリティ、捜査チームの持つ活気のような独特な気配をこの作家は活き活きと描くのだ。 さて本書では、少年が無人島で見つけた古い頭蓋骨を警察署に持ち込むところから始まる。ベックストレームはふざけたなまけ癖のある男でありながら、周囲の人間に好かれるところがあり、少年との交流シーンや、真剣に頭蓋骨の主を捜査しようという姿勢にはとても好感が持てる。頭蓋骨を調べるうちに、タイのプーケットの大津波で犠牲になった女性のものであることがわかる。 プーケットに旅行に出ようとした矢先に津波の情報を得て腰を抜かしていた元の職場の同僚の顔をぼくは想い出した。悲惨な津波による被害者は少なくなく、あの時の犠牲者が北欧ミステリーに登場するなんて思いもよらないことである。でもリアリズムとユーモアを混然とさせるこの老練な元警部であり実績のある作家ペーションの筆でその不思議な頭蓋骨の正体を探ってゆく、本作の骨格は驚くほどしっかりしている。地道な捜査による地味な本で、ベックストレームという特異なキャラを描くための寄り道も多い小説であるが、何となく読まされてしまうのだ。 時にはにやりと苦笑いを交えながら、老練なユーモアと考え抜かれたミステリーという骨子に支えられたこの物語は、ぼくの日常に交錯する奇妙な香辛料のように、印象的に刺さってくるのだった。 | ||||
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大変興味深い北欧ミステリー小説。登場人物のキャラも立っている。 移民問題や東欧系マフィアと警察官の癒着等も生々しい。多分自分が知っている通りそのまま。 ただ、翻訳にクセがあり過ぎる。外国の警察官を「同僚」という日本語にしたり、過去形で語るべきところが現在形だったり、あげればキリがない。 Sが2つのオルソンに対して、オルソンでは無い人物にZが2つのオルソンと言え…ここらへんも海外ミステリーを良く読んでいる自分でも意味不明。そこ、多分原作なら面白いところ、笑えるところ。注釈をつけてもらわなきゃ解らないような翻訳が目立つ。翻訳者自身が理解していなくて兎に角「訳しました」って感じだった。本人が解っていてスルーしたなら翻訳者として最悪だよ。 サラミソーセージに乗るって、エレベーターって、もっと何とかそれとすぐ解る翻訳ができないのか?例えば、サラミソーセージの上に「俺の」ってつけるだけで直ぐにわかるんだが。 | ||||
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「木曜殺人クラブ 二度死んだ男」(リチャード・オスマン)を読んだのは、2022/11月。今回の〈ベックストレーム警部シリーズ〉の新しい翻訳は、「二度死んだ女」(笑)。人は二度死ぬことはない。それが今回の或る意味わかりやすいテーマです。前作「悪い弁護士は死んだ」を読んだのは、2022/3月。何故、ピノキオの鼻は伸びるのか? ストックホルム近郊のメーラレン湖に浮かぶ島で女性の頭蓋骨が発見されます。捜査の進展に伴いその女性は十二年前に発生したタイの津波で亡くなっていたことが判明します。人は二度死ぬことはないという当然の疑問からベックストレーム以下捜査陣がその大きな<Why-Done-It>を解明しようと躍起になります。詳細はじっくりとお読みください。 パズラー部分は、かなり詳細に渡って証拠を見出し、積み上げ、遺漏のないよう配慮されています。但し、「はなれわざ」はなかった。 また、このシリーズはメイン・プロット以外のサイド・ストーリーがキラキラと輝いています。 <ウクライナ戦争>を持ち出すまでもなく、スウェーデンとロシアの関係性の狭間でベックストレームとプーチンが何やら親しげに「握り」を行っているように見えたり、スウェーデンにはかなりの数のタイ人女性が暮らす<理由>が存在していたりと前作同様その物語はスウェーデンを飛び出してスケール・アップしているようにも思えます。 そして、相変わらず<偏見>の塊であり、ほぼ破天荒な(笑)ベックストレームはアニカ・カールソン、ピエテル・ニエミ、ナディア・ヘーグベリら諦めることを知らない優秀な捜査官たちに囲まれながら自分にとって都合が良い陣頭指揮をとりつつ捜査をぶんまわしていきます。そのプラクティカルな考え方と行動には習うべき多くのことが含まれているように思えます。この国のいつまでも昭和を背負ったオヤジたちに欠けているものがベックストレームの姿に現れています。このように生きることもまたそれはそれで素晴らしい(笑)。 いくつかのサイド・ストーリーが最後まで放って置かれています。高齢の作者に勝手に望んでいいのかどうか、それらは次の著作でじっくりと解き明かして欲しいと願います。 □「二度死んだ女 〈ベックストレーム警部シリーズ〉」(レイフ・GW・ペーション 東京創元社) 2023/6/15。 | ||||
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