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わたしたちの怪獣
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わたしたちの怪獣の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.09pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全7件 1~7 1/1ページ
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SF・ホラー・ファンタジーの題材を使って絶望的な状況の中から救済を見出す人間の姿を巧みに描いています。主人公たちの切実な想いに胸を打たれました。美しく読みやすい文章で非常に文学的な作品だと感じます。お気に入りは表題作ですが四つの中編は全て素晴らしく名作映画を観た時のような満足感が得られました。 | ||||
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登場人物たちの閉塞感、焦燥がヒリヒリと伝わってくる。 その上でSFの要素が加えられ、まったく違和感なく読むことができ、その加えたSFの要素により独特の展開や着地点を生み出しています。 あとがきも、センスがあって良いです。 | ||||
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充実の短編集。独特の読み心地があると感じた。だんだん世界観に飲み込まれていき、いずれの短編ももう少しこの世界に浸っていたいと思わせる。ファンタジー要素とSF要素がうまい具合に溶け合っているので、テクニカルタームに頭が痛くなることもない。SFは読み慣れぬという人にもおすすめ。 「わたしたちの怪獣」は表題作に選ばれるだけあり、きりっとしまった不条理譚だ。怪獣だけの話ではない。 「ぴぴぴ・ぴっぴぴ」とてもユニークなタイムトラベルもの。無機的な世界観からこぼれる落ちる人間性に魅力がある。 「夜の安らぎ」世の中に受け入れられないと感じている女子高校生。彼女の妄想が現実を突き破る。 「『アタック・オブ・ザ・キラートマト』を観ながら」小さな映画館に閉じ込められた人びと。まさかのラストに戦慄する。 怪獣とかタイムトラベルとか吸血鬼とかゾンビとかよくあるテーマから異端の旋律が奏でられる。 | ||||
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登場人物のおおくは市井の人々。 特別な力もなく人間関係や環境に悩みを抱えながら日々を暮らしている。 そんな彼ら彼女らに襲いかかる非現実的事象。 大団円やハッピーエンドはない。 それでも、ちいさな希望が残る。 SF・ファンタジーながら リアリティが感じられる作品群です。 | ||||
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「アタック・オブ・ザ・キラートマト」という映画を見たことがあるだろうか。この作品はAmazon videoに幾円か課金することで、自宅のソファに腰掛けながら、楽しむことができる。この作品は全体として脈絡のないコラージュを繋ぎ合わせたような映画なのだが、とりわけ私がお気に入りなのは、FIAの捜査官であるディクスンがキラートマトに襲われるがひょんな理由から九死に一生を得るシーンだ。ディクスンは、急いた胸を落ち着かすために何気なく窓の外を見ると、自分の車が車中荒らしにあっていることに気がつく。彼は急いで駐車場へ戻って、物取りを捕まえようとする。ここで重要なのは、恐怖のキラートマトから奇跡的に逃れた幸運は、次なる脅威によってかき消されてしまうということだ。「トマトから逃げられたんだから、車上荒らしくらい、まあいっか」とはならない。生きているから、生きている限り、次なる脅威に人間は目まぐるしい。そのような様態は「アタック・オブ・ザ・キラートマト」内の人間が必死に生きているから露呈するのである。トマトにしてもディクスンにしても、これが一つのフィクションに過ぎないのだという冷めた態度を持たない。彼らは自分の現実に必死なのだ。車から一つも盗まれないことが何より大切なのだ。だからこそ、そういう人間を見ていると笑いが込み上げてくる。 「アタック・オブ・ザ・キラートマト」を観ながら』の主人公もその一人である。必死に生きたゆえとある事情で拳に傷をこさえた彼は、映画館〈シネマ一文〉に入り「アタック・オブ・ザ・キラートマト」に出会う。彼は他の観客から、「これはB級映画じゃなくて、Z級の映画だから」と教えられ、鑑賞を楽しむが、途中に大きな物音と地震がして、外で何があったと勘付く。街はなんとなぞのミサイル(?)によって、人々はゾンビ化して、その中に二人の子供が取り残されていることを知る。「アタック・オブ・ザ・キラートマト」のファンである観客たちは、子供を助けるかどうか究極の選択を迫られる。救助案を否定する星乃さんのセリフにこんな言葉がある。 「それをいうなら救助がじきにくる可能性だって考えられるわ。早まって行動して、犠牲者を出してしまったところで自衛隊が到着したら『ミスト」の最後みたいになる」 彼女の胸には、これまでのフィクションで得てきた判断がある。フィクションは彼らの現実の役に立たない。「どんなに馬鹿馬鹿しく思える話でも、実際に起こってしまえば誰も笑わなくなる」ように、フィクションに出てくるゾンビ通りの生態を、彼らの現実に発生したゾンビがしているとは限らないのだ。ただ両者状況に共通するのは、どちらも人間たちが究極の選択に必死であるという点だ。必死であるがゆえ、藁でも掴む気持ちで同じ究極の選択がなされるフィクションに縋る。そのとき、フィクションは虚構ではなく、理性になる。 私たちは自分が生きている現実を現実だと信じて疑わない。人生は最後まで俯瞰して見渡すことができないからだ。もしかしたら、私たちの現実こそフィクションかもしれない。でなければこんな苦悩は馬鹿馬鹿しい。同じ不安を抱えているのは、フィクションの登場人物も同じだ。『「アタック・オブ・ザ・キラートマト」を観ながら』の観客たちは結果的に子供たちを助けにいく。フィクションの理性判断を受けながら、一か八かの勇敢な行動にでる。 映画や音楽や小説は現実を変えてはくれない。だが、それらを通った後では、私たちの世界はちょっと元の位置からズレている。故に、以前とは違う思わぬ判断ができるのだ。 | ||||
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ショートよりももう少し長めで読み応えもある4作品。 面白いので一気読みもありですが、私的には読み終わるのがもったいなくて 時間をかけてひと作品毎読んでいきました。 どの作品も冒頭からひきこまれ次はどうなるのかと読み進めていってしまいます。 文章が読みやすいだけではなく、緻密なのか、読んでいるとダイレクトに 自然に頭にイメージが浮かんできます。特に「ぴぴぴ·ぴっぴぴ」は硬質な イメージや無機質感があり印象的でした。 さらっとしてるように見えて中身は意外と濃かったり、ありえないけど ありえるかもと思わせたり、冷徹なのにところどころ温かい視点も見え 隠れしていたり。どの作品も読後感が、嫌な感じがしないのが作者の 個性なのでしょうか。安心して読めました。黒よりは白や薄い黄色の イメージです。 「夜の安らぎ」は続編もありそうな雰囲気で楽しみです。 | ||||
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SFファンに久しく永く語り継がれるだろう作品集。 表題作は魂の救済さえ書ききった至高の怪獣小説でした。 本書は怪獣やタイムマシンや吸血鬼やゾンビの小説集である。非現実的なエンタメSFのガシェットを扱った情景描写を追うだけで楽しい。けれどどの作品中でも最も鮮やかに描かれているのはきわめて現実感のある、個人的な経験や感情である。 みごとな美しい文章。感傷的なのに軽妙で滑稽でもある人間たち。 社畜や経済格差や家庭崩壊といった現代的な問題を背景としながら、その描写は普遍性を獲得している。 本書を読んだ人はずっと遠い未来にも久永実木彦作品を思い出し、心に悲しみと微笑みを呼び起こすだろう。 | ||||
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