■スポンサードリンク
飢餓海峡
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
飢餓海峡の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.41pt |
■スポンサードリンク
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全69件 61~69 4/4ページ
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
いつか読もうと買ってはいたけれど、怖く手に取ることが出来ず、本棚に置きっぱなしにしていた。 触れたくない過去がこの本に詰まっていることは知っていた――敗戦の記憶。 絶対に読みたくなかったのに、手に取ってしまった。 ページを広げ即、引き込まれた。もう、読むしかない。 この本は戦争に負けた後、日本人がどんなふうに生きてきたかを伝えている。 だからわたしたちと無関係な登場人物はひとりもいないし、わたしたちと無関係な事件はひとつもない。 乾いた傷口を無理やり抉じ開けられる痛みに苦しみながら、すでに他界した作者に、よくぞこういう小説を書いてくれたと感謝の言葉を送りたくなる。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
昭和二十二年九月二十日。 猛烈な台風により、青函連絡船「層雲丸」の転覆事故が発生。 多くの乗客が亡くなる大惨事となる。 同日、函館から120kmほど離れた町で強盗放火殺人事件が発生。 質屋の一家が皆殺しに遭う。また、台風の影響で火の勢いは強まり、 町の多くを焼き払うこととなる。 作品はこのような舞台から始まり、そしてさらなる展開を見せていく。 作品を全体を包んでいる雰囲気が素晴らしく、容易に作品に入り込む ことができるだろう。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
『海の牙』と共に水上勉の社会派推理作家としての代表作であると共に、彼が推理作家から脱皮しつつあった頃の作品です。昭和29年に青函連絡船洞爺丸が沈没するという事件が起きました。そして同日に北海道の岩内町で町の三分の二近くが焼ける大火事がありました。ところが洞爺丸のニュースがあまりにも大きかった為に岩内町の火事は殆ど報道されなかったそうです。水上勉はこの出来事を借りて、洞爺丸を層雲丸、岩内町を岩幌町と改名して、実際には失火だった火事を放火に置き換え、放火犯が逃走途中で仲間割れを起こして殺し合い、死体を層雲丸の沈没でごった返す津軽海峡に投げ捨てて、沈没の被害者のように装うという犯罪を考え出しました。更に、舞台を戦後の混乱期である昭和22年に遡らせたことがミソとなっています。 同様に洞爺丸沈没を素材にした推理小説に中井英夫の『虚無への供物』がありますが、両者の作風があまりにかけ離れているので、洞爺丸沈没に興味を持って両書を手にした人は戸惑うことでしょう。ある出来事に人間がどのように想像力をかき立てられるかは正に千差万別なのですね。ところで、私の読み落としかも知れませんが、本書にはひとつ活かされずに終わる伏線があるような気がします。時子のところを尋ねてきた謎の人物は結局誰だったのでしょう? | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
「興味は謎解きにはなかった、この主人公たちが如何にして生きていくかにあった」と作者も述べているように、出だしは推理小説であり、しかし読者に犯人探しをさせるのではなく、時代を生き抜く人々の姿を描いている人間小説でもあり、その当時の記録小説のようでもありと、何々小説という括りをすることがとても難しい作品です。小説の中では、東北の極貧の農村で生まれた女の生き様が詳細に描かれています。しかし、貧しい村はその村だけではない、日本中のいたるところに貧しい村があった。そして、そんな村で生まれ、生き抜くことが如何に過酷であったかを切々と書き上げています。最後に作者が「古き時代のことを書くのが難しくなった」という一言がとても印象的でした。この作品が、改訂決定版として、新たに世に出てきてくれ、読むことができたとこをとても幸運に思います。素晴らしい作品でした。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
「興味は謎解きにはなかった、この主人公たちが如何にして生きていくかにあった」と作者も述べているように、出だしは推理小説であり、しかし読者に犯人探しをさせるのではなく、時代を生き抜く人々の姿を描いている人間小説でもあり、その当時の記録小説のようでもありと、何々小説という括りをすることがとても難しい作品です。 小説の中では、東北の極貧の農村で生まれた女の生き様が詳細に描かれています。しかし、貧しい村はその村だけではない、日本中のいたるところに貧しい村があった。そして、そんな村で生まれ、生き抜くことが如何に過酷であったかを切々と書き上げています。 最後に作者が「古き時代のことを書くのが難しくなった」という一言がとても印象的でした。 この作品が、改訂決定版として、新たに世に出てきてくれ、読むことができたとこをとても幸運に思います。素晴らしい作品でした。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
前々からこの作品には興味をもっていたが、上下それぞれ400ページという長編だけに、長い間購入をためらっていった。 物語は、青函連絡線転覆事故と北海道の大火災とに端を発している。この二つの事件に絡んで、二人の人間が逃避行を行う。スリルに満ちあふれ、上巻の最後まで一気に読めた。下巻の展開が楽しみだ。 わたしのように、読もうかどうしようかと二の足を踏んでいる方、是非読んでみてください | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
青函連絡船が転覆したその日、道内で大火が起きる。2つの事件の接点に事件が生まれる。最初は多少なりとも推理小説という趣きもあるが、途中で犯人が明らかにされた後は、犯人が犯罪を犯した社会的背景を戦後の貧しい日本の姿を丁寧に描きながら進んでいく。大きな仕掛けだけでなく、小物にも心が配られており、安心して読み進められる作品だと推薦したい。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
警察の捜査によって物語が語られているので、推理小説のようなイメージを持ち易いが、水上氏が伝えたかったのは事件の真相そのものではないことが読み終えたときにわかる。早々に明かされる事件の大筋に、残りのページ数とひき比べて、どのように決着をつけるのだろうか?と首をひねりながらも一気に読んだ。水上氏は、あとがきで、発表当時「推理小説」としては不手際とされたこの語り口による本作を「人間小説」と呼んでいる。そして、奇抜なトリックを駆使して約束事に縛られて書く推理小説に、ある種の空しさを感じていたことも告白している。推理小説を読むことを楽しみ、自ら発表しながらも「どこかからふいてくる空しさ」にがまんならなかったと。改めてこの作品を噛み締めてみたとき、「救済」という言葉が浮かんだ。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
ミステリ仕立ての社会小説です。社会派ミステリーというジャンルがあった時代がありました。(まだあるか)主人公は二人です。天下の罪人?それとも悲劇の人の樽見京一郎と心やさしい酌婦の杉戸八重です。その二人の生きていく道のりに刑事たちが絡みます。ながーい時間スケールの中で進む物語で,上巻は八重の,下巻は樽見の人生が綴られています。丁寧に丁寧に二人の人生があらわされていて,いい意味で道徳を感じさせられる本です。はまる展開に一息に読めます。 | ||||
| ||||
|
■スポンサードリンク
|
|
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!