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真・慶安太平記



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【この小説が収録されている参考書籍】
真・慶安太平記
真・慶安太平記 (講談社文庫)

真・慶安太平記の評価: 4.17/5点 レビュー 6件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.17pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全5件 1~5 1/1ページ
No.5:
(5pt)

人徳者と言われる保科正之を知恵伊豆・松平伊豆守が裏側から見た話。おもしろかった。

この本を読んでみようと思った動機は、保科正之の登場する小説だからだが、その彼と由井正雪とが同じ舞台で描かれていたからである。何故に保科正之と由井正雪ごときが(私の気持ちの中では、由井正雪を高く評価していなかったので、「ごとき」と言った)一緒の舞台に上がるのだろうと思っていた。その理由は、読んでみて、なるほどこういう説もあるのかとは思ったものの、納得したわけではない。私がこの小説で新味を味わったのは、徳川幕府側から見た保科正之の評価であった。

 この小説の主人公は、保科正之ではあるが、同時に、知恵伊豆と呼ばれた老中・松平伊豆守信綱である。その二人の丁々発止がおもしろい。松平伊豆守は権謀術数に長けた人として書かれているが、一方で、人徳者の誉高い保科正之のことを、裏側から見ている松平伊豆守の見方が面白かった。
真・慶安太平記Amazon書評・レビュー:真・慶安太平記より
4065249988
No.4:
(4pt)

どうせならもっと長編で味わいたかった。

なるほど、そういうカラクリというかネタというか・・・
どうりで由比正雪の主眼が少なかった訳ですね(笑)

幕末転覆を企んだとしてその名を知ってはいましたが、なるほど、これならストンと腑に落ちます。ただの売名者でなく相当の人物であったからだと。

これを気に他の先生方の由比正雪も読んでみたくなりました♪ただ曲がりなりにも“太平記”とネーミングするんであれば、前後版2冊分ぐらいの厚みで・・・もっと濃厚な仕上りのを読みたかったなあ〜って思ったりもしましたよ↑
真・慶安太平記Amazon書評・レビュー:真・慶安太平記より
4065249988
No.3:
(4pt)

慶安太平記に時代の幕府の政権事情・斬新な解釈

慶安太平記に主人公-由比正雪に光を当てるよりも、当時の幕府の政権の勢力図に焦点を当て、
事件の真相にも大胆な推理を働かせていて、興味がそそられる。
真・慶安太平記Amazon書評・レビュー:真・慶安太平記より
4065249988
No.2:
(5pt)

まるで江戸城にいて見ているよう

大風呂敷を広げてこの分量で終わるのか何度も残りのページ数を確かめながら読んだ。読み終わるのが惜しかったです。3巻で行ける内容。
真・慶安太平記Amazon書評・レビュー:真・慶安太平記より
4065249988
No.1:
(5pt)

今年読んだ歴史小説のなかで白眉。徳川家光、保科正之、松平信綱、春日局らの群像を描き、由比正雪の乱(慶安の変)の顛末を語る

この本は、全くのノーマークで(かの有名な「ホワイトアウト」の作者が歴史小説を書いているとは全く知らなかった)、職場の近くの書店でたまたま手に取り、立ち読みした最初の数頁が面白くて購入した。今年読んだ歴史小説(と言っても、そんなに数は多くはない)のなかで白眉であった。本との偶然の出会いという幸せに満たされた。素晴らしい作品である。

物語は、徳川秀忠から家光に将軍職が移行しているが、秀忠が大御所としてまだ君臨している時期から始まる。徳川家が天下統一を成し遂げたとは言え、将軍の権力基盤はまだまだ脆弱であり、特に兄弟や御三家は将軍の地位を虎視眈々と狙っている。家光は病弱で性格も陰湿である一方、弟の忠長は機知に富み、文武両道に優れていて、家光や彼の乳母の春日局にとっては、将軍の座を脅かす非常に危険な存在である。そして、家光には、もう一人異母弟がいて、それが保科正之である。

正之(幼名は幸松)は、秀忠と静の間にできた子であったが、正室の江から目の敵にされ、秀忠の乳母の配慮で大奥を退き、高遠の保科家に預けられ、藩主の保科正光の養子となった。そして、保科正光と家臣たちは、譜代名門の地位を得ようと、幸松が秀忠の子であることを正式に認めてもらおうと運動する。しかし、大御所である秀忠への目通りは叶わない。ただ将軍の家光との目通りは果たし、そして忠長へも会うことが許される。その忠長から、幸松は、妬心を買わないよう、己を戒め、家臣を抑えるよう、忠告される。

やがて、秀忠が病に倒れるが、「忠長の不行跡が、秀忠の病を引き起こしたのだ」とでっち上げられて、家光の最大のライバルである忠長は、勘当、さらには配流され、殺害される。一方、正之は、養父の死により藩主となる。また、実の父である秀忠も亡くなる。結局、正之は秀忠との面会かなわず、親子の名乗りをあげられなかったが、家光は、正之を家門の一人(実の弟)として認め、高位に昇進させ、高遠藩三万石から出羽山形藩二十万石へ加増、さらには会津藩二十三万石に転封させる。正之は、忠長の忠告に従い、絶えず謙虚にいて、これが家光の信頼を勝ち得ることとなった。しかし、家光の側近、松平信綱は、正之の存在を快く思っておらず、正之を貶める隙がないかを常に窺っていた。正之は、情報戦に無関心だったわけではなく、配下の忍びを駆使して対応する(この幕閣内の情報戦の描き方が、実に見事である)。

家光は、子供がいない大名の改易を厳しく行なった。また、末期養子も認めなかった。このため、改易を受けた大名の家臣が大量の牢人となって江戸に流入し、そのことが江戸の治安を悪化させていた。そして、そうした世相のなかで、家光が亡くなり、将軍職を継いだのは、まだ幼い家綱である。その家綱の後見人として正之は力を持ち始めるが、これを松平信綱は看過できない。折しも、家光が亡くなった機に乗じて、由比正雪という兵法者が、牢人たちを糾合して謀叛を起こそうとする。松平信綱は、この謀叛を利用して、正之の力を失墜させようとする。

あらすじは以上のようなところだが、いやいや、これでは、この小説の魅力をうまく書けていない。まず、私のあらすじは保科正之を中心に書いたが、この小説は、徳川家光、保科正之、松平信綱、春日局らの一人一人を実にきめ細かく、リアルに造形し、群像劇として進んでいく。冷酷な家光も、謙譲の美徳を発揮しつつ強かな正之も、「才あれど、徳なし」とされた松平信綱の権力欲も、春日局の執着と保身と打算も、見事に描き切っている。作者の人間に対する洞察力に脱帽するしかない。

そして、そのうえで、ストーリーの展開が鮮やかで、ミステリー的な要素も織り込んで淀みなく、感服させられる。また、徳川将軍家の力が脆弱なこの時代の雰囲気を、御三家の力の強さ、島原の乱、牢人たちの実像から、実によく描いている。さらに、自らの権力基盤の維持ばかりに目を向け、情報戦ばかりに勤しみ、領民の幸せを考えない為政者のあり方を描き、権力というものに対する深い洞察にもなっている。ほかにも書くべき魅力はたくさんあるのだろうが、私には書ききれない。兎に角、物語の面白さの余韻にまだ浸りきっているのである。評価は「最優秀の作品」の☆5つとしたが、☆5つ以上の価値があった。これは私の書いた33番目のレビューである。2021年11月12日読了。
真・慶安太平記Amazon書評・レビュー:真・慶安太平記より
4065249988

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