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三日間の隔絶
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三日間の隔絶の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.71pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全7件 1~7 1/1ページ
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グレーンス警部と潜入捜査員ピートとのW主人公シリーズは当初三部作のはずだった、と思う。三秒間、三分間、三時間で終了するはずだったこのシリーズは、さらに三日間、三年間と続くようで、今回は四作目の「三日間」の物語だ。何はともあれ、作者も多くの読者同様、このダブル主人公シリーズを終えるに忍びない状況となっているに違いない。 迷惑なのは、長年潜入捜査を強いられているピート・ホフマンとその家族だろう。これまでいくつもの死地を潜り抜け、その都度、肉体的・精神的な負担を異常にかけられてきたピートと、そのとばっちりを受けっぱなしの家族に、いい加減平和と幸福をもたらしてほしい気持ちは読者心理の中でも上昇を続けんばかりなのである。 しかし、やはり飛びついてしまう。やはり続編が有難いのだ。ホフマン家には申し訳ないが、またしても息を飲むようなピンチとそこからの脱出を試みて頂きたいのだ。本当に申し訳ないことなのだが。 それはそれとしてグレーンス警部はそもそもが単独シリーズ主人公でもある。この極めて個性的で癖のある、全然格好良くない上、私邸にも帰らず警察署の私室で寝泊まりしているというワーカホリック。頑固で変化を拒まず、年下の上司にも扱いづらく思われている我らがヒーロー。そのグレーンス警部も定年退職まで残すところ一年を切っている状況。 さらに今回の事件はグレーンス警部の心に巣食っている未解決事件の一つに端を発する。17年前、4人の家族が銃殺され、5歳の誕生日を迎えたばかりの少女が死体の遺された部屋で三日間取り残されていた。異常かつ過酷すぎる事件である。当初、ぼくはこの過去の三日間が、タイトルのそれなのかと思っていたが、タイトルの三日間はしっかりと現在のホフマンに対し約束通り与えられることになるのでご安心を。分刻みの時計がネジを巻かれる例の場面はこのシリーズの最大の楽しみである。それでも少女の三日間にも何らかの意味があるかどうか。それはそれで読んでみてのお楽しみ。 犯罪組織の標的となった者たち。彼らが守られる、あるいは彼ら自身で自分たちを守る手段とは、一体何なのだろう。潜入捜査官であるピートは、職務の都度、別の人間になり替わって、犯罪組織の壊滅に貢献してきた人間である。絶対にその正体を知られてはいけない存在。 本書では犯罪者側にピート・ホフマンの正体と家族の情報が漏洩してしまう。家族を隠そうと翻弄するピートばかりか家族情報までが、まるで彼らを翻弄するかのように洩れてゆく。これまでになかった絶体絶命の危機を招いている原因は何なのだろうか? 警察機関内部の敵を疑わざるを得ないという、これ以上ない緊迫した状況のなかで本書は進行する。絶え間ない緊張と、その重圧。 グレーンスの過去の事件の上に、ホフマン一家が現在捉えられている危機とがどう交錯するのかわからないまま、物語はそれぞれに二つの重戦車の如く進んでゆき、思いがけぬラストに繋がる。いつものストーリーテリングが何よりも素晴らしく、その語り口が凝りに凝った仕掛けを支え続けている。タイムリミット型エンターテインメントであると同時に、17年前の家族斬殺事件の意味も明らかになってゆくだろう。 しかし、どのように? この終始クリフハンガー的状況を、けれん味たっぷりに描く唯一無二の語り口。是非とも手に取って味わって頂きたいと思う。 | ||||
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グレーンス警部と潜入捜査員ピートとのW主人公シリーズは当初三部作のはずだった、と思う。三秒間、三分間、三時間で終了するはずだったこのシリーズは、さらに三日間、三年間と続くようで、今回は四作目の「三日間」の物語だ。何はともあれ、作者も多くの読者同様、このダブル主人公シリーズを終えるに忍びない状況となっているに違いない。 迷惑なのは、長年潜入捜査を強いられているピート・ホフマンとその家族だろう。これまでいくつもの死地を潜り抜け、その都度、肉体的・精神的な負担を異常にかけられてきたピートと、そのとばっちりを受けっぱなしの家族に、いい加減平和と幸福をもたらしてほしい気持ちは読者心理の中でも上昇を続けんばかりなのである。 しかし、やはり飛びついてしまう。やはり続編が有難いのだ。ホフマン家には申し訳ないが、またしても息を飲むようなピンチとそこからの脱出を試みて頂きたいのだ。本当に申し訳ないことなのだが。 それはそれとしてグレーンス警部はそもそもが単独シリーズ主人公でもある。この極めて個性的で癖のある、全然格好良くない上、私邸にも帰らず警察署の私室で寝泊まりしているというワーカホリック。頑固で変化を拒まず、年下の上司にも扱いづらく思われている我らがヒーロー。そのグレーンス警部も定年退職まで残すところ一年を切っている状況。 さらに今回の事件はグレーンス警部の心に巣食っている未解決事件の一つに端を発する。17年前、4人の家族が銃殺され、5歳の誕生日を迎えたばかりの少女が死体の遺された部屋で三日間取り残されていた。異常かつ過酷すぎる事件である。当初、ぼくはこの過去の三日間が、タイトルのそれなのかと思っていたが、タイトルの三日間はしっかりと現在のホフマンに対し約束通り与えられることになるのでご安心を。分刻みの時計がネジを巻かれる例の場面はこのシリーズの最大の楽しみである。それでも少女の三日間にも何らかの意味があるかどうか。それはそれで読んでみてのお楽しみ。 犯罪組織の標的となった者たち。彼らが守られる、あるいは彼ら自身で自分たちを守る手段とは、一体何なのだろう。潜入捜査官であるピートは、職務の都度、別の人間になり替わって、犯罪組織の壊滅に貢献してきた人間である。絶対にその正体を知られてはいけない存在。 本書では犯罪者側にピート・ホフマンの正体と家族の情報が漏洩してしまう。家族を隠そうと翻弄するピートばかりか家族情報までが、まるで彼らを翻弄するかのように洩れてゆく。これまでになかった絶体絶命の危機を招いている原因は何なのだろうか? 警察機関内部の敵を疑わざるを得ないという、これ以上ない緊迫した状況のなかで本書は進行する。絶え間ない緊張と、その重圧。 グレーンスの過去の事件の上に、ホフマン一家が現在捉えられている危機とがどう交錯するのかわからないまま、物語はそれぞれに二つの重戦車の如く進んでゆき、思いがけぬラストに繋がる。いつものストーリーテリングが何よりも素晴らしく、その語り口が凝りに凝った仕掛けを支え続けている。タイムリミット型エンターテインメントであると同時に、17年前の家族斬殺事件の意味も明らかになってゆくだろう。 しかし、どのように? この終始クリフハンガー的状況を、けれん味たっぷりに描く唯一無二の語り口。是非とも手に取って味わって頂きたいと思う。 | ||||
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「迫りくるタイムリミット」「人質に取られた家族」「17年前の一家惨殺事件とのつながり」「そこでたったひとり生き残った少女のゆくえ」「アルバニアの銃密輸組織」「警察組織に潜む裏切り者」「信じられるのは自分と老刑事だけ」「幼いながら賢い息子」「驚愕の真犯人」などありとあらゆる要素が破綻なく埋め込まれています。 この著者のシリーズNo.1であると同時に2022年上半期冒険小説No.1でもありました。 細かくてすみません。「刑事の『直観』」が繰り返されますが、やはり「直感」だと思います。 | ||||
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三秒間と並ぶ、もしくは超える傑作だと思います。 ホフマンの子どもたちの成長が地味に嬉しいポイント。 | ||||
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「三秒」「三分」「三時間」とくれば「三日」と続く北欧アクションシリーズの王道です。家族を惨殺されてたったひとりだけ残されてしまった五歳の女の子。それから15年以上たった現在、まったく同じ手口で殺された暗黒街の関係者たち。そして、刑務所、麻薬組織、人身売買とつねに死と隣り合わせの潜入捜査を続けてきた主人公はようやく家族との平穏な暮らしを手に入れたが、どこかに寂しさもあり「アドレナリン」の吹き出すような展開を期待している、という背景です。 そこに主人公を脅迫するネタが次々と送られてくるが、どうしても過去の事情が警察から漏らされているとしか思えず、また偏屈な警部と主人公がタッグを組んで先制攻撃を開始します。ここまでがおよそ前編でもう後編までイッキ読みの予感となりました。 | ||||
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<グレーンス警部>シリーズ9作目だが、本書単独でも問題ない(実際私はシリーズの中で4作目『地下道の少女』しか読んでいない)。 17年前、ある一家が惨殺され、一人生き残った5歳の少女をグレーンス警部は保護した。事件は未解決のまま時は過ぎる。今回、その現場となったアパートに家宅侵入事件が起こるのだが、グレーンスは17年前の事件に関する資料が警察署内から盗まれていることに気づく。さらに、当時容疑者とされた男やその仲間が、17年前と同じ手口で殺される事件が続発する。 一方、穏やかに過ごしていた元潜入捜査員(警察に雇われていた)ホフマンに脅迫文が届くようになるが、そこには一部の警察しか知りえない情報が含まれていた。 グレーンスとホフマンはいずれも警察内部に犯人がいると疑う。果たして繋がりがあるのか、同一人物なのか―――? 読みやすく、すいすい進む文章、全く退屈しない内容。 下巻ラスト60ページで驚愕! 常々北欧小説はハイレベルだと思っていたが、さらにその思いが深まった。 『地下道の少女』もすごい内容だった。だが、そこでのグレーンス警部は暗く魅力を感じなかったのだが、本作で見直した。既に64歳で退職まであと半年。超ベテランで達観したムードを漂わせていることと、子供や後輩に対するやさしさや寛容さがあること、彼のこれまでの経緯や人となりをシリーズ既読2作目で私がようやく理解できたためだろう。 とにかく優れた作品の一言に尽きる。とてもよかった。 アンデシュ・ルースルンドの未読の著書を、遡って読む楽しみが増えてしまった…。 | ||||
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ロシアによるウクライナへの侵攻。フィンランドとスウェーデンによるNATO加盟申請とそれに関連する報道が、このダイナミックなスリラーに背面からリアリティを与えています。 「三時間の導線」(2021/4月)に続くグレーンス警部シリーズの新しい翻訳「三日間の隔絶 上・下」(アンデシュ・ルースルンド 早川書房)を読み終えました。特に、下巻は巻置く能わずの展開が待っていました。決して読書から隔絶されることのない三日間(笑)。 主要な舞台は、勿論、スウェーデン、ストックホルム。あと半年で引退間際の警部、グレーンス。17年前に或るアパートで起きた一家四人惨殺事件。その事件では、5歳の少女、ザナが生き残り、その少女を保護したのがグレーンスでした。そして、時が経ち、その現場アパートで不法侵入事件が発生。かつてグレーンスは、その少女に危害が及ぶのを憂慮し、そのアパートで何かが起きたらグレーンスに知らせるようメモを残していました。 そのことを端緒にして、17年前に射殺された男に関係した武器密輸組織の関係者がその同じ手口で次々殺害されていきます。一方、かつての潜入捜査官、ピート・ホフマンはまっとうな職業に就き、妻・ソフィアと三人の子供と共に平穏な日々を送っていましたが、厳重に秘匿されていたはずの潜入捜査ファイルが盗まれ、何者かによってそれをネタに脅迫される<渦中>に立たされます。果たして脅迫者の意図は?ファイルを盗んだ犯人は、グレーンスがよく知る警察関係者の中にいるのか?グレーンスはピートのために「潜入捜査」を行い、ピートはグレーンスのために「潜入捜査」に駆り出されることになります。お互いの事件には、深い関係があるのかどうか? スウェーデンにおける武器売買という共通点、海外の武器市場を乗っ取る鍵は何なのか?誰が惨殺事件を引き起こしたのか、誰が潜入捜査ファイルを盗んだのか?グレーンスは警察内部(スヴェン、ヘルマンソン)を疑い、疑心暗鬼に囚われ、「他人と自分、どっちかを選ぶとしたら、俺は他人より自分が大事だから、自分を選ぶ」(p.291)ピートは、「特捜部Q―アサドの祈り」のアサド同様、愛する家族を守るべく必死の攻防を繰り広げます。Navy SEALsのスローガン、"The only easyday was yesterday"を思わせながら。 歓びの陰で主張される悲しみ、憎悪を超えたところで蟠る心の揺らぎ、意外なストーリー展開と叙情を叙事する見事な結末。 これまでのシリーズ中、最高傑作だと言えるでしょう。 | ||||
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