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リプリー(太陽がいっぱい)



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【この小説が収録されている参考書籍】
太陽がいっぱい (河出文庫)
リプリー (河出文庫)

リプリー(太陽がいっぱい)の評価: 4.69/5点 レビュー 26件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.69pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全26件 1~20 1/2ページ
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No.26:
(5pt)

ハイスミスにしか書けない異色の感じのサスペンス

富豪から息子を呼び戻してもらいたいという依頼を受けた主人公が・・・というお話。

名前が有名なので、話は知らないけど、題名は知っているという方が多いであろう作品。私も大分前に読んだ記憶がありますが、中身はあんまり覚えていない感じで読みました。

読んだ感想としては、有名なので書いてしまいますが、勧善懲悪で終わらない所がやはり印象に残りました。決して成功者とは言えない主人公ですが、犯罪を犯しても罰せられないで終わる所は、やはりインパクトがありました。

中身も、主人公の精神的葛藤に焦点を合わせて、苦悩しながら生活し、何とか逃げ切るというサスペンスとしても、良く出来ている作品だと思いました。

この後、主人公がシリーズのキャラクターになるという事で、そちらも楽しみにしております。

ハイスミスの作品は90年代に今まで未訳だった物が急に色々翻訳された際に買いましたが、作品によっては、いまいち食い足りないと感じた物もありましたが、今作は映画になったりして有名なのもありますが、やはり、ハイスミスにしか書けない、異色のサスペンスとして面白かったです。

最近になって、短篇集が映画に使われた性か、急に売れたりしたみたいですが、この人の作品は時代や社会と関係なく面白い物が多いと思います。

ハイスミスにしか書けない異色の感じのサスペンス。是非御一読を。
太陽がいっぱい (河出文庫)Amazon書評・レビュー:太陽がいっぱい (河出文庫)より
4309461255
No.25:
(5pt)

主人公の心のうちを覗きながら、読者もハラハラさせられる心理サスペンス。

子供のころに、ちょっとした嘘をついて、バレないように嘘の上塗り、どんどん窮地に追いつめられて・・・なんて経験ありませんか?プチリプリー状態。そんなことも思い出させる、面白いサスペンス小説です。なりすまし、嘘がバレるんじゃないか、というスリリングな状況の主人公トム・リプリーの心のうちを覗きながら、読者もハラハラさせられる心理サスペンス。全編が、そんな感じです。これは、まずいと思ったら、思わぬ良い方向に転んだり・・・その逆も・・・。このアップダウンする、心の動きが微細に描かれている。それもパトリシア・ハイスミスならではの、毒を含んだような、ずるがしこいような心の動きが。主人公トムのキャラは、そんなに好感度は高くないのですが、読んでいて、どこか共鳴するところがあるようにも思えて、憎めないような、不思議な魅力を感じる。対人関係で、つい、人におもねってしまったり、取り入ってしまうような人間の弱さを感じさせるからなのか。そういう自分の弱さを自覚させられるからなのか?。自分の子供のころの嘘は、隠し通せず、ごめんなさいとなって、完全犯罪?不成立でした。トム・リプリーは、いかに!?

 この本のタイトル(邦題)は、映画化作品「太陽がいっぱい」の原作として紹介されたことからつけられている。原題は、The Talented Mr Ripley。映画を知らない若い人には、原題のほうがしっくりくるかもしれない。ただ、映画は大名作なので、是非、ご覧になることをお薦めします。リプリーの性格が、だいぶ違うように思うが、脚本が、話の運びが実に巧いし、映像的にも優れている。アラン・ドロンの名演、モーリス・ロネ、マリー・ラフォレも魅力的。甘美なニーノ・ロータの音楽。ラストの鮮やかな幕切れ。ルネ・クレマン監督の傑作です。原作と比較してみるのも、面白いと思います。映画は、パトリシア・ハイスミス色を巧みに排しているといえるかも。リプリーのゲイっぽさや、マージがリプリーの目をとおして(ハイスミスの意地悪な目線で)だらしなく映ったりする感じが、映画には無い。モンジベロの街も、原作だともっと寂れた印象だが、映画だとなかなかに魅力的。ここらあたりは、映像の力でしょうか。アンソニー・ミンゲラ監督がリメイクした「リプリー」は、公開時に映画館で観たが、ヴェニスのどんよりした風景くらいしか覚えていない。こちらは、原作に忠実だったような気がするが、何か印象が薄い。もう一度、観てみたい。
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No.24:
(5pt)

掘り出し物

安い値段で 面白かったので
買って良かった
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4309461255
No.23:
(4pt)

「憧れ」という単語を使わずに憧れを描く作品

暗い、といったレビューもありますが、主人公のトムが得ることのできなかった「経済的に豊かな両親」「その両親からの愛」、そして「経済的に豊かな両親から愛を受けて育ち、才能を磨く必要などない青年」への憧れと、「ここでなら自分は新しい人生を始められる」と錯覚してしまうほど美しいヨーロッパの観光地への憧れを「憧れ」という単語は一切使わずに表現している作品だと感じます。
破滅の予感と、そこから目を逸らすように作品中できらめく憧れとを堪能できる良いサスペンス小説で、作者の他作品も読みたくなりました。
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No.22:
(3pt)

私利私欲と自己正当化。

自らの境遇を呪いながらも、改善するための努力をせず犯罪行為で糊口をしのいでいたトム・リプリー。
そんな小物感満載の彼が、とある人物をヨーロッパからアメリカへと帰国させるため、説得に向かうことで物語は大きく動き出していく。

アメリカでの自らの生活に辟易し、嫌悪していたリプリー。
しかし、ヨーロッパでなら理想とする生活をやり直せるはずだと夢見る彼に、思わず呆れてしまう。
環境が変わろうと、怠惰で都合の良い解釈ばかりを繰り返す彼が理想の生活を送ることなど無理に違いないと。

そんな無謀な夢を胸に抱いた彼が犯罪行為に手を染め、理想の生活を送ると同時に、その犯罪がバレないように苦心し葛藤する心理描写が本作の核となっている。
先述したように、人間としての魅力が乏しいリプリーだが、物語が進むにつれ犯罪がバレないようハラハラしている自らが居ることに気づいた。
いつの間にかリプリーに感情移入してしまっていたのだ。
彼に同情する余地はないし、自らの欲求を満たすために犯罪行為に及んだ彼が悪いのだが、それでも犯罪行為がバレそうになるシーンでは思わず息が止まる。
著者の卓越した心理描写や、状況描写のなせる技を是非とも堪能してほしい。
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No.21:
(5pt)

映画より面白い

この女流作家の頭脳の緻密さ、ストーリー発想の複雑さはアガサクリスティに劣らない。
映画では逮捕される主人公はハッピーエンドで終わり。
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4309461255
No.20:
(5pt)

マティーニと太陽がいっぱい

デュワーズのスコッチ・アンド・ソーダにはじまり、ブラディ・メリー、ギルビーのマティーニ、アペリチフ、メドック・ワイン、キャンティ、フェルネ・ブランカ、ブランデー・ソーダ、ペルノーなどなど数々のお酒が登場します。こんなに呑んで主人公は理路整然と犯罪隠蔽をよくも成し遂げられるなと感心しながら読みました。

後半、主人公がパーティでマティーニを飲みながら実現するかわからない夏のギリシャへの船旅を想像する場面で、「太陽がいっぱいだ!」と思いを馳せます(原書では「full of sunshine!」)。アランドロンの映画版の題はここからきたのだろうか。
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4309461255
No.19:
(5pt)

他の作品も読んでみたい

アラン・ドロンの「太陽がいっぱい」が大好きで原作も読んでみようと思い購入。
原作があって映画になったものはたいてい原作を超えることはないような気がします。
「太陽がいっぱい」は映画として大変よくできていると思います。
しかし原作者が女性とは…強面の男性かと思ってしまいますが。
パトリシア・ハイスミスさんの写真を見るといい顔をしてますね。目つきがいい。ちょっと影がある感じがいかにもです。
他にも作品があるので読んでみたいと思います。
残念ながら故人なんですね。
他にも映画になった作品もいくつかあります。
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4309461255
No.18:
(4pt)

これは、やられた。

てっきり、ドロンの出世作の、例の映画版と同じラストと勝手に想像していたが、最後まで逃げ切るとは予想外。まあ、続編があるので、捕まるのも変だと思っていたが、あれあれとしている間に終った。
リプリーが、ヨーロッパを旅行する旅行記として読んでもいいかも。なりすまし詐欺の元祖みたいなリプリーだけれども、普通は声や身振りや仕草で、本人かどうか見破れるんじゃないかと思うが。リプリーは、天才的な変装の名人なのかな。続編の贋作も読んでみようかな。
天才的な変装のめいじんなのかな。
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4309461255
No.17:
(3pt)

最初に読むpatの作品ではありません。

特に好きというのではないのですが、時々無性に読みたくなるのが彼女の作品です。映画の世界もそうなのでしょうか、忘れた頃に知らなかった作品が映画化されるのです。そのタイミングで、もしくは、おかげで、作品が読みたくなるのです。今回は幻の作品ともいうべき「carol「です。
あまたある作品の中でもいわくつきの作品です。彼女のいくつかある伝記Beautiful Shadow: A Life of Patricia Highsmith: (reissued) Bloomsbury Lives of Women やThe Talented Miss Highsmith: The Secret Life and Serious Art of Patricia Highsmithの中でもこの作品は独特の取り上げ方をされています。そこでは彼女の実際の軌跡と絡めてその中身が深く渉猟されているのです。ただどういうわけか私自身は手が伸びなかったというのが正直なところです。
今回初めて読みましたが、導入部がいいな。begdorf goodmanを思わせる?ニューヨークのデパートの社員食堂の昼食のシーンがそのオープニングのシーンなのです。いやーなかなかリアリティがあり僕にとっても何か昔を思い起こさせる情景です。劇のセットのデザイン{?)を手掛ける駆け出しの主人公の女性は、おそらくクリスマス商戦のためパートでshop girl/assistant(?)として雇われたのですが、忙しいながらも平凡で残酷なデパートの日常の中でのさりげない遭遇からに一つの大きなchance encounterに直面するのです。そこで引き起こされたさざ波がその後の展開のきっかけとなります。それぞれのユニークな男女関係の事情を抱えた二人の女性の関係はクリスマスの前後を挟んで大きな展開を遂げるのです。その後はアメリカの映画や文学のひとつのパターンなのでしょうか、全米をまたにかけるロードトリップまで巻き込んで、二人の舞台は広がります。ただある一つの些細なことがきっかけで舞台はまたニューヨークへと戻ることになります。
はたしてこのロードトリップが作品の展開の中でどの程度うまく機能しているかは疑問です。また二人を取り囲む形で登場する複数の男女もどうもその存在感とプロットの上での必要性が希薄です。でも素晴らしいのはこの作品を締めくくる最後のシーンです。このシーンまで辿りつく数時間のニューヨークのいくつかのsocailシーンの情景は実に生き生きとしており、そして最後のカタルシスへと続くわけです。突き放していってしまえば、この程度の展開と大上段で50年代前半のアメリカの女性たちは大きな満足感を得たのです。そういう意味では、この作品はもはや消え去ってしまいその香りさえ遠くに消え去ってしまったベトナム戦争前のアメリカの社会の描写なのでしょう。でもここにはおそらく著者の若かりし肖像がしっかりとうかがえるのです。
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430946193X
No.16:
(5pt)

kindleではこれが二冊目の本の購入です。

映画を知り本を読みたくて購入しました、物語の進み方が映画の進展の仕方と似ていたので、本のストーリ性を大切にして映画を作成したと思えました。
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No.15:
(5pt)

Kindle版を購入。 ハイスミスの表現に引き込まれます。洋書初心者ですが、あっという間に読み終わりました。 映画同様、美しい世界観が魅力的です。 映画とは違う描写や、映画では描かれていない部分が多くあり原作の良さと、映画の良さが両方楽しめます。

素晴らしい。映画を見て気に入った方は是非! 頑張って英語で読む甲斐がありますよ。
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430946193X
No.14:
(5pt)

器用貧乏なリプリーさん

映画化された2作はどちらも観ているが、原作は初読。モンジベロでの微妙な心理ドラマがおもしろい。サスペンスとしては中盤のサンレモからローマのくだりの緊張感が出色。警察の事情聴取はあるわ、誰彼から電話がかかってくるわ、さらにマージまで出張ってきてさあ大変!と、一歩間違うとコントになりそうなピンチの波状攻撃を、よくもまあ切り抜けたものだ。ディッキーの〈アレ〉が見つかって、ついに万事休すかと思いきや……ラストは映画の方が好きかな。
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4309461255
No.13:
(4pt)

訳がちょっとたどたどしい?

いろんな方も書かれてますが、若干翻訳がつっかえつっかえしてます。
元の表現もそうなのかな?

それいがいがとても楽しめましたが、一つ言っておきたいのは、これは推理小説じゃないでしょ。。。
なんで推理小説として売られてるのかが謎。
一人の男の独白というか、くら〜い陰気な男の生態を延々と読まされるホラーと言った方が適切です。
謎解きものを期待してる人は読むとがっかりしますよ。
ただ表現の陰気さや残酷なまでに嫌なやつを嫌なやつとして描く、女性ならではの残虐性やしつこさが満載で、おすすめです。
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No.12:
(5pt)

魅力ある初期作品

あちらも、ニーノ・ロータの音楽、アンリ・ドカエのカメラともにすばらしい、映画的成功作だが、こちらの
原作はまた当然趣の異なるもので、傑作。犯罪小説だが、「サスペンス」というのとは聊か違う。
 冷蔵庫を買おうとしないディッキーの言葉。「それもアメリカを逃げだした理由のひとつさ」「三十分で料理
ができてしまったら、エルメリンダはそのあとなにをすればいいんだい?」 「1950年代」がこの話を成り立
たせている(ちょっと気分は『ジョヴァンニの部屋』)。船の旅。電話。警察の捜査。新聞。偽のサイン。グッチ
の店で買いもとめ特殊な皮みがきで磨いているスーツケース。トムは上質な物だけを手元に置きたい。
 トムがはじめてディッキーに気に入られたシーンが忘れがたい。犯罪を重ねていくから、必然的にシリ
ーズ中では次第にタフになっていくのだけれど、このトムという若者の、いろいろな、例えば、アメリカでちょっ
とした詐欺をはたらくところ(彼は数字に強い)、「トム・リプリー」に戻りたくないところ、落ち着き払って人
を殺す手順を考えているところ、ローマに旅行して羽目を外すところ、子どものように取り乱して泣くところ、
私立探偵に糾弾される場面を何通りも思い描くところ(ラスコーリニコフのよう)、誰かに似せたり(たしか
にイメージはドロンよりデニス・ホッパーか?)マイムをして見せたりするのが得意なところ、ディッキーの
服を来ているのを見つかるところ・・・・・・鮮やかで心に残る場面がいくつもある。食べ物の描写も面白い。
魅力ある初期作品。
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4309461255
No.11:
(5pt)

good

全く何の問題も無くよかったと思います内容も満足です状態もよかったです
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430946193X
No.10:
(4pt)

a phychological suspense

Tom was asked by Mr. Greenleaf to bring back his son from Europe to the U.S because her mother was sick.
He met Dickie. At first, they had good relationships, but Tom envied Dickie’s life, and also he liked Dickie secretly. Tom killed Dickie on a boat. He pretended to be Dickie for a while, but he had to change himself to Tom compulsively. The police and a private detective questioned him. He managed to deal with their investigations. He went to Greece and finally obtained freedom and money.
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430946193X
No.9:
(5pt)

面白くしかも愛着を感じる

私は推理小説をたくさん読む人間ではないが、推理小説を読んだとき、好きになってしまうことがある。それは、謎解きだのプロットといった推理小説の肝の部分よりも、なんか、主人公に愛着を覚えるときだ。結局文学作品などと同じような読み方をしているのだろう。
で、この太陽がいっぱいは、言うまでもなくアラン・ドロンの超有名な傑作の原作であるけれども、あの映画の中で全く割愛されている人物が出てくる。つまり、主人公トムがずっと、友達でい続ける、小さなものに彫刻する彫刻家の女性、だ。米粒のようなものに、何かを描いたりする。
その彼女との友情が、実は一番トムを癒しているのではないかなー、と思う。その女性との、程よい距離を保った金粉のように貴重な友情が、この不幸なトムの人生の中で、唯一の救いに見えて、私にとってこの小説をいつまでも忘れない愛着を感じる存在にしている。
太陽がいっぱい (河出文庫)Amazon書評・レビュー:太陽がいっぱい (河出文庫)より
4309461255
No.8:
(5pt)

お見事! 参りました!!!

90年代に一度、日本で“ハイスミス・ブーム”が起きた。発端は、ミステリー界の革命的才女ルース・レンデルが「ハイスミスを師と仰いでいる」と発言したことが伝わったことだろうか。それまでハイスミスは、ヒッチコックが映画化した『見知らぬ乗客』の原作を書いた作家としてしか評価されてこなかったから、出版社が先を争って翻訳を進めたあの時期は、我々天の邪鬼なミステリー読者には、幸せな時代だった。ハイスミスは、本人もかなり性格が歪んだ偏屈なオバさんだったと言われている(真偽のほどは不明)。

しかし彼女の作品に他のものと違う輝きを放たせたものは、その偏屈さにあったような気がする。「人嫌い」「孤独を好む」「いつも冷ややかに他人を眺める」そんな彼女の資質が、胸が苦しくなるような独特の心理描写や、登場人物に生身の陰影を与えたのだと思う。作者の眼は常に乾いて冷徹なのだ。本作は、フランス映画の名匠ルネ・クレマンがメガホンをとり、アラン・ドロンが美青年ぶりでスターにのし上がった『太陽がいっぱい』の原作にあたる。99年にハリウッドがオールスター・キャストでリメイクした『リプリー』はさらに原作に忠実だ。
改めて小説を読み直してみると、ハイスミスの巧妙なプロットにため息が出る。

同性愛者で貧しい育ちの若者リプリーがなりすました、傲慢で裕福なディッキーは、絶えず正体がバレることの恐怖と戦いながら、言葉巧みにスレスレで危機をかわしていく。ディッキーを演じている時も、リプリーに戻った時も、周囲からの疑惑に眼差しに晒されながら、「talented」な悪知恵でどうにか切り抜ける。物語の展開に始終ハラハラドキドキさせられる、こんなミステリーはちょっと他に類を見ない。

幼い頃、初めて親や友達に嘘をついた子供のように、気づけば掌にじっとり汗がしみでるような焦燥感。その嘘がバレないようにまた嘘をついて、蟻地獄に嵌っていくような静かな恐怖。嘘は必ず破綻して周りから蔑まれることがわかっている。それなのに嘘を続けなくてはいけない恐怖。この作品にスリルを味わうのは、そのような日常の感覚の延長線上に、シニカルに描かれた殺人事件だからであろう。
さり気なく人間の本質に迫った、まったくもって見事な筆力だと感服する。
太陽がいっぱい (河出文庫)Amazon書評・レビュー:太陽がいっぱい (河出文庫)より
4309461255
No.7:
(5pt)

マルチな才能は主人公トムに何をもたらしたか

『太陽がいっぱい』の冒頭、主人公トム・リプリーはコン・マン(詐欺師)として登場する。米国国税庁職員ジョージ・マッカルピンになりすまし、税金をきちんと納めていない(とトムがあたりをつけた)人々へ督促し、不足分の小切手をまんまと回収しているのだ。
犯罪に手を染めながら、他方でトムは、25歳にもなって自分は何をしているのか、という真っ当なあせりを持っている。そんな彼に、ディッキー・グリーンリーフの父親ハーバートが、イタリアにいる息子をニューヨークへ連れ戻してほしいと依頼する。おたずね者で、すぐにでもニューヨークとおさらばしたかったトムは、彼の依頼を引き受けることにした。
向かった先はディッキーのいるイタリアのモンジベロだが、トムの頭の中では行き先は「ヨーロッパ」だ。そこが再出発の舞台だ。船上で、トムは就職について想いをめぐらす。ハーバート・グリーンリーフの金を使い果たしても、米国へもどることはないかもしれないと考える。
事実そうなってしまった。愛憎関係の末にディッキー・グリーンリーフを殺した後、ディッキーになりすまして逃避行の末ヴェニスでは宮殿に住んだ。彼の財産を騙し取ることに成功し、物語は終わる。だから、『太陽がいっぱい』はまんまと世間を欺いたトムのコン・ゲーム小説でもあり、コン・マンからジェントルマンへと変身を遂げたトムの成長物語でもある。
ところで、本書の原題は‘The Talented Mr. Ripley’である。直訳すれば『才人リプリー氏』。どういう意味で才人なのか?

ぼくはなんだってできるんだーボーイだって、子守だって、経理だって
できる。・・サインだって真似ることができるし、ヘリの操縦もできる。
ダイスも扱えるし、他人そっくりになりすますことだって、料理だって
できる (79ページ)

引用したのは、ディッキーが君は何ができるのかと尋ねたときのトムの答えである。そう、トムはいまでいうマルチタレントのはしりなのだ。「サインだって真似ること」、「他人そっくりになりすますこと」は後のトムの詐欺行為を暗示させるのだが、それらすらトムにとっては(著者にとっても)才能の一部なのだ。
著者はトムの描写を通じて、世の中を渡っていくために人はどうやって才能を発揮するのか、マルチな才能は人に何をもたらすのかを、読者に問いかけているのかも知れない。
太陽がいっぱい (河出文庫)Amazon書評・レビュー:太陽がいっぱい (河出文庫)より
4309461255

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