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(短編集)
Iの悲劇
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Iの悲劇の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.94pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全65件 61~65 4/4ページ
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誰も住まなくなった限界集落に住まいを提供し、人を集めて集落を再生するIターンプロジェクト。しかし、そこに住む住民は皆問題を抱えていた。2世帯が先に住むが、ラジコンを飛ばして隣人を外出出来なくさせた趣味に生きる夫と料理が趣味の妻。この夫婦に仕返しをと大音響で騒音を撒き散らす隣人夫婦。しかし、二世帯とも村を去る。限界集落に住む夫婦の目的は何か? 小学校も病院も、コンビニさえ無い村。 今回の米澤穂信作品は限界集落に住む奇怪な人間たちをテーマにしている。アイデアが奇抜である。そして登場する風変わりな人たち。面白いが、なぜか物足りない。市が推進するIターン推進プロジェクトの意義はよく分かるが、この村に住むのはあまりに不便過ぎる。『満願』のようなミステリー小説としての醍醐味に欠ける。 それでも社会性は十分だ。 お勧めの一冊だ。 | ||||
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新潟県の内陸部かと思しき南はかま市。更にその辺地、山の中、住民が全員立ち退いて滅びてしまった蓑石地区に、Iターンで新しい住民を呼び込み、地域を再生しようという市長の施策を実行するのは市役所の「甦り課」の三人。課長の西野、主人公の万願寺、そして新人の観山です。 何故か癖のある移住者が多く、互いの接触がぶつかり合い、摩擦に至って、果ては犯罪的な出来事すら次々発生します。彼らに翻弄される万願寺が謎を解いたり、怠け者のように見える西野課長が安楽椅子探偵の如く真相を言い当てたり、五つのトラブルが解き明かされます。面白く読み進められますが、そんな事件の背後に共通するものが何かがある! 何もない過疎地に、なんでこんな事件が起こるのか。それは人間が集まれば現代の各種の問題がそのままに持ち込まれるからですし、加えて・・・。 現代日本の問題の見事な縮図を、推理物の形で、新生蓑石地区に描いた物語です。謎解きを楽しみながらも、ニュース番組を見ているように考えさせられます。 最終章は「Iの喜劇」となっています。人は、自分の力ではどうしようもない現実を見せられた時、笑うしかないですからね。 「氷菓」の千反田家のある陣出も山国の地域ですが、あの陣出を極限まで押しやると、この蓑石地区になるのかもしれません。作者は地方の、時代に取り残されつつある集落に郷愁とい入れがあるのかもしれません。 | ||||
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※以下の内容には【ネタバレ】が含まれる可能性があります 始まりの言葉と終わりの言葉.どちらもほぼ同じながら,まるで異なる微妙な違い. そしてこれを『喜劇』として幕が引かれる様子には,何とも言い難い後味を覚えます. また,個々の謎はいささか小粒に映り,期待をしていたほどではなかったのですが, その状況に至ることになった人々,そして彼らが身を投じた環境に目を向けてみると, 視点は無理な合併で生まれた地方自治体,彼らの捨てきれない問題に広がっていきます. そして,再び止まってしまった時間と,そこに同じく取り残されてしまった思いは, 怒りや悲しみより諦めが浮かび出ているようで,かといって,取り戻せそうにもなく, 主人公が繰り返した自問自答の答えとしては,あまりにも残酷でやるせなさを感じます. ただ,『大オチ』については,黒幕らや着地点も含めて,おおよそ想像の範囲内で, 誤算と葛藤と矜持,三者三様の苦悩が折り重なる『解決編』には引き込まれたものの, 限界集落や行政サービスへの踏み込みは,おおよそ一般論で終わってしまった印象です. | ||||
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[ネタバレあり] Iの悲劇というタイトルから少しでも読み進めていけば最後にどうなるか想像はつきます。 また、その理由も弟との会話だけやけに重厚であることから見えてきます。もちろん誰が誘導しているかも。 本作家の小説が好きで全て読んでいる為、こういった結末があることまで予想がついてしまいます。 それでもなお、読む手が止まらない程面白い。短編一つ一つも粒ぞろいですし、順番も軽いものから重いものへと、内容もゾッとするものからくすっとくるものまでよく練られていて素晴らしいです。 また、蘇り課の3人もそれぞれ芯があり、特に主人公の考え方や働き方には好感を持ちました。この先どういった道を歩むのか気になりますが続編はおそらくないでしょう。それだけが残念ですが、もちろん星5つです。 | ||||
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序盤は単純に万願寺と観山のやりとりが地味に面白いなあとか思って読んでいました。それが読み進めるにつれて、なんとなくオチが見えてきて、終盤には確信に変わり、そしてあの終章。非常に秀逸な構成だと思います。 最終的に苦いものが残る点は著者の他の作品と共通ですが、個人的に本作が素晴らしいと思ったのは、地方行政に携わる公務員のままならなさがよく表現されていたところです。どれだけ大層なお題目を掲げたところで、日本の地方自治はもはや自治体レベルでどうこうするのは難しいということ、現場の職員がいかに無力な存在であるのかということがよく伝わってきます。 唯一残念だった点を挙げるとすれば、地方に対する諦念のようなものが感じられてしまったところでしょうか。 個人的には、本作は著者の作品の中でも特に秀逸な部類に入るのではないかと思っています。もし続きを書かれることがあるのなら、万願寺が今後どこへ進んでいくのか、非常に気になる所です。 自信を持っておすすめできる一冊です。 | ||||
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