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(短編集)
Iの悲劇
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Iの悲劇の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.94pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全65件 41~60 3/4ページ
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山間部の自治体における移住支援プロジェクトが題材のミステリー小説。人口6万人の合併市「南はかま市」の職員が、数年前に定住者を失った限界集落「簑石(みのいし)集落」を舞台に、様々な個性を持つIターン移住者たちの支援のため孤軍奮闘する物語である。 自治体の地方定住策を取り上げた小説というのは珍しく、何かの参考になるかと思って読み始めたのだが、ミステリー小説として純粋に面白く、一気に通読してしまった。 物語は、市役所内に設けられたプロジェクトチーム「甦り課」に所属する3人の職員を中心に展開する。真面目な公務員である主人公の万願寺邦和、人当たりは良いが少々おてんばな新人の観山遊香、稀に鋭い指摘はするものの仕事はいつも部下任せの西野秀嗣課長の3人が、様々な移住者たちのトラブルに対処していく。 章ごとに入れ替わり登場する移住者たちは皆個性的で、それぞれのエピソードにもリアリティがある。章ごとにちょっとした謎解きがあって、小気味よく伏線が回収され、ややパターン化されつつもテンポ良く物語が進んでゆく。そして最終章であっと驚く展開を迎える。 また、移住促進策や限界集落対策に頭を悩ませる自治体職員の奮闘記としても面白い。コンプライアンスの観点から、補助金を間接交付する移住者が利害関係者にあたるのか主人公が真剣に悩んでしまう描写には少し笑ってしまった。被合併町村の悲哀、市長交代による政策の混乱も、いかにもありそうな話である。 特に印象に残ったのは、主人公が、東京でシステムエンジニアとして働く弟と電話越しに口論するシーンである。弟は、経済に貢献せず、税金を食い潰すばかりの過疎地域のことを「深い沼」と表現する。都市住民から見ればまさしくそうだろう。一方で、電話越しに語られる弟の生活ぶりは、毎日深夜まで残業し、休みもろくに取れず、故郷に墓参りに帰ることもできず、決して幸せそうには見えない。 果たして豊かさとは何か。地方と都会の関係はどうあるべきか。小説としての面白さに大いに満足する一方で、改めて大きな命題を目の前に突き付けられたような読後感を感じた。 | ||||
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氷菓から、ほぼ全ての作品を読んでいるファンとしては読めるだけで幸せです。 初めてこの作者の本を読むなら、この本はあまりお勧めはしないかな。 切ない物語が好きなら問題ないかも。 内容も地方公務員のせつなさが表現されていて、納得でした。 フィクションではあってもありそうに思わせる筆力はさすがです。 是非とも続編を望みたいですけど、なかなかきびしいかな。 | ||||
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最初は、お得意の人が死なないミステリーだと思って読んでいた。凸凹コンビが軽妙な掛け合いで謎に迫るエンタメ小説を楽しんでるつもりだった。しかし、途中から何やら怪しげな違和感を持ち、ん?何かひっかるなあと気になり始めたが、そのままサクサクと終章まで読み進め、最後にしてやられたあ、ということに。見事な伏線回収と、ちょっぴりの社会風刺が気持ち良くも、独特の後味を残す。そう、いつも通りそんなに簡単に物語が終わるわけがないのである。期待通りの後味。そしてまたこの妙な後味を求めて、またこの筆者の次作にも手を伸ばしてしまうのであろう。 | ||||
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古典部シリーズやラノベ時代のような米澤穂信さんの作品を期待している人には、期待外れかもしれないです。ただ、最後のオチ(というかどんでんがえし)は今までになくシニカルと言えるのではと思います。いつもながら流血しないミステリーとしてはよく考えられていると思います。一番恐ろしいのは人の心でもあるなあ・・・というところでヒヤッとする読後感ではないのでしょうか。 | ||||
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どんなに荒唐無稽な設定でもかまわないけどさ、それを飲み込んで余りあるようなミステリーのテクニックだとか、鋭い風刺とかがあって、小説として成立するんじゃないの? | ||||
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これはやっぱりミステリーなんだろな。幾つかのトリックは使われているし、解かれるべき謎はちゃんとあった。過疎問題や市の財政の問題など出てくるし、市役所のお仕事も出てくる。しかし、すべて話を作るために使われている感が強い。勿論、どんな小説だってすべては題材なんだろうが、それにしてもだ。要するにイヤミスなんだね。最初から、不穏な空気が漂っていて、上手くいきっこないと感じてしまう。それでもどんどん読まされてしまうんだね。やれやれだぜ。 | ||||
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人口減少・高齢化が進行する中で、多くの地方自治体、とりわけ中山間地域の自治体は、将来にわたり持続可能なのかという切実な問題に直面しています。そして、Iターンなど都市部からの移住・定住や二地域居住してくれる人、そこまで至らなくても「関係人口」として支援してくれる人材の確保などに真剣に取り組んでいます。当レビュー子は地方公務員ではありませんが、ボランティアとしてそのような取り組みを間接的に応援する活動に関わっています。 一方、長年の趣味としてミステリー小説を愛読していますが、本書のようなテーマのミステリーは読んだことがありません。そういう意味では評価できる作品でしょう。また、各短編の謎を一つひとつ解決しながら話を進め、最後に横串を通してガラッと見え方を変えるという手法は、よくあるパターンとはいえ、ミステリーとしてのカタルシスを生み出します。そこはそれなりに巧みです。 しかし、他のレビュアーが書いておられるように、一話一話のトリックが薄く、あるいは非現実的で、一話読むごとに不満が貯まります。さらに、最後のオチまで来ると、当レビュー子のような者にとっては、自分たちの活動や思いを、物事を皮相的にしか見ないで偉そうにご高説をたれるTVのコメンテーターにけなされたような、非常に不愉快な読後感が残ります。 加えて、タイトルが問題です。ミステリー史に燦然と輝くエラリー・クイーンの傑作のタイトルの「Y」を「I」に変えたものですが、この程度の作品でそんなことをするのはおこがましいと言わざるを得ません。 さらに、終章のタイトル「Iの喜劇」はひどすぎます。何が「喜劇」かという憤りすらおぼえます。 なお、蛇足ながら、円空仏が偽物と入れ替わる、第6章「白い仏」は、クイーンの短編「クリスマスと人形」(『犯罪カレンダー』所収)を思い出させました。どちらが優れた作品かは、言うまでもないでしょう。 他のレビュアーが書かれていたように、1500円+税 を出す価値はありません。この本こそ「Y(米澤)の悲劇」です。 | ||||
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単なるミステリーに止まらず、現代社会に横たわる大きな課題がこの悲劇を産み出したと言えそうです。ネタバレを恐れず言えば、私は課長派です。読んでもらえないとその意味解っていただけないでしょうが。 途中の兄と弟の考え方の違いが、今の日本の縮図でもありこの本で作者が読者に伝えたい対立軸であったと思います。 | ||||
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米澤さんの作品は、何故か鼻につく女性ライターが主人公のシリーズを除いて大好きで、ほぼ全て読んでいます。少し辛口のタッチにも関わらず、根底にやさしさが見える作風が気に入っています。本作品も一挙に読み終える面白さでしたが、結末が結構、気持ちが沈むものでした(人が死ぬわけではないのですが…)。この結末の背景は理解出来るのですが、簡単に言えば「嫌な連中」だなとの読後感が残りました。とは言え、買ったこと、読んだことを全く後悔しておりません。 | ||||
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古典部シリーズのような日常系のどうでもよいミステリーの短編集。 地方の高齢化による人口減少問題をベースにIターンプロジェクトに奮戦する公務員の主人公。 最終章では今までのどうでもよいミステリーの真相があきらかになる、大どんでん返しが。。。 あるのですが、Iターンが興味のある題材でもないし、謎がしょぼすぎるので読み進めるのが苦痛。 また、落ちも期待値が高すぎたためがっかりでした。 文庫版が出るか、ブックオフで500円ぐらいになるまで待つべき。 1400円の価値はありません。 読書後の後味は、少しビターかつしょっぱいです。 | ||||
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有名作家の米澤さんの新作です。 まずはタイトルが、ミステリー古典のエラリー・クィーンの有名作を思わせるので、懐かしさに『おおっ?!』とワクワクし、 加えてIターン&「甦り課」というキーワードに、ハートフルな再生作品でもあるのかな?と、期待してしまいました。 ところが、Iターン支援政策に応募して合格した移住者同士が、仲違い→トラブルに発展し、両家共にいなくなってしまう……というパターンが続き、 僕自身、5年前に遠く離れた他県へ引っ越す時に『とある村のIターン新築支援』に応募しようと思ったものの、直後に枠が埋まってしまい、 その村の隣市に引っ越したら、日常的な景色が常に絶景な上に、街の作りが秀逸で日常の買い物や生活が(人生で12回目の引っ越しでしたが)1番便利な理想郷という幸せな状況なので、 田舎へ永住目的で引っ越す幸せを享受している者としては、 『嫌なパターンが続くなぁ……。どんな目的でこんなパターンが続くのだろう?どんな驚くべき真相で、この嫌さを払拭してくれるのだろう?』と、 我慢して真相だけに期待して読みましたら、 まさかの真相は『更に胸くそ悪い真相』……。 恐らく作者としては、限界集落問題や地方行政の限界を、少し問題提起してみたという狙いなのでしょうし、 真相に至った理由や背景には頷けます。 でも、手段が荒唐無稽&胸くそ悪過ぎて、全く同情出来ませんし、 真相が明かされる章タイトルが『Iの喜劇』って、どこが喜劇?! 単に胸くそ悪いだけにしか思えませんが。 限界集落問題や地方行政の限界を問題提起したいなら、書き方が全く駄目だなと思いますし、 僕のような『田舎へ永住目的で引っ越して幸せな者』には、そんな想いを踏みにじるような内容に感じますし、 今作品の主人公のように、Iターン支援にきちんと取り組んでいられる組織や方々にとっても気分悪い作品に思いますし、 そもそもIターンという考え自体、地方には重要課題であって、こんな作品で揶揄して良い軽いテーマではないと思います。 でもAmazonだと作者のファンは絶賛されていてビックリしました。 今作品に社会性テーマがあるなんて、どう捉えればこの真相からそう読めるのか? 個人的には星3以下の作品は感想書きませんが、かなり久しぶりに書いた次第です。 単に胸くそ悪いだけの嫌な作品でした。 | ||||
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今は無人となった小さな集落の簑石に、Iターン支援で定住者を募り復活させるプロジェクトに役人が奮闘する連作集。 各話それぞれに謎解きは用意されているけれど、正直、第一章を読めば話のパターンがわかってしまいます。 それでも、筆者なら最後には全話に繋がる仕掛けがあると当然期待してしまう訳ですが、やや強引な鮮やかではあるけれど、何とも切ない幕切れです。 | ||||
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米澤穂信らしくて非常に良かったです。クリスティのそして誰もいなくなったを読んでおくとより良いと思います。 | ||||
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短編連作で、最後、伏線回収するパターンのやつ。 ※短編に見せかけた長篇。 ネタバレになるが、「蘇り課」に課せられた裏の指令ってのに無理がある。 陰謀に関わるメンバーが多すぎ。また、プロジェクトを白紙にするのが目的だとして、ボヤ騒ぎ、子供の生き埋め、食中毒事件、密室での窒息、裏で糸引いてたヒロイン、途中で嫌にならなかったの?って思う。バレたらあなたのキャリア台無しなんだが、リスク多すぎなんだが。倫理的にマズイって思わないのだろうか。 で、動機の弱さ、陰謀の必然性の薄さも然ることながら、トリックも厳しい。 特にドライアイスで空気圧を下げるって、どうやるの? 俺は業務用の冷蔵庫がぶっ壊れたりで、ドライアイスで温度が下がった個室に入った事があるが、あのトリックは全くわからんかった。 まず、ドライアイスって白い湯気みたいなんが出るのね。鞄に入ってたら、鞄の隙間からモワモワ出るのよ。なんで読書中の主人公が気付かないの? 鞄を持ち上げる描写まであるけど、「つめたっ」とかならんのかな。 あと、ドライアイスって独特の臭いあるからね。喉が渇く感覚もあるし。 空気圧に関しても、そもそも無理だからね。ドライアイスが溶ける速度で気圧差なんかできない。大人の力でも開かないドアって、どんなトリックですか・・。 動機、陰謀、トリック、どこか尖ってくれれば、こんな粗さがししないけど、ここだけは一級品って、べた褒めできる箇所がないな。 過去作読んでも、登場人物が魅力的(というかトリッキー)で、トリック云々言わせない様な説得力があったんだけど、今作って主人公が平凡だから、やたら粗が目立った。 最後に良い部分を書いておくと、弟との電話での会話が良かったね。 本線とは関係ないとこだけど、田舎で生きる主人公と田舎を捨てた弟、どちらが幸せだとか、自分も含めて一般に通るような設問だけど、導入の仕方が良かった。 | ||||
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最新作です。2010年以来の掌編の集積です。 読者に、常にとんちと機知とで挑みかかる作者のスタイルがここにもあって、満足しました。 p.8「……長い時間が過ぎ、やがて全ての部品が交換されたとき、それは元の船と同じものだと言えるだろうか。」とありますが、ここで、若き日の岡本太郎氏の南国の島々に関するレポートを思い出しました。大きな嵐があると島民が全滅してしまう。しかし、また住む人々によって島が蘇る。この「再生」に沖縄を中心とした地域の復活の原理とエネルギーの所在を観ていたのです。 | ||||
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作者の手法で1話ずつ何とか最後まで読み進めさせてくれます。それぞれの話のオチは「まぁそんな所か」っていうレベルですが。無駄にちんたら長い文章じゃなくスイスイ進められる所は作者の力量ありき。 終章のプチどんでん返しで切なさ残してスッと物語がジ・エンド。悪くはないですが、取り立てて「この話は膝打った!」みたいな話も無かった(1つだけ明らかに不要な短い章もあり)ので☆2つ。 | ||||
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場面が色々切り替わり、それぞれで何かがあり、 最後はそこかーって、納得と憤りを感じられる本。 なんとも切ない感じ。 もしかしたら、今もどこかで同じ事が起きてるのかもと 想像してしまう内容。 | ||||
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他のレビュワーの方々が仰っている様に、序盤から結末が簡単に予想できてしまいます。 結末がわかってしまうからこそ、読み進めるごとに心が軋むような構成はとても楽しめました。 続編をいつまでも待ちます。 | ||||
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僕は、その都度購入し読んでいたのですが 1冊にまとまると、忘れていた話もあり、楽しめました。 書き下ろしの新作もあり、そちらももちろん良かったです。 | ||||
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サービス残業や休日出勤は当たり前。下手をすると自腹を切ることになることもある。おそらく、一般の人々には理解されないだろう。それなのに、遅くまで残って仕事をしていれば、「税金を無駄遣いして冷房(暖房)や照明を好き放題使っている」とクレームがつく。自宅に仕事を持ち帰ろうとすると「データが紛失するようなことにならないように」と上司に釘を刺される。だったら、データだけをクラウドにあげて自宅で仕事をしようとすれば「そんな危険なことは許可できない」と言われる始末。「世の中の会社はみんな危険なことになりますけどね」というと「生意気なことを言うな!」と怒られる。実際にあった話。 人口減少が加速し、山間部の集落には空き家が目立ち、「限界集落」ということばが当たり前に通用するようになってどれくらい経つのだろう。少子化、高齢化、人口減少による税収の減少。つまるところ「お金がない」ということに問題の根本がある。それなのに、市長は選挙で選ばれるため、票になる公約を声高に叫ぶ。当選すれば公約を実行しようとして、無理難題と思われる事業を押し通そうとする。市役所の職員は、そうした市長の意向に振り回される。それでも、公務員である限りは、上司の意向に沿って仕事をしようとする。ところが、市長が交代すれば、まったく違う事業に振り回されることになる。 いったい行政は誰のためにあるのだろう。公務員なら誰でも感じる矛盾を、本作の登場人物が表現してくれる。登場人物も団体も、地名もすべて架空のものなのに、とてもリアルに感じられるのは、おそらく、似たようなことが全国で起きているからに違いない。 | ||||
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